人類史上でも稀にみる最悪の部類の厄難 SARS-Cov-2 ウイルスの COVID-19 パンデミックですが、この禍中にあっても国や京都府は北陸新幹線延伸という不要不急の大型開発を進めようとしています。南丹市美山町で『知井の新幹線問題を考える有志の会』が結成されて『美山町知井の新幹線問題を考える』というWebサイトを立ち上げるなど、敦賀-新大阪ルート建設がもたらす環境破壊や数多の災害にいち早く気づいて反対の声を上げる動きも出てはいますが、残念ながら府民のほとんどには深刻な事態が可視化されていないのが実情です。
週刊で発行している新聞《京都民報》では何年も前から北陸新幹線延伸問題をたびたび記事にされていますが、このたびご厚意で記事の転載を許可していただきましたので、まずは京都民報の記事を振り返ることで、北陸新幹線延伸建設の何が問題なのかを知っていただきたく存じます。
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◆考える北陸新幹線延伸
総工費2兆1000億円(試算)の北陸新幹線の敦賀−新大阪間の延伸(福井県小浜市から京都市−京田辺市を経て新大阪)計画で、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道運輸機構)はこのほど、概略ルートを公表。着工の前提となる環境影響評価(アセスメント)の一環である計画段階環境配慮書の中で示されました。府中部の南丹市から京都市内、南部を縦断する計画で、地下水や文化財、希少動物などへの影響をはじめ、自治体への莫大な財政負担が想定されます。山積みする問題点を特集しました。
●自然・地下水・文化財は…8割がトンネル、市街地は大深度工事
同ルートの8割がトンネル区間で、京都市の中心市街地や伏見区の酒造エリア、貴重な原生林が広がる南丹市の京都丹波高原国定公園内の『芦生の森』などはルートから外すとしています。
福井県と大阪府内は駅を直径5km、路線を幅4kmで示していますが、地下水や文化財などへの影響が懸念される京都府内は駅を12km、路線を4〜12kmと広めに設定されています。府内の対象自治体は、南丹・京都・向日・長岡京・宇治・八幡・城陽・京田辺の8市と久御山町の9自治体です。
配慮書では、地下水や文化財、動植物、騒音、振動、景観など13項目で、山岳部や都市部での影響を検討。地下水の利用状況の図では、京都駅周辺のルート上にあたる京都市周辺部で酒蔵28ヶ所、災害協力井戸614ヶ所が示されています。地下水への影響について
「トンネル区間(都市部)において、・・・〈中略〉・・・地下水に影響を及ぼすおそれがあると予測される」
とし、調査・環境保全措置を検討するとしています。特に京都市内部については、
「伏見酒造エリアを回避した区域を選定し、基本的に地下トンネルとするよう検討」
「京都市市街地の地下水への影響について、詳細な検討を行う」
としています。
文化財については、京都市内を中心に多数の埋蔵文化財や世界遺産などの所在が示され、
「対象となる文化財を回避する、またやむを得ず通過する場合は影響が小さくなるよう配慮する」
としています。
動植物や環境への影響についても、
「対象となる自然公園などを回避する、またはやむを得ず通過する場合は影響が小さくなるよう配慮する」
として、
「京都丹波高原国定公園のうち第1種・第2種特別地域に指定されている芦生の森を回避した区域を選定する」
としています。
京都市内の市街地は「大深度地下法」に基づいて、地下40m以深の地中を通ることを検討するとし、掘削発生土の受け入れ地を検討することや輸送での影響についても低減するよう検討するとしています。
同機構は、猛禽類の調査など対象の現地調査を行い、環境影響評価書を2022年にまとめる予定です。
《日本共産党の政策》
無謀な延伸計画は中止を!
・地方の疲弊に拍車、環境・景観壊す
・在来線の整備・拡充こそ
日本共産党京都府委員会は、北陸新幹線延伸計画を中止・撤回するよう求める見解を3次にわたって発表しています。
第1次見解(2016年3月)では、情報公開や徹底した議論を求め、第2次見解では、「無謀な無駄遣い計画」と批判し、府南部の公共交通充実などを要求。2016年12月に発表した第3次見解では、北陸新幹線延伸計画が
「莫大な金額をかけた、無謀で杜撰な計画」
「地域経済の発展にもつながらない」
として中止・撤回を主張しています。
第3次見解では、『延伸』計画などの新たな大型開発の方向は、『三大都市圏』への産業と人の集中をより加速し、地方の疲弊に拍車をかけるだけと批判。『延伸』計画やリニア中央新幹線建設「前倒し」の狙いは、自民・公明・維新による税金バラマキ、大型公共事業・『利益誘導』型政治の公然たる復活であることは明らかだと指摘し、府北部・南部のみならず、京都市内で進む大型開発計画とも連動し、京都の環境・景観を破壊するものだと強調しています。
また、並行在来線の経営分離や地元自治体の財政負担、住環境や自然破壊への影響など問題が山積みしていると指摘。住民の願いは、住民不在のルート決定ではなく、府内のJR線の複線・電化、バリアフリーの駅舎整備など、住民生活のための在来線の充実だとし、府民の暮らしや福祉、地域密着の公共事業を優先する政治へ転換すべきと求めています。