◯島田敬子議員 日本共産党の島田敬子でございます。私は高齢者保健福祉計画にかかわる問題と大型店問題について、知事並びに関係理事者に質問をいたします。
まず、京都府高齢者保健福祉計画にかかわる問題について伺います。
定年を間近に控えたある日、奥さんが脳卒中で倒れたため、退職をして介護に当たられている御主人は「食事ものどを通らない」と疲労こんぱいの様子でした。またある家庭では「特別養護老人ホームを申し込んだが入所できず、そのうちに痴呆症が進んでとうとう老人病院に入院したが、月に13万円もかかり、不景気で商売も芳しくない中で大変だ」と涙ぐんでおられました。寝たきりや痴呆症のお年寄りを抱えた家族の苦しみは想像を絶するものがあります。高齢化社会のためと言って消費税は導入されたけれど、医療や福祉はよくなるどころか悪くなっている、年寄りは死ねということかと嘆きの声が多く聞かれるのです。高齢者保健福祉計画がまだできて1~2年とはいえ、このような嘆きの声はほとんど減っていません。
国民健康保険中央会が今年5月1日付で発表しましたアンケート──これは全国で比較的進んでいると言われる自治体の調査ですが、その結果によると、国のゴールドプランに基づいて全国の市町村が策定をした高齢者保健福祉計画について、当の市町村の過半数が「達成は困難」と考えていることが明らかになりました。そして、達成のために何が必要かについて、市町村の8割が「国、県からの財政補助」を挙げています。また、保健婦さんの9割近くが、達成困難の理由に「マンパワーの不足」を挙げています。私は、府下の市町村関係者からも同様の声を伺いました。
そこで、伺います。知事は、昨年6月の定例会で「実施主体である市町村に対する支援を推進することを計画推進の1つの柱にする」と答えておられます。ほとんどの市町村が「計画達成には国、府県の財政援助が必要」としている中で、市町村の要望に十分こたえられるよう国への要望とともに本府の援助を行うべきと考えます。知事の見解を伺います。
次に、計画の1つの柱であります在宅サービスのうち訪問看護事業についてお尋ねいたします。
訪問看護事業を進めるために市町村に置くことになっている訪問看護ステーションは、本府の計画では全体で89ヶ所、京都市を除きますと49ヶ所となっています。6年度末で10ヶ所、中丹、中部、相楽では1ヶ所もありません。平成3年度から訪問看護モデル事業が開始をされ、3年間の試行が終了したところは、6年度末で7ヶ所、現在進行中が2ヶ所となっています。このうち久美浜町、伊根町では、町立の訪問看護ステーションが設置をされて効果を上げています。そのほかの5ヶ所はどうなっていますか。まずお尋ねしたいと思います。
事業を進めている久美浜町でも
「現在の療養費では人件費は賄えない。せめて人件費が出るよう療養費を改定してほしい」
「看護婦が療養費の支給事務、カルテの整理、統計資料の提出など事務に手が取られて、今看護婦2人で訪問しなければならない重症の人がふえているのに十分対応できない。事務職員をぜひつけてほしい」
と要望されています。昨年6月定例会で、当議員団が、運営の助成拡充や看護婦、事務職員の増員を求めたのに対して、理事者は「往診料の改定など社会保険診療報酬においてその役割を踏まえた措置がとられている」と拒否をされましたが、実態と全くかけ離れていることは、この久美浜の例でも明らかです。設置された訪問看護ステーションを維持するためにも、療養費の改善を国に要求するとともに、本府独自に運営費補助をすべきと考えます。また、未設置の市町村で進まないのもこのことが大きな原因であることは明らかです。設置を促進するためにも、療養費の改善と本府の補助が必要と考えますが、いかがですか。知事の見解を伺いたいと思います。
次に、高齢者の住宅改造助成制度の創設についてお尋ねします。
体の不自由なお年寄りがひとりで浴槽で亡くなっていたという事例や、つまずいて骨折をして寝たきりになる、こういったケースは後を絶ちません。これは、お年寄りが安心して住める住宅になっていないことが原因です。また、家族やホームヘルパーさんが介護をするに当たっても、腰を痛めたり、体を壊して限界状態になり、やむなく施設に入所させなければならなくなったり、病院で一生懸命リハビリをしてせっかく自分のことが自分でできるようになっても、自宅に帰りますと不自由な家屋の条件の中で在宅生活を強いられ、また機能が元に戻って病院に逆戻りをする、こういった事例もよくあります。
今月13日、総務庁は「高齢者の住宅と生活、環境に関する調査結果」を閣議に報告をいたしました。それによると「高齢で体が弱くなっても68.4%の人が自分の家で住み続けたいと望んでいる一方で、高齢者に配慮した設備が自宅にないと答えた人が80.2%にも達している」となっています。健常な人の生活の中でも住みやすさを求めて住居を改善したり、工夫もさまざまにするものですが、高齢者や障害者にとってはなおさらであります。人間の基本的な欲求であります例えばお風呂に入ること、用を足すこと、移動ができるという、このような最低限のことを自分の力でできるということは大変な喜びです。少し病気が進みまして家族や他人の手を借りなければならなくなってもこれらが容易にできる、このことも同様です。そのために、住宅改造はまさに人間らしく生きていくためのものです。
住宅改造をすると、ホームヘルパーの訪問必要回数が減る、介護が楽になる、施設に入所しなくても済むなど、本人にとっても介護者にとっても大変よい結果をもたらしています。また、高齢者住宅の整備と介護費用の節減効果の研究をしている建設省建設研究センターは「2025年までに約8兆円の高齢者住宅を投資した場合、全体では約20兆円の介護費用の軽減が期待できる」という試算も発表いたしております。
高齢者のための住宅改造に対する本府の補助制度について、知事は当初「融資制度で対応する」と拒否をされました。しかし、この融資制度は所得の低いお年寄りにとっては返済の負担の上に、面倒な手続や保証人が要るなど、大変利用しにくい制度です。府下の市町村の多くが補助制度をつくる中で、知事も補助制度を認めざるを得なくなり「ふるさとの高齢者福祉推進事業」の中で対応されることになり、現在はこの制度を活用するとされています。しかし、これでも不十分であります。1自治体当たりの補助の最高は250万円と少なく、しかも、入浴サービス、給食サービス、洗濯、ふとん乾燥サービスなどの施策も含んでの予算であり、住宅改造助成に使われる保証はありません。平成3年に「すこやかすまい改修助成制度」という高齢者のための住宅改造助成制度をつくった舞鶴市では、6年度で1,570万円に達し、250万円すべてを住宅改造に回したとしても、市の持ち出しは1,320万円にもなります。本当に高齢者のための住宅改造を進めるためには、この事業だけではなく、市町村の要求にこたえられる補助制度をつくるべきと考えます。知事のお考えをお聞かせください。
大阪府は、3年前に独自の補助制度をつくりました。その当時、大阪府内の市町村で制度をつくっていたのは1つか2つで、全市町村で実施できるよう誘導策として制度化されたそうです。本府では既に28の市町村が実施しているのに、いまだに拒否をしています。そればかりか、実施している市町村に対して「所得制限を設けよ」などと干渉・指導までしていますが、このような態度を改めて、お年寄りのための住宅改造を真に促進する立場に立つべきと考えます。
次に、私の地元右京区で問題になっております大型店の進出問題について伺います。
スーパー「ライフ」は、右京区太秦安井池田町に「太秦店」を計画し、既に大店法3条に基づく申請を今年の3月に出しています。計画によりますと、売り場面積は17,000m2で、近くの山之内京都ファミリーの2倍、北野白梅町のスーパーイズミヤの2.4倍で、計画どおりに進みますと京都市内でも8番目の大きさになります。この4月10日には、ライフが京都での第1号店として計画をしました中京「壬生店」に対して売り場面積6割カットの大店審決定がおりましたが、そのみずからの店とも競合をし、しかも大規模の出店計画に、地元商店街、住民の皆さんから
「余りにも無秩序な計画」
「小売店が生き残るすべがあるのか」
「交通公害で街が壊される」
と批判の声が高まっています。今回のライフ出店予定地近辺には、四条通りに京都ファミリー、帷子の辻にジャスコと厚生会があり、北野白梅町にはイズミヤと、今でもオーバーストア状態にあります。既に82年に京都ファミリーが出店した後、太秦横町、市川マーケット、西京市場、常盤センターなどが地域から消えてしまいました。地元で食料品店を営む方は
「息子を研修会にもやり、商店街の近代化計画を持って努力をしてきた。また、体の不自由なお年寄りにも大根1本、豆腐1丁でも配達するなど、地域の人たちと協力もしてきた。けれど、計画が強行されては生き残ることさえできなくなる」
と訴えておられました。
また、今回の計画は、商業者だけでなく、地元住民の交通、環境、生活環境、まちづくりなど府民生活にも重大な悪影響をもたらすものです。今回の出店予定地は国道162号線沿いです。右京区の道路環境は大変悪く、西小路通り、葛野通りの全面開通計画も進まない中で、南北道路としての基幹的役割を担っています。北清掃工場へのごみの搬入搬出、南北を結ぶ路線バスなど重要な生活道路であり、太秦映画村や嵐山、高雄などの観光名所も多く、観光道路ともなっております。現在でも朝夕の通勤時間帯や観光シーズンの渋滞もあり、計画どおりの出店となれば三条通りや新丸太町通りにまで渋滞が及ぶことが必至で、容易に予測できることです。密集する住宅街、狭い生活道路、通学路へ車があふれ出し、住環境の悪化は避けられません。また、予定地の北側は、文化ホールや地域体育館の建設予定地ですから、将来的にも車の乗り入れ台数がふえてきます。
ライフの計画では、みずからの営業実績に比べても、売り上げ予想額、来客予定数も少なく、あわせて呼び込む車の台数を少なく見積もり、確保する駐車場の数も京都ファミリー店、イズミヤ白梅町店に比べても極めて少ないなどむちゃくちゃな計画の内容で、住民説明会などでも大変不誠実な態度ですし、住民の皆さんの一層の不安をかき立てています。もとより、駐車場を確保したとしても、さきの道路事情からして大渋滞は必至であります。車公害から住民を守るために強い規制が必要です。我が議員団は、これまでも大型店進出に伴う交通環境、まちづくりの総合的観点から、宮城県の例を挙げて「大規模小売店の出店に伴う交通対策指導要綱」を早急につくることなどを求めてきたところですが、いよいよその必要性が明らかです。事業者に交通処理計画の提出を義務づけ、本府も独自に交通調査を行い、出店側に指導するための要綱をつくって対処すべきと考えますが、いかがですか。知事の見解を伺います。
第2に、スーパーライフの計画地は、京都市の都市計画で住居地域から第1種住居地域に変更が予定をされ、現在、都市計画審議会に提案をされています。ここでは3,000m2以上の店舗などは建築が禁止されることになります。この秋には府の審議会にもかかります。今後スーパーの建築を認めず、良好な住環境を守ろうとしようとする地域でのスーパーの駆け込み申請を認めるべきではないと考えますが、いかがですか。大店審に対してもこの立場から意見を言うべきであると考えますが、あわせてお答えください。
大型店についての規制が緩和されて、今、中小小売商店は壊滅的な打撃を受けています。通産省の昨年度商業統計によりますと、全国で小売店はこの3年間で10万5,600店も減りました。52年の調査開始以来、最も大きな減少率です。大阪府下の小売店に匹敵する店舗が3年間に消えたことになります。京都府下でも同様に2,030店が減少し、右京区に現存をする小売店とほぼ同数の小売店が消えたのであります。中でも、1人から2人の規模の家族や従業員で営まれる小規模小売店が最大の被害を受けていることが明らかになっています。
商店街や個人商店は単に社会生活物資を供給するだけではありません。対面販売を通じて地域づくりの土台となるコミュニティーの役割を果たしています。また、24時間その地域に暮らし、営みをしながら地域の世話役活動にも大変貢献をされ、祭りなど年中行事の中心にもなっておられます。人が住み、また住み続けられるまちづくり、高齢化社会を迎えるに当たって、お年寄りや障害を持つ人々が安心して買い物ができ、暮らせるよう、中小小売業者、消費者の利益を守り、住民が主人公のまちづくりの視点に立つことが必要です。無秩序な出店で小売店を弱肉強食の世界に追い込む規制緩和をやめるよう、この際、政府に強く要求するとともに、本府での大型店規制を検討すべきであります。自治体での独自の大型店規制をさせないとする政府の態度は、自治体に対する干渉であり、地方分権にも反するものです。規制についての知事の見解をお聞かせください。
本府は「商業基盤整備事業」や「魅力ある商店街づくり事業」を進めていますが、小売店、商店街あっての活性化事業であり、消えてなくなってはそれもできないのでございます。小規模小売店が加速度的に消えていき、商店街のあちこちが歯抜け状態になって、その潤いとにぎわいを失い、町全体が壊れていってしまいます。魅力ある商店街づくり事業など要望される商店街などすべてに対応できるよう、大幅な増額をすべきと考えますが、いかがですか。知事の御所見を伺いまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
◯荒巻禎一知事 島田議員の御質問にお答え申し上げます。
高齢者保健福祉計画についてでございますが、その目標達成のためには、サービスの実施主体であります市町村において計画の積極的な推進が図られるよう支援していく必要がございます。このため京都府といたしましては、市町村支援の推進を、先ほどお話しのように、府の計画の柱の1つに位置づけまして「あんしん介護の窓口」の設置をやりましたり、運営に対する助成やホームヘルパーの活動費、研修対策への助成や、さらに既存施設を活用したデイサービスセンターなどの整備事業への助成など、多くの京都府独自の助成措置を含めまして、各般にわたるきめ細かな支援措置を実施しているところでございます。
また、国におきましても、今年度から市町村、都道府県の計画達成を、財源確保を含め全面的に支援していくために新ゴールドプランがスタートしたところでございまして、こうした国、府を通じた支援措置により、計画は逐次着実な推進を見ていると認識をいたしております。
その他の御質問につきましては、関係理事者から答弁をさせていただきます。
◯道林邦彦 保健福祉部長 訪問看護と在宅ケアモデル事業についてでありますが、市町村におきます訪問看護等の在宅ケアの推進を図るため、平成2年度から開始し、昨年までに7町が事業を完了しております。このうち訪問看護ステーションに移行したものが2町、開設準備中または検討中のものが4町、医療機関による訪問看護を開始したものが1町となっておりまして、順調な移行を見ているところでございます。今後ともこの事業を十分に活用することにより、訪問看護ステーションの整備が一層促進されますよう市町村を支援してまいりたいと考えております。また、訪問看護ステーションの運営費につきましては、昨年度の診療報酬等の改定におきまして、一般の診療報酬の改定率をはるかに上回る格段の改善が図られたところでございます。
次に、高齢者のための住宅改造に対する助成についてでありますが、昨年度におきましては、御要望をいただいた市町村すべてに対しまして「ふるさとの高齢者福祉推進事業」による助成を行ったところでありまして、この事業を十分に活用し、積極的な事業展開を図っていただいております。さらに今後見込まれるニーズの増大に対応するため、今年度から予算の増額を図ったところでございます。
◯高見静治 商工部長 大型店問題についてでありますが、議員御指摘の大型店、仮称「ライフ太秦店」につきましては、いわゆる大店法第3条の規定に基づく届け出がされまして、現在地元説明が行われておるところでございます。あわせて、都市計画等の関係につきましては、京都市において調整が図られるものと考えております。京都府といたしましては、京都市、京都商工会議所とも連携をとりつつ、近畿通産局に対しましても地域の実情を反映した調整が行われるよう強く求めているところであります。
また、住民生活と密接に関係する交通、環境などの問題につきましては、庁内に関係部局や府警本部によります小売商業振興連絡会議を設置いたしまして、出店者等に対する指導等に努め、実効を上げているところでございます。今後とも地元市町村や商工会議所等と協議しつつ、出店者を指導する手法によりまして適切な対応を行っていくこととしているところでありまして、特別な要綱等による独自の規制については考えておりません。
なお、中小小売商業の振興につきましては、まちづくりとの整合にも十分配慮しながら、商業基盤施設等整備事業や魅力ある商店街づくり推進事業等の活用を図りますとともに、基金総額37億円の中小商業活性化基金や長期無利子の高度化資金などの活用によりまして、各種の振興策に取り組む商店街や小売商業者に対しまして積極的に助成し、要望にこたえているところであります。