平成12年2月定例会 予算特別委員会 総括質疑―2000年3月17日〜島田敬子府議の質疑応答部分

◯島田委員  日本共産党の島田敬子でございます。3点について伺います。どうぞよろしくお願いいたします。
 介護保険制度発足まで2週間を切りました。実施直前になって、政府の場当たり的な制度の見直しや、また具体的準備作業が進むにつれて、矛盾が一層一気に噴き出しているところです。私は中心的問題に絞って質問をいたします。
 まず、第1点は、保険料・利用料です。
 府民の一番の心配は、やはり重い負担の問題であると考えます。府内自治体の65歳以上の介護保険料が示されました。平均額が 2,670円、老齢福祉年金受給者で税金が課税されていない世帯でも、月に 1,335円の保険料になります。月額34,000円の年金からも天引きとなるわけですけれども、延期があるとはいえ、
「ひどい話だ、年寄りは死ねということですか」
と悲痛な声が上がっております。これは、憲法に保障をされた生存権、生きていく権利さえ奪うものだと率直に私は考えます。知事はどうお考えになりますでしょうか。
 また、利用料軽減の特別対策については、書面審査を通じまして、例えば、訪問看護など、従来の医療系サービスについては軽減措置がないこと、また、ホームヘルプサービスについては、新しくサービスを受ける方は対象になっておりません。社会福祉法人が低所得者に減免を行う場合の助成措置についてですが、制度を採用するか否かは、市町村、法人次第になっております。これでは地域間格差を生じ、公平・公正とは言えません。
 また、今回の対策は激変緩和措置でありまして、真に低所得者に対する対策となっておりませんので、私はこの対策をそのまま市町村におろした本府の姿勢について、どんな検討をされたのか、調整をされたのか伺います。また、今後の抜本的な対策をどう講じていくおつもりかお聞かせいただきたいと思います。
 次に、介護基盤整備の問題ですが、在宅3本柱の問題で、西山府会議員団長が、必要量さえ見込めていない問題や地域格差の問題を御指摘したところです。これは(資料提示)ホームヘルプサービスについて見たものですが、市町村の実態調査に基づきまして、高齢者の利用意向や要介護度ごとに厚生省が示した標準サービスを 100%提供するとして換算をしました。どの程度、供給見込み量になるか、福祉圏域ごとに示してみましたけれども、このように厚生省は、制度スタート時で40%の提供体制の計画を持っております。このピンクの部分が40%になるわけですが、この計画を下回っております。船井・北桑田郡など中部圏域では厚生省計画の半分にもなっておりません。19.7%、5人に1人の希望にも応じられないという水準です。これらの問題について、あるいは原因についてどのようにお考えになりますか、見解を伺います。
 さて、介護激励金廃止問題ですが、多くの府民の皆さんから存続の強い要望が出されているところです。これまでも述べましたように、制度が発足をしても体制は万全ではありません。また、24時間、 365日の家族介護は続きます。長野県では「介護保険後も家族の精神的な負担は変わらない」。また、国の慰労金導入後も制度を残す茨城県では「在宅介護のおくれからも激励事業をなくすわけにはいかない」と継続をいたします。京都市も35,000円継続しますし、府下市町村の多くも存続をいたします。笠置町では、府の削減分の少しばかりですが、新たに制度を起こされます。
 再来年度から始まる国の慰労金問題ですが、今年1年間、在宅サービスを、ショートステイ1週間だけ、サービスを受けない人に、それも重度の人に慰労金を渡すというものですが、これは慰労金どころか保険料分を返すぐらいのようなものです。一生懸命取り組んでこられた町の担当者ほど「現実には、そのような人は存在しない。私の町では適用ゼロです」、こうおっしゃっておりましたし、絵に描いた餅です。どの点からも、本府の介護激励金の廃止をする理由にはなりません。激励金は精神的、肉体的負担の軽減とともに、経済的な負担の軽減になってきた側面もあります。70,000円といえば低所得者の保険料の2倍に相当する金額です。この際、介護激励金の存続、拡充を強く求めますが、いかがでしょうか。
 続きまして、子育て支援の問題です。
 児童手当を就学前まで引き上げる予算が提案をされておりますが、今回の案は、子育て支援どころか「子育て増税」という代物です。このグラフは(資料提示)年収 600万円のサラリーマン世帯での増減税の額を示したものですけれども、子供の数が多いほど増税になります。児童手当増額分を、昨年つくったばかりの子育て減税、これを廃止をする、年少扶養控除を切り下げる、このことによって生み出すからであります。少子化対策に逆行するものだと我が党の議員が国会で質問をいたしましたけれども、大蔵大臣も厚生大臣もお認めになりました。本府の場合は、15歳までの子供の数が42万人ですが、新たな支給対象児童数は7万人、それを差し引きますと35万人の子供の世帯が増税対象になります。
 さて、私は、子育て支援として府民が何を望んでいるのか、平成8年度に本府が行った府民意識調査を見てまいりますと、「保育の充実」「経済的負担の軽減」「雇用環境の整備」が中心的に要望されているところです。
 今回、国制度に満たない小規模学童保育に補助が実現をいたしまして、母親の一人として大きな喜びです。過疎地域では10人以下のところも残されておりますし、その数もわずかでございますから、この際、柔軟な運用を含めまして10人未満のところにも拡充をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 また、私自身の経験から、子育てをしながら働き続けるには、やはり働きやすい労働環境を整える、家族がせめて一家団らんを過ごせる時間を持てる労働時間にすることだと思います。本府のおひざ元の府立医大、伺いましたけれども、医大病院で看護婦さんが「夜勤でも残業が恒常化をしている。なのに人を減らす」。さらに、養護学校の職場では、自分の体さえ壊すような先生の実態をお聞きしましたけれども、ここでも先生を減らす。これでは安心して子育てをできる環境にはなりません。現場の実情を無視したリストラ、人員削減計画はやめるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 最後に、規制緩和の問題です。
 現在、政府の規制緩和推進3ヶ年計画が進められておりますが、酒屋さん、米屋さん、理美容、タクシー業界などから怒りの声が広がっているところです。大型店や量販店の進出で地域の小売店の廃業が相次いでいることは知事も御存じのとおりです。さらなる規制緩和は、これらの事業者の廃業を加速し、地域経済の空洞化と地域そのものの崩壊につながりかねません。
 お酒屋さんの場合、酒販免許制度の規制緩和が段階的に進められ、従来の距離基準の廃止に続いて人口基準も廃止の予定です。お酒は、至酔性を持つことから、未成年者の飲酒あるいはアルコール中毒など、さまざまな社会問題を生み出す特別な飲料でありますから、市場万能ではなく、適切な社会的な規制のもとに置かれるのは当然ではないでしょうか。アメリカ、欧米諸国でも、酒類を完全に自由販売しているところはありません。
 理美容業はどうでしょうか。お客さんの頭髪や肌にじかに触れる、薬品を使う、こういうことから、衛生面においても確かな知識と技術が必要です。だからこそ業務独占の規定が設けられてまいりました。免許制度の廃止は、この分野で公衆衛生が野放し状態になります。
 私は、事業者の営業と地域経済を守るためにも、住民の安全と健康を守るためにも、これら業種の規制緩和を中止するよう国に対して発言すべきときだと考えます。知事のお考えをお聞かせください。
 以上でございます。

◯荒巻知事  島田委員の御質問にお答え申し上げます。
 介護保険についてでありますが、高齢者の保険料につきましては、市町村の条例により所得に応じた額を設定することとされております。老齢福祉年金を受給されている方の負担に関しましては、いろいろ御指摘がございましたけれども、世帯として見ればいろいろ他に収入があるケースもありますし、また生活保護制度などもございまして、御指摘のような極端な事例はまず生じないものと考えております。
 なお、高齢者の保険料につきましては、御承知のように、この4月から半年間は徴収せず、10月から1年間は半額とする特別対策が行われることとなっております。
 また、利用者負担の軽減につきましては、所得に応じて3段階の負担上限額が設定されるとともに、特別対策として、現行の措置制度や医療保険制度などとの均衡を踏まえ、現にホームヘルプサービスを利用されている低所得の方の負担軽減や、社会福祉法人による減免などの対策が講じられたところでございます。
 京都府といたしましては、実施主体となる市町村や社会福祉法人に対して財政支援を行うことといたしておりまして、今後、具体的な実施状況に応じて適切な対応に努めてまいりたいと考えております。
 介護基盤につきましては、高齢者保健福祉計画に基づき、積極的に整備を進めまして、目標をほぼ達成できる見込みでございまして、地域間で極端な格差は生じていないところでございます。
 過疎地域等におけるホームヘルプサービスにつきましては、民間事業者が参入しやすいよう介護報酬の加算措置がなされたところでございまして、また京都府といたしましても、ホームヘルパーの養成研修の実施や民間活力の導入などによって、市町村とも連携しながら必要なサービスが確保できるよう努めてまいりたいと存じております。
 また、寝たきり老人等介護者激励事業につきましては、これは介護保険制度ができていない時代での考え、政策でございますし、また介護保険制度の実施によりまして、さらには介護保険用品の支給などに助成する高齢者介護予防等支援事業などが創設されました。そういう中で、家族の方々の心身の負担を軽減する施策に積極的に取り組むことといたしておりまして、これらの施策の充実により対応することとしたところでございます。
 子育て支援についてでありますが、京都府におきましては、子供が健やかに生まれ育ち、みんなで子育てを支える社会を目指して平成9年1月に策定いたしました「きょうと未来っ子21プラン」に基づきまして、「京都府子育て支援を考える懇話会」の御意見もいただきながら、市町村や関係機関とも連携して各種施策の積極的な推進に努めてきたところでございます。この間、府民ニーズに対応した保育を推進するために、低年齢児の保育や延長保育の充実を図るとともに、子育てに伴う経済的負担を軽減するために、乳幼児医療給付事業の充実や私立幼稚園同時在園保育料減免事業への助成などを行っているところであります。
 さらに、子育てをしながら働き続けることができる環境の整備を図るために、国の京都女性少年室とも連携をして、各種セミナーの開催や労働ニュースなどの発行などにより、育児休業制度などの普及、啓発に努めているところであります。
 今後とも、保健福祉を初め、労働、教育などの分野の連携を進める中で、社会全体で子育てを支える環境整備の促進に一層努めてまいりたいと考えております。
 児童手当につきましては、本会議の代表質問で西山議員にもお答えいたしましたとおり、京都府におきましても、この制度が子育て家庭の経済的負担の軽減を図る重要な事業と位置づけまして、従来から、制度の充実について国に要望を行ってきたところでございます。また、現在、国会において、児童手当法の改正に向けての審議の最中でございますので、そこで十分な論議が行われることを願っております。
 規制緩和についてでありますが、政府の規制緩和政策につきましては、平成7年に規制緩和推進計画の策定以来、順次取り組みが進められますとともに、行政改革推進本部の規制改革委員会において引き続き検討が進められていると承知をいたしております。私の見解は、本定例会の代表質問でもお答えしましたとおり、行き過ぎた緩和によって弱肉強食で弱者が不公正に排除されることがあってはならないと考えております。一方、業務独占等も含めまして、規制緩和は時代の流れでもありまして、こうした中で、創意工夫を凝らして経営を進めていただくことが極めて重要でありまして、京都府といたしましては、こういった観点に立って、中小小売業などの皆さんの積極的な取り組みに対しまして引き続き支援をしてまいりたいと存じております。
 以上であります。

◯島田委員  まず、保険料の問題ですけれども、34,000円の年金から 1,300円も引くというこの問題は、生きていく権利さえ奪うものではないかということについてお答えがありませんでしたけれども、そんな例はないとおっしゃいましたけれども、あるんですね。1人世帯で、年金だけではなくて、例えば収入が 160万ですね、今、基準が。月々15万円の暮らしですから、本当に大変なんです。この後、医療費の値上げも予定をされているし、本当に、介護だけではないわけですからね。私は、お年寄りのこうした深刻な悲鳴にこたえるべきだし、抜本的な国の対策を、予算措置も含めて、ぜひ知事からも求めていただきたいとお願いをしたいと思います。
 利用料の負担の問題についてお話がありましたけれども、格差があるのではないかということについてはお答えをいただきませんでしたが、ありますでしょう、やっぱり。私の友人が看護婦をしておりまして、訪問看護をしてるのですが、せっかく床ずれがよくなりまして、やっと治った、ところが「利用料が高いのでもう来ていらない」と、こう言われたと、途方に暮れているわけです。こういう声にどうこたえるのか、再度お答えいただきたいと思うのです。
 社会福祉法人の減免措置の対象は本当に救貧施策にとどまっておりまして、厚生省の予算を見ましても、大変少ない中身になっているのです。市町村任せ、事業者任せではなくて、これが必要だとするなら、やはり公平に利用料の軽減をしていただける、そういう制度にまで改善をする。市町村の声を聞いて、国にも申し上げるし、京都府としても積極的な対策をとるというのを私は求めているわけです。この点についていかがでしょうか。
 介護基盤整備の問題ですが、必要なサービスは提供したいとおっしゃいましたので、引き続き頑張っていただきたいと思うのですが、住民の立場からしてどうか、市町村の立場からしてどうかという点で見ていただきたいと思います。美山町など幾つかの自治体が赤字覚悟で頑張っておられますが、ここへの支援を抜本的に強めることを要望いたします。
 時間が参りましたので終わります。

◯荒巻知事  島田委員の再質問にお答えいたします。
 いろいろおっしゃいましたけれども、かなり理論的な数字でおっしゃいましたが、具体的には、この制度がまだ施行されておりませんので、4月1日以降、いろんなケースが出てくると思います、おっしゃった点以外にもですね。だから、そういうものを全部、実際出る中で、我々としては、市町村とも協力しながら、また国に物申すべきことは国に物申しながら、できるだけ、この介護制度が国民、住民のために定着した制度になれるように今後とも努力していきたいと、このように思っております。

◯島田委員  ぜひ、一人のお年寄りも地域に置き去りにならないように頑張っていただきたいと思います。
 規制緩和の問題、子育て支援の問題、また引き続き要望もさせていただきます。
 終わります。