令和2年11月定例会 – 2020年12月9日〜馬場紘平府議の質疑応答  ※後半に北陸新幹線延伸・大深度地下の問題提起あります

○馬場紘平議員  日本共産党の馬場紘平です。通告している数点について、知事並びに関係理事者に質問します。まず、コロナ禍での地域経済振興、特に住宅改修への助成制度についてです

 この間、本府の中小企業関連団体を回ってお話をお聞きしてきました。新型コロナ(COVID-19)による影響が更に長期化し、地域経済への影響が深刻になる中で、国や府などの補助金や融資制度を利用してギリギリのところで事業を継続し、雇用を守っている実態がどの団体でも報告されました。
 同時に、第3波の広がりや補助金などが期限を迎えるなど、先行きが見通せない中、雇用調整助成金の特例の延長など、越年対策や中長期的な展望を描くことが出来る支援策の必要性が強調されました。京都府中小企業団体中央会が行った緊急アンケートは、こうした京都経済の実態を如実に表しています。88%以上の企業が「売り上げが減っている」と答え、その内訳は3割以上の影響を受けているとの回答が47%、1~3割減も含めると80%に上っています。また、国・府・市に求める施策についての項目では、各種補助金や助成金を求める声が約4割にも上っています。
 さらに、中小企業家同友会では、当初は「夏ごろには収束するのでは」という企業が多かったものが、最近では多くの企業が長期化を予想し、2~3年かかるとの声が多くなっているといいます。ギリギリのところで踏ん張って、地域の雇用など地域経済を支えている中小企業に対して、越年対策などの短期的な対策に加えて、抜本的な地域経済対策を本府としても考える必要があるのではないでしょうか。
 ある経済団体の方は、
「上澄みだけを救う対策ではもうダメ」
とおっしゃいました。コロナ禍を通じて改めて地域経済を底からしっかりと温める、地域の中で仕事やお金が回る対策が根本から問われているのではないでしょうか。
 このことは、京都府のコロナ対策での支援策の現場での受け止めを見ても明らかです。京都府の再出発補助金などは持続化給付金に比べれば額は少額ですが、減収要件なしで中小企業・事業所であれば、かなり幅広い取り組みが対象となりました。商店街再出発設備投資補助金も、中小規模であることと商店街加盟であることが要件で、コロナ対策として店舗改修も含む幅広い事業が対象となりました。
 ある個人タクシーの組合では、車内の抗菌・抗ウイルス処理をするために制度を利用され、府内の施工業者の方とともに
「地域の仕事にもなる。こういう制度がいい。」
と話されました。コロナ対策など、必要な対策への支援が結果として地域の仕事を作ることにつながるという循環が生まれています。

 そこで伺います。コロナ対策にとどまらず、地域経済の振興を進めるうえで、地域の中で好循環を生み出すという観点が極めて重要と考えますが、知事のご所見をお聞かせください。同時に、感染の第3波による感染者の急増、影響の長期化が中小零細事業者に深刻な影響を及ぼしており、京都府としても支援制度の充実や固定費助成など新たな補助制度の実施が求められていると考えますが、いかがですか。

 地域循環という点で、全国でも多くの先行例が作られているのが住宅改修への助成制度です。
 私は、先日、京丹波町と与謝野町でお話を伺ってきました。京丹波町では、2011年に制度をスタートして、昨年度で終了予定だったものを、地域経済の状況を勘案して1年延長して実施をされておられます。2011年以降での利用は、延べ890件・6,100万円、今年度だけでも84件・529万円の利用があり、町内企業の約半分27業者が受注しています。総工事費との単純計算で、予算額の14~17倍の経済効果が出ているとのことでした。
 与謝野町では、かつて実施していた事業を、コロナ対策として来年まで復活させておられます。2020年10月1日の受付開始以降、162件の利用で1,740万円の利用があるそうです。給湯器の交換、トイレの更新などの利用が多く、それでも全体で1億7000万円を超える工事が生まれているといいます。
 お話をお聞きしてどちらでも共通していたのは、住生活の改善という住民の暮らしへの支援を地元企業の仕事起こしに結び付けることが出来る、地域内での循環を生み出すことが出来るということでした。
 事業設計でも様々な工夫が凝らされています。例えば、地元企業への発注が要件であることはもちろん、与謝野町ではエアコンの交換や電気給湯器の更新も対象にしていますが、量販店での利用はできません。その代わり、量販店での割引にも対抗できるように補助率を15%に設定しているとのことでした。
 これまで、知事は「耐震性の向上や介護の予防、また府内産木材の利用促進など政策目的を明らかにした上で実施している」としてきました。しかし、京丹波町や与謝野町では、地元の業者が「地元の業者でやったら補助金が出ますよ」と営業に回ることが出来ると喜んでいるとのことでしたが、そういう事業は残念ながら府の制度にはありません。
 さらに、与謝野町での利用は先ほど紹介したように、給湯器やトイレの交換・修繕が多く、京丹波町の制度はいくつかメニューがある中で、半数以上は「耐久性向上」になっており、屋根の修繕や外壁の塗り替えなどだそうです。住宅に手を入れることはハードルが高く、生活上どうしても手を入れないといけないところから手を付ける。逆にそこに支援があることが制度利用の要因になっているのです。

 コロナ禍で、地域経済全体の底上げが求められる時だからこそ、地域で仕事やお金を回す経済対策としてぜひ住宅改修への助成制度を検討すべきと考えますが、知事のご所見をお聞かせください。さらに、商店再出発設備投資補助金は、実質の商店リフォーム助成とも呼べる内容で、再度実施すべきと考えますが、いかがですか。

○西脇隆俊知事  地域経済対策についてでございます。
 京都の中小企業や府内経済の振興のために、府内の需要を府内の企業が担う、地域内循環のとりくみが必要なことは認識しております。
 このため、京都府では公契約大綱にもとづく府内企業への発注の促進、京都産酒米による京の酒造りの推進などに取り組んでいる他、今回のコロナ禍でも地元企業に需要が急減した伝統産品を購入していただく「京もの指定工芸品購入支援事業」の実施など、府内企業の仕事づくりに取り組むことで振興をはかってまいりました。
 しかしながら、例えば、ものづくり分野では伝統産業から先端産業まで国の内外から必要な原材料や部品を調達し、京都の高い文化力や技術力で高付加価値化をはかり、内外のマーケットで販売することで産業の成長を実現してまいりました。
 このことからもご理解いただけるとおり、京都府域内に限定された地域内循環政策だけでは京都経済を支えることは困難だと考えております。今後とも、産業の特性や需要の動向を十分把握し、施策の有効性を十分検討した上で、京都産業の大勢を占めております中小企業の振興に、全力で取り組んでまいりたいと考えております。

○鈴木一弥・商工労働観光部長  支援制度の拡充や新たな助成制度の創設についてでございます。
 京都経済の状況につきましては、知事から成宮議員へお答えいたしましたとおり、なお厳しい状況がつづいていると考えております。そのため累次に渡り予算を御議決いただき、事業継続と雇用維持に全力をあげて取り組んでまいりました。今議会においても、緊急応援補助金の増額、冬の閑散期を迎える観光関連事業者への支援、京都未来塾の追加実施など、府内事業者がコロナ禍を乗り越えていただけるための予算を提案いたしております。
 なお固定費の中でも、負担が大きい家賃につきましては、国の家賃支援給付金で支援しており、さる11月5日にも全国知事会を通じ対象月を増やすなどの拡充を増やすなどを要望したところであります。
 次に、住宅改修への助成制度と商店街再出発設備投資補助金についてでございます。 京都府が実施いたします、住宅改修への各種助成制度や商店街再出発設備投資補助金は、それぞれの政策目的にそって制度化したもので、地域経済の循環を目的とした制度ではございません。住宅改修については、それぞれの助成制度において住宅の耐震性の向上による防災対策や再生可能エネルギー設備の設置による環境対策に資することなどを目的として助成しているところでございます。
 また、商店街再出発設備投資補助金は、緊急事態宣言が解除された後に、商店街の店舗がおこなう業界ガイドラインに沿った感染防止対策を支援することを目的としたものでございます。
 多くの要望にお応えするため、予算額拡充して補助を行い、地域商業の中心であります商店街の安心安全な環境づくりにつながったと考えております。商店街に対する支援につきましては、今後の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染状況をふまえ、時期に応じて必要な対策を実施してまいりたいと考えております。

○馬場紘平議員  好循環の必要性については認識しているということで、一方で地域経済循環だけではダメなんだというお話がありましたが、地域内循環ですべてをやれと言っているわけではなくて、今度の再出発補助金制度や商店街再出発設備投資補助金は循環をめざしたものではないと言われましたが、結果として地域の中で循環が生まれた、地域の中で多くのところで喜ばれているんだという実態に目を移せば、特に地域内循環が求められている中で、こうした制度がいるんではないかと思っています。
2010年から実施している秋田県では、制度の中身は手を加えたりされていますが、県の制度に県内の市町村が上乗せをしたり、横出しをしたりして充実されています。地域内での循環を生み出す市町村の取り組みを県の制度が後押しするきっかけにもなっているわけです。
経済効果は、実施した自治体では工事費だけでも予算額の10~20倍以上と言われています。他の産業への効果も含めればさらに経済効果は大きくなります。こうした経済効果が示されていることについてはどのように考えているのか、再度答弁をお願いします。

○鈴木一弥・商工労働観光部長  馬場議員の再質問にお応えいたします。
 こうした住宅、商店街再出発に関します助成事業は、結果として地域の事業者に仕事が回っていることは否定するものではございません。私どもはこうした施策を通じて、商店街でございましたら再出発に当たりまして感染防止に留意を頂く事業者の皆さん方が広がっていく、そうした安心安全な環境をつくっていくといったことで大きな成果を上げているというふうに考えています。今後とも助成制度の実施にあたりましては、感染状況、病院への逼迫状況を総合的に勘案しながら、適切な施策をとっていきたいと考えております。

○馬場紘平議員  住宅改修の助成制度の経済効果の大きさについてどう考えるのかについてお聞きしたんですけれども、そこについてはご答弁をいただけませんでした。
 地域内循環だけではダメなのはもちろんですけれども、今度のコロナの影響を受けて今制度の利用状況から見てもそうですし、地域全体の底上げをしていくといううえでも、こうした制度は必要だと思うんです。新型コロナによる地域経済への深刻な影響からも、これまでの経済政策がいかに地域経済の主体である中小零細事業者が中心におかれてこなかったのかをまざまざと示しています。根本的な転換が必要で、そのためには
「地域全体をどうやって引き上げるのかの底上げ」「市町村との連携」
は不可欠です。その2つを兼ね備え、多くの実績が全国で広がっている。こうした住宅改修助成制度について、ぜひこの際、しっかりと検証し、実施していただくよう強く求めておきたいと思います。

 次に、北陸新幹線の延伸についてお聞きします。
 昨日、成宮議員が代表質問でもふれられましたが、2020年9月29日、鉄道・運輸機構が北陸新幹線の敦賀―新大阪の予定ルートとしている南丹市美山町の田歌区の皆さんが、住民総会を開いて全会一致で「環境影響調査の受け入れを見合わせる」ことを決議し、機構に通告をしました。そして、11月10日には、京都府と南丹市に対して、多量の工事車両の通行や、残土の問題、ルート選択の理由などを明らかにすることを求める公開質問状を提出されました。
 美山町では、移住者も含めた有志の皆さんが「新幹線問題を考える有志の会」を立ち上げ、全国の新幹線計画で起こっている問題などを自分たちで調査し、学習会などを重ねてこられました。その背景にあるのは、鉄道・運輸機構が実施した説明会でも、
「なぜこのルートになったのか」「どんな影響があるのか」
など、基本的なことが全く分からないということがあったといいます。
 そして、自分たちで調べていくうちに、工事によって出てくる残土の処理の問題、大量の工事車両の通行の問題などが見えてきて、
「自分たちの生まれ育った美山の環境が台無しになるのではないか」
「これからも豊かな自然の中で子育てをしたい」
という声が広がってきたとのことでした。
 田歌区の区長さんもIターンで美山にやってこられた方ですが、
「豊かな自然環境で暮らしたいという人たちを呼び込むことが出来る地域」
「実際に田歌区では16世帯がIターン」
「未来の可能性のある地域。そこを犠牲にするのは間違っている」
と話されます。
 同じく予定ルートに位置する京都市右京区京北でも、住民が鉄道・運輸機構に対して、署名422筆を添えて開催を求めた地元説明会では、
「大量のダンプが何年も走るのか」
「中止も含めた代替案はあるのか」
などの質問が飛び、参加者からは「不安は解消されない」との声が出されるなど、住民生活や地域環境への影響の不安、まともな説明がなされないことへの怒りは広がっています。
 そこでお伺いします。知事は昨日の答弁でも改めて「日本海国土軸の一部を形成するとともに、大規模災害時において東海道新幹線の代替機能を果たし、関西全体の発展につながる国家プロジェクト」として推進の姿勢を示す一方、府民から上がる不安の声に対しては、「自然環境、住生活の保全が十分に図られるようしっかりと必要な意見を提出する」など、正面から受け止めることに背を向けられました。
 しかし、機構が示す予定ルート区域内にお住いの住民から、集落全体の総意として明確な意思が示されたわけですが、知事はこうした住民の意思をどのように受け止めるのかご所見をお聞かせください。
 さらに、美山や京北の皆さんが心配されている一つに工事に伴う大量の残土の問題があります。計画概要で143kmの総延長のうち、実に80%がトンネル区間と言われており、京都府域の広い範囲で長大トンネル工事が行われる計画になっています。府の環境影響評価専門委員会の委員も試算として、残土が「少なく見積もっても880万立法メートル」にのぼり、
「他の公共事業での有効利用で処理できる量ではない」
と指摘しています。
 声の上がっている地域以外でも同様に住民生活などへの影響が予想されます。土砂の運搬はどうなるのか。土砂の仮置き場はどうなるのか。最終的な処分のめどはあるのか。極めて基本的なことですが、そうしたことについて、「詳細ルートが決まらないと正確にはわからない」「影響を軽減できるようにする」というのが機構の説明です。
 そこで伺います。こうした基本的なことについて、全く説明されていないことについて知事はどのように考えていらっしゃるのかお答えください。同時に、こうした基本的なことも明らかにせずに環境アセスを受け入れろということには無理があると考えますが、知事はどのように考えているのかお聞かせください。

 次に、農業問題について2点、コロナ禍での米価対策と、種苗法改悪についてお伺いします。
 コロナの影響でコメの需要が大きく減り、2020年産米の価格が、数百円から1,000円を超える下落になっていることが報道されています。京都府の米作りの現場では、府北部地域のある農業法人では、地域を守るためにと法人化もして頑張っている代表は、給料は時給換算するとわずか200円にしかなりません。他にも農業機械のオペレーターを確保したら、他の役員には2,000円程度しか払えない法人など、厳しい状況が続いています。
 そこへコロナの影響による米価の下落が追い打ちをかけ、まさに、営農を続けられるかどうかという瀬戸際にあるといわなければなりません。ブランド化や規模拡大は進めてきましたが、あくまで京都の農業の中心は中山間地の小規模農家のコメ作りです。コメ作りが続けられなくなれば地域そのものが立ち行かなくなります。地域を守るためにも対策が急がれます。
 ところが、そうした中で国は、2020年11月に発表した「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」で、2022年産米の生産目標を693万トン、生産調整上積みを30万トンと、農家には大幅な減反を示す一方で、ミニマムアクセス米は77万トンを維持するとしています。
 そこでお伺いします。新型コロナによるコメ需要の減少が10万トンと言われています。国に対して、ミニマムアクセス米を削減してでも、緊急の米の買い入れで農家の底ざさえを行うよう求めるべきと考えますがいかがですか。

 12月3日に種苗法の改正案が、衆参合わせてわずか10時間という短い議論で採決され、自民党・公明党・日本維新の会などの賛成により可決・成立されました。
 種苗法改悪の問題については、9月議会で日本共産党の原田議員の質問に対して、農林部長は「今回の改正は海外流出を防止することと、権利侵害を立証しやすくすることが柱」「8割以上が国や都道府県の登録品種や制限を受けない一般品種で影響は限定的」と答弁されました。
 しかし、サツマイモなどは、すべてを苗で購入するのではなく、種芋を「伏せ込み」という作業で発芽させ、出てきたツルを畝に植え付けることで育てるのが一般的です。これをすべて苗から買うこととなると、その経済的負担は倍では済みません。さらに、サツマイモ栽培の基本は、種芋の選別と、伏せ込みでいかに良質の苗を作るかということで、ここには農家が長年培ってきた技術が詰まっています。
 種苗法の改悪は、海外流出を口実に、乱用防止の手立てもなく育成者の権利を強化する一方で、これまで当然のこととされてきた農家の種取りを原則禁止とし、農家の栽培技術を奪うものに他なりません。また、新たに許諾料を払うことになれば、農家の負担が増えるのは明らかです。
 海外への流出や、無断使用を防ごうと思えば、農林水産省自身もこれまでから言ってきたように、海外で品種登録するしかありません。にもかかわらず、農家の経済的負担や培ってきた栽培技術を無視して、自家増殖を原則禁止にするのはいったいなぜなのか。
 2018年、種子法が廃止され、都道府県などが種子を作り、維持するという公的種子事業は法的な位置づけを失いました。さらに、農業競争力強化支援法の8条4項では「試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間企業への提供を促進する」と明記されました。
 このように今回の改悪は、種子を民間に明け渡し、多国籍企業の種子メジャーの儲けの道具とする流れの中で進められているのです。
 そこで伺います。種子法の廃止、農業競争力支援法の流れから見ても、種を民間へ差し出す方向は明らかです。種苗法の改正は、そうした流れの中でどんな影響があるのか見る必要があると考えますがいかがですか。お答えください。

○沼田行博・農林水産部長  農業問題についてでございます。
 国は毎年コメの需給見通しを公表し、生産調整の推進と備蓄の活用によって、需給の均衡を図ることとしており、先月公表された需給見通しでは来年も本年と同じ生産量となった場合には、供給過剰となると示されております。一方、都道府県段階のコメの作付け計画では、主に各都道府県の需給動向を勘案した上で、農業者
団体や行政機関で構成される農業再生協議会で策定することとなっております。
 勘案すべき京都府におけるコメの需給動向は、大消費地を抱えていることから供給量が需要より少ないこと、2020年の京都府内産米の取引価格も9月になって初めて低下したものの、その下落幅は小さいなど、全国と異なる状況でございます。
 またコメに対する新型コロナウイルスの影響についてですが、需要減少による長期的な米価下落の懸念もあることから、政府買い入れによる市場からの隔離策の実行など、食用米の価格安定に向けた対策を行うよう、全国知事会として国に要望しているところであります。
 また、このたび国では新たな経済対策を閣議決定し、新規需要開拓のため高収益作物等への作物転換などの支援を行うこととしております。今後こうした国の動きや府内実情を把握した上で、必要に応じて要望を行ってまいりたいと考えております。
 次に種苗法の改正についてでございます。国は農業を成長産業とし、農業者の所得向上を図るため、農業競争力強化支援法を制定し、その一環で主要農作物種子法を改正いたしました。京都府では主要農作物である稲・麦・大豆の重要性を考え、法廃止後も農業者が安心して種子を利用できるよう、京都府原子農場での種子生産と普及指導員による種子検査体制を維持しております。
 また今回の種苗法改正については、農業者の方が自家増殖に許諾料が発生するのではないか、権利侵害の訴訟を起こされるのではないか、といった不安を持っておられることから、法改正に伴うあらたなコストや事務負担に関する農業者の不安を解消すること、意図しない権利侵害によって民間事業者等から訴訟になった場合には、農業者の伴走支援できるような体制を構築すること、国に要望したところでございます。
 この間、京都府では辛みのない万願寺とうがらしや夏にも収穫できる大豆枝豆、種苗会社とともに開発した酒米、この度発表させて頂きました良質米などブランド品種を育成してまいりましたが、今回の種苗法改正はこうした府の登録品種の府外流出防ぎ、ブランド産地を守ることにもつながる、こういったメリットもあると考えております。
 今後政省令等で規定される予定の自家増殖の許諾に関する手続きや、育成者権の保護などについて、十分検討し農業者が安心して生産が続けられるようサポートしてまいりたいと考えております。

○富山英範・建設交通部長  北陸新幹線についてでございます。
 北陸新幹線につきましては、日本海国土軸の一部を形成するとともに、大規模災害時において、東海道新幹線の代替機能を果たし関西全体の発展につながる国家プロジェクトであると認識をしております。
 現在、環境影響評価法に基づいて進められております手続きにおいて、京都府民や関係市町、専門家等のご意見を踏まえ、方法書についての知事意見を提出したところでございます。その中で、府域で考慮すべき事項として、対象事業実施区域およびその周辺には、さまざまな地形および地質を有し、良好な大気環境や良質な水資資源、少子等を含む多様な動植物や生態系、人と自然とのふれあいの様々な価値を持つ景観、重要な文化財、広く分布する及び学校、病院その他の施設等、多くの保全すべき環境要素が存在することを網羅的に指摘をしております。
 また掘削発生土につきましては、発生量や運搬・処分等の方法について計量的かつ予測評価を行い、その結果を準備書に詳細に明示すること、その際、掘削発生土の土壌環境基準不適合の状況をあらかじめ把握するとともに、基準不適合の掘削が発生した場合の処分等の方法をあらかじめ計画し、準備書に明示すること、発生量及び場外搬出量を極力抑制するよう工事方法等を検討する事や、本事業や他事業で極力再利用するよう検討すること、などを求めております。
 さらに今後の手続きの実施にあたっては、本事業により影響を受ける恐れがある地域住民等に向けた説明や意見聴取等の機会を十分確保し、鉄道施設等の規模や工事方法、環境影響評価の項目や手法等を広く情報提供し、わかりやすく丁寧に説明することを求めております。
 今後事業をすすめる国や鉄道・運輸機構が駅の位置・ルート・構造・施行方法などの徹底に際し、環境への影響に十分配慮することが極めて重要でございます。引き続き国や鉄道運輸機構に対して、慎重な調査と丁寧な地元調整を行うとともに、環境の保全について適切な対応を行うよう、様々な機会を捉えて求めてまいりたいと考えております。

○馬場紘平議員  ご答弁をいただきました。
 まず北陸新幹線からですけれども、説明・意見聴取なんかの機会を持てと、声を聞け、というふうに言われましたけれども、現状、田歌区から
「納得のいく説明なしに調査を受け入れられません」
こういう声が上げられているにもかかわらず、鉄道・運輸機構は今月から調査に入るって言っているわけですね。こうした姿勢は、住民無視以外の何ものでもない、と言わないといけないと思うんです。
 こうしたことを許して、後で説明や意見聴取しなさいといくら言ったところで、府民が声を上げてもそうした声が聞き入れられないということになってしまう。京都府民の声を無視するようなこんなやり方はまずはダメだとこのことを国や機構に対していうべきではないかというふうに考えますけれども、この点については再度答弁を頂きたいと思います。

 米価については、今後の影響も見ながらという話もありましたけれども、それは待ってられないというのが現場の受け止めだと思います。集落営農組織、農業の最後の砦とも言われておりますけれども、ここの悉皆調査、この間、していただいていまして、そこでも
「5年後には集落営農組織が継続できるかどうか」
っていう非常に厳しい声が上がっていますし、後継者育成問題で課題があるという声がたくさん上がっている。で、現場では、この2~3年がデッドラインではないかという声までが上がっているわけで、こういった状況の中で、どうやって農業を続けていくことが出来るのかっていう、今まさに対策を打つ必要がある、いうふうに思います。
 コロナなどの影響を受けて、今府内の市町村でも独自の支援策、これ検討の動きがあるというふうに聞いています。国に対して求めることはもちろんですけれども、京都府としても独自の支援策を検討すべきではないかというふうに思いますけれども、この点はご答弁をいただきたい。

 種苗法については、指摘しておきますけれども、影響のないように要望するという話がありましたけれども、そもそも厳しい状況にある日本の農家の今後を大きく左右する問題でありまして、育成者の権利の根底にあるのは、はるか昔から農家が知恵を絞って、工夫凝らして作ってきた農作物があるからこそ初めて成り立つわけで、それを忘れてはいけないというふうに私は思います。
 成立したから仕方がないっていうことではなくてですね、国に対して改悪を改めるよう求めていただくと、で府としてもしっかりと支援をすると、その立場を最後にお願いして、私からの質問を終わらせて頂きます。
 ご清聴ありがとうございました。

○沼田行博・農林水産部長  コメ生産農家に対するコロナ等の影響に対する支援ということでございますが、先ほど申し上げましたとおり、米価はこのコロナの発生後も大きな変動が今まではなかったという風な状況であります。しかしながら、新米出始めた9月10月に入り、急に米価が下がりました。しかし、京都府の価格下落については、そう大きくないというのが状況でございます。全国が4%の価格下落であるのに対し、京都米は0.7%という状況でございます。しかし、コメ生産農家も直接料亭とか飲食店、こういったところに出荷されている生産者もいらっしゃいます。こういった農業者については、大きな影響を受けておられるというふうなことを聞いております。
 京都府といたしましては、こういった農家に対しては出荷先をコロナ影響を受けていないそういった家庭向けに仕向けるよう、そういった支援をさせて頂いております。集落営農組織についてでございますが、この組織につきましては、引き続き組織として継続できますように、我々としても懸命の支援をしていきたいというふうに考えております。

○富山英範・建設交通部長  環境影響評価の進め方についてでございます。北陸新幹線の環境影響評価は、事業者である鉄道運輸機構が法に基づき実施をされているものであり、府としては法が定める手続きにおいて、府民、関係市町、専門家等のご意見を踏まえつつ、自然環境・生活環境への影響を回避または極力最小化すべく、対応をしているところでございます。 引き続き、国や鉄道・運輸機構に対しては慎重な調査と丁寧な地元説明を求めてまいります。