○島田敬子議員 日本共産党の島田敬子です。党府会議員団を代表して知事に質問いたします。
まず、京都府民の一大関心事となっている北陸新幹線京都延伸計画についてです。
8月7日、国土交通省は、北陸新幹線の敦賀―新大阪間の延伸計画をめぐり、『小浜・京都ルート』について、JR京都駅周辺の『東西案』『南北案』・JR桂川駅付近の『桂川案』の3駅を通る3つのルート案を示しました。当初2兆1,000億円としていた事業費が最大5兆3,000億円に、工期は15年の見込みが最長でも28年にもなる試算です。
8月28日には、与党PTが年内に駅の詳細とルートについて絞り込めるよう、沿線自治体に説明を行う決議をあげるとともに、国土交通省は、整備新幹線の建設推進・高度化事業費19億円を計上し、用地確保に向けた調査など、本来は認可後に行う作業を先行的に行うとしています。
8月12日の京都新聞社説では、
「前提が大きく崩れた。立ち止まって再考することを改めて強く求めたい」
と述べ、府民や有識者からも、「計画は中止を」との声が相次いでおります。『小浜ルート』が 2023年度・24年度の着工断念に追い込まれる中で、『米原ルート』検討を求める動きもあるなど、ますます混迷を深めています。
日本共産党といたしましては、改めて米原ルートも含めて、「北陸新幹線京都延伸計画はきっぱり中止を」とする声明も先に発表させていただいたところでございます。
松井京都市長は記者会見で、
「与党PT、(鉄道建設・運輸施設整備支援)機構、国土交通省から、判断に足る十分な情報提供を受けていない」
「財政的負担・交通渋滞・残土処理・地下水などの影響をあげ、厳しく慎重に判断せざるを得ない」
と発言されています。これに対し知事は8月27日の記者会見で、
「松井市長は今回、特段新しいことは言われていない」
「市民が懸念される大きな要素が地下水であることは間違いないと思う」
「今回の説明だけでわかりましたということにはならない」
などと発言されています。
そこで伺います。知事はこれまでのように「慎重な調査と住民に対する丁寧な説明」との答弁を繰り返すことは許されません。現段階における見解をはっきりと述べていただき、本府議会の場でしっかりと議論する必要があると考えますが、いかがですか。
次に、焦点となっている問題について伺います。
3ルートいずれも事業費が拡大し、最大で5兆3,000億円と当初費用の2.5倍に膨らみ、費用対効果は“1”を大きく下回ることは必至です。財政の見通し確保、収支採算性、投資効果等の『着工5条件』を満たさないことになります。京都市幹部も
「財政が悪化するというレベルではない。現行ルートではとても払えない。」
と発言をしています。
更に、建設主体である鉄道建設・運輸施設整備機構に長年助言してきた、土木工学が専門の京都大学、木村亮・名誉教授は
「3つの案については費用と時間がかかりすぎるという点で反対だ」
と述べられ、事業費は更に膨れ上がり、工期も30年以上に伸びる恐れも指摘しています。府民に対してまともな説明もないまま、国が本府に負担を求め、結果として府民にも大きな負担を求めることについて、知事は容認されるのか、うかがいます。
『巨大地下トンネル』による自然環境や住環境の破壊、京都の地場産業への影響は計り知れません。鉄道運輸機構は6月19日、令和5年度の地質調査結果を報告いたしました。880万㌧以上とも言われる発生残土の3割が砒素などの猛毒の重金属が含まれる『要対策土』であることや、京都盆地の深層地下水は、京都駅や伏見の酒造エリアまで到達する可能性があることを認めました。
わが党議員団は、リニア中央新幹線の掘削工事で14ヶ所の井戸や溜池の水が枯れた岐阜県瑞浪市を調査してまいりました。
「溜池も井戸も枯れて農業用水が無くなり、このままでは山の木々も枯れていく。集落の存続にかかわる大問題」
との怒りの声を聞いてまいりました。その後、この地域で地盤が2.4㎝も沈下していることをJR東海が発表しました。東京都調布市ではシールド工法による陥没事故が相次いでいます。すでに、京都では地下鉄東西線建設で井戸への影響が290ヶ所に及び、地下水の枯渇・水位低下などで、京都市が補償した件数は322件にものぼりました。
国土交通省は十分な科学的根拠も示さず、地下水を引き込まない『シールド工法』だから安全と強調していますが、名古屋大学の浅岡顕・名誉教授は
「シールドマシンによるトンネル掘削では、地下水を取り込むことよりも、地中の土砂の取り込み過ぎにより陥没事故が問題になる。京都の市街地の地盤は砂や砂礫地盤からなり、シールド工法は大変不向きだ。」
と指摘をされております。
そこで伺います。知事はこのような「シールドトンネルによる地下水への影響は発生しない」との国の判断を容認されますか。現に、河川や地下水の枯渇、陥没事故や地盤沈下など、各地で生じている事態が、本府でも起こりうると考えませんか。お聞かせください。
整備新幹線やリニアなど“高速・大量輸送鉄道”最優先で税金をつぎ込むやり方が、大都市と地域の格差を広げています。JR西日本は、コロナ禍の収入減少を理由に山陰本線など在来線の大幅な減便を行いました。通学やアルバイトのためなどで同線を利用する学生さんたちが、新幹線よりも山陰本線の増便で便利にしてほしいと、署名を取り組んでおられます。北陸新幹線の敦賀までの延伸に伴い、サンダーバードが敦賀止まりとなるなか、利便性が大きく後退いたしました。
いま求められているのは、在来線の強化や路線バスをはじめとする公共交通の充実、今ある鉄道網の整備や耐震強化など災害対策強化であり、これらを優先すべきと考えますがいかがですか。また、サンダーバードの金沢駅までの復活についても進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
続いて、向日町競輪場における京都アリーナ(仮称)整備計画について伺います。
北山エリアでの計画を断念したのちの3月14日、西脇知事は「アリーナを向日市に」と発表し、5月2日には予算343億円、観客収容人数は8,000人規模、2028年には完成などを提示して事業者公募を始めました。
6月7日・9日にやっと開催された住民説明会には400人を超える市民が参加しました。参加者からは
「すでに5月には事業者の公募が始まっているのは、市民の意見が軽ろんじられているのではないか」
「府道の整備抜きには考えられない」
「アリーナ建設に伴う交通渋滞のさらなる悪化をどう考えているのか」
など、住民への説明もなく、意見も聞かないうちに、事業者公募を始めたことへの疑問とともに、住環境悪化の懸念の声が相次ぎました。わたくしも傍聴しておりましたが、たくさんの市民の声に本府は応える状況ではありませんでした。
また、4月から6月まで市民アンケートも行われ、1,076人が回答し、そのうち6割の方が
「交通渋滞や混雑が心配」「住民の意見が反映されていない」
と答えています。このようにアンケートでも住民説明会でも、周辺道路の整備・拡幅と歩行空間の確保を行うこと、子どもたちが自由にボール遊びのできる公園や市民が憩える公園を、そして周辺の良好な住環境の調和、景観の保全を求めております。
7月4日には、向日市から本府に対して要望がされています。また、8月26日には市民団体『向日町競輪場再整備とアリーナ問題を考える会』の皆さんが、アリーナ計画については、一旦撤回し、事業の見直しを要望されました。
そこで伺います。6月の住民説明会では、角田政策監(角田幸総・文化施設政策監)は
「周辺地域を含むまちづくりを一緒になって検討させていただきたい」
と、発言されました。それならば、早急に、住民説明会を実施すべきではありませんか。そして、地元自治体や住民に対し、十分な情報提供と説明、そして対話が必要と考えますが、いかがですか。また、向日市の7月4日の要望書にはどのような回答をされたのか、お聞かせください。
アリーナ整備計画における住民の最大の心配は、渋滞や駐車場の問題です。近隣の府道は道幅が狭く、歩道が80㎝しかないところも多いことから、渋滞や事故が危惧され、緊急車両の通行、保育所の送り迎えなどの住民生活への影響は必至との声が上がっています。アリーナ整備にかかわる府道整備計画はどうなっているのか。お答えください。宜しくお願いいたします。
○西脇隆俊知事 島田議員のご質問にお答えいたします。
北陸新幹線敦賀―新大阪間の延伸計画についてでございます。北陸新幹線につきましては日本海国土軸の一部を形成いたしますとともに、大規模災害時において東海道新幹線の代替機能を果たし、京都府域はもとより関西全体の発展につながる国家プロジェクトであると認識をしております。
敦賀―新大阪につきましては、現在事業主体の鉄道運輸機構において環境影響評価の手続きが進められているところでございます。このような中、本年8月7日に与党PT・北陸新幹線敦賀―新大阪間整備委員会が開催され、国及び鉄道運輸機構から京都駅に関する東西案・南北案・桂川案の3ルート案が提示され、それぞれの概算事業費や工期、課題などが示されたところでございます。
また、国や鉄道運輸機構から、最短の場合の着工に向けたスケジュールについても提示され、年内に環境影響評価の準備書手続きに着手し、令和7年度末に全国新幹線鉄道整備法に基づく工事実施計画の認可を得ることとされております。
京都府といたしましては、引き続き国や鉄道運輸機構において慎重な調査と丁寧な地元説明を行いますとともに、地下水など施工上の課題や環境の保全について適切に対応していただくことが必要であると考えております。
いずれにいたしましても、国土交通大臣が沿線自治体に丁寧な説明を行うと発言されており、その国からの説明内容や鉄道運輸機構からの環境影響評価の調査状況に関する説明内容を踏まえまして、適切に対応してまいりたいと考えております。
次に事業費の負担についてでございます。事業費の負担につきましては、これまでから受益に応じた負担を求めていたところであり、今般改めて概算事業費などが示されたことから、今後国において財源の確保や費用負担などについて検討されていくものと考えております。
京都府といたしましては、引き続き国に対し受益に応じた負担を強く求めてまいりたいと考えております。
次に鉄道施設の工事における地下水等の影響についてでございます。現在、鉄道運輸機構により進められております環境影響評価の方法書の手続きにおいて、例えば地下水については豊富で良質な地下水が生活や産業、上水道等に幅広く利用され、京都の文化を支えていることを踏まえまして、鉄道施設等の工事及び存在による水循環への影響について、水質・地下水・水資源への影響を中心として専門家等の助言を得ながら、3次元モデルを用いた地質水文学的シミュレーション等の手法により定量的な予測を行うことなど、法に基づく知事意見を鉄道運輸機構に提出しております。
今後、環境影響評価などの手続きが進んでいけば、環境影響についての調査結果及びそれに基づく環境保全対策の検討結果などが鉄道運輸機構から示されることとなっており、京都府といたしましては法令に基づき適切に対応してまいりたいと考えております。
次に在来線の強化についてでございます。北陸新幹線金沢―敦賀間の開業に伴い、敦賀駅では北陸新幹線のホームの真下に在来線特急が乗り入れる上下乗り換えにより、乗り換え時間を短縮する構造にしているとJR西日本からうかがっております。引き続き乗り換えがスムーズとなるダイヤの設定など、利便性の向上を関西広域連合を通じて要望してまいりたいと考えております。
府域のJR線につきましては、山陰本線、小浜線の高速化・複線化・電化などの鉄道網整備を順次進めてきており、昨年3月には奈良線の高速化・複線化第2期事業が開業したところでございます。鉄道施設の耐震化につきましては、南海トラフ地震で、震度6強以上が想定される地域内の高架橋等の耐震化を、国・市町と連携して支援したところであり、今年度対象箇所全ての対策が完了いたします。
またバスなどの地域公共交通につきましては、バス路線の維持、運転士不足対策、交通空白地解消に向けた取り組みを国・市町村と連携して取り組んでいるところでございます。引き続き府民の生活や地域経済を支える鉄道・バスなどの公共交通の整備に努めてまいりたいと考えております。
次に京都アリーナ(仮称)の整備についてでございます。アリーナ整備は施設整備にとどまらず、周辺地域のまちづくりの視点を持って、地域の皆様と共に進めることが重要だと考えております。
地元の皆様への情報提供や説明などにつきましては、これまでからスポーツ施設のあり方懇話会の概要などをホームページで公表いたしますとともに、向日町競輪場基本構想の案段階から、合計6回の説明会を実施してきたところでございます。今後とも府議会でのご審議や自治会との意見交換、ホームページや電子メールによる意見受付など、あらゆる機会を捉えて住民の皆様のご意見をうかがいながら進めてまいりたいと考えております。
アリーナ整備にかかる向日市長からの要望につきましては、例えば市民としての誇りを持てる施設整備をとの要望に対しましては、京都市南西部から乙訓地域全体の活性化につなげますとともに、京都府全体にも波及効果が及び、向日市民・京都府民のシンボルになるような施設を目指すと回答したところでございます。
また、年齢などに関係なく市民が集い憩える施設整備をとの要望に対しましては、市民・府民の誰もが日常的に気軽に入っていただけるような開かれた憩いの空間となることを目指す、などと回答したところでございます。
向日市長は6月に京都府が実施した住民説明会でのご意見や、向日市議会における議論などを踏まえられ、市民を代表して要望されたものであり、私からもこれからも地元の声をお聞きいただき、京都府もできるかぎりご意見に添えるよう頑張りますので、ぜひ一緒に進めていただきたいと申し上げたところでございます。
次に府道の整備計画についてでございます。向日地域の府道の整備につきましては、これまでから歩行者等の安全性の向上、交通の円滑化やまちづくりにつながる計画を順次事業化してきたところでございます。まずは、現在実施しております事業箇所の早期の完成に向け取り組みますとともに、今後とも交通課題や地域のまちづくりの考え方などを踏まえ、向日市をはじめとする関係機関と連携を図りながら必要な道路整備などについて検討してまいりたいと考えております。
○島田敬子議員 新幹線延伸計画についてです。これまでの回答のように慎重な調査と丁寧な説明を繰り返されましたが、住民には全く説明がありません。運輸機構は美山の住民説明会でも、残土処理等の課題について
「ルートが確定しないからわからない」
という説明を繰り返しております。今回の3ルート、私の地元・右京区を全部直撃しますが、ボーリング調査における住民説明会要望にも答えておりません。自治会にも連絡なく8月4日から新たなボーリング調査を開始しております。こうした中、年内にルート一本化、2025年着工の報道も繰り返されて、住民の不安が一気に高まっております。
ルートが決まってからしか知事の意見がいかないという仕組みにもなっておりますよね。8月30日の記者会見で、知事は
「国からも鉄道運輸機構からも説明を受けていない段階」
「質問に答えるほどのベースの知識がない」
「斎藤大臣の説明を待つ」
だけということに終始をしております。まさに自治体を無視し、住民無視の無謀なやり方、計画でありますので、ルートが決まってから知事が意見を言うというのでは間に合わないわけです。なので今の時点ではっきりものを言う時だと思うのですけれども、再度この点お答えください。
受益と負担を述べられましたが
「5兆円もかけて、そして30年以上もかけてやるべき事業か」
と、府民にとっては何の利益もなく
「あるのは損害ばかりだ」
と、今これが多くの住民の声であります。これらの声について、どのように説明をされるのか伺います。
アリーナ整備計画についてですが、そもそも住民の声も聞かないで、先にアリーナ建設ありきで民間事業者公募を始めたことが問題であると重ねて指摘をしておきます。向日市の要望については、その要望の席上で知事が口頭で回答したのみで、市民に対しては知らされておりません。更に本府がきちんと文書で回答して責任を持って説明すべきですし、住民説明会を、声を聞くとおっしゃったんですから、開始していただきたいと思います。
そして、その際の知事説明会では府道西京高槻線、通称『物集女街道』などの府道整備について早期完成を目指すとされたものの目処は示されず、公共交通機関での来場を推奨、シャトルバス運行の組み合わせで対応すると発言されています。市役所前の府道湯原向日町線の拡幅計画、アリーナが建設されれば歩行者の利用が一番多いことが見込まれる府道向日町停車場線についても言及がありませんので、住民が不安になるのは当然です。再度アリーナ計画に伴う府道整備計画がどうなっているのかお聞かせください。
○西脇隆俊知事 島田議員の再答弁にお答えいたします。
まずルートが決まらないから何もしないのかというご質問に対してでございますけれども、現在、国土交通大臣が地域の沿線自治体に対して詳細な説明をするようにという指示を受けて、国・運輸機構を受けておりますから、それの内容を待って我々としてはきちっと対応したいと思いますし、どちらにしてもこれはこれから事業計画が徐々に明らかになっていく中で、環境影響評価手続の中も含めて、我々から言うべきことをきちっと言っていくというプロセスがありますから、いずれにいたしましても今発表されたものだけでは判断できないことが多くございますので、まずは国土交通大臣の指示による説明を待ちたいというのが今の立場でございますし、間に合うのかということに対しましては、それでも十分間に合うというふうに考えております。
また負担につきましては、これは従来から受益に応じた負担ということを言っておりますから、いま概算の事業費だけは示されておりますけれども、それぞれの負担については何も示されておりませんし、着工5条件の中の第1項目めでございますから、これにつきましてもいずれ事業の概要が明らかになる時になって、我々としては受益に応じた負担について引き続き力強く求めてまいりたいと思っております。
それからアリーナ整備にともなう府道の整備でございますが、これは従来から府道の整備につきましては、向日市のまちづくりとか、あとは交通課題への対応も含めて府道の整備計画を作り、既に事業化したものにつきましては、できる限り早期の完成を目指していきたいと思っております。
ただ、これからも様々なアリーナ整備についての様々なご意見の中で、府道整備につきまして、さらなる必要が生じるかどうかにつきましては、それは十分に検討してまいりたいと思っております。ただ、渋滞とアリーナへのアクセス対策につきましては、議員からもご紹介ありましたけれども、公共交通機関の利用の推奨とかシャトルバスの運行、駐車場の活用、それから歩行者の動線の分散化など、ハード・ソフト両方の対策で万全を期してまいりたいと考えております。
○島田敬子議員 新幹線の計画です。
十分な情報が示されない、いつの時期に判断されるのかということですが、スケジュール通りに行きますと、来年1月知事意見発表と、年内には準備書ということになっていて、これ全然住民が説明を受ける機会もなければですね、情報が提示されないわけですよ。こういう進め方が大問題であります。
いったい誰がルートを決めるのか。推進体制はどうなのか。京都新聞は
「沿線自治体選出を中心とした少数の与党国会議員だけでは、多様性や長期的な視野を反映しづらく、抜本的に見直すべきだ」
と指摘をしました。
2016年12月、関西広域連合が合意をしていた米原ルートを現在のルートに変更したのが与党PTです。当時政府への質問主意書に対する内閣総理大臣答弁書では、同ルートは与党PTが決定したもので政府として答える立場にはないと、当時の読売新聞は
「延伸計画は政治決断で進んでいると、この声が国土交通省から漏れ聞こえる」
とも報じました。つまりルートはですね、このように政治決断で進んでいるわけであります。政治決断で知事が今しっかりと物を言う、このことが必要だ指摘をしておきたいと思います。
建設の目的を南海トラフ大地震により影響を受ける東海道新幹線の代替機能を担うと繰り返されましたが、30年以内に75%の確率で予想される南海トラフ地震には間に合いません。予定される新大阪駅は津波被害想定地域であり、津波が大深度地下トンネルを通り京都まで遡上します。東海道新幹線の代替機能は果たせません。2022年3月、福島県沖地震では震度6強で走行中の東北新幹線が脱線しました。今回のルート、長大なトンネルでの走行中の事故も想定をしておりません。北陸新幹線京都延伸計画は米原ルートも含めて中止するしかないと考えております。指摘をしておきます。
アリーナ問題についてですが、どのような開発も住んでいる人たちが安心して住み続けられることが大前提です。アリーナ先にありきでなく、住民合意のないアリーナ計画は撤回し、住民説明会を開催するなどして声を聞き見直すことを強く求めて、次の質問に移ります。
次に、中小企業支援と一体での賃金引上げについてです。
8月29日、地域別最低賃金改定について、全ての都道府県で最低賃金審議会の答申が出そろい、全国加重平均51円増で現行の1,004円から1,055円となります。全国で過半数の自治体で目安に上積みし、最後に答申を出した徳島県は34円を上積みしまして84円増と過去最大の引き上げとなります。
ストライキなど労働者の運動とともに、これに押された後藤田正純知事が最低賃金審議会で、
「賃金が安いイメージが固定化すると若者が県外に出てしまう」
との異例の意見陳述を行い、最低賃金を1,000円超えに引き上げるよう審議会は労働局に要請しました。6月定例会では、
「賃上げする中小企業に対して支援策を打ち出す」
ことに言及したことも後押しになったそうです。
岩手県では、国政野党が力を合わせた“オール岩手”で再選された達増知事が、岩手県労働局に最低賃金引き上げを申し出ました。岩手県では既に
「賃上げの加速化のために、中小企業等への支援費」
として最大1事業所あたり100万円の支援を行っています。
地域の答申には、社会保険料の事業主負担軽減、中小企業の直接支援を求める要請が相次ぎましたが、岸田政権はこうした地方からの声に正面から答えず、地域間格差を温存したまま、平均1,500円を2030年代半ばに先送りしています。最低賃金を全国一律に改め、中小企業支援とセットで1,500円以上を実現する政治の転換が求められます。
京都では、8月5日、京都地方最低賃金審議会が、京都府の最低賃金について、時間額を50円引き上げ、1,058円とすることを答申しました。「一桁違うのではないか」との声も上がっております。
京都総評が実施した『京都最低生計費試算調査結果』では、20歳代の労働者が京都市内で普通に生活するには「時給1,700円以上必要」であることが明らかになり、最低賃金審議会に対して、昨年に続き10,000筆を超える
『直ちに最低賃金1,500円への引き上げと中小企業支援の抜本的強化を求める署名』
を提出されました。審議会の意見聴取には、最近ぎりぎりで働く非正規労働者・学生などが実態を告発されました。これらの運動が反映し、答申には、
「中小企業・小規模事業者を対象とした消費税の減免措置、社会保険料の事業主負担分の免除・軽減など、賃上げの原資の確保につながる直接的な支援策を、行政として実施するよう政府に対して強く要望する」
ことや、
「業務改善助成金について、設備投資や人材育成投資等を伴わなくても活用できるなどの要件緩和を行うこと」
「賃上げを直接的に支援する新たな支援制度の創設」
等を盛り込みました。
そこで伺います。知事は、労働局や最低賃金審議会に対してどのような意見、要望をされたのでしょうか伺います。この間、私どもは、中小企業団体を訪問し、御意見を伺いました。
「春闘で大企業が賃上げしたので、人材確保のために追随して賃上げをしたけれども、無理をしている」
「50円アップでも戦々恐々」
「先立つもの、直接的な支援策が必要」
「コロナ禍に加え人件費が上がり、原材料が上がり、価格転嫁ができない。社会保険料や公共料金、税負担が重い」
などの声です。
そこで、伺います。京都府最低賃金審議会答申に盛り込まれた消費税の減免措置、社会保険料の事業主負担分の免除・軽減や、業務改善助成金の要件緩和を国に要望するとともに、賃上げを直接支援する京都府の制度創設について直ちに取り組んでいただきたい。ご見解を伺います。
次に、農業・農村支援についてです。
主食の米が在庫不足に陥り、店先から消え、コメの業者間の取引価格は前年2倍近くに高騰しているなど、流通業者や消費者に深刻な混乱と不安を広げています。飲食店や医療機関、高齢者施設などでは、仕入れや利用者の食事用のお米の確保が困難となるなど、府民生活にも深刻な影響が広がっておりますことから、8月23日、我が党議員団として、府に対して「コメの不足・価格高騰に対する緊急対策を求める申し入れ」を行いました。農林水産部長は、
「在庫は足りていると農水省から聞いている。もうすぐ新米も出る」
と述べられましたが、その後もスーパーでは入荷してもすぐに店頭から無くなる状態が続き、まさに令和の米騒動という事態になっています。
農水省は、昨年の高温障害による品質低下、コロナ後のインバウンド回復による需要増、南海トラフ地震臨時情報を受けた消費者がお米を買いに走ったことが要因だとしますが、米の供給量が少なかったのが最大の原因です。政府は、6月末の時点で適正在庫は200万㌧前後としていますが、今年は昨年に比べて41万㌧も少ない156万㌧となってしまいました。2021年産米米価下落の原因が過剰生産にあるとして、年間20万㌧以上の減産を2年連続で行い、在庫を減らしたのです。年間77万㌧ものミニマムアクセス米の輸入を続ける一方で、生産農家に対してはひたすら生産減を押しつけ、生産者米価の下落に必要な対策を打たずに来たばかりか、新たなコメ先物取引などに市場化を進め、需給と価格を市場任せにしてきたからであります。
コメ農家は、生産者米価、飼料・資材高騰で時給10円で米作りを強いられて、離農・廃業が加速しております。京都府南部の農業委員会会長さんは、
「集落の農地は100haほど、農家は以前50軒あったが今は19軒になり、そのうち跡継ぎがいるのは3軒」
と話されました。京都府の2020年農林業センサス中間では、2010年度比較で総農家戸数が約10,000戸減少、従事者も8,000人減と、約3割も減っています。農業従事者の6割が 70歳以上と、高齢化で離農せざるを得ず、集落崩壊の危機が広がっております。
ところが、5月29日、自民党・公明党に加え、日本維新の会の賛成で可決、成立した『食料・農業・農村基本法』は、これまでの唯一の目標としてきた食料自給率の向上を実質的に投げ捨て、「安定した輸入の確保」のために「輸出相手国への投資の促進」を加えました。坂本農水大臣は、
「食料の安定供給は国内の増産ではなく安定的輸入だ」
と発言し、鈴木副大臣は、基幹的農業従事者が30万人まで減ることを前提に、
「農業ロボットやスマート農業規模拡大で対応し、それでも補えないなら外国人労働者を」
と発言する始末です。危機を招いた反省がありません。
そこで、伺います。気象条件や社会情勢などのわずかな需給の変化でコメ流通が混乱し、生産者価格が乱高下する一方で、店頭価格が高騰している現状をどのように認識されますか。また、緊急に価格高騰対策を実施すべきと考えますが、いかがでしょうか。
農業を国の基幹的産業に位置づけ、食料資源を回復するとともに、際限のない輸入自由化路線の転換による食料自給率の抜本的な引き上げ、多少の不作や需要増にも対応できるような生産・備蓄の確保、豊作などで供給が上回った場合には国が買い上げ備蓄に回すなどの対策、家族農業経営を農業政策の中心に位置づけるとともに、欧米では当たり前の所得補償や価格保障を抜本的に充実するよう国に求めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。
○西脇隆俊知事 最低賃金引き上げへの労働局等への意見についてでございます。
最低賃金は、厚生労働大臣の諮問を受けた中央最低賃金審議会が答申した改定額の目安を参考に、各地方最低賃金審議会において公労使による十分な議論がなされ、そこで出された答申を踏まえて、各都道府県労働局長において決定されるものでございます。京都府では、これまでから国に対しまして、中小企業が賃金引上げの原資となる収益を確保できるよう、生産性向上の支援など、賃金引き上げに向けた環境整備を要望してまいりました。さらに、京都労働局長も参画する京都労働経済活力会議におきまして、昨年10月には、持続的な賃上げの必要性など私の思いを労働局長に直接申し入れ、参加者全員が連携して賃上げに取り組むことを文書で確認したところでございます。
次に、京都府独自の賃上げ助成制度についてでございます。賃上げは、労働者の生活の安定と向上が図られることにより、経済の好循環をもたらし、さらには地域経済の活性化にもつながることから、重要だと考えております。限られた財源の中では、中小企業が利益を確保し、持続的に賃金の引き上げができる体力をつけていただくための支援を、重点的に行うことが効果的だと考えております。そのため今定例会において、生産性向上の好事例やノウハウを取り込むための勉強会や、その参加者が勉強会の内容を踏まえた設備導入等の取り組みを一体的に支援するための予算案を提案しております。
なお、税や保険料などの負担のあり方につきましては、社会経済情勢の変化や給付と負担のバランスなどを踏まえまして、一義的には国において検討されるべきものと考えております。また、業務改善助成金につきましては、申請手続の簡素化など、より使いやすい制度となるよう国に繰り返し要望しているところでございます。今後とも、あらゆる施策を総動員し、賃金引き上げができる環境の整備に取り組んでまいりたいと考えております。
次に、食用米の需給と価格についてでございます。
米は主食として欠かせない品目であり、産地が技術者のニーズを的確に把握し、計画的な生産に取り組み、安定的な取引関係を構築することで需給と価格の安定を図ることが重要だと考えております。今般の米の品薄状態は、令和5年産米の堅調な国内消費を背景に低い在庫水準であったことに加え、米の在庫が最も少なくなる端境期である8月に、地震や台風に備えた買いだめや、お盆休みでの流通の停滞などがあったことが要因とされております。京都府では、先月の段階で、品薄状態の回復見通しについての国の見解を踏まえ、府民の皆様に冷静な行動を促すためのメッセージを発信いたしますとともに、国に対し、消費者へのきめ細やかな情報発信と流通の円滑化などを求めたところでございます。今後も国に対し、本年度の米の品薄状態と価格高騰の原因を分析評価し、次年度以降の需給と価格の安定化に向けた対策につなげるよう要望してまいりたいと考えております。
次に、コメ政策などに関する国への要望についてでございます。今般改正された食料・農業・農村基本法では、食料安全保障の強化を基本理念とし、農産物の安定供給や農業法人の経営基盤強化、スマート技術を活用した生産性向上など、農業の持続的発展のための基本的施策が定められているところでございます。今年度中には、国において改正法に基づく中長期の指針となる基本計画の改定が予定されておりますことから、京都府といたしましては、農産物の適正な価格形成の仕組みの構築など、農業所得の向上につながる施策について、引き続き国に要望してまいりたいと考えております。米の需給安定に関しては、コロナ禍で過剰在庫を抱えた際には、全国知事会を通じて過剰在庫米の買い入れによる市場隔離を求めたところであり、今後とも、現場の実態を踏まえた制度運用を国に要望してまいりたいと考えております。また、地域農業を支える家族経営体への支援については、経営の安定化に向け、所得保障などではなく、生産性の向上や付加価値の高い米の生産、市場開拓などを進めることが重要だと考えております。今後とも、個々の農業者に寄り添い、生産、販売の両面からきめ細やかな支援を実施し、京都府農業の活性化に取り組んでまいりたいと考えております。
○島田敬子議員 中小企業支援と一体の賃上げについて再質問いたします。「賃上げの必要性」も「各自治体の独自施策」も認めながら、限られた財源の中では、中小企業の体力をつけていただくための支援を重点的に行うとか、予算も提案されておりますが、いろいろな要件で使えないというのが実態なので、直接的な支援を岩手県などのように行っているので、京都府がそこに踏み込んでくださいと、京都府独自の支援策を検討すべきとお尋ねをしております。審議会の答申通りいろいろ言わなくても、答申されたわけですから、このことを真っ直ぐ国に届けていただきたい。明確にお答えください。
農業・農家支援についてですけれども、知事は記者会見でも、米の取引価格が需給バランスで決まっているのだと、ある程度新米が出てくれば価格も落ち着くと見通しを示したけれども、米不足は一過性のものではありません。なぜかというと、コメ生産の大半を占める兼業農家を敵視し、直接支払などの支援がほとんど無くなりました。あちこちで、もう来年は米作りを辞めるという声も広がっています。生産基盤そのものが弱体化しています。これを直視しなければなりません。
所得補償は否定されましたけれども、農業大国の欧米諸国では、農産物の価格保障、手厚い所得補償で農業を支え、農村環境を維持し、食料自給率を向上させているんですね。スイスの直接支払い制度は、1農家あたり500万円、農業所得に占める政府補助金の割合が92.5%、ドイツも77%です。日本は30%そこそこで、いかに貧弱かがわかります。米の再生産を下支える価格の保障、農家の所得補償の抜本的拡充は緊急課題ですが、その認識にはなぜ立たれないのですか。お答えください。
○西脇隆俊知事 島田議員の再質問にお答えいたします。まず、賃上げについてでございますが、今、他県の例が御紹介がありましたけれども、賃上げを直接的に補助金で支え続けることは財源も含めて困難だと考えておりまして、コロナ禍を脱した現在の状況においては、中小企業等が賃上げに必要な体力をつけるための環境整備に限られた財源を投入していくことが効果的だというふうに考え、施策を進めて参りたいたいというふうに思っております。なお、賃上げの必要性、その他の環境整備につきましては、国に対して引き続き要望してまいりたいというふうに思っております。
それから、コメのことでございますが、先ほども答弁いたしましたが、まず、今年度起こったことにつきましては、国におきまして十分に分析・評価を行うことが重要でありまして、その上で、次年度以降の需給及び価格の安定化に向けましてはどうした対策がいいのかも含めて、国に対して要望することも検討してまいりたいと思っております。いずれにしても、食料の安定的な供給のためには米の生産も安定しなきゃいけないということで、これまでの減反政策も含めてでございますけれども、食料の安定的な供給確保というのが今回改正された食料・農業・農村基本法の中にも明確に謳われておりますので、そのために農業政策として何が必要かということにつきましては、今年度のこの8月の状況も踏まえて、国に対してきちっと検証、そして新たな政策の立案につなげていただきたいと思っております。
○島田敬子議員 賃上げについて、京都総評が自治体問題研究所とともに行った賃上げによる経済効果の調査がございます。京都府内で最低賃金を時給1,500円に引き上げますと、生産額が1,655億円増加し、雇用は14,884人増え、雇用者所得が421億円増える。家計消費が増えますと、京都市・京都府の税収増が28億円と好循環になるんです。最低賃金の引き上げが労働者も経営者も行政にも好循環をもたらすということで、このような希望ある展望を示してほしいなと。中小業者の皆さん、これお話ししたら喜ばれました。今のマイナスではなく、そうした展望を持って中小企業を本気で応援することが必要ですので、中小企業の支援と一体で賃上げが実現できるよう、知事の責任を果たすことを求めます。
農業、農家支援について、市場競争にさらす政策では、お米、食料の安定供給はできません。食用米700万㌧、米1俵あたり3,000円の補填をする費用は3,500億円あればできます。トマホークなどを買っている場合ではありません。農業の予算を抜本的に拡充することも国に求めていただきたい。要望をいたします。
次に高等教育の学費負担軽減と学生への生活支援についてです。
9月10日、東京大学が来年度入学から授業料を約10万円値上げする方針を公表しました。東京大学大学費値上げ反対緊急アクションの学生たちが、
「憲法26条と教育基本法4条で保障された教育の機会均等を奪われる」
と抗議声明を発表するなど怒りが広がっています。日本政府は、国際人権条約の社会権規約13条2項c〜e
[※注記:国際人権条約・社会権規約 第13条
- この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。
- この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
c. 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
d. 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
e. 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。]
を批准し、高等教育を漸進的に無償にすることを世界に約束してから12年、学費無償化どころか、私立大学での値上げが続き、国立大学も授業料値上げを煽り、現在、大学の初年度納付金の平均額は、国立大学で82万円、私立大学では平均137万円にもなっています。5月には自民党の教育・人材強化調査会が「教育コストの増加を踏まえ、適正な授業料の設定」を文科省に提言するなど、さらなる学費値上げへの圧力を加える中での値上げ発表です。
国立大学では、法人化以降の20年間で、運営費交付金が1,631億円削減され、研究力低下など深刻な影響が出ております。また、私学助成は教育研究に必要な経常費に対し 8.6%にすぎません。6月には国立大学協会は、財務状況が悪化し「もう限界」であると、国に運営費交付金の増額を求める声明を発表いたしました。京都新聞が滋賀県と京都府の国公立大学に行ったアンケートでは、
「国立大の授業料引き上げは国立大への受験生を減少させる恐れがあり、中長期的に日本の研究力の低下を招く可能性がある」(京都教育大)
と指摘がございました。先日、私どもは京都大学教職員組合と懇談しましたが、
「京都大学でも交付金が減らされている。競争的な資金の確保に頼らざるを得ないが、金額も支給期間も限定され、基礎研究力の低下につながっている」
とお聞きしました。
このように高等教育予算の貧困と学費の高騰は、単に学生とその父母の問題というだけではなく、日本の研究環境を損なっているのです。京滋私大教連が2023年度に行った私立大学新入生保護者へのアンケート結果によると、下宿生の仕送りから家賃を引いた生活費は1日770円ほどで、1日の生活費が8年連続1,000円を割り込んでいます。日本共産党京都府委員会は昨年秋から、『学費ゼロプロジェクト』を立ち上げまして、学費値下げの署名やアンケートを取り組みまして、多くの学生や父母の声を聞かせて頂い
ております。
「3日間続けて深夜バイトをし、寝る間もなく授業に出ている」
という学生など、多くの学生がアルバイトをしており、それでも苦しい生活を余儀なくされ、また、親が借金を借りたり副業を増やすなど、学生とその家族の生活に重くのしかかっているのです。
「お金の心配なく進学を考えられる制度が作られることを希望します。」
切実な声が寄せられました。
国においては、2020年度から、授業料免除・給付型奨学金を内容とする『高等教育の修学支援新制度』が導入されましたが、条件が厳しく、実情に合わないために、学生の1割しか対象になっておりません。対象が狭すぎること、機関要件があり全ての教育機関が対象になっていない事、成績要件が厳しすぎる事などが原因です。
留年など修業年限で卒業できないことが確定した場合は、直ちに支援が打ち切られる他、例え十分な単位を取っていたとしても、相対評価で成績が下位4分の1に入った場合は、「警告」を受け、2回「警告」を受けますと支援が打ち切られます。一生懸命に学んでいても、周りの学生が優秀でありますと打ち切られているんです。この成績要件により、昨年度は全国で19,000人が支援を打ち切られ、京都府内では2020年から3年間で少なくとも1,666人もの学生が支援を打ち切られました。そもそも経済的に不利な立場にある学生が支援を受けているわけですから、打ち切りは学業を継続できるかどうかに直ちに関わり、あまりに冷たい仕打ちと言わなければなりません。
OECD加盟各国で最下位の教育関連費の政府支出を見直さず、受益者負担・自己責任を押し付けて、若者の学ぶ権利を奪い、バイト漬けで自由な時間を奪い、人格の涵養も阻んでいるのです。
いま高等教育の在り方は岐路にあります。学費値上げを行いつつ、「人材」として優秀な学生のみ「投資」として支援するというような政策から、一人ひとりの教育を受ける権利が本当に保障される政策への転換が必要です。
そこで知事に伺います。紹介した学生生活の実態について知事はどのようにお考えか伺います。府内の学生や子どもたち、保護者のためにも、国立大学法人運営交付金の増額や私立大学等経常費補助金の拡充、国立大学授業料標準額の引き下げなど、学費負担そのものを引き下げるための措置が必要です。授業料減免や給付型奨学金の抜本的拡充、成績要件・機関要件の撤廃を、府として国へ求めて頂きたい。いかがですか。
今こそ、京都府独自で給付型奨学金の創設や奨学金返済支援事業のさらなる拡充を行うとともに、学費を支払うためのアルバイトや遠方からの通学によって、勉強や課外活動の時間を奪われている学生の現状を踏まえて、経済的負担の軽減や学ぶ時間の保障を目的とした交通費や家賃への補助などを行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
次に、マイナ保険証について伺います。
政府は、本年12月2日をもって、健康保険証を廃止し、健康保険証の新規発行を止めて、本来、取得が任意であるはずのマイナンバーカードと一体となったマイナ保険証への移行を躍起になって進めています。マイナ保険証の利用が全国で1割程度と伸びないなか、厚労省は5月から7月を『利用促進集中取組月間』とし、12月の保険証廃止に向け利用拡大キャンペーンに総力を挙げています。
その中で、薬局の窓口で「マイナ保険証でないと薬は出せない」と言われたとか、現行の健康保険証の患者が診療順を後回しにされる事態も起きています。12月からはマイナ保険証でなければ使えないという誤解も広がっています。京都新聞報道では、地方紙18社が実施した『マイナ保険証LINEアンケート』で、利便性が高まった、デジタル化推進を求める声がある一方、情報漏れや薬局窓口などでのトラブルを訴える声が寄せられております。そして、現行保険証の存続希望は8割を超えました。
厚労省は、マイナ保険証利用者数の増加に応じ診療所や薬局に一時金を払うなどの取り組みに今年度887億円の補正を組み、マイナカード取得、マイナカードを健康保険証に紐付けたポイント付与に、1兆3,000億円もの巨額の税金投入を行いました。いくら利用促進に税金を費やしても、国民の不安や懸念が解消できるはずがありません。根底には自分の個人情報が本当に守られるのか、マイナンバー制度のそのものへの不信感があります。こうした国民の不安に応えず、任意であるはずのマイナンバーカードの取得を事実上強制する政府のやり方では国民の信頼を得られるはずはありません。
さらに、オンライン資格確認を義務化したことで、地域医療を支えておられる診療所の廃業・休業が急増しています。国民の利便性向上をうたい文句に進められているデ
ジタル化が、府民を医療から遠ざけるのであれば本末転倒です。
そこで伺います。岸田首相は、当分の間、マイナ保険証を保有していない方に『資格確認書』の交付を表明しました。また厚労省は、
「現在の保険証がマイナ保険証と資格確認書の2種になるととらえてもらえればいい」
と発言しました。それならば、現行の保険証をそのまま残すことが最も合理的であると考えますがいかがでしょうか。
また、国のデジタル社会の実現に向けた重点計画では、健康保険証以外にも、介護保険証や医療機関の診察券、運転免許などのマイナカードとの一体化検討しており、デジタル技術を使って収集した国民のデーターを活用して、企業利益の増加を狙っていると考えます。
そこで伺います。社会のデジタル化の狙いを「個人情報の利活用」に置くかぎり、国民的理解を得ることは不可能です。個人情報の保護、自己情報コントロール権を確立することを優先すべきと考えますが、知事のご所見を伺います。
○西脇隆俊知事 学費の値上げと学生生活の実態についてでございます。大学の授業料につきましては、国立大学では、国が定める金額を標準額として社会経済情勢等を総合的に勘案して設定されており、私立大学では、各大学の運営方針や経営の観点から各大学独自の判断で設定されております。また、学生生活の実態につきましては、日本学生支援機構が実施している学生生活調査結果などの調査、また統計資料では、アルバイト従事者の割合や奨学金の受給者の割合が増加しており、大学生のいる家庭の負担軽減は全国的な課題だと認識しております。大学生に対する修学支援につきましては、基本的には、高等教育を所管する国におきまして財源を確保し、全国で統一的に行われるべきものだと考えております。国におきましても、中央教育審議会が本年8月に公表しました、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育のあり方についての中間取りまとめにおきまして、授業料の負担や公的な財政支援、公費のあり方についても議論が引き続き必要である旨が示されているところでございます。
次に、学費負担の軽減についてでございます。現在、国においては、授業料の減免と給付型奨学金を併用した就学支援が実施されており、令和6年度から、多子世帯や理工農系の大学生について、世帯年収約600万円の中間層へ支援対象が拡大したところであります。また、令和7年度概算要求においては、令和7年度からの多子世帯全ての大学生に対する授業料の無償化が盛り込まれております。
京都府といたしましては、大学生が経済的な理由で学業をあきらめることがないよう、本年6月には、国への政策提案において所得制限の緩和など支援制度の拡充を求めますとともに、国立大学への運営交付金や公立大学への地方交付税措置、私立大学への助成の拡充につきましても要望したところであり、今後とも国に求めてまいりたいと考えております。
次に、大学生の生活費への補助等についてでございます。大学生への生活費の支援につきましては、国の修学支援新制度において給付型奨学金により行われているところであり、交通費や家賃についても生活費の中で賄うものと考えております。京都府が独自に行っております就労・奨学金返済一体型支援事業は、中小企業の人材確保等、若手従業員の職場定着及び経済負担の軽減を目的として、奨学金返済手当の支給を行う中小企業を支援する制度であり、これまでから、企業や働いている方のご意見をお聞きする中で、支援対象者の府内居住要件の廃止など順次改善を行うなど、着実に成果を上げているところでございます。京都府といたしましては、大学生が経済的な理由で学業を諦めることがないよう、今後とも、授業料減免や給付型奨学金について、対象者の拡大や所得制限の緩和などの全国統一的な制度拡充を国に要望してまいりたいと考えております。
次に、マイナンバーカードの健康保険証としての利用についてでございます。国は、昨年4月から、マイナンバーカードを利用して患者がオンラインで被保険者情報を医療機関などに提供し、資格確認後に保険診療等が提供される仕組みを開始いたしました。国の調査によりますと、マイナンバーカードを取得された方の8割が健康保険証としての登録を済ませ、また半数の方がカードを携行されています。さらに、健康保険証としての利用割合も伸びてきており、制度移行に向けた準備は進みつつあると考えております。また、マイナンバーカードを取得されていない方や健康保険証として登録されていない方には、保険証廃止後も保険者が交付する資格確認書で医療を受けていただくこととされております。
京都府といたしましては、府民や医療現場などに混乱をきたさない形で制度移行することが望ましいと考えており、国民に対して丁寧な説明と対策を行い、理解を得ながら進めていただくよう、引き続き国に求めてまいりたいと考えております。
次に、個人情報の利活用や保護についてでございます。社会のデジタル化を推進する目的は、デジタル社会形成基本法において、経済の持続的発展や国民の幸福の実現に寄与することと定められております。また、データの活用につきましても、官民データ活用推進基本法等において、個人及び法人の権利利益などが害されることのないようにすべきものと定められております。京都府におきましても、京都府スマート社会推進計画の基本方針に個人情報保護や情報セキュリティに万全を期すことを掲げ、各種施策を推進することとしております。引き続き、個人情報保護法等も含めた関係法令を遵守し、府民の個人情報が予期しない形で取り扱われることのないように十分注意しながら、社会のデジタル化を推進することで全ての地域が活力にあふれる郷土づくりを進めてまいりたいと考えております。
○島田敬子議員 高等教育修学支援新制度について、確かに今年度から多子世帯、理工農学系への支援拡充がありますが、同時に、取得単位数の引上げなどで成績要件を厳しくしているので、先ほども申し上げたように、対象から外れる、打ち切られるということも起きかねない事態でありますので、ここはまだまだ情報が公開されておりませんけれども、しっかりこの点はやはり見直すべきです。知事がおっしゃったように、経済的な理由で学ぶべない子が出ないように、はっきりとものを言っていただきたいし、国へ求めるとともに、府としても救済措置とか独自の給付制奨学金創設へ検討いただきたいと要望しておきたいと思います。
マイナ保険証ですが、保険証廃止は撤回することを国に求めていただきたいのですが、どうも知事は丁寧に説明して進めていってほしいという立場のようでありますので、少し見解が違いますけれども、しかし、たくさんのお金を使って、保険証に加えてまた資格確認証つくって、これ本当に合理的でもないしですね、命綱の保険証を使ったマイナンバーカードの取得強要でありますので、これはやめるよう強く求めていただきたい。また、12月2日には保険証が使えなくなるような誤解をうまぬように、住民の皆さんへの丁寧な説明を行うことを求めておきたいと思います。
採り上げたテーマ、いずれも一部の財界、大企業の利益、アメリカ言いなりの政治が根底にあります。来るべき政治戦で市民の暮らしに困難を広げる自民党政治の大もと
を切り替えて、希望が持てる政治を実現するために頑張る決意を述べて、代表質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。