平成30年12月定例会 京都府行政の今後のあり方に関する特別委員会―2018年12月17日〜島田敬子府議の質疑応答部分

所管事項の調査

下記のテーマについて、理事者及び参考人から説明を聴取した後、質疑及び意見交換が行われた。
 ・人口減少時代の持続可能な京都を目指して─自治体戦略2040に学ぶ─

◯二之湯委員長  まず、所管事項の調査についてでありますが、本日のテーマは「人口減少時代の持続可能な京都を目指して─自治体戦略2040に学ぶ─」であり、参考人として、早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭様に御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。
 10月に予定していた委員会については、台風の影響とはいえ、特段の御配慮をいただきながら、直前の中止の判断となり、大変御迷惑をおかけいたしましたことをまずもって参考人におわび申し上げます。
 また、本日は、そういった事情があったにもかかわらず、本委員会のために改めて参考人をお引き受けいただき、まことにありがとうございます。
 稲継様におかれましては、大阪市役所での勤務を経て、早稲田大学政治経済学術院教授として行政学、人事行政学、地方自治論などの分野を専門に研究されるとともに、文部科学省の中央教育審議会・教員の働き方改革部会委員など、政府や自治体の公職を多数歴任し、また多数の著書を上梓されるなど、幅広く御活躍されていると伺っております。
 本日は、そういった日ごろの御活動を踏まえたお話をお聞かせいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは初めに、理事者からテーマに係る説明を聴取いたします。説明は、簡潔明瞭にお願いいたします。

◯村尾政策企画部副部長(企画総務課長事務取扱)  それではまず、お手元の「京都府の2040年将来予測に関するデータ」について、御説明をさせていただきます。お手元の資料をお願いいたします。
 京都府で把握しております将来予測に関するデータを、子育て・教育、医療・介護、インフラ・公共施設、空間管理、治安の順に取りまとめております。
 まずめくっていただきまして、1ページでございます。
 (1)保育ニーズの試算結果データでございます。これは、日本総合研究所が取りまとめをいたしました「保育ニーズの将来展望と対応の在り方」に記載されている、京都府分のデータでございます。保育所及び幼稚園のニーズの将来予測であり、母親の就業率が高くなると、幼稚園から保育園にニーズがシフトしていくと予測されております。
 次に、(2)2013年を基準とした中学校3年生数の推移でございます。こちらは、京都府の各エリア別に府立高校の入学者推計を10年後の2028年まで予測したデータでございます。
 次に、2ページをごらんください。(1)の高齢者人口の将来推計でありますが、こちらは京都府内のエリア別に高齢者の人口及び総人口に占める比率を2045年まで予測したデータでございます。2040年の将来推計といたしましては、京都・乙訓エリアや山城南エリアでは、65歳以上の人口比率が34.6%、34.4%になる。丹後地域においては、48.9%になるという予想になっております。
 次に、3ページをごらんください。(2)の高齢世帯の将来推計でございますが、一番上、1985年の高齢世帯比率8.3%が、2035年には29.2%になります。特に、高齢世帯のうち高齢単身世帯比率の上昇幅が大きくなっております。
 続きまして、4ページでございます。(3)介護需要の将来予測でありますが、京都府内のエリア別に2018年度から7年後の2025年度までの認定率の将来予測でございます。表の一番右側、山城南エリアでは、2018年度の認定率15.9%が2025年度には18.7%に、京都・乙訓エリアでは、21.8%から25.7%になるという状況でございます。
 5ページをごらんください。(4)介護人材の需給推計でございます。これは、京都府全体で2025年に51,940人の介護人材が必要なのに対しまして、供給のほうが45,129人と6,811人の供給不足になるという予測でございます。
 次に、(5)医療需要に対する必要病床数につきましては、2015年の29,006床が2025年には29,957床になり、機能別では、急性期病床が12,386床から9,543床となる一方、回復期病床が2,462床から8,542床となる予測となっております。
 次に、(6)在宅医療等の必要量の推計でございます。2013年度の京都府全体の在宅医療等の必要量は21,784人から、2025年には39,979人になる予測でございます。エリア別では、京都・乙訓が14,113人から27,498人に、山城北が2,872人から5,551人と増加する予測になっているところでございます。
 6ページをお願いいたします。(1)公共建築物の老朽化状況と(2)主な社会基盤施設の老朽化状況でございます。それぞれ、平成27年が2015年でございますので、10年後は2025年ということになっております。2015年9月末時点の対象施設につきまして、築30年経過、建設後50年以上経過する施設の割合を示したものでございます。2040年につきましては、参考として、対象施設が2040年になった時点で引き続き存続している前提ではございますが、50年超の施設の割合をお示ししているところでございます。15m以上の橋梁では2040年には63%に、砂防設備では89%に、府営住宅では79%になる予測となっております。
 また、(3)中長期的な維持管理・更新コストの見通しでは、総務省が推奨いたします公共施設等更新費用試算ソフトによりまして、今後40年における維持管理・更新コストを推計し、ごらんの見通しとなっているところでございます。
 続きまして、7ページでございます。2013年の住宅・土地統計調査によりまして、現況の空き家率を算定したもので、府域全体では13.3%、中丹では17.5%、丹後では15.8%の空き家率となっているところでございます。
 続きまして、8ページでございます。(1)の特殊詐欺の被害認知状況でございます。京都府における2011年から2017年までの、振り込め詐欺及び振り込め詐欺以外の特殊詐欺の認知件数及び被害金額の推移に係るデータでございます。近年では、認知件数が増加し、被害金額は横ばいとなっているところでございます。(2)金融機関等による特殊詐欺の水際阻止状況は、阻止件数が伸びているところでございます。
 続きまして、9ページでございます。2015年に策定いたしました、京都府の人口ビジョンでございます。こちらは、国立社会保障・人口問題研究所の推計をもとに、京都府の2080年までの人口を推計したものでございます。将来展望のところにございますように、出生率が2040年に人口置換水準とされる2.0程度まで上昇し、北・中部において2030年に社会減が解消、そして2040年以降、5年間で3,600人の社会増が実現いたすという仮定で推計しました推計では、2040年の京都府の人口は2010年の264万人から244万人になるという予測をしているところでございます。
 最後の10ページのほうには、北部、中部、南部別の推計データを取りまとめをしているところでございます。
 続きまして、お手元の「自治体戦略2040の第2次報告に関する府の取組」という資料をごらんいただきたいと思います。
 まず1ページでございます。自治体クラウドの取り組みでございますけれども、1の京都府内市町村における公共施設案内予約システムなどの共同開発システムや、2の住民記録や税、福祉などの市町村の基幹系業務システムのクラウド化を進めることで、(3)のように情報システム運用コストの削減、そして情報セキュリティ向上等の効果が出ているところでございます。
 2ページをごらんください。京都府のテレワーク試行の状況でございます。ワーク・ライフ・バランスの推進を図るため、合計29名の職員が参加して3次にわたる試行を実施したところでございまして、このプロセスを通じて課題を洗い出し対応を順次進めているところでございます。
 続きまして、3ページでございます。マイナンバーカードの普及につきまして、現状と課題でございます。現在、10%強の交付率にとどまっているマイナンバーカードにつきまして、府内市町村と連携しながら普及拡大に努めているところでございます。
 4ページをごらんください。RPA(※Robotic Process Automation:これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を、人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用して代行・代替する取り組み)導入に伴う効果検証結果でございます。庁内の3所属の業務を対象に業務プロセスの自動化を試行するなど、業務の効率化を進めているところでございます。
 続きまして、5ページをごらんください。地域における移動手段の確保についてでございますが、住民団体等による旅客輸送サービス提供の状況は、府内の24の団体により公共交通空白地等における移動手段の確保が進められているところでございます。
 続きまして、6ページでございます。「コミュニティ・コンビニ」整備事業の概要でございますが、過疎・高齢化が進みます中山間地域の暮らしを支えるため、府内4地域において生活に必要となるサービスをワンストップで提供する拠点構築のモデル事業を進めているところでございます。
 続きまして、7ページでございます。京都府北部連携都市圏の取り組み状況でございます。北部5市2町が連携と協力によりまして、1つの経済生活圏として圏域全体の活性化を図る取り組みを進めているところでございます。
 続きまして、8ページでございます。相楽東部未来づくりセンターの取り組み状況でございますが、相楽東部の3町村が京都府の支援連携のもと、政策連携・共同化を推進するセンターを設置し、交流人口、定住人口の拡大に向け取り組みを進めているところでございます。
 9ページをごらんください。京都府と京都市による施策の協同設置事例である、京都動物愛護センターでございます。府市協同設置により、類似施設の重複を避け、動物死体の焼却を京都市施設で実施することとしたため、府の焼却炉の更新が不要になるなど、施設整備費の大幅な抑制を図ることができているところでございます。
 最後に10ページをごらんください。府計量検定所及び市計量検査所の共同化についてでございます。市内にございました、府・市の類似施設を一元化することによりまして、利便性の向上と事務軽減が図られるとともに、施設集約によるコスト削減を進めているところでございます。
 説明は以上でございます。

◯二之湯委員長  ありがとうございました。
 参考人さんからきょう用意していただいている資料に入る前に、皆様のお手元に、もう一つ、「京都府の2040年将来予測に関するデータについて(委員長作成資料)」というものがございます。これは何かと申しますと、今、理事者から説明があった「京都府の2040年の将来予測に関するデータについて」の中で、皆さんもお気づきかと思うんですけれども、まだ京都府の各部局で2040年の推計値がないというところに関しましては、さまざまな他の資料等々を活用して2040年の推計値を推測するようにということで、私から指示をいたしました結果として、京都府の公式資料ではないんですけれども、きょうの話の参考になるようにということで添付をしたということでございます。ですので、きょうの委員会審議に当たりまして、参考にしていただければというふうに思っております。
 また、京都府の理事者におかれましては、今後、新総合計画策定において長期ビジョンは大体2040年ごろを展望するということになっておりますので、総合計画の作成が充実したものになるように、それぞれで長期ビジョンを策定するのに必要なころまでにしっかりとした推計を京都府としても公式に提出できるようにということで、また努力をしていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、次に、参考人の御意見を拝聴いたしたいと思いますが、説明の準備が整うまで、しばらくお待ち願います。
 それでは、よろしくお願いいたします。

◯稲継参考人  早稲田大学の稲継と申します。どうぞよろしくお願いします。
 先ほど、委員長から御紹介がありましたように、最初は大学を出て大阪市役所に13年間勤務して、それから姫路獨協大学、大阪市立大学、そして今の早稲田大学に移りました。早稲田大学にはもう11年勤務していることになります。
 きょうは、「人口減少時代の持続可能な京都を目指して─自治体戦略2040に学ぶ─」ということでお話しするように御依頼を受けました。大変光栄なことでございます。
 自治体戦略2040の報告書については、委員の皆さん方は大変お詳しいとは思いますけれども、私にとっては非常に現実味を帯びたものではなかったのです。けれども、先月、2週間前と5日前に私の孫が相次いで生まれまして、彼らが大学4年生になるころの日本の社会がどうなっているのか、そういうことを考えた場合に、これはちょっとイメージしやすいものだということを感じました。そのことも踏まえて、この自治体戦略2040について主にお話を進めてまいりたいと思います。着座してお話をさせていただきます。
 この自治体戦略2040の研究会は、昨年から始まりまして、今年の4月、6月に報告書を出しておられます。総務省の自治行政局行政経営支援室のほうで事務局をしてまとめられたものであります。彼らとお話をしてお聞きしたところでは、各省庁を巻き込んで2040年にどういう日本の社会になっているのかということをまず理解した上で、そこから今、何をすべきかということをバックキャスティングして、どういうふうに取り組むのかということを考えたということでありました。
 従来の発想でいうと、現状がこうだからこう変えていくべきだとか、そういう話になるんですけれども、各省庁は、2040年前後の未来の姿をいろいろな形でいろんな検討会で報告書を出しているものですから、それもかき集めていろんな省庁を巻き込む形でこの報告書をつくっていかれました。ここに挙げているようないろんなものについて検討したというか、総務省自体が持っているデータはそれほど多くはなくても、各省庁からいただいたデータをもとに議論されたということであります。
 スライドが二個一で入っているスライドをこれから投影していきますけれども、それとお手元にもう1つ配付資料というのがありまして、これは自治体戦略2040の報告書から抜粋したもので、こちらのほうが鮮明に見えていますので、見ていただくときにはそちらのほうを見ていただくということになります。
 まず、自治体戦略2040の研究会ですけれども、この報告のところは、2040年ごろをターゲットに人口構造の変化に対応した自治体行政のあり方の検討が必要だということであります。増田レポートが出てから、この先、どうなるんだという暗い話ばっかりだったわけですけれども、実際に2040年の時点でどういう日本の未来があって、それを維持し、あるいはそれを改善するためには現状をどういうふうにしていかなければならないのかということを考えていこうということであります。
 中段のやや下のところにあります、「持続可能で多様な自治体による行政の展開が、我が国のレジリエンス向上につながる」というところから、その上のところですけれども、「高齢者人口がピークを迎える2040年ごろをターゲットに、1)住民生活に不可欠な行政サービスがどのような課題を抱えていくことになるのか、2)その上で、住み働き、新たな価値を生み出す場である、都市を初めとする自治体の多様性をどのように高めていくのか」といったようなところ。「3) 1)、2)のために、どのような行政経営改革、圏域マネジメントを行う必要があるのか、検討を進める必要がある」、ここがポイントのところです。
 この3)に書いているところですが、「どのような行政経営改革」、これはIoT、AI、RPAの破壊的技術による変革を前提にした議論が今、進められています。それと「圏域マネジメント」、これは今まで連携中枢都市圏とか定住自立圏とかという形で若干の予算措置はありましたけれども、それほど本格的には動いていなかったものをかなり本格的に動かしていこうという背景があります。開催主旨はこういったことです。
 ちょっと全体としてお話ししますと、ことしの6月にこの第2次報告が出まして、7月から第32次地方制度調査会がスタートしています。皆さんも御存じのように、地方制度調査会の最終取りまとめが、大体今までの傾向でいうと2年ぐらい後になされます。今まで、地方制度調査会報告が出されると、ほぼ時をたがわずして地方自治法の改正ですとか関連諸法の改正につながってきています。ですので、恐らく2020年ぐらいに地制調報告が出されて、さまざまな形の法律改正が行われます。その全体として、この報告書には幾つか、「こういう法改正が必要だ」みたいなことが書かれておりまして、それは恐らく地制調に盛り込まれるものだと思います。まだ始まったばかりですので、それほど本格的な議論にもなっていませんけれども、例えばスマート自治体に関連するさまざまな法整備ですとか、あるいは圏域マネジメントでいいますと、後でお話ししますけれども、定住自立圏とか連携中枢都市圏をもう少し格上げする、それから府県による市町村の補完、垂直的補完というのをかなり本格化するということを法律に書いていくということを目指しているのではないかというふうに私は推測しております。
 自治体を取り巻く環境ということで、さまざまな変化が起きています。入院需要が急増し、医療と介護の連携が必要になってくるとか、福祉で介護需要が増加するけれども、介護人材は圧倒的にこれから不足が予測されています。
 それから、インフラでいいますと、高度経済成長期に投資したさまざまなインフラが、次々に更新時期を迎えていて、その費用がばかにならない。今までの新設プラス更新費用を上回るほどの費用が必要になってくるということであります。空間管理でいうと、都市のスポンジ化。人口集中地域(DID)がどんどんスポンジ化していって、それをどうするのか、空き家の管理をどうするのかといったようなところが問題になってくるということがあります。左上のところは空き家数、空き家率が急増していくということで、それが治安とか防災にさまざまな問題をもたらすことになるんじゃないかとかですね。
 産業でいいますと、国際競争の激化にどう対応できるのか。今、日本の産業の力がかなり衰えているのは御存じのとおりでありますけれども、それをどのように回復させるのかということであります。
 左下でいいますと、ICTによる行政課題の解決ということで、今までICTということでずっと言われてきましたけれども、この1、2年、自治体にもRPA、AIの導入がかなり進められつつあります。そういった破壊力のある技術をどのように地方自治体の行政課題解決に向かわせるのかということがあります。
 右上のところの教育・子育てでいいますと、15歳未満人口が4分の3になるということであります。昔のベビーブームのころは、毎年260万人の子どもが誕生していました。ベビーブームのジュニアの時代にも200万人ぐらいです。今、100万人を切っております。もうしばらくすると、その4分の3ぐらいにさらになってしまうということで、昔、260万人毎年子どもが生まれていたころに比べると、今、3分の1、4分の1になっているということであります。これが何を意味するのか。日本の将来図が非常に大きく変容する可能性があるということであります。それを少しでも防ぐためには、子育て支援ですとか、あるいは育てやすい環境をどのようにつくっていくのかということが日本国家にとっても課題であるということであります。
 子どもが260万人から97万人まで減りましたので、生産年齢人口が急減することが予想されています。その中で、担い手をどのように確保するのかといったことも課題であります。財政的にも、社会保障関連費とかが非常に大きくなってきているので、昔のように、何でもかんでもお金をつけるというわけにはいかなくなっているということであります。
 人口段階別市区町村の変動ということで、非常に見にくいので申しわけありません。参考資料の4ページのところにもう少し大きなやつが載っていますけれども、ここのところで、人口が増加する市町村というのはごくわずかで、ほとんど減っていくということであります。人口段階別に、減るパーセンテージの予測を2040年まで市区町村別にやっていますけれども、この中で京都府内の市区町村について私のほうで赤丸を囲みました。ごくわずか、京田辺市、木津川市で人口増が予想されていますけれども、その他の大部分の市町村で人口減少が予想されている。とりわけ、マイナス40%とか、あるいは次のスライドにありますけれども、マイナス50%、60%近くが予想される地域もたくさんあるということであります。
 次に、各行政分野の課題でありますけれども、子育てでいうと、減少傾向なのは先ほど申し上げたとおりですけれども、働くお母さんは増えるので、それによって何が起きるかというと、幼稚園の園児の数は圧倒的に減少する。他方で、保育ニーズがますます増加する。しかも、0歳、1歳、2歳の保育ニーズが非常に増大するということであります。これにどう対応するのか。幼稚園の数は減るというか、園児はどんどん減る。でも、保育ニーズはどんどんふえる。その中でどのようにそれを調整するのか。幼保一元化するのか、ほかの方法があるのかということであります。
 次のところは、小・中学校ですけれども、学校の老朽化の問題であります。耐震問題についてはここ数年、急いで各自治体は耐震補強をしましたけれども、耐震補強だけでは耐えられないほどの老朽化に見舞われている小・中学校も多い。現在は、昭和45年から49年に建てられたものについて更新時期を迎えていて、改築の主な対象になっているということでありますけれども、お金が全然足りていないんですね。足りていないので、相当数が老朽化をそのまま抱えたまま、経年変化していくということになっております。
 それから、小規模校とか廃校が増加する。これは、廃校された数をずっと年度ごとに表しているグラフでありますけれども、青色が小学校、黄色が中学校、赤色が高校で、それらの廃校がこれだけ、毎年500前後あるということであります。
 医療提供体制の話です。高齢者が増加すると、同じ病院の中でも異なる診療科の需要が増えるということで、循環器系とか呼吸器系の疾患が増加するということであります。それに見合った病院の診療科の対応が必要になってくるという話が出ておりました。
 それから、これはもういろんな新聞にも載っているところで、きのうも日経新聞に、東京圏で実はこれだけ介護施設が余っているんだけれども、介護人材が不足しているので受け入れられないみたいな話が出ていましたが、今後の予測でいうと、2025年時点で約40万人不足する。2040年時点では想像できないほどの数が不足する。外国人材を導入するとかそういったことも考えられていますけれども、これにどう対応するのかということが非常に大きな課題になっています。
 次のスライドです。これは先ほど、京都府の状況について御案内いただいたところでありますけれども、道路、トンネル、河川管理施設、下水道環境とか、あるいは水道管もそうですが、50年以上経っているものが非常に増えている。これをどのように費用を工面して更新していくのかということが、非常に大きな課題になっています。
 次のスライドに書いていますのは、これは全国全部じゃないですが、全国でいうと今、3.6兆円ぐらいが維持管理・更新にかかっているけれども、20年後には4.6兆円~5.5兆円になるだろうということでありますが、そのうちの111団体を集計したところ、現在は青色のところが、これは新規の建築とかの費用です。橙色が更新費用ですけれども、この111団体の計でいいますと更新費用が物すごく跳ね上がるので、今の予算だと新築ができない状態になってしまうということが、ここに出ております。
 それから、人材の流動化というのも今後求められているところで、特に真ん中の右側の赤色のところですが、販売従事者とかホームヘルパー・介護職員のサービス業については、人間的な付加価値を求められる職種でありますけれども、ここのところは増えることが予想される。他方で、生産工程従事者ですとか、その他の部分で要らなくなる人材というのはたくさんある。なので、人材のシフトが求められるんだけれども、それに果たして能力開発が追いつくのかという課題が突きつけられています。これは現在、2015年から2030年までの15年間の予測なんですけれども、2040年まででいいますと、これがさらに加速すると考えられるところであります。
 テクノロジー、AIの話はもう既に民間企業、特にFinTech(フィンテック)といいますか、金融系では当たり前に相当数入っています。RPAとAIで、三菱UFJ銀行でいうと1.9万人の人員削減をするとか、そういうことが当たり前に出ているような時代ですので、今後、さまざまな形で人材の移動も起きてくるし、開発もさまざまに進んでいくということであります。
 次のものは、第1次報告のものであります。左上にページ数を打っていますけれども、これは参考資料の12ページに大きいシートが出ていますので、そちらを見てもらったほうが見やすいと思います。
 第1次報告では、「2040年ごろにかけて迫りくる我が国の危機を乗り越えるべく、全ての府省が政策資源を最大限導入するに当たって、地方自治体も持続可能な形で住民サービスを提供し続けられるようなプラットフォームであり続けなければならない」ということで、プラットフォームというのは、パソコンでいうところのWindowsとかMacとかそういう基盤のことですよね。そういう基盤であり続けなければならないということです。「新たな自治体と各府省の施策(アプリケーション)の機能が最大限発揮できるようにするための自治体行政(オペーレーティングシステム)の書きかえを大胆に構想する必要がある」ということで、これはかなり踏み込んで書いていると思います。今まで総務省は、こういう形でほかの省庁の縄張りに足を突っ込むことはあんまりなかったんです。経済産業省はそういうのもずっとやってきた省庁でありますけれども、総務省もこういうところまで踏み込んでいる。それほど危機感を感じているということだと思います。
 それで、3つの柱をこの第1次報告では書いていまして、1番目に「若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏」、2番目に「標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全」、3番目に「スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ」ということであります。
 1番目の「若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏」ということで、左側に青色で「2040年ごろにかけての危機」とあります。まず、東京圏は、入院・介護ニーズの増加率が全国で今後最も高くなります。医療・介護人材が地方から流出するおそれ、地方から東京へ介護人材が集められてしまっていくことが予想されます。それから、東京圏には子育ての負担感につながる構造的要因が存在して、少子化に歯どめがかからないおそれがあるということ。地方圏では、東京からのサービス移入に伴う資金流出が常態化するということで、東京の会社がサービスを地方で行うということで、そこにお金が流れていくということが考えられます。中山間地域等では、集落機能の維持や耕地・山林の管理がより困難になるということから、考えられる対応として、右にいろいろ書かれています。
 元気な高齢者が高齢者を支援するような仕組みとか、圏域内の自治体が連携した医療・介護サービスの供給体制とか、AIによる癌の画像診断とかの技術革新が飛躍的に今、ここ1年で伸びていますので、そういったものを積極的に導入して支え手不足を緩和するとかいったようなこと。
 それから、共働き社会に対応した保育サービスとか、より安定的な就労環境とワーク・ライフ・バランスを図り、長時間通勤を減らす職住環境など、複合的な少子化対策をするということ。
 3つ目にワーク・ライフ・バランスを実現しやすい地方圏に移住しやすい環境の整備。それから、これはいっとき、地方創生のときに言われたCCRC(※Continuing care retirement community:高齢者が健康なうちに入居し終身で過ごすことが可能な生活共同体)だけではなくて、もっと本当に働く場所もつくるという意味での移住の話です。サービス業について、多様な人材が集積する指定都市や中核市等を中心として、新陳代謝によるイノベーションを誘発し稼ぐ力を高めるとか、意欲ある担い手への集約を進め、農林水産物の輸出を拡大していくということであります。
 最後に、「中山間地域等において、集落移転を含め、地域に必要な生活サービス機能を維持する選択肢の提示と将来像の合意形成」。これはやや複雑な、さまざまなニュアンスがここに含まれていると思います。まだはっきり明確に示していませんけれども、第32次地制調の報告書では、この辺のところがちょっと書き込まれると思います。
 それから「粗放的な針広混交林としての保全」など、「保険的な管理も選択肢化」というふうに書かれています。
 次に、2つ目の「標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全」ということで、2040年ごろにかけての危機ということで、世帯主が雇用者として生活給を得る従来の世帯主雇用モデルがもはや標準的とはいえないとか、就職氷河期世代で経済的に自立できない人々がそのまま高齢化すれば、非常に低賃金で低収入の人がそのまま高齢化していくというリスクを社会が抱えているのは明らかでありますが、そういうことになりかねない。若者の労働力が希少化し、公民や組織の枠を超えた人材確保が必要になってくる。教育の質の低下が、技術立国として、国際競争でのおくれにつながるおそれとかが、危機として考えられています。それに対する対応として、右のほうに書かれているようなものが挙げられています。システム教育とかそういったものですね。
 3番目、「スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ」として、2040年ごろにかけての危機ということで、多くの都市でスポンジ化が顕在化し、放置すれば加速度的に都市の衰退を招くおそれがある。東京圏では、都市居住が、まだ今では都心に人口が増えていますので、過度の集中が起こる。これは、首都直下地震が早晩起きると言われていますので、そのときのリスクが非常に高くなるということ。それから、高度経済成長期以降の整備したインフラが老朽化し、更新時期を迎えているということであります。それに対応する考えが右側に書かれているとおりであります。
 ここまでが第1次報告で、第2次報告は、これにプラスしまして、「スマート自治体への転換」ということで、半分の職員数でも担えるようなそういう自治体に2040年を目指して脱皮していくべきだという話。それから、AI、RPAを使いこなすスマート自治体への転換が必要だと。「自治体行政の標準化・共通化」、これは今、AIとかRPAを導入するにしても、割とベンダーの言いなりになってしまっていて、自治体ごとに相当費用をかけている場合があります。これは総務省が音頭をとってということだと思いますが、仕様を標準化すればかなりコストダウンして導入することが可能になりますので、そういったことも目指すということだと思います。
 それから、「公共私による暮らしの維持」ということで、プラットフォーム・ビルダーへの転換。プラットフォームは、先ほど申し上げたようにWindowsとかMacOSのようなプラットフォームをつくるもの。サービスを全部提供するのではなくて、プラットフォームをまずつくって、それを「公」ももちろん提供しますけれども、「共」も「私」も提供するという、そういった社会に変えていくという話。新しい公共私の協力関係の構築、暮らしを支える担い手の確保といったことが掲げられています。
 3)ですけれども、「圏域マネジメントの二層制の柔軟化」ということで、先ほど申し上げた連携中枢都市圏を初めとする、さまざまな制度はつくられたんですけれども、まだ本格稼働していないという認識であります。それを本格稼働させるために地方自治法を改正するとか、今まで市町村はそれぞれフルセット主義でどの市も町も村も全てのことをやってきたが、今後はそれはなくてもいいんじゃないかという立場をここでは鮮明に出しています。つまり、幾つかの市町村が集まって1つの教育委員会をつくるとか、あるいは1つの何か行政サービスを提供するとか、そういったところへ踏み出していくこともあり得るんじゃないかということが読み取れるところであります。
 それから、都道府県・市町村の二層制の柔軟化ということで、今までは市町村の広域行政について府県が担っていたわけですけれども、市町村単体では担えないような市町村が出てくる。そしたら、そこについて府県が垂直的に補完するということがあってもいいんじゃないかという話です。
 「圏域を超えた結いのネットワークの形成」ということで、例えば隣の県であっても生活圏が一緒であれば、同じような圏域をつくってもいいんじゃないか、そんな話です。
 あと4番目に、「東京圏のプラットフォーム」の話が出ています。
 第2次報告は、参考資料の14ページ、15ページあたりにもう少し大きな字で載っております。労働力の絶対量が不足します。先ほど申し上げたように、ベビーブーマーは260万人毎年誕生していたのに、今は97万人です。間もなく70万人ぐらいになる。圧倒的に労働力が不足します。人口縮減時代のパラダイムへの転換が必要だということで、1つはスマート自治体への転換。AI、RPAを使いこなすスマート自治体ということで、従来の半分の職員でも自治体が本来担うべきものを担えるような、そういうものに転換していくべきだということであります。
 その際、自治体行政の標準化、共通化が重要であって、その下に図を描いていますけれども、それぞれ今までA市、B町が別々にやっていたものを共通のものにして提供することによって、相当費用を削減するとかということであります。ただ、これを今まで、例えば国民健康保険を市町村から府県に吸い上げた場合に、共通のシステムを総務省で提供しましたけれども、今まで既にあるいろんなシステムについて共通のものを提供するということはなかなか予算措置が難しいということで、これは法律改正が必要であろうというふうにここに書かれているところです。
 それから、右側の赤色のところですけれども、「公共私による暮らしの維持」ということで、「プラットフォーム・ビルダーへの転換」ということです。公共私相互間の協力関係を構築するプラットフォーム・ビルダーへ転換する必要があるということで、ちょっと前の平成18年に、公共についてのある報告書が総務省から出ておりまして、それを受ける形のものだと思うんですけれども、その話がここに載っております。
 次のスライドで、「圏域マネジメントの二層制の柔軟化」。先ほど申し上げたとおりです。これは多分、今、地制調で議論が始まったところだと思いますけれども、全国町村会なんかはかなり反対の立場を示されると思います。ただ、総務省としては、合併がこれ以上進まないので、どういう形で、今まで市町村がフルセット主義でやってきたものを圏域でフルセットというほうに持っていくのかということを今、考えておられるのではないかなと推測しております。
 標準化の必要性の話はここに載っているとおりで、ベンダーの言いなりにならない、共通仕様のものを提供するようなことが必要になってくるんじゃないかという話です。これも同じものです。クラウドの話で、導入率を県別に示している図とかが提供されています。
 それから、これは先ほどちょっと申し上げたんですけれども、国民健康保険のときの標準事務処理システムは、法律改正があったので予算措置があって無償配付されました。それから、その前の地方公会計のやつとか後期高齢者医療制度の標準システムといったものは法律改正とか制度改正のときに無償提供できるんですけれども、今、既にあるものの標準システムを提供するためには、法律措置が必要だというふうにこの報告書では書かれています。マイナンバー制度によるデータ標準化などについては、ここで書かれているとおりです。
 それから、この次のスライドは、自治体間での業務プロセスの比較というところで、同じ法令であっても、また同じ情報システムであっても、自治体ごとにサービス提供の方法が異なることがある。これは、情報システムにとどまらない業務プロセスの共通化が課題になってくるということで、この共通化というもの。昔の言葉でいうと業務棚卸しとかいうものをしていく、RPAも使う形で共通化していくということが、今後の重要なポイントになってくるんじゃないかというふうに書かれています。
 この報告書の中には、AIとかRPAの導入による業務プロセスの自動化・省力化の例として、ごみの分別案内。これは横浜市のもので、チャットボットで「このごみはどういうふうに分類したらいいの」というふうに聞くと答えてくれるという、おしゃべりをするロボットですね。LINEでいろいろ問い合わせをすることができるようなものをつくったりとか、真ん中のものはかなり本格的なAIですけれども、千葉市と室蘭市とか4つの自治体と東京大学の関本研究室が共同で、道路の補修についてのものを今、実証実験をやっておられます。道路の損傷箇所をどうやって調べるか。今まで係員がずっと回って目視で調べていたものを、今、千葉市とかでは、全ての公用車にスマホを乗せて、スマホでずっと動画を撮影して、1秒間を12ぐらいに分け、それを瞬時に要補修とか要観察とか補修必要なしというふうに分けて、クラウドにどんどん上げていって、それを集約して、どういう順番で補修していくかという計画を立てたりしています。これはかなり精度の高いものになりつつあって、来年の4月からは販売といいますか、実用化されるというふうに聞いております。
 右端はRPA。先ほど京都府の例も出てきましたが、つくば市とか熊本県の宇城市では、総務省のお金でほぼ全業務についてRPAの実証実験をやられました。そういった話について、この報告書でも出ているところです。
 次のところは、「公共私による暮らしの維持」ということで、これまでの世の中が、自治体の経営資源はどんどん制約がある、住民同士の関係性も希薄化している、地縁組織の扶助機能も低下している、家族の扶助機能も低下しているといったようなところで、今後、どのようにこの喪失あるいは低下を補っていくのかという話が出ているところであります。
 次のスライドで、この左下のところが先ほど申し上げた、平成18年の報告書で有名なウサギさんの図であります。主に行政により提供されてきた公共サービスについて、その提供主体になり得る意欲と能力を備えた多様な主体、住民団体、NPO、企業などが登場していて、このような多元的な主体により担われ、新しい公共空間をいかに豊かなものにしていくかが重要だと書かれています。既に平成18年のときには、この議論をして報告書も出ているんですけれども、本格的にやっぱりやらなきゃならないよねということで再度、この図が出てきたんだと思います。住民ニーズを充足する機能が低下しているということがあります。これをどういうふうに補っていくのかということがそこに書かれています。
 それから、次のスライドでは、新たな公共私の協力関係によってそれを満たしていく必要があるとかという話ですね。買い物の代行だとか、これも南山城村で買い物代行のAIの実証実験をやられましたけれども、そういったような話も含めてでありますが、今まで「公」がやってきたものが十分にはできない。共助で担ってきたものが十分に共助が行き渡らない。では、どういうふうに多様な担い手でやっていくのかという話が、このスライド、次のスライドあたりにずっと出ているところであります。
 今後の方向性として、幾つかの事例が挙げられています。北海道の天塩町とか、あるいは奈良モデルなんかの話がたくさん出ていたと思います。ワンコインでシルバー人材センターがさまざまなものを提供するといったようなものですね。それから、共助としての地域運営組織によるサービス提供の話なんかも出ておりました。
 次のスライドは、先ほど言いました「圏域マネジメントの二層制の柔軟化」ということで、明治期に7万ほどあった市町村が、明治の大合併、昭和の大合併で3,400になり、平成の大合併で1,700に減ったわけですけれども、合併するというのはほぼ限界に来ている。でも、今後、人口はさらに減る。地域によっては、2040年までに半分以下になってしまう。今までのフルセット主義で行けるのかというと、そうでもないんじゃないか。だとすると、1つの町や村が、戸籍から教育委員会から何でもかんでも全て提供するということから脱皮して、圏域でそれを担うようなもの、あるいは圏域がないようなところは、県が垂直的補完をするようなそういうことにならざるを得ないのではないか。例えば長崎県でいいますと、長崎県を3等分しますと、北の3分の1は佐世保市が中心になって担えるだろう、真ん中は長崎市が中心になって担える。南のほうは、担うような中核的な市がないので、これは県の垂直的補完になるだろうというふうに外から見て考えられるんですね。そういったものが、多分今後いろいろ出てくると思うんです。
 これまで、総務省もいろいろアドバルーンをぶち上げていろんな何とか圏というのをつくってきました。予算措置も8,000万円とか4,000万円とか微々たるものをやってきましたけれども、本格稼働させるにはやはり法律の後ろ盾が必要で、それをやっていくということが多分第32次地制調の報告書では出てくるんだと思います。県をまたいだいろんなものも今後出てくるだろう。医療圏の話はここに出ています。垂直的補完では、静岡県の例がここに出ているところです。これも同じ話ですね。
 最初に申し上げました、第1次報告の3つの柱に対応するには、こういったことが必要で、しかも都道府県でいうと今まで同じ形で都道府県が、京都府は京都府で府内の市町村に対して同じように手を差し伸べてきた、同じように見てきた。でも、今後は、この市域は大丈夫だと、でもこの町村はもっと町村の仕事まで府がやるんだみたいなことに多分今後なっていくんだろうと考えられます。そうでないと、町村はとてももたないというところまで来ていると思うんですね。幾つかの合併後の市町村合併の話も出ています。
 ここまでが自治体戦略2040の報告書なんですけれども、第32次地制調が今、走っていますけれども、今後、議論されていきます。もちろん、この圏域マネジメントの議論は、町村にとっては自分たちのレゾンデートルである、全部仕事をやるんだというところを奪われるわけなので、大変な反対が予想されるところでもありますが、今のままではだめだというのもみんなわかっているわけで、では、どういうところに着地点を見い出せるのかということを地制調で報告をまとめていかれると思います。
 それから、スマート自治体への転換というのは、ここ4、5年の、特に2013年以降のAIの飛躍的発展が自治体に取り入れられた場合に何が起こるのかということが見えてきた段階ですので、そのためにどういうふうに総務省としてバックアップしたらいいのかということが考えられているかなと思います。
 それから、公のお金を伴わない、公共領域の担い手をどうやって確保していくのかということも、今後、重要なポイントになるかなと思います。圏域マネジメントは先ほど申し上げたとおりです。
 私も幾つか、これまでに本を書いていて、その中で関連するような本も書いているのでちょっと御紹介させていただきます。
 まず、「行政ビジネス」という本を私と山田君という私の親友なんですが、今、福井県の副知事をやっていて、彼と7年前ぐらいに書きました。これは、従来の公と民の完全な二分論がちょっと違うんじゃないかということがきっかけです。その2年後に「自治体行政の領域」ということで本を出しました。これは、10人ほどの自治体職員の方に書いていただいています。
 まず、「行政ビジネス」でいいますと、従来の公私の二元論というのはちょっと変わってきていて、行政もビジネスをやる。例えば、福井県でいうと恐竜博物館が売りですので、ここに、当時20数万人だった来客者数を50万人増やしたらどうだ、100万人に増やしたらどうだということで、山田君なんかが駆け回って、実際今年は100万人になると思うんですけれども、それで落ちるお金が福井県民に還元される。とすると、恐竜博物館を売るというのも、やはり県の重要な仕事だ、行政もビジネスをやっていいんだ。水を売るという水ビジネスもありますし、さまざまな形のビジネスがあり得るんじゃないかということ。他方、公共の担い手は役所だけではなくて、「民」も担う、NPOも担う、地縁団体も担うということで、それもお互いに交錯しているんじゃないかということを提案したものでありました。
 「自治体行政の領域」でいいますと、実は京都府の職員の方お2人に書いていただいています。見守り集落の話とか見回り活動の話を書いてくださっています。それから、「多主体協働による持続可能な地域づくり」ということで、和束町の話とか大学連携機構の挑戦といったことも書いていただきました。
 最近では、ギャビン・ニューサムがこの前カリフォルニア州知事選挙に通りましたけれども、彼が副知事のときに書いた本で、私がカリフォルニア州立大学のバークレー校に留学したときに、たまたまこの本の原本が発行されたものを翻訳して出しました。「未来政府」です。これは、将来的に技術革新によって自治体の行える業務が飛躍的に変わる。それから、オープンデータによって「民」がいろんな便利なものをつくることによって、役所がお金を出さなくても市民が便利になる。そういったことをサンフランシスコ市の元市長をやっておられた方なので、その失敗談からいろんな事例を書かれている本です。これを翻訳しました。そのときに、シビックテックというものに私も出会いまして、民間が役所のデータをもとにいろんなものをつくっていくみたいな話ですね。ICTを使って、地域課題を自分たちで解決する。役所が解決するんじゃなくて、自分たちで解決する。こういう動きがアメリカではかなり広まっていて、日本でも動きがありますので、そのことをやっておられる方々と一緒に書きました。
 ことしの10月には、「AIで変わる自治体業務」というものを出版しまして、先ほどの破壊的技術、AI、RPAを使いこなすスマート自治体へ今後、脱皮していく必要があるだろうということで、ここに目次を書いていますけれども、既にAIを活用している自治体もかなりの数があります。
 例えば、わかりやすい例でいいますと、コールセンターですね。コールセンターは、今、銀行や保険会社、証券会社、みんなIBMのワトソンを使っています。何かというと、預金者が電話で問い合わせをすると、オペレーターとやりとりをしている間に音声認識機能によってどういう問い合わせがなされているかということをワトソンが認識をして、その回答の候補をずっと画面にもう出しちゃうんですね。オペレーターはそれを読み上げるだけということです。昔は、マニュアルを一生懸命調べていた、あるいはカタカタと打って調べていたんですけれども、今はそれが必要なくなっていて飛躍的に業務効率が上がっています。コールセンターへのワトソン導入状況ですね。
 それから、チャットボットの実証実験の拡大ということで、三菱総研が昨年から今年の2月にかけていろんな自治体でやりました。そして、10月からはもう実用化ということで売り出しています。そんなに高くない値段で出していて、先ほど申し上げたように、LINEでいろんなものを問い合わせると答えてくれるというものを実用化している自治体もかなりあります。
 大阪市で今、やっているのは、戸籍業務の職員支援システムです。戸籍業務というのは、「戸籍10年」と言われて、非常に専門性の高い業務なんですけれども、今、大阪市ではさまざまな行政改革のあおりを受けて、私が辞める1996年時点では24の区役所にそれぞれ20人ぐらいずつ戸籍担当の職員がいたんですけれども、そしてその中で10年のベテラン職員もいたんですけれども、今はもう7、8人とか、少ないところでは5人ぐらいなんですね。しかも、5年ぐらいいたら配置転換されてしまってベテランがいなくなった。なので、とても困っているんですね。専門人材がいないと。例えば、セネガル人が日本人との婚姻届を出してきた。でも、これは2人目の奥さんで、セネガルでは認められている、日本ではどうなのかというもの、そういう難件をベテランがいない中でどう処理したらいいかわからない。それを、戸籍係の後ろに2本分ぐらいのキャビネットにずっと先例通達集とか質疑応答集があって、それを全部AIに放り込んで、問い合わせをすれば答えてくれるようなそういうシステムを今、富士通と実証実験をやっておられます。
 それから、自動運転なんかも、これはもう既に御存じのようにレベル4、アウディが今年出しましたけれども、完全に自動運転。自動車の中で寝ているだけで相手先に運ばれるところまで、もう技術的には可能になっています。法律の問題だけ残っているんですね。そういったところまで、今、来ている中でいうと、どういう仕事が残るのか。野村総研が3年前に非常に衝撃的な報告書を出しまして、日本の人々の仕事の51%はAIとかRPAで代替可能だというものだったんです。でも、営業とかあるいは教員、看護師、医師はお客様とかクライアントと直接相対する仕事で、これは絶対になくならない。それから、デザイナーとか漫画家、コピーライター、これは創造的な仕事ですね。これも絶対なくならないだろうとされています。そういったところにどういうふうに人材をシフトしていくのかというのが、今後、求められているところかなと思いました。
 40分になりましたので、私からの話は以上とさせていただきます。御清聴、ありがとうございました。

◯二之湯委員長  どうもありがとうございました。
 説明はお聞き及びのとおりでありますが、もとの状況に復するまでしばらくお待ち願います。
 本日の所管事項の調査におきましては、テーマについて参考人も交えて、委員間の活発な意見交換の場となるよう運営してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、御意見、御見解などがございましたら御発言願います。

◯島田委員  本日はありがとうございます。
 多々データがありまして、我が国の内政の危機だということで議論がされているようですが、本来、国家戦略的な課題であるはずなので、内政の危機はどこから生まれたかというこれまでの政治の責任、そしてその点での国家戦略として少子化をどうするか、人口減少をどうするかというのがなしに、自治体戦略の議論の場に持ってきてしまって議論されているのが率直に言ってとても気持ちが悪い感じがします。
 やはり、政府が果たすべき責任と役割、これをしっかり踏まえた上で自治体との役割分担、そして市町村は何をするか等々という議論も必要ではないかと思いますが、この点、ちょっと柱の問題として伺いたいと思います。

◯稲継参考人  御質問、ありがとうございました。もちろん国家として、今まで少子高齢化に十分な反応ができていなかった。フランスでは、戦後、少子化が問題になったときに相当頑張って、少子化の歯止めがかかったというのがありますけれども、それに日本はできなかったという政府の責任は当然あると思います。
 ただ、日本で、もちろん仕事をやっている、行政をやっているのは自治体であります。ほかの国と違って、国の仕事も地方でやってあげていることが多いんですよね。これは、昔の機関委任事務、今の法定受託事務です。それを地方で全部やっている。国際比較すると融合型といいますけれども、例えばカナダですと、国政選挙はカナダ選挙管理委員会が全国から40万人を雇って選挙のたびにやるんですね。ところが、日本の場合は市町村が選挙管理委員会として選挙管理事務をやってくれるとか、全部やってあげているということでいうと、やはり自治体の力を借りずには、国としては何もできないというところがあります。それから、財政支出の7割が地方で出ているということでいうと、地方が本気にならないと何もできないということがあります。
 なので、おっしゃっていることはよくわかります。もちろん国の責任もありますけれども、地方が動かないと何もできないという状況が今あるので、それを総務省としては地方にお願いしているということかなと思います。

◯島田委員  フランスとかイタリアとか、小さい自治体の組織を大事にして、それこそ集落ごとに教会があり、議会があり、住民自治、団体自治。それで、国の政策としても子育て支援を強化しながら人口減少に歯止めをかけて、特殊出生率なども引き上げるというようなこともありますと、もう少し諸外国に学んだらどうかなと思っております。
 いろいろな文章で勉強させていただいているわけでありますけれども、そもそも、この議論の場ということで、この研究会、自治体戦略2040構想研究会の運営要綱を見ますと、これは原則非公開。研究会終了後に配付資料が出される。そして、公表されたのは議事概要であって、誰がどのような発言をしているというのは全く示されていないということで、非常に不透明な中で議論が進んでいるというふうに書いてあるんですけれども、この辺の事実関係はどうなんでしょうか。

◯稲継参考人  私はこの委員ではありませんので、詳細はわかりません。

◯島田委員  本当に日本のこれからの大問題を議論する場が非公開であると、議事概要も大変抽象的で断片的なまとめで問題があるなと思っています。それで、この研究会の特徴、ディスカッション・フォーラムが設置をされていて、配付資料によりますと、関係府省、警察庁、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、総務省等の若手課長・室長クラスの8人が議論を行う場が設けられていて、そして随時開催をされて、たまに研究会のオブザーバーも参加されるようですけれども、総務省に置かれた研究会に関係省庁で将来を嘱望されている職員がバックアップメンバーとして参加をしているというようなことで、そして各種データを各省庁ごとにおまとめになっていろいろ問題認識の意見交換がされているようであります。なので、先ほども申し上げましたように、国家戦略的な課題、我が国の内政上の危機の問題の議論が自治体戦略を議論する場で取り上げられて、そしてこのような議論が進んでいくこと、しかも法制化をしていくというようなことはとても問題だなというのが私の意見であります。
 それで、先ほど、自治体の町村会や市長会も相次いで地制調の場で反対の意見を出されておりますが、全国市長会の会長さんは、地方創生に頑張ろうとしている努力に水を差す以外の何物でもないと。全国町村会の荒木会長は、「机上の発想ではなく、現場の実態を踏まえて我々の声をしっかり受けとめてほしい。上からの押しつけではなく選択可能な制度や仕組みが準備され、自治体が主体性を持ってみずから選択実行できることが何より重要だ」と訴えられていますが、地方から反対の声を聞いているというお話がありましたけれども、これは至極もっともなことでありますが、この点はどうなんでしょうか。どんな議論が進んでいるんでしょうか。

◯稲継参考人  私は地制調の委員でもありませんので、中での議論はよく存じません。

◯二之湯委員長  島田委員に申し上げます。今回、稲継参考人には、総務省が出されたこの調査報告を我々に説明いただきまして、教えていただいているということで、この報告書がつくられたプロセスとかの中の議論ということについては、ちょっと答えていただく任にはございません。ですので、今日教えていただいたことで、しかも冒頭、京都府の理事者からも京都府の2040年ころのデータも出していただいていますので、そういったことを踏まえていただきまして、ある分野の見解を参考人に問うていただくとか、各委員に問うていただくとか、そういった意見交換になるよう御配慮いただくとありがたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

◯島田委員  はい、了解いたしました。
 先ほど、合併が頓挫をして今度は広域化だと。それならば、合併の検証をしっかりとすべきだというふうに私は思います。選択と集中によって、中心部にそういう公共施設を集めてというやり方でいきますと、ある研究者の話によりますと、大体2割のところしか救えない。そうすると、8割のところは公の施設がなくなり、道路もボロボロ。これは本当に被害が広がるなというようなことを考えております。合併で役所がなくなり、学校もなくなり、病院もなくなり、住めない地域が増えていって、どうして持続可能な日本ができるのかなというようなことを思っております。
 これは京都府の理事者のほうに1点聞いていきたいと思います。合併の検証はどのようにされたのか。合併のときは、フルセット自治体でなければいけないから、小さいものは集まって大きい自治体にして頑張ろうと言っていたのに、今度はフルセット自治体はだめだと。合併が頓挫したから連携で助けあってやりなさいと、こんな発想では矛盾していると思うんですけれども、合併の検証とあわせて、京都府の理事者の見解を伺いたいと思います。

◯二之湯委員長  事実関係として、参考人に私からお伺いしたいのですが、この出された報告書で、フルセット行政はだめだと言っているのか、将来を予測してフルセット行政にとらわれずに柔軟にやるべきだと書いてあるのかという事実について、ちょっと。

◯稲継参考人  だめだとはどこにも書いていません。圏域マネジメントという言葉が出てきて、その言葉に対しては、やっぱり市長会、町村会はかなり敏感に反応しておられるところです。私なりに推測して、フルセット主義をちょっと捨てることも可能性としてあるんじゃないかという私の理解です。私の推測なので、この報告書にあるかないかと言えば、それはないです。

◯二之湯委員長  ということですので、先ほどの理事者への質問もありましたけれども、当時はフルセット行政を目指せ、次は目指すなということはちょっと認識として違うんですけれども、その上で何か御質問をされたいということであれば、改めて委員からおっしゃっていただいて結構ですが。何かお答えされますか。質問はちょっと余り明確になっていないんですけれども、市町村合併のある種検証のようなことで。

◯能勢自治振興課長  市町村合併の関係でございますけれども、従来から私どもが申し上げていますように、地元の議員の方あるいは住民の方が、その地域をどのようにするかという真剣に議論をなさった上で合併がなされたという形ですので、その評価につきましては、地元の方からの評価が先行するんだというふうに思っています。また、地域格差が合併によってできたということは考えていなくて、これは基本的に、ずっと戦後のいろんな構造的なものとか、そういったものから地域格差が生まれていると考えておりまして、合併によるものでそういうものが起きたものではないというふうに考えております。
 以上でございます。

◯島田委員  ちゃんと科学的な根拠をもってどうなのかというのは、やっぱり調査もして分析、検討しないとそんな結論づけはできないというふうに思うわけです。とにかく、今回の報告書の構想する圏域、この圏域に関する法律上の枠組みを設けて法制化をして、圏域が主体となって行政のスタンダード化を進めていくということですよね。その圏域というのは、広域で連携をしなさいというね。市町村、各自治体には自治体としての議会があります。ところが、圏域というのは議会がない。そこに直接国がお金を入れるということで、これは地方自治制度も破壊する仕組みです。その圏域というのは、先ほどおっしゃっられたように合併がうまくいかなくて、そして今度は連携だ、広域化だという議論ですので、それならば合併等の問題もこれまで実際に進めてこられたわけですから、しっかりと検証・分析がなされるべきだなというふうに思っているところです。
 日本弁護士連合会なども、今回の問題については地方自治法等も破壊しかねないそういう内容であるということでありますが、私も引き続き勉強させていただきます。見解を述べて終わります。