令和4年6月定例会 本会議 一般質問 – 2022年6月22日

○島田敬子議員  日本共産党の島田けい子です。先に通告している数点について、知事並びに関係理事者に質問します。
 まずはじめに、障碍者が住み慣れた地域で安心して暮らし生きていくための障碍者施設の充実、医療的ケア児者への支援について伺います。
 先日、京都府議会府民環境厚生常任委員会で綾部福祉会を視察し、80歳を超える高齢の障碍者にも日中の活動の場を提供し生きがいをもって暮らせるような支援をする一方、医療的ケアが必要な重度の障害を持たれる高齢者が増えており、その方々の居住の確保等のご苦労をお聞きしました。その後、私は独自に、舞鶴福祉会、網野福祉会にもお訪ねしましたが、同様の課題を抱えておられます。
 各法人・事業所ではこれまで、障害がある人も当たり前に働き暮らすことのできる地域づくりと、仲間の豊かな発達を保障するために、長年にわたり作業所づくりや働く場、住まいの確保などご尽力をいただいております。そして、その仲間たちが高齢化し障害が重度化する中、その人たちが安心して暮らせる施設がほしいとの要望が共通して出されました。
 京都府第6期障害者福祉計画では、府域全体として高齢化する障害のある人への支援体制の整備、親世代の高齢化、親亡き後の支援体制の整備、グループホーム等の居住環境・ハード整備、そして人材確保の対策が重要かつ喫緊の課題とし、医療的ケアを必要とする障害のある人が安心して地域で暮らしていくためには、保健、医療、福祉、教育等の関係機関が連携して支援していくことが重要としています。
 私は2020年6月定例会で、京都府北部にも亀岡にある花の木医療福祉センターのような、重度障害児者の入所施設の早期の整備を求めました。長谷川部長からは
「医療型短期入所の拡充や、医療ニーズに対応できるグループホームの整備など、支援体制の充実を検討していく」
と答弁をいただいております。

 そこで伺います。北部地域に医療的ケアが必要な重度の障害児者が入所できる施設整備の必要性、要望が高まっていますが、現在までの具体的な取り組み、検討状況はいかがでしょうか。
 京丹後市では、2021年9月10日に地元障碍者団体協議会や市民団体など10団体が参加し、「京丹後市にどんな障害のある人も暮らすことができるグループホームをつくる会」が発足し、建設のための募金活動が始まりました。京丹後市内のグループホームは7ヶ所。障碍者事業所に通う人は約370人で、グループホームの定員は57名、15%の人しか利用できていません。親の高齢化や自立の一歩として入所を希望しても入ることが難しい状況であり、中でも医療的ケアが必要な重度障害の方が利用できるホームはなく、市外や遠方の施設・病院に入るしかありません。久美浜病院のショートステイ等を活用して日中活動は作業所で仲間たちと暮らすN君は、「障害があっても生まれ育った地域でくらしたい」と1日も早い整備を求めておられます。

 そこで伺います。京都府保健所も、自立支援協議会の場や現場の相談にも対応されていると承知しています。取り組みの進捗状況と課題についてお聞かせください。
 また、グループホームの整備はこの数年間、全府で毎年1ヶ所程度に留まっているのが現状で、現場からは府の補助金の増額を求める強い要望があがっています。また、京都府として、看護師加配のための独自措置を打ち切ったことなども大きな影響を及ぼしていると伺いました。独自の看護師確保対策支援の制度の創設をふくめ、抜本的な予算の増額が必要と考えますが、いかがでしょうか。
 障碍者施設の慢性的な人員不足の解決、専門的人材の確保のために対策強化が求められています。ケア労働者の低賃金問題は長引くコロナ禍でますます深刻になっていますが、政府が実施した福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金事業はまったく不十分であり、対象事業所が限られており、相談支援事業は対象から外れています。金額も月に9,000円の引き上げにとどまり、依然として全産業平均から約60,000円から70,000円低く、現状の改善にはほど遠いのが実態です。事業所の判断で福祉・介護職員以外に賃上げが可能ですが、常勤換算での少ないパイを分け合うこととなり、9,000円の賃上げなど全く届いていません。すべての事業所で働くすべての職員を交付対象にし、金額を大幅な増額すること、10月以降も国費で継続していくことが重要と考えますが、いかがでしょうか。
 国においては障害者総合支援法改正時期を迎えており、この秋に法案提出に向けて議論がすすめられています。国と自立支援法違憲訴訟原告団が結んだ「基本合意」、障害者制度改革に基づく「骨格提言」の実現を反映する法案にし、応益負担をなくし、報酬の成果主義・日払い報酬をあらためること、介護保険優先原則の撤廃が必要です。京都府としてもこうした立場から国へ意見要望を上げるべきですが、いかがでしょうか。

 次に、教育長におたずねします。 今年度から府立特別支援学校の医療的ケア児の安心安全な通学環境を確保する、医療的ケアサポート事業がスタートしました。私はこれまでから、丹後圏域での移動支援モデル事業の取り組みを紹介し、その成果を踏まえて府下全域での実施や実態に即した取り組みを要望してきましたので大変喜んでいましたが、いまだ本格実施をできない状況であり、モデル事業も中止になって親御の大きな負担になっています。取り組みの現状と課題についてお聞かせください。ここまで答弁をお願いいたします。

○西脇隆俊知事  障碍者施設の充実についてでございます。
 京都府北部におきましては身体障害のある方の数は減少してきておりますが、高齢化が進み医療の必要度が高まってきております。また介護する方の高齢化も進む中、医療的ケアを受けながら生活できる施設への入所ニーズに対応していくことが課題となってきております。京都府では北部地域の医療資源の状況を踏まえた上で、こうした入所ニーズに対応するため既存の医療機関の協力を得て、入所者に医療的ケアを提供する比較的小規模な施設を市町村と連携して整備してきており、北部地域においては令和3年度以降に 40名分の整備を図ったところでございます。
 引き続き市町村と連携をし、医療的ケアを必要とする方々が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、地域の支援体制の整備を進めてまいりたいと考えております。
 その他のご質問につきましては関係理事者から答弁させていただきます。

長谷川学・健康福祉部長  京丹後市におけるグループホームの整備状況についてでございます。
 京丹後市では、地域の団体が令和6年春の開設を目指し、医療的ケアを必要とする方が利用できるグループホームの整備を計画しているところですが、施設運営に必要な専門的知識を持つ人材の確保が課題であると伺っております。京都府と致しましては、施設基準等に関する助言や整備費として活用できる制度の情報提供などを行うとともに、現在実施している医療的ケアに従事する職員を対象とした在宅療養児支援連携研修などによりさらなる人材育成に努め、この計画を支援してまいりたいと考えております。
 次に看護師確保対策も含めた予算の増額についてでございます。
 看護師確保対策を含め障害福祉サービスにつきましては、障害者総合支援法の枠組みの中で継続的かつ安定的に提供すべきものであり、京都府としましては障害福祉サービス報酬の充実など、引き続き国に対して必要な改善を求めてまいりたいと考えております。
 なお国に先駆け本府独自におこなってきた看護師加配等の補助制度については、平成30年度の国の報酬改定において看護師の複数配置に加算制度が拡充されたことから、短期入所の拡充に向けた補助制度に組み換えるなど、社会的ニーズに対応した充実を図ってきたところでございます。
 またグループホームを含めた障害福祉施設の整備につきましては、市町村が主体的に関わるものについて国や府の補助金などにより必要な支援をおこなっているところであり、地域が必要とする施設整備を進めるために十分な財源措置を、引き続きに応募してまいりたいと考えております。
 次に福祉・介護職員の処遇改善についてでございます。
 障害福祉サービス事業所の福祉・介護職員の処遇改善につきましては、国に対する府の要望も反映された結果、平成21年度以降福祉・介護職員の給与が月額約37,000円引き上げられたほか、職位・職責に加えて、職員の経験や技能に応じたさらなる加算措置が設けられたところでございます。また本年2月から9月までは福祉・介護職員の処遇改善臨時特別交付金により、月額9,000円程度の給付の給与の引き上げが図られたほか、10月からは報酬改定によりこの引き上げが継続されることとなっております。
 京都府と致しましては、国に対して対象職種の拡大や給与の引き上げを含む報酬の改善を要望し、引き続き福祉・介護職員の処遇改善に努めてまいりたいと考えております。
 次に障害者総合支援法の見直しについてでございます。
 議員ご指摘の通り、平成30年に改正された障害者総合支援法は、現在社会保障審議会障害者部会において見直しの議論が進められているところでございます。京都府と致しましては、法改正にあたってはこれまでの事業の取り組み状況を踏まえ、実施主体である地方と十分に協議を行うとともに、障害のある方が利用しやすくかつサービス提供事業者が将来にわたって安定した運用を行えるよう、引き続き国に対して要望をおこなってまいりたいと考えております。

前川明範・教育長  医療的ケアが必要な児童生徒への通学支援についてでありますが、この間事業を始めるにあたって保護者にご意向を伺い、先月末までに9名の利用希望があったところです。現在1人1人の状況を踏まえた通学計画や支援内容等について、保護者・主治医・車両事業者及び、看護師等と最終調整を進めており、議員ご紹介の丹後圏域の生徒も含め6月から順次開始できる見通しでございます。
 地域によっては車両事業者や看護師等の確保が課題であるため、関係機関と連携して情報を収集・提供することが必要だと考えております。府教育委員会と致しましては引き続き本事業の円滑な実施に努め、医療的ケアが必要な児童生徒への通学支援の充実に取り組んでまいります。

○島田敬子議員  ご答弁ありがとうございます。
 教育長に医療的ケア児の通学支援事業について昨年の対象児童生徒は19人もあるのに、申請されたのは9人のみということで、京都府の事業のガイドブックを見ますと提出書類も多く、福祉タクシーの確保、看護師確保の細かな事業者との調整は保護者責任になっております。なので進まない。現場にコーディネーター置き、保護者に寄り添った対応を行
うべきだと考えますが、いかがでしょうか。明確に今の課題についてお聞かせください。
 それから施設の整備について、北部の入所施設の必要性について再度明確な答弁を求めます。

○西脇隆俊知事  先ほど申し上げましたけれども、やはり高齢の方が増えたということで、医療的ケアに対するニーズが高まっていることが十分認識しております。ただ北部地域におきましては医療資源が非常に乏しいことから、医療機関が運営するような大規模な施設整備はなかなか難しいと考えておりまして、われわれといたしましては、医療的ケアを必要とする重度の障害者を受け入れる施設としては、比較的小規模で障害福祉サービス事業者が整備運営可能なグループホームを整備してきておりまして、この点につきましては引き続き市町村と連携しまして、医療的ケアを必要とする方々が住み慣れた地域で安心して暮らせるように、努力をしてまいりたいと考えております。

前川明範・教育長  島田議員の再質問にお答えいたします。
 対象となる生徒が19名程度いらっしゃいましたが、現在9名であるということについてでございます。事業開始にあたりまして、通学時に医療的ケアが必要なため保護者送迎となる本事業の対象の児童・生徒の保護者全員に、3月下旬から4月上旬にかけて各学校から制度の説明をいたしました。5月末までに9名の方が事業を希望しておられます。引き続き保護者による送迎を希望されているケース等もあるため、保護者の意向を十分に確認のうえ、今後も本事業の周知と理解促進を進めてまいります。
 またこれまで時間が非常にかかっている、手続き等の問題ではないかという課題面についてでございます。議員ご紹介の丹後の生徒さんについてでございますが、昨年までモデル事業を活用していただいておりました。昨年は片道のみを実施しておりまして、また送迎につきましては保護者の車両を事業者の登録車両として使用していただいておりました。
 今回安心サポート事業ができましたことにより、保護者からは往復の希望が、また回数も増やした上で、ございました。また、同事業者で事業所の車両を手配することといたしておりますので、事業所あるいは看護師の確保等も含めて、丁寧に調整を図っているために6月開始になったところでございます。
 書類等の関係については、保護者がなかなか分かりにくいというお声もございますので、しっかりと丁寧に私どもサポートした上で、事業を円滑かつできるだけ早くスタートできるように取り組んでまいります。

○島田敬子議員  医療的ケアサポート事業について丁寧に対応はいいのですけれども、例えば福祉では利用者との調整をやるケア・マネが居るように、学校もしくは教育委員会が責任をもって調整する仕組みでないと、保護者の自己責任ではなかなか解決できないという点も踏まえて提案をいたしております。通学も教育の一環であります。きちっと保障すべきであるので指摘をしておきます。頑張っていただきたいと思います。
 北部地域の入所施設について、グループホームは検討しているようなことでありましたけれども、京丹後市の具体例を紹介しましたように、京都府の計画は実態に合うものになっていません。見直しが必要と私は考えます。
 先ほど自民党の荻原さん(荻原豊久議員)がおっしゃったように、これ是非現場にも行っていただいて、これは国だ、これは市町村だって言わないで、京都府の独自の努力も求めておきます。現場の声を真摯に受け止め基盤整備を急ぐべきです。看護師加配のための予算拡充についても求めておきたいと思います。
 障害者総合支援法の見直しについては、障害がある当事者が社会の対等な一員として安心して暮らすことができるように、特に応益負担制度を導入した自立支援法の廃止など、障害当事者の声が反映されたものになるよう国に強く求めていただきたい、指摘・要望をしておきたいと思います。

 次に、香りの害、いわゆる「香害」と化学物質過敏症対策について伺います。
 全国の保険医勤務医10万人余が参加する全国保険医団体連合会発行の月刊誌に、「香料」にひそむ健康リスクに関して特集記事が掲載されています。
 1990年代には新築住宅でシックハウス症候群の問題が表面化し、さらに近年は柔軟剤や消臭剤などの香り付き製品による「香害」に苦しむ人々が出てきた。医療者として化学物質による不調を見極めるために何が必要なのかを考えるというものです。
 その中で、稚内北星学園大学前学長の斎藤吉広さんは、『化学物質過敏症』の原因は、『過敏』にあるのではなく、『化学物質』の方にある。日用品の使用が有害物質の暴露もたらすという特性から、市民同士の対立として現れがちだが、製造企業が生み出す汚染物質による『公害』に他ならない。発症者は身体の健康と安全を脅かされるだけでなく周囲の無理解によって孤立し、学校や職場といった生活基盤を失ってしまう事もある。この事態に製造企業に加えて行政やメディアはどのような役割を演じているであろうか、と問題提起をしています。
 実際、親子3人が化学物質過敏症で苦しんでいる女性は、
「なによりも、今、苦しんでいる患者から、どれほどの症状やどれほどの不自由があり、深刻な状態にあるのかをしっかり聞いてほしい、そして、必要な事を一緒に考えてほしい。「前例がないからよくわからない、十分解明されてない病気だから」と手放されてしまうと、患者は必要な医療も受けられず、学校や仕事にも行けず、社会生活も参加できず、周囲の理解を得る事もままならないまま孤立して暮らしていかなければなりません。それほどまでも深刻な疾患である事をまずは知ってもらいたい。相談にのって頂ける場所がほしい。」
と言われました。化学物質過敏症の方々がおかれた現状を端的に示しています。

 2021年9月本会議でこの問題を採り上げ、対策の強化を求めました。長谷川部長からは「国の動向を注視していく」との答弁でした。2月の国会では岸田首相が「必要な研究は進まなければならない」としたものの、後藤茂之厚生労働大臣は、発症メカニズムが未解明で、「診断基準や治療法は存在しない」などと従来の姿勢を変えないなど、遅々として進みません。
 京都府は、国と同様に、「確かなエビデンスが無い」という立場です。府消費科学相談センターがSNSで発信されたほかは何ら取り組まれていないのは残念です。

 そこで伺います。まずは化学物質過敏症の正しい理解と啓発が重要ということで、啓発強化に乗り出し、独自にホームページに掲載したところは全国20を超える都道府県にのぼります。香料自粛を呼びかけるところもあります。京都府でも早急に活動の強化を検討すべきです。いかがですか。
 相談窓口は、保健所や府消費生活安全センターとなっていますが、患者さんは「保健所の難病担当のかたでも「私はよくわからない。申し訳ない」と言われ、消費者生活安全センターでは「こちらは詐欺や商品トラブルが主な仕事」と、どの窓口でも責任ある対応ができていないのです。どのように改善されますか。伺います。

 次に、化学物質過敏症の児童生徒の学ぶ権利を保障する点についてです。5月27日、CS青空ネットワークの皆さんが京都府教育委員会に対して、化学物質の影響を受けやすい子どもたちのために、学校での啓発や相談対応ができる体制の確立、安心して学べる環境整備などを要望されました。
 私は、昨年、与謝野町の小学校で、化学物質過敏症の子どもたちのための専用の教室を作られたことを知り、伺いました。その際、専用教室を利用する4年生と1年生の兄弟2人から、手紙をもらいました。
「僕は困っていることが3つあります。1つ目は消毒です。どんな症状が出るかというと頭がくらくらしたり、考えられなくなるんです。2つ目は香りです。頭痛がします。3番目は、農薬や除草剤です。避難しないといけないくらい、えらくなります。鼻血が出たり頭がくらくらしたり、のどが苦しくなります。だから今言ったものを減らしてほしいです」
 1年生の弟さんは
「4歳から病気になりました。除草剤で咳が止まらなくなったり、のどが痛くなるんです。農薬で頭が痛くなるので車でお山に避難します。するとましになるんです。強い香りで頭が痛くなったりものを壊したくなるんです。友達の教室で勉強できないんです。でもおひさま3組ができていけるんです。農薬やお薬などを少しづつ、優しいものにして欲しいです。いいにおいを少しでも優しいのに変えてほしいです」
と。お母さんも数年前に発症し、近所で農薬を散布される情報があると、家族で高台に避難する生活を続けておられます。子どもたちは、新型コロナウイルス対策で消毒が増え、1日1〜2時間しか学校に行けなくなりました。ご両親が根気強く学校と相談された結果、町教育委員会が予算を付け、専用の教室が作られました。それまで、屋根の無い中庭にテントと机を置き、1人で勉強していた弟さんは、1日3時間ほどは教室に入ることができるようになったとのことです。
 また、この春、府立高校に入学したA子さんは、学校の配慮で別室での入学試験を受け無事合格しました。今は、初期症状で反応する物質も少ないのですが、柔軟剤や合成洗剤の香りで体調が悪くなり保健室に避難し休むこともあります。個別配慮が少しずつある一方、教室への空気清浄機の整備や別室でのリモート授業などの環境は整備されていません。通学は公共交通を利用できないし、校外学習にも参加できません。

 そこで伺います。化学物質過敏症の児童生徒に対して、すべての学校で安心して学べる環境整備が必要と考えます。各学校におけるポスター掲示等と啓発の状況、個別支援を行っている人数や専門の教室を確保している学校の数、保護者等への啓発活動などは、どのようになっているでしょうか。お聞かせください。
 昨年の9月定例会本会議で、府教育委員会の令和元年度調査で、化学物質過敏症の児童生徒が196人、全校種に在籍していることについて、橋本前教育長は
「アトピー性皮膚炎、食物アレルギーを持つ児童生徒と比較して、化学物質過敏症は大幅に少ない」
との認識を示されました。
 そもそも、化学物質過敏症の診察が可能な医療機関が少なく、病気そのものが周知されていないことから、子どもの患者数は正確にはわかっていないのが現状です。新潟県上越市の小学生約11,000人を対象にした2017年のアンケートでは、回答児童の12.1%に化学物質過敏症の症状が見られ、全国で初めて化学物質過敏症児だけの特別支援学級を開設されました。専門の医師からは、「潜在的な子どもの患者は膨大にいる」と警笛を鳴らしておられます。
 子どもたちは自分の症状の原因が分からず、「だるい」「学校に行くと疲れる」「なぜかおなかが痛くなる」などの理由で不登校になったり、記憶力の低下や集中力の低下などで、本が読めない、簡単な計算ができなくなるなど学習障害に悩んでいたり、退学し、学業の継続を断念した生徒もいます。 これらの実態をどのように把握されていますか。把握されていないのであれば、これらの子どもたちの声を聞くなどの実態調査を早急に行うことを求めます。いかがですか。

長谷川学・健康福祉部長  化学物質過敏症についてございます。化学物質により多様な症状を来す疾患については、現在国において原因などの解明などにむけた研究が進められているところでありますが、そのメカニズムは無解明な部分が多い状況です。一方で化学物質過敏症は身近に存在する柔軟剤や芳香剤の香りなどによって頭痛や吐き気等が引き起こされる健康問題であることから、まずは困っている方がおられることを周りの方に知ってもらうことが大切だと考えております。このため、京都府におきましては、香りで困っておられる方の配慮や理解を求める啓発ポスターを市町村や医療機関へ配布している他、SNSを利用して啓発をはかっております。
 また、京都府のホームページにおいては、化学物質等が原因で起こるシックハウス症候群の予防等についても情報発信しており、引き続き化学物質過敏症の情報発信のあり方について検討してまいります。
 次に、化学物質過敏症に関する相談窓口についてでございます。府民の方からの相談のうち、健康相談については保健所等の保健師が、消費者安全相談については京都府消費生活安全センターの相談員が原因と思われる化学物質の回避や医療機関の受診を勧奨するなど相談内容に応じ、対応しているところです。また、職員の専門的知識の向上をはかるため、厚生労働省の補助を受けて、一般社団法人「日本アレルギー学会」が実施しているアレルギー相談員養成研修会を毎年保健師が受講しております。
 京都府といたしましては、引き続き専門的知識を持つ職員が、府民からの相談に丁寧に対応してまいりたいと考えております。

前川明範・教育長  化学物質過敏症への対応についてでございます。学校では毎年揮発性有機化合物検査を行い、児童生徒の学習環境の維持に努めているところでございます。啓発等についてでありますが、柔軟剤等の香りにも化学物質が含まれていることから、全府立学校と市町教育委員会に対し、文部科学省など関係省庁が作成した、香りに関するポスターの掲示を求め教職員、児童生徒への理解を深めるとともに、メール等を通じて保護者にも周知をお願いしているところでございます。
 また、化学物質過敏症の児童生徒の実態につきましては、毎年、年度初めに保護者から提出していただく健康調査表により、把握しており令和2年度は京都市を除く府内公立学校に 0.1%~0.4%の割合で在籍しております。現在府立学校では、アルコールや石けん等の香りに過敏に反応し、配慮を要する生徒が2校に2名在籍しております。両校では、学校医や学校薬剤師の助言の元、担任や養護教諭と保護者、生徒が相談し、風通しのよい座席に固定したり、無香料の石鹸にするなど、生徒の状況に応じた対応を取りながら通常教室で授業を行っております。
 また、与謝野町の小学校では、化学物質に対して重い症状が現れる児童の症状をふまえ、特別な専用教室を整備し対応していると承知しております。京都府教育委員会といたしましては、児童生徒が学校で安心して過ごせるよう引き続き市町教育委員会と連携し、1人1人の状況に応じたきめ細かな対応に努めてまいります。

○島田敬子議員  長谷川部長の答弁は昨年と殆ど変わらず、先ほど指摘しましたように(相談窓口についても)たらい回しになってできてないんです。研修をされるというのであれば、もう少し強化していただいてスキルを上げていかなければなりません。それから、啓発ポスター、ホームページ、情報のあり方を検討していくということですので、ぜひお願いしたいと思います。シックハウスが問題になった13年前からホームページは変わっておりません。ぜひ改善を早急にお願いしたいと思います。
 教育委員会については、6月16日付で保健体育科から各府立学校長宛ての事務連絡が発信されて、保護者へのたより、保健指導をやるようにいったそうで、質問がきっかけになったなら大変うれしいです。6月12日の京都新聞ジュニアタイムズで、広がる「香害」と題して掲載されました。教育委員会も参考にしていただきたいです。
 つくば市では、2019年に幼稚園、小中学校にチラシを配り、給食エプロンは柔軟剤使用を控えるよう呼びかけています。安曇野市と安曇野市教育委員会では、4年前から「香害」の啓発や、柔軟剤など合成香料を多用した製品の使用自粛を呼び掛けています。現場で2名の個別対応は感謝されていますが、限界があります。府や府教育委員会のリーダーシップを求めます。
 5月の衆議院予算員会では、文科省が情報収集を検討するとし、ヒアリングを行うようです。子どもたち自身に直接聞かれた方が良いと思うんです。今しかない時間を過ごしています。大好きなお友達と一緒に勉強したり、遊びたいんです。子どもたちは環境を選べません。毎日学ぶ教室の空気は安全でなければなりません。実態把握のための調査はそれそのものが啓発にもなります。ぜひ、早急に実施を求めます。そして必要な対策を検討されるよう求めまして質問を終わります。