◯島田敬子議員 日本共産党の島田敬子でございます。私は、さきに通告をしております数点について、知事並びに関係理事者に質問いたします。
初めに、癌対策です。
2002年の1年間に京都府内で癌で亡くなられた方は6,602人、40歳代、50歳代の半分は癌であり、働き盛りの世代の重大な健康課題となっております。国においては、「第3次対がん10か年総合戦略」が策定をされ、今年5月には、癌対策の推進本部も設置をされました。本府も「健康長寿日本一プラン」の重点施策に癌対策の推進を掲げました。
そこで数点伺います。厚生労働省研究班が行った、全国がん(成人病)センター協議会加盟病院を対象にした「主要ながんに関する5年生存率調査」の結果で、5年生存率が、施設間、地域間、診療科間で大きな格差があることが報告されました。また、日経メディカルと日経新聞社合同調査によりますと、施設間で大変な格差があり、「平均的な水準の病院に行けないために、多数の患者が犠牲になっている。行く病院、住む地域によって生命が左右をされている」という衝撃的な結果を報じました。
質問の第1は、こうした問題を解決し、全国どこでも癌の標準的な専門医療を受けられるよう医療技術等の格差是正を目指すための地域がん診療拠点病院の整備についてです。
この制度は、4年前、厚生労働省が決めた「地域がん診療拠点病院の整備に関する指針」に基づき、各都道府県が厚生労働省に対して、二次医療圏に1ヶ所の病院を推薦し指定をするものです。この1月で、40都道府県で135の拠点病院が指定をされています。ところが京都府では、いまだ1施設も指定をされていません。原因はどこにあるのでしょうか、まずお聞かせください。
地域がん診療拠点病院のあり方については、現在、国において見直し作業が進められており、近く、研修や情報発信機能、都道府県連絡協議会などの機能を持つ都道府県がん診療拠点病院の新たな整備方向が出されるとのことです。本府においては、府立医科大学附属病院の地域がん診療拠点病院指定に着手をされていますが、これまでの検討状況と指定の目途をお聞かせください。また、京都市立病院が地域がん診療拠点病院の指定を目指すという基本計画を発表しましたが、京都市との調整及び他の二次医療圏での指定について検討状況をお聞かせください。
第2に、院内がん登録及び地域がん登録システムの構築と府民への情報公開と提供の問題です。
院内がん登録は、各医療機関のがん医療の実態と水準を評価するために、診断・治療内容を登録し、予後調査を行い生存率を計測するものです。これらを都道府県レベルでまとめるのが地域がん登録です。罹患率のデータを集め、5年生存率と死亡率などをつき合わせることにより、初めて都道府県単位での癌医療水準や癌対策の評価・分析、今後の対策の立案が可能となります。地域がん登録は、現在34道府県で実施され、本府では京都府医師会に委託をして実施していますが、医療機関の自主的な協力によっているため登録漏れが多く、事業の精度向上を目指した取り組みが進められております。根本的には、国においての見直しと改善のための予算の拡充が必要です。京都府としても改善が必要ではないでしょうか。また、府立医大病院での院内がん登録事業の確立が急がれます。検討状況と今後の見通しについてお聞かせください。
第3に、癌の早期発見のための癌検診の改善対策です。
厚生労働省が発表した2003年度の全国のがん検診率によりますと、本府は大腸がん検診がワースト1位、胃がん検診でワースト2位、乳がん検診ではワースト3位、肺がん及び子宮がん検診もワースト4位という惨たんたる状況です。京都府内でも、市町村や地域格差が著しく、それが長期にわたって固定化・構造化しています。私は、地域任せ、現場任せにしてきたことに要因があると考えますが、府内各地域の公衆衛生行政に最終的責任を持つべき本府としてのリーダーシップが厳しく問われます。現状をどのように認識されていますか。また、改善のための具体策をお聞かせください。
さて、全国的には32都道府県に癌や成人病のセンターがありますが、京都府にはありません。大阪府では府立成人病センターを中心に、地域がん登録事業をはじめ、癌診療の向上、基礎・臨床・公衆衛生等の研究・調査が積み重ねられております。ホームページを見るだけでも、本府とは雲泥の差を感じました。府立医大病院、京大病院という高度先進医療の拠点病院を初め、公的大規模病院などを中心に頑張っておられる現場の医師や関係者の力を生かすために、これらの病院の連携とネットワークがどうしても必要です。また、京都府にも、癌・成人病センターが必要と考えます。これらの課題を検討するための京都府がん対策推進本部を設置してはいかがでしょうか。さらに、患者、府民参画による検討も必要です。これらの施策の推進に当たり、相当な財政支援が必要ですが、知事の見解と御決意を伺います。
以上、御答弁をお願いいたします。
◯山田啓二知事 島田議員の御質問にお答えいたします。
府立医科大学附属病院における癌対策についてでありますが、府民の健康を守るためには徹底した予防対策とともに、死亡の上位を占める3大疾病対策が重要であります。昨年度取りまとめました「健康長寿日本一アクションプラン」では、その具体化のために、循環器、脳血管系疾患対策の推進とともに、癌対策の推進を掲げ、府立医科大学についても、がん診療拠点病院の指定を進めるなど、急性期医療の高度化の検討を行っているところであります。
府立医科大学は、癌医療につきましては、基礎医学部門や臨床医学部門の多くの診療科にわたり総合的な取り組みを行っており、全国的にトップクラスの治療実績と症例数を誇り、また我が国の癌の診断・治療・研究をリードするなど、継続的で全人的な質の高い癌医療を提供するとした、まさに紛れもない地域がん診療の拠点病院であります。
今後は、こうした全国に誇る府立医科大学の癌医療に係る知的財産をより一層地域医療に生かすために、外来診療棟の整備も含め、さらなる強化を図るとともに、従来の制度ではこうした医科大学の病院が拠点病院として指定されていないという制度的な問題が国におきまして見直しが予定されるとともに、指定のメリットにつきましても明確化が図られるということなので、既に専門的な立場から検討を進めているところであります。
また、院内のがん登録につきましても、医療従事者の負担増となる等の課題もありますので、現在、設計作業中であります電子カルテシステムとの連携を図り、事務の効率化を促進することにより院内がん登録が一層進むよう検討しているところであります。
その他の御質問につきましては、関係理事者から答弁をさせていただきます。
◯地上進 保健福祉部長 地域がん診療拠点病院制度についてでありますが、先ほど知事からもお答え申し上げましたとおり、京都府におきましては、全国トップ水準の医療を提供している京都府立医科大学附属病院が存在するにもかかわらず、この制度では、地域の診療、教育・研修、研究の中核となっているその他の大学病院などの特定機能病院については、診療拠点病院の指定から除外されていたところでありますし、加えまして、各地の指定病院の水準に大変ばらつきがあり、当初の目的が十分に達成されていない状況にあります。
制度上、府立医科大学附属病院が指定されない中で、病院の指定について大変苦慮していたところでありますが、国において特定機能病院を新たに指定の対象に含めることや、現在の指定病院を見直すことなど指定要件の見直しが進められ、近く考え方が示される予定になっておりまして、これを踏まえて検討してまいりたいと考えております。
京都市立病院につきましては、平成22年度末の完成を目指しての構想と聞いておりまして、今後、他の医療圏での病院指定のあり方も含めまして、医療審議会等の意見も聞く中で検討してまいりたいと存じます。
地域がん登録事業についてでありますが、学識経験者等の御意見も伺う中で、情報収集・分析を行い、関係医療機関における診療の質の向上を図ってきたところであります。今後、この事業の成果も生かして、府立医科大学附属病院等と連携いたしまして、検討をさらに加えてまいりたいというふうに考えております。
癌検診の受診率についてでありますが、一般的に医療機関が普及している都市部では、医療機関での受診機会も多いことなどから検診受診率が低くなる一方、他の地域では高い傾向にございます。今後、京都市など市町村と連携いたしまして、啓発や個別の受診勧奨など、一層の受診率の向上を図ってまいりたいと考えております。
癌診療体制についてでありますが、京都府におきましては、京都府立医科大学附属病院に外来化学療法部を設置しております。そのほか、生活習慣病を含めた高度先進医療供給体制の整備を検討することといたしております。
また、癌対策推進組織につきましては、今後、癌診療拠点病院によるネットワークなどを構築する中で、癌対策の推進を総合的に図ってまいりたいというふうに考えております。
◯島田敬子議員 府立病院を拠点の施設に指定するということで、「検討する」ということでしたので、頑張っていただきたいと思います。
指定要件をクリアするためには、専門職員の増員ですとか施設整備の拡充など、大変な財政が必要です。財政健全化で、この7年間に20億円の一般会計繰入金が削減をされましたが、洛東病院を廃止するかわりにリハビリテーション支援センターをつくったり、SARSや予防医学センターもつくる。たくさんの機能を受け持たせておいて、人は減らせ、財政は減らせでは、現場はパンク寸前ではないかと心配をいたします。第3次の削減計画を見直し、必要な財政支援を行って必ず実現をさせていただきたい、知事の決意を再度伺います。
地域がん登録事業について、精度向上のために、人的・財政的支援が必要です。現在、医師会の委託料は500万円で人件費も出せません。他府県の多くは行政が主体で事業を実施されています。この際、予算の増額、あるいは京都府の主体的な事業として責任を持つ体制を構築すべきだと考えます。いかがですか。
癌検診については、職域を含めてさらなる向上が必要です。市町村の問題ですが、癌検診の補助金が一般財源化をされまして、総額で減らされ大きな負担になっています。必要な財源を国へ要求し、本府の予算も拡充すべきではありませんか。
以上、3点について再度お答えください。
◯山田啓二知事 私は、別に金を惜しむためにさまざまな改革をやっているわけではなくて、一番効果的なことはやる。そのためにはどうすれば一番いいのかということを考えて、今の医療制度のあり方を含めまして、医科大学の外来診療棟の整備構想、こういうものを打ち出しておりますので、しっかりやるべきことはやっていくという私の方針を御理解いただきたいと思います。
◯地上進 保健福祉部長 地域がん登録事業についての京都府医師会の委託料の件についてでありますが、受託先であります医師会の側からは増額の要望は現在聞いていないところでございますけれども、先ほどお答え申し上げましたとおり、今後、地域がん拠点診療病院の指定のネットワークを図っていく中で、地域がん登録事業についても再検討してまいりたいというふうに考えております。
それから、市町村へのがん検診の補助金の問題でありますけれども、先ほど議員から御紹介のありましたとおり、一般財源化をされたところであります。京都府といたしましては、前立腺がんなどに対する独自の補助金も維持・継続するとともに、ことしはマンモグラフィーの乳がん検診の機器の整備についても助成をするなど、精いっぱいの支援をしているところでございます。
◯島田敬子議員 知事の決意をいただきました。財政優先でなく、府民の命第一に役割を果たせるよう強く求めます。
次に、介護保険制度について伺います。
法改定の実施に伴う緊急課題について伺います。10月1日から改定介護保険法の一部前倒しが実施されます。国会審議でさまざまな矛盾が明らかにされて、何と24項目の附帯決議がつきました。大幅な利用者負担増のために施設入所者への負担軽減として84%に補足的給付を行わなければならないなど、普遍性も道理もない内容で、およそ法律の体をなしていません。重要な事項が政省令にゆだねられ、国民は白紙委任状をとられた格好です。このように改定の内容は重大な問題を含むものです。幾つかの社会福祉法人管理者からお話を聞きました。「国のやり方、厚生労働省のやり方は本当にひどい。政省令も定まっていないうちに改定の一部を半年も前倒しするとはどういうことか。施設の実態も調べず、問答無用で現場に押しつける。府や市の説明も一方通行で、意見があれば直接厚生労働省に上げてくれということだった。中身についても、本当に弱い立場の者を切り捨てるものです」と、怒り心頭の声でした。
今度の改定の最大問題は、ホテルコストの導入です。ある法人の試算によりますと、特別養護老人ホームの大部屋入居者の場合、月に3万3,790円、1年間に40万円以上の負担増になります。最近整備をされたユニット個室では、お部屋代だけで月に6万円、年間72万円の負担増です。ショートステイでもお食事代・お部屋代、デイサービス、デイケアでは調理費用まで利用者の負担になり、料金が倍増するところもあります。低所得者対策として、所得に応じた負担限度額が定められましたが、それを活用しても、利用者負担第3段階、市民税非課税世帯でも施設入所で月に1万4,000円、ショートステイでは1日2,000円の負担増になるのです。現在、利用者への説明が始まっておりますが、施設入所の待機者が予約を取り消したり、ショートステイなどの利用を控える深刻な事態が出始めています。
また、社会福祉法人の利用者負担軽減については、貯金通帳のコピーまで提出をさせられ、350万円もあれば対象になりません。お葬式代にと大事に持っておられるお年寄りには軽減措置がないというひどい仕打ちです。本府が実施をした利用者アンケートでも、今でも「利用者負担が大きい」という方は3割近く、「7万円前後の年金ではとても老人ホームに入れません」「通所デイサービスを受けていますが、週2回がやっとで、年金暮らしは侘しいです」「年金は上がらないのに、保険料や利用料が上がるのは困る」などの声が出されています。こうした方にさらに追い打ちをかければ、利用を控える方がふえることは明らかです。知事はどのようにお考えですか。これが適正な負担と言えますか。そもそも、福祉施設をホテルと同じに扱い宿泊コストをとるなどという発想そのものが、およそ社会福祉の理念とかけ離れています。介護施設で導入をした後は、ホテルコストを病院でも徴収するというのですから、ひどいものです。こんな間違った改革にはきっぱりと反対すべきです。知事、いかがですか、明確にお答えください。
また、今回の改定は施設にも大きな打撃を与えます。50床定員の施設で年間1,300万円以上の減収、国の誘導でつくられたユニット型個室の新型特養では5,400万円の減収になるということです。その結果は何をもたらすでしょうか。現在でも、施設の正規職員でも賃金は年収300万円台が圧倒的。しかも、その正規職員を減らし非常勤化が進んでいます。半数が非常勤・パートというところもあります。時給相場は800円から900円。こうした事態に拍車がかかり、ひいては介護サービスの質の低下をもたらすことになりませんか。影響をどのように把握していますか、お答えください。
この際、市町村及び社会福祉法人の低所得者対策の実態をつかみ、利用者の声、職員や施設への影響など、緊急調査を行うべきです。また、負担増によって必要な介護が受けられない人をつくらないために、社会福祉法人の軽減制度を拡充し、老人保健施設や療養型にも広げるべきです。補足給付について、対象者すべてが実際に給付が受けられるよう行政の責任で把握・管理をすること、申請手続の簡素化とともに、すべての対象者が施行日から補足給付を受けられるよう万全を期すこと、生活保護受給者の個室の利用は認めないという措置はやめるべきと考えますが、いかがですか。
以上、お答えください。
◯地上進 保健福祉部長 介護保険制度改革についてでありますが、介護を社会全体で支えるという制度の趣旨を踏まえつつ、高齢者の経済的負担が過度とならないよう配慮するなど、利用者本意の安定した制度とすることが必要と考えているところでございます。
このため、低所得者対策の充実や必要な財源措置などを繰り返し国に提案・要請してきたところでございます。その結果、今回の見直しにおきましては、低所得者について居住費・食費の一定額を給付する補足給付の創設、社会福祉法人軽減制度の拡充など、低所得者も必要なサービスが受けられるよう、従前よりも低所得者に配慮された新たな対策が講じられたところでございます。今後の実施状況や、これを踏まえた市町村などの御意見をお聞きする中で、改善が必要な場合には国に強く提言・要請を行っていきたいと考えております。
施設収入につきましては、基本的に介護報酬に含まれておりました居住費・食費相当額が利用者負担とされたことにとどまっておりまして、また施設職員の配置基準等の変更もないところでございます。
低所得者対策の実態につきましては、介護保険事業者の説明会等の場を通じまして、それを正確に全面的に把握するとともに、社会福祉法人軽減制度につきましても積極的に取り組むように要請をしているところでございます。
社会福祉法人軽減制度の拡充につきましては、特別養護老人ホームが在宅復帰や重度の療養を目的とする介護老人保健施設や、あるいは介護療養型医療施設とは異なりまして、生活の場であるため入居期間が大変長く、低所得者の割合も多いというような状況から、利用者負担を軽減する必要性が高い施設であることなどから、特別養護老人ホームに限定されているところであると理解をいたしております。
なお、今後、改正制度施行後の実施状況や、これを踏まえました市町村等の現場の御意見もお聞きする中で、低所得者対策の一層の充実、適正な介護報酬体系の確立などにつきまして、引き続き提案・要請をしてまいりたいと考えております。
補足給付に関する住民対応につきましては、市町村に制度の周知及び必要書類の簡素化など、申請負担軽減のための指導・助言をしてきました結果、対象者の把握、申請の勧奨等はすべての市町村で行われたところでございます。
生活保護受給者の個室利用につきましては、介護保険施設の約9割が多床室でございまして、現状では個室の利用が一般的でないことから、当面の措置として認められないところでございます。京都府といたしましては、今後、施設の整備状況や個室の利用状況を踏まえまして、生活保護につきましても、国に必要な改善を求めてまいりたいと考えております。
◯島田敬子議員 利用者負担の問題ですけれども、政府の軽減対策、法人の軽減対策を使いましても、年金を上回る利用料負担になる人があるんです。26日に我が党の国会議員団が尾辻厚生労働大臣に申し入れをいたしました。大臣は「必要な介護を受けられないということがあってはならない」。お金がないために必要な介護が受けられないという事態について、知事はどのようにお考えですか、改めて知事の見解を伺いたいと思います。
実態について「市町村にお聞きをする」「現場の声を聞く」とおっしゃいましたが、これも尾辻大臣が「実態調査は直ちにやらせていただく」という答弁でございましたので、これはやるべきだと。当然調査をされるのですね、お答えください。
◯地上進 保健福祉部長 低所得者対策につきましては、低所得であるがゆえに必要な介護サービスが受けられないという事態になってはならないという考え方は私どもも一緒でございます。
実態調査の問題につきましては、先ほど低所得者のところでも島田議員から御紹介ございましたけれども、制度のモデルといたしましては、所得階層によりまして負担がかえって減る階層、それから増える階層というのがございます。制度のモデルといたしましては、低所得者対策も一定制度的にはできていると思っておりますが、10月1日の改正後の制度の実施状況を施設現場や市町村から伺う中で点検をしてまいりたいというふうに考えております。
◯島田敬子議員 実態調査は、重ねてくれぐれも行っていただくよう要望をいたします。
知事は答弁に立たれませんでしたけれども、非常に残念です。実態調査をした上で、例えば東京の荒川区あるいは千代田区では、通所系サービスの食事補助を実施するとのことで、本府でも市町村と協力をして検討すべきだと考えます。これは要望をしておきます。
新府総では「介護が必要になっても安心」「サービスを充実する」とうたい、中期ビジョンでは「弱者の視点に立つ」と、言葉で何度繰り返しても具体的な中身では府民の切実な願いを指摘しても答えない。これでは絵にかいたもちではないでしょうか。知事に、改めて、国民の生存権保障と国の責務を定めた憲法25条、府民福祉の向上を掲げた地方自治法をよく勉強していただきまして、この法令を遵守して頑張っていただきたい、要望して次の質問に入ります。
次に、医療関連死と監察医制度について伺います。
最近、私のもとに1つの相談が寄せられました。
「近くの院所でインフルエンザの治療を受けた息子が3時間後急死をした。死因は何か今でも腑に落ちない」
との母親の相談です。
「息子の死因と薬との因果関係をはっきりさせたい、二度と同じようなことが起こらないことを願う」
「医師が行った治療や薬との因果関係を調べるために、東京や大阪では監察医による行政解剖の制度があると聞いた。京都にもつくってほしい」
という内容でした。一連の経過には解明すべき問題があり、今回は詳細は避けますが、監察医制度について伺います。
この方の事例のように「不詳の死」という場合、東京23区内では、死体解剖保存法第8条に基づいて、監察医制度によって行政解剖が実施されています。東京監察医務院の報告では、年間取扱件数は1万件を超え、その3分の2は病死ということです。それらのほとんどが、いわゆる突然死の範疇に入るものとのことです。現在、京都府にはこの制度がありません。京都府警の調べによりますと、本府の1年間の、昨年の死体取扱数は2,666件、そのうち承諾解剖は20件にすぎないとのことです。医療関連死などの統計はありませんのでわかりませんが、東京都の例を見ますと、不問に付された案件が多くあったのではないかと推測できます。
東京都監察医務院の福永院長は、「医療関連死の受け入れ窓口が監察医であり、中立の立場で検案・解剖に当たり、発生する諸問題の解決に貢献している。亡くなった人の人権を守るために、そして一人一人の死を万人の生につなげるために監察医制度を全国的規模で充実してほしい」と発言をされています。このような中で、都道府県独自に行政解剖に準ずる制度をとっている府県が増加をし、承諾解剖費用負担や筑波メディカルセンター内に剖検センターを設置した茨城県などの例もあります。また、この4年余り、医療関連死について検討を重ねてきた内科学会、外科学会、法医学会、病理学会は、この4月に、「医療関連死については一律の警察の届け出はなく、当面、事件性がないと考えられる医療関連死症例に対しては、第三者機関を設置して死因の究明に当たり、それらの内容を医療の向上に反映させるべき」とする、4学会理事長声明を発表いたしました。厚生労働省も今年度より、診療行為に関連した死亡の調査モデル事業を始めました。医療の安全問題では、京都府医師会などでも積極的な取り組みが始まったとお聞きします。本府としても、関係者と協議をし、監察医制度を含む第三者機関の設置について検討していただきたいと考えます。本府としての問題認識、今後の検討課題についてお聞かせください。
◯地上進 保健福祉部長 監察医制度についてでありますが、伝染病予防など公衆衛生の向上・発展を図るために、昭和24年に法定された制度であります。今日では、公衆衛生水準が高まったことや医学の進歩もありまして、病死などほとんどの場合において地域の医療機関で死因が判明しており、監察医を設置する必要はないと考えているところでございます。
ちなみに、監察医制度と直接関係するものではございませんが、遺族が死因の究明を望まれる場合には、府立医科大学などにおいて病理解剖が行われているところでございます。
一方、医療関連死の死因究明に関しましては、昨年の9月に日本医学会からの中立的専門機関の創設に関する共同声明を受けまして、今年度から国におきまして、医療の質と安全を高めていくため、監察医制度とは全く異なる観点から医療関連死の調査分析モデル事業に取り組まれているところでございます。その内容は、診療行為中の予期しない死亡や診療行為の合併症等について、臨床医、法医学者、病理学者などによる解剖を実施し、因果関係の究明を含めて安全確保や再発防止対策を総合的に検討しようとするものでございまして、今後、これらの動向も踏まえて対応してまいりたいと考えております。
◯島田敬子議員 この問題は、私も初めてといいますか、勉強させていただきました。監察医制度はやらないということですが、これは新しい研究課題、今日的研究課題ですので、引き続き私も勉強させていただきますが、ぜひ京都府としても、府民の安全・安心、命を守る立場から御検討をいただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。