令和4年 閉会中 府民環境・厚生常任委員会―2022年11月28日〜島田敬子府議の質疑応答部分

所管事項の調査

下記のテーマについて、理事者及び参考人から説明を聴取した後、質疑及び意見交換が行われた。
 ・循環型社会の推進に向けたプラスチックの資源循環について

◯小原委員長  まず、所管事項の調査についてでありますが、本日のテーマは、「循環型社会の推進に向けたプラスチックの資源循環について」であり、通知をお送りしました略歴のとおり、参考人として、大阪商業大学公共学部准教授の原田禎夫様に御出席いただいております。
 本日は、大変お忙しい中にもかかわらず、本委員会のために、快く参考人をお引き受けいただき、誠にありがとうございます。
 原田様におかれましては、1998年に同志社大学を御卒業後、2005年から大阪商業大学に御勤務され、2008年には経済学の博士号を取得しておられます。現在は、大阪商業大学公共学部の准教授として、公共経済学や財政学のほか、河川の環境、水運文化の研究にも取り組んでおられます。
 また、NPO法人プロジェクト保津川の代表理事として「清らかな流れを、次の世代に」を合言葉に、毎月の清掃活動やエコツーリズムなども取り組んでおられます。
 さらに、大阪府環境審議会水質部会の専門委員や亀岡市循環型社会推進審議会の会長等、自治体の各種委員としても御活動されていると伺っております。
 本日は、そういった日頃の御活動を踏まえたお話をお聞かせいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、はじめに理事者からテーマに係る説明を聴取いたします。説明は、簡潔明瞭にお願いいたします。

◯松山府民環境部技監  ありがとうございます。それでは、御覧いただいております資料の次のページの「京都府のプラスチック資源循環対策の概況」という表題の資料を御覧願います。
 「1 プラスチックごみに係る現状等」についてでございます。
 プラスチック製品は私たちの生活のあらゆる場所で使われ便利な一方で、近年、プラスチックごみが海洋汚染、地球温暖化、諸外国の輸入規制強化など、地球規模の環境問題の一因となっております。
 国内におきましても、プラスチック資源循環を促進する重要性の高まりを背景に、令和2年7月のレジ袋有料義務化をはじめ、本年4月には各主体における取組を促進するための措置を盛り込んだプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律が施行されたところでございます。
 本府におきましても、こうした国の動きと連動し、また2050年温室効果ガス排出量実質ゼロに向けプラスチックの2R、ごみを出さないリデュース・リユースの促進に取り組んでいるところでございますが、府内のプラスチックごみの排出量は、事業所からの産業廃棄物の量が13.5万トン、家庭からの一般廃棄物のうち分別回収されている容器包装プラの量が2.4万トンという状況でございます。
 次に、今後の取組の方向性についてでございます。
 昨年、本府における当面のプラごみ対策の方向性を定めた京都府プラスチックごみ削減実行計画を、本年3月には、2Rの一層の推進と廃棄物分野における温室効果ガスの削減を図るための方針をまとめた京都府循環型社会形成計画を策定したところでございます。
 これらの計画に基づき、本府では「プラスチックごみの2Rの一層の推進」「使い捨てプラスチックの使用削減」「内陸部を含めた海洋プラスチックごみ対策の推進」の3つを取組の柱として、産業廃棄物対策といたしましては、産学公で設置した京都府産業廃棄物3R支援センターによる事業所への技術開発や施設整備に対する支援を、一般廃棄物対策としましては、市町村と連携した家庭のごみの分別の徹底や企業と連携してリユース容器やマイボトルの普及啓発を、海岸漂着物対策としては、海岸部、内陸部が一体となったごみの回収処理など、府民の行動変容や次世代ビジネスの構築につながる各種施策について、オール京都で取り組むこととしております。
 「3 令和4年度の主な事業内容」についてでございます。
 プラごみ対策強化事業費としては、リユース食器やマイボトル給水器の導入補助やバイオプラスチック製品の技術開発補助、資源循環京都モデル推進事業といたしましては、プラスチックのリサイクル施設への補助、海岸漂着物地域対策推進事業費といたしましては、市町村のごみの回収処理や啓発費用に対する補助などに取り組んでいるところでございます。
 説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

◯小原委員長  次に、参考人の御意見を拝聴いたしたいと思いますが、準備が整うまで、しばらくお待ち願います。
 それでは、原田様、よろしくお願いいたします。

◯原田参考人  皆様、こんにちは。本日はお招きいただきましてありがとうございます。今御紹介をいただきました大阪商業大学の原田と申します。私が住んでおりますのは亀岡市でして、京都府民でもございますので、今日、皆様と一緒に意見交換ができることを大変楽しみに参りました。どうぞよろしくお願いいたします。
 では、早速ですが、まず海洋プラスチックについて、今大きな話題になっておりますが、最初に幾つか写真を御覧いただきたいと思います。
 今、御覧いただいております写真は、瀬戸内海の東側といいますか南側の出口に当たります友ヶ島、こちらは和歌山のちょうど紀伊半島と淡路島の間にある無人島なんですけれども、ほぼ100%近くは国内由来、瀬戸内海の沿岸から流出したごみで、実は地域の皆さんが毎月清掃活動を行っていただいているにもかかわらず、こうした状況が続いております。
 それから、こちらは北部、宮津の由良海岸ですね。こちらは海水浴場でもありますけれども、シーズンオフになりますとこういう悲惨な現状が毎年のように起こっております。
 また、こちらは舞鶴市の大浦半島、なかなか道路もなく人が立ち入ることができないエリアですけれども、ちょっと入り組んだところには、もう大量のごみが海岸を埋め尽くしております。
 では、一体こういったごみがどこからやってくるのかということですが、学生といつも調査をしているんですけれども、こちらは舞鶴の冠島で回収したペットボトルを指標に流出国の推定というのを行っております。特に、北部の海岸のごみですと皆さん中国だとか韓国のごみがという印象がどうしても強いんですけれども、場所にももちろんよるんですけれども、実は一番たくさん並んでおりますペットボトルは日本製、国内由来のものでございます。ですので海外からの漂着ももちろん深刻な問題でもありますが、同時に国内からの流出というのも実は非常に大きな問題です。
 2050年には、海の魚を全部合わせた重さよりもプラスチックの重さのほうが多くなるということが世界経済フォーラムからも報告されております。じゃあ、実際どれぐらいのものかと。ちょっとこちらの真ん中に300gのアジなんですけれども、同じ重さのプラスチックを並べてみました。2050年の海というのが、もしかしたらこういうことになっているかもしれない。今だったら食い止められる、本当に生態系に深刻な影響を及ぼす前に何とか減らさなければいけないということで、世界各国が対策を行っているわけでございます。
 現在、世界で約4億トンのプラスチックが生産されていると推計されています。では、どういう使い道のものが一番多いかということですが、ちょうどグラフでいうと下の青い部分、最も多くを占めておりますのが、いわゆる容器包装類です。この4億トンのプラスチックのうち半分近くを、1回限り使われただけで捨てられてしまうものが占めております。また、プラスチックごみ全体の世界のリサイクル率は実は9%、1割にも満たないという状況がございます。
 環境中に流出したプラスチックといいますのは、どんどん細かくなって「マイクロプラスチック」という言葉を皆様もお聞きになったこともおありかと思いますけれども、あるいは、さらに小さくなって「ナノプラスチック」、最近の研究では例えば呼吸を通じて我々は体内にも取り込んでいる、人の血液からもプラスチックが見つかるといったことも報告されております。
 こういったことが様々な病気を引き起こす可能性がある、まだまだ未解明な部分が多いんですけれども、私たちの健康に影響を及ぼすリスクが分かっているわけですので、できるだけ未然に取り除いていこう、いわゆる予防原則の概念で世界中で取組が始まっているというところです。
 実はもう国連などでは、「プラスチック汚染」、英語ではプラスチック・ポリューションと言いますが、そういう言い方をするようにまでなってきております。まだまだ日本では「プラごみ問題」という言い方が主流なんですけれども、世界ではプラスチック汚染というふうな言い方をしている。これを解決するのには非常に時間もかかります難しい問題ですので、国際的なレベル、あるいは国家レベルの取組だけではなく、地方からの取組の積み重ねというのも非常に大事だというふうに指摘されています。
 世界的には、様々な国際条約などで取組も進められております。最近でしたら、日本とスウェーデンが共同で提案したバーゼル条約の改正で、汚れたプラスチックの輸出を禁止する。実は、私たちの住んでいます日本は世界で最大のプラスチックごみの輸出国でもあるんですけれども、こういったところも年々規制が厳しくなっております。
 また、生物多様性条約をはじめ様々な、最近ではSDGsということもよく言われておりますけれども、社会の理念、考え方を変えていこうといったことを掲げた取組なども進んでおります。
 日本でもプラスチック資源循環新法が成立する、あるいはレジ袋の有料化が始まるなどしておりますが、実は海外の取組のほうは、はるかに先を行っておりまして、例えば、こちらの資料ではケニアはプラスチック袋、レジ袋を使うと最高400万円の罰金ということを書いておりますけれども、例えば同じG7のドイツでは今、罰金は今のレートで直しますと1,400万円ぐらいの罰金が科されるといったような現状もございます。
 EUは、特に率先してこのプラスチックごみ問題に取り組んでいるわけですけれども、バージンの石油由来のものではなく同じ使うにしても例えばリサイクルの素材をどんどん使っていこうですとか、あるいは、ごみの埋立処理というのはまだまだ埋立てに依存をしている国が多いんですけれども、ここに上限を設けて、もしこの基準を守れなかった場合は課徴金を国に科していくといったような強い規制も行っております。
 また、使い捨てプラスチック、日本でもコンビニのカトラリーとかも減らしていこうという取組はようやく始まったばかりですけれども、ヨーロッパへ行きますと、例えばスプーンやフォーク、ストローなどはそもそも禁止になっております。
 また、中国においても、もうEU並みの強い規制が既に始まっております。特に、きっかけになりましたのは冬の北京オリンピックなんですけれども、これをプラスチックを使わないオリンピックにしていこうということで、ちょっと今コロナ(COVID-19)で最新の状況を把握することは難しいんですけれども、EU並みの規制が既に行われているというふうにも聞いております。
 また、アメリカでも政権が変わりましてEU並みの厳しい規制を導入していこうと。まだ議会の動向がなかなか判然としませんので、法律の成立というところまでは行っておりませんが、既に多くの紹介議員が名前を連ねて議会に、ヨーロッパ並みの厳しい、プラスチック汚染からの脱却法案が提出されたりもしております。
 レジ袋なんですが、日本では有料化ということですけれども、今、有料化を進めている国、規制を進めている国、中でもこの青色の国々は2018年の時点で禁止をしている国々です。その後、例えばヨーロッパはもう全域で先ほど申し上げたように禁止になっておりますし、アメリカやオーストラリアはこういった問題を州レベルで取り組んでいます。例えばオーストラリアは全ての州で禁止です。また、アメリカでも、かなりの州でレジ袋をはじめ、様々なプラスチック製品が既に禁止と。日本の方が大好きなハワイなんかでは、2015年からレジ袋はもう完全に禁止というふうになっております。
 日本では、年間に800万トンのプラごみが出ているわけなんですけれども、実は、この日本でもリサイクルがなかなか進んでいない現状がございます。プラスチック全体ではおよそ25%程度、輸出分を差し引きまして国内でのリサイクルに限りますと、もう15〜16%しかリサイクルされていないと。実は、日本のごみ処理というのは、生ごみも燃やしちゃっているのは日本だけと言ってもいい状況なんですけれども、G20の中でも下から3番目か4番目程度の低いリサイクル率にとどまっております。
 この過度に焼却に依存しているという日本の現状も、焼却処分場の更新というのは地方財政にとっても非常に大きな負担になっておりますので、今後見直していかざるを得ない状況がございます。
 先ほど、日本は世界最大のプラスチックごみの輸出国だというお話をしましたけれども、その相手先といいますのは東南アジアの国々でもあります。こういった国々に、本当にこのごみの処理を押しつけているだけでいいのかというようなことも議論が必要です。
 また、国内に目を向けましても、例えばよくペットボトルはリサイクルの優等生ということが言われておりますけれども、実はこのペットボトルのリサイクルも4割近く、3分の1強は海外でのリサイクルに依存をしております。
 また、このリサイクルの中身も非常に問題でして、ボトルからボトルへの水平リサイクルは最新のデータでは20%程度にとどまっております。例えば、服の繊維であったりとか、あるいはシート類へのリサイクルが多いわけなんですけれども、こういったものは一度使って、その後またリサイクルされるのは非常に難しく、本当の意味でのリサイクルというのはまだまだ大きな課題がございます。
 こういったペットボトルというのは、さらに散乱してしまう。例えば、町なかの回収ボックスからあふれ出している。誰もポイ捨てをしていないんですけれども、雨が降ると簡単に流れ出してしまうといった現状もございます。
 またレジ袋、国の有料化は様々な議論もありましたが、最近ではほとんどの方がレジ袋を使わなくなったというふうには言われておりますけれども、よくある批判の中に「海岸でそんなにレジ袋は見つからないじゃないか」という批判があるんですけれども、実は、これは関西広域連合で私も一緒に調査に行ったんですが、海底にたくさん沈んでおります。大阪湾にはレジ袋だけで300万枚、少なくとも沈んでいる。これは、漁業にとっても今深刻な影響を与えております。ごみが引っかかる。それだけじゃなくて、本当にお魚、あるいは貝類やエビ類の住みかを奪っている、漁獲量の激減といったことにもつながる深刻な問題となっております。
 また、この淀川水系のごみも関西広域連合の皆様と一緒に調べました。こちらは京都市内の地図ですが、面白いもので場所によって随分と様子が異なるんですね。鴨川は観光地ということもあって非常に美しいんですが、まっすぐの河川なのでごみがたまりにくいということもございます。一方で桂川、上流には亀岡がございますけれども、川も大きく、また曲がりくねっている。そういうところには、ごみがたまりやすい。河川管理者でもいろいろ取組はしていただいていますけれども、なかなか十分な清掃活動なんかも行えていない現状がございます。
 これは全体の地図で、一番端が河口になり、右に向かって上流になるんですが、ごみがたくさん見つかる地点でグラフがポンと上がっているものになるんですが、調べますと、実は意外と淀川は川岸にごみがたまらないんですね。といいますのは真っすぐですので、雨が降ると海まで一気に流れてしまうということがあるんです。
 一方でこの紫、桂川は非常にごみが多いと。よく考えますと当たり前で、木津川流域人口が川に密接したところまで大都市があるわけではございません。また、宇治川は天ヶ瀬ダムで一度ごみを全てキャッチされますので、結果的には桂川からのインパクトが非常に大きいということにもなっております。
 また、マイクロプラスチックの流下も調べました。上のグラフは、まず左端、下向きの棒グラフは上流で雨が降りました。すると、下流で水位が上がります。これが、なだらかな曲線のグラフです。この水位の上がり始めるときに、マイクロプラスチックが初めに流れてくる。軽いですから後から来るんではなくて、雨が降ると簡単に流出しますよと。ですので、内陸部での清掃活動というのも海岸清掃と同じぐらい大事な問題だということが、こうしたことからも分かります。
 私は、大阪府の環境審議会の委員も務めておりますけれども、今、大阪府でもG20をきっかけに2050年までに海に流れ出すプラスチックごみをゼロにする、これは国際的な合意ですけれども、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」策定の地ということで、かなり意欲的な目標を立てていただいております。
 2050年まで時間は長いようで短いんですが、特にずっと同じ調子で減らせるわけじゃないんですね。最後のほうは難しくなるということで、2030年までに、まず半分に減らそうということで、今、産官学が連携した様々な取組が行われておりまして、もうすぐ府民の皆さんにも、具体的な取組がより強い形でお示しできるんじゃないかなというふうなところでございます。
 私は、亀岡市に住んでおりますと言いましたが、今本当に保津峡にはたくさんの方がトロッコ列車、保津川下りにお越しいただいておりますけれども、残念ながら保津峡の峡谷内にもこういったごみがたくさん流れ着いております。こういった問題に最初に気づかれたのは、保津川下りの船頭さんたちでした。船頭さんだけではとても手に負えないごみだということで、私どもは市民の皆さんと一緒に、地域の皆さんと一緒にごみを調べると、ごみマップという調査を行いました。どこに、どれぐらいのごみが、どれぐらいあるんだろうかと、そういったことを私たち研究者、あるいは行政の皆さんだけではなく、住民の皆さんと一緒に調査をすることで、どこはどういうふうにしていったらいいんだろうという対策も一緒に考えて清掃活動を活発に行っていただけるようになりました。
 結果、粗大ごみ等は大きく減ったんですけれども、ただどうしても減らないものがございました。これがレジ袋、それからペットボトルです。ペットボトルの対策といいますのは、一自治体だけではなかなか難しい面がございます。ただレジ袋は、例えば2007年に京都市が有料化を始めたのをきっかけに、各地で自治体の取組が先行して行われて大きな成果を上げております。そうした中で、世界の動向も見る中で、もうこれは有料化よりも禁止をすべきじゃないかということを地域の皆さんも一緒になって協議をして、そしてプラスチックごみゼロ宣言というのを発出していただきまして、皆様、御存知のとおり、昨年から亀岡市ではレジ袋はもう全面的に禁止をしております。
 全業種、全店舗、例外なく禁止をいただいておりますが、当時、最初はやはり前例のない取組ということで厳しい御意見もたくさんいただきました。ただ、そうしたときに私たちと調査を一緒に行ってきた地域の皆さん、自治会の皆さんなどが、「いや、これは早急に取り組むべきだ」ということで、何と50を超える団体・企業の皆様が早期施行を求める要望書というのを市長に提出いただいたりもしました。
 こういう取組を進めて法律あるいは条例をつくるということは、なかなか時間のかかる作業でもあります。また、経済的な意味でも政治的な意味でも多大なコストを要するものです。ですので、それだけが唯一の解決手段ということはなく、様々な手法を、皆様の意識を高めていく、企業の取組を支援していく、あるいは本当に小さな地域のレベルから、京都府全体、日本全体、国際的なレベルまで価値観を共有していく取組が欠かせないのではないかなというふうに考えております。
 今日の意見交換が、ぜひこうした取組の助けになればと思っておりますので、この後もよろしくお願いいたします。
 では、一旦、意見陳述を終えさせていただきます。ありがとうございます。

 

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◯島田委員  今日はありがとうございます。
 私は、このプラスチック製品がやがてマイクロプラスチックとなって海洋、自然界に漂って生態系の隅々まで、人間にまで広がって汚染をしているということに非常に危機感を覚えております。免疫系に影響を与えたり、プラスチック製品にもともと含まれる添加剤や、海水中から吸着してくる化学物質の運び屋としても作用するし、生殖機能にも異常を与えているということで、東京農工大学農学部の高田秀重先生がヨーロッパで成人男子の精子数が過去40年前と比べて半分に減っていると。こういう事態をなかなか知らされていないというのが現状であって、やっぱり便利さの陰にそういうふうに人間の生態系まで及ぼすような影響を与えていることをもっと深刻に考えるべきだというふうに思っております。その点、参考人のお考えをもう一回お聞かせください。

◯原田参考人  ありがとうございます。先ほども実は高田先生とは別件で打合せをしていたんですけれども、御指摘のとおりで、いわゆる犯罪捜査に例えますと状況証拠のようなものはもうたくさんそろっているわけなんです。ただ、非常にごく微量で作用しますし、また我々はプラスチックを食事や呼吸で摂取をしておりますので、この摂取をしていない人との比較というのがなかなか疫学的にも難しいという問題もあるんですけれども、人体への影響というのは、本当にもう大変懸念をされております。
 また、女性の皆さんで例えば子宮内膜症を患っていらっしゃる方は最近非常に多いと聞いておりますが、そういった皆さんの血液を分析しますと、プラスチックの添加剤に用いられている物質がかなりの高濃度で見つかるといったことも報告されていたりしておりまして、本当に懸念される状況にあろうかと思います。
 さらに、最近の研究では、例えば亀岡市内の河川でも確かめられているんですけれども、小さくなったマイクロプラスチックが川を流下していきます。その際に、本来河川の水の中にはいないはずの細菌類がプラスチックの表面に付着して、より広範囲に拡散していることも確かめられております。
 ですから、まず何が問題なのかと。もちろん便利さというのは、これは私も含めて否定できるものではないんですけれども、功罪の「功」だけではなく「罪」の部分もしっかりと社会の皆さんで共通の価値観を持って取り組んでいくことが大事かと思います。
 最近、ヨーロッパなんかに行きますと、若い世代の皆さんは、それこそ先ほども御指摘がありましたが、食品の個包装なんかを見ますと、日本の場合は衛生的だというふうに思われるんですけれども、逆にヨーロッパなんか行きますと頼むからやめてくれと。気持ち悪いというふうな感想をお持ちになるような若い方が増えているともお聞きします。ですので、どちらが正しいのかというのは一概には言えないんですけれども、バランスを持った議論を科学的な根拠に基づいて進めていく、それを社会に広めていくことが我々研究者の役目でもあるのかなと思っております。

◯島田委員  大阪湾等の調査もやられているということで、淀川水系のマイクロプラスチック等の汚染状況とか、そんなのも今、調査があるんですか。

◯原田参考人  そうですね。どこでもマイクロプラスチックというのは見つかるんですけれども、例えばピリカというスマホでごみ拾いのデータを集めるアプリを開発されている会社の調査によりますと、例えば大阪府内をはじめとした都市部の河川で見つかるマイクロプラスチックの中で、正体がはっきり分かるものという意味で一番多いのが、実は人工芝の破片だったりもします。
 今、多くの学校では人工芝のグラウンドが完成しましたということが大きな宣伝になったりもしているんですけれども、これはできたものはもちろんすぐにはなくせるわけがありませんので、少なくとも流出防止に向けた取組を進めていくことが必要なわけなんです。例えば、お隣の大阪府では、今、人工芝のメーカーさんとも連携をして流出防止に向けた効果的な対策を確かめて、そして広く普及させていく取組を行っていただいています。根本治療ももちろん大事なんですが、対症療法というのも、それはそれで大事ですので、広くそういう情報を発信していく必要があるなということを議論しているところでもあります。

◯島田委員  今日もペットボトルのお茶を飲んでいて、ちょっと罪悪感を感じるわけです。参考人がマイボトルでリユース容器、やっぱり容器の排出量を削減しなきゃいけないし、バイオプラスチック製品の開発も京都府の計画にありますが、そういう新しい開発も必要ではないかと思っているわけであります。
 やっぱり製造者責任、これは容器包装リサイクル法後、逆にプラスチック仕様が、この形も形状も本当に余計に増えたと思っておりまして、これは逆さまだなと思って、規制しなきゃ、やっぱり元を断たないといけないというふうに思うんです。
 その点で言うと、マイクロプラスチックなんていうのは、合成洗剤とか、お化粧品とか、それから農薬をずっと時間を置いて溶かすように、あれもマイクロプラスチックカプセルで覆われているというようなことで、これは逆行しているんではないかなと非常に危機感を持っておりまして、その辺もやっぱりきちっとルールが必要だというふうに思います。
 それで全体のプラスチックの排出量の中の、ペットボトルが一番多いんですけれども、レジ袋やその他のマイクロプラスチック製品の割合とか、そんなデータはあるんですか。

◯原田参考人  プラスチックごみ全体に占める、例えばペットボトルでありましたり、レジ袋の比率が極めて高いというわけでは決してないんですけれども、もう一つの側面として、例えば移動性が高いか低いか。ペットボトルなんていうのは栓をしたまま皆さんはお捨てになると思うんですけれども、そうすると中に空気が入った浮きの状態になるわけですね。そうすると、非常に移動性が高くなってしまいます。あるいはレジ袋というのは、それ自体が風で飛びやすいですし、実は海岸でレジ袋がなかなか見つからないといいますのは、川を流れていく最中に木に引っかかって粉々になります。あるいは、原形を保ったまま海に流れ出したとしても、今度は海底に沈んでしまいます。薄いものは劣化もしやすいですし、海岸で見つからないから少ないというわけでも決してなく、また全体の量が少なくても生き物の誤飲・誤食のリスクを考えたりしますと、量は少なくともインパクトの大きなものというのもたくさんございます。
 ですから、単に重量ベースであるとか体積ベースで評価するだけではなく、それぞれにリスクというのが異なりますので、どんなリスクがあるのかということを的確に評価をして対策を講じていくことが必要かなというふうに考えております。
 先ほど、リユースという言葉に言及していただきましたが、例えば京都の祇園祭ではリユース食器というのは広く導入いただいて、もう60万食、食事が出るうちの20万食はリユース食器で提供されているというふうに伺っております。例えば、今度の2025年の大阪・関西万博でも、このリユースというのは積極的に進めていこうという議論も行われておりますし、また亀岡市につくっていただきましたサンガスタジアムでも、サッカーの試合の日にはリユース食器を使ったマルシェを開催して、そしてリユース食器を市民・府民の皆様により広めていく取組も行っていただいているところです。
 やはり、リユース食器1つ取りましても、皆様にお気軽に使っていただく、あるいはそもそもそういうものの存在を知っていただく、そういう機会は本当にまちを挙げた取組が必要かなと感じております。

◯島田委員  ありがとうございます。やっぱり埋め立てても、焼却しても、リサイクルしても、また新たな公害を発生させるということで、やっぱりプラスチック依存からそもそも脱却する方向で研究も開発もしていくということが重要であるかなというふうに思いました。
 今日は、ありがとうございました。