令和元年12月定例会(第2号) – 2019年12月5日〜山内佳子府議の質疑応答  ※後半に北陸新幹線延伸・大深度地下の問題提起あります

○山内佳子議員  日本共産党の山内佳子です。我が党議員団を代表して、知事並びに教育長に質問します。

 最初に、消費税の増税の影響と暮らしの問題です。
 消費税が導入されて31年が経過しましたが、その間、年金は下がり、医療や介護など国民負担は増え続けています。
 その一方で、首相は国民の税金で開催する桜を見る会に、自身の後援会員多数を招待し、さらにはマルチ商法会社ジャパンライフ会長や反社会的勢力まで招待されていたことが明らかになりました。ジャパンライフはその招待状を宣伝材料として大々的に使っており、結果的に被害拡大に手をかしたことが問題になっています。また、高級ホテルで開催された前夜祭の会費がわずか5,000円だったことも判明し、公職選挙法違反の疑いも濃厚となっています。消費税10%増税の怒りに加えて、政治のモラル崩壊と私物化への怒りが沸騰しています。
 さて、日本政策金融公庫が11月に行った中小企業景況調査では、中小企業の売上DIも売上見通しDIも11ヶ月連続でマイナス。とりわけ11月の落ち込みが大きく、最終需要分野の売上動向を見ても、平均11ポイントマイナスで、食品関係以外は軒並みマイナスになっています。
 9月議会の成宮議員の代表質問に対して、知事は消費税の増税を前にしてさまざまな対策を講じられていることを説明されましたが、政府による巨額の税金を投入した対策に加えて、地方でも対策を講じなければならないほど今回の増税は混乱を招き、国民の不安が募っています。
 この間、幾つかの商工会の方々と懇談させていただきました。景況感について、地方や中小企業には恩恵が及びにくく、「中小小売業は右肩下がりだ」と言われています。「仕事量は増えたが、工賃が下がっている」という声も出されています。商店街の役員をされている方も、「消費税増税により廃業が増えてきている」とおっしゃっています。これでは町の顔としての商店街も一層疲弊していきます。
 知事は、こうした商店や中小企業の実態についてどのように考えておられますか。私どもは、大企業と富裕層に応分の負担を求めるとともに、家計応援で経済の好循環をつくり出すことが必要であり、消費税を5%に減税することを提案していますが、10%増税後の状況について商店街や経営者等から直接実態を聞くなどの調査を行うべきではありませんか。消費税の引き下げの必要性についてどのように考えられますか。お答えください。

 次に、医療・介護、社会保障について伺います。
 政府は、消費税10%増税を強行する一方で、少子高齢化時代に対応する社会保障制度の改革を検討するとして、安倍首相を議長とする全世代型社会保障検討会議を発足させました。医療・介護の関係者や労働者代表が1人もメンバーに入っておらず、日本経団連会長などの財界代表を中心に、専ら給付と負担の見直しを議論しているというのが実態です。
 そうした中、75歳以上の医療費窓口負担の原則1割から2割への引き上げ方針が打ち出されました。これに対し、全国後期高齢者医療広域連合協議会は窓口1割負担を維持することなどを求める要望書を厚生労働大臣に提出。中央社会保障推進協議会も新たに2割負担反対の署名活動に取り組んでおられます。全日本民医連が毎年行っている調査では、昨年も経済的な理由による手遅れ死亡事例が77件報告されました。さらなる受診抑制につながる負担増は決して許されません。
 政府はさらに、全国424の公立・公的病院を再編・統合の対象として一方的に公表し、病床削減を強引に進めようとしています。制度の持続可能性を理由としていますが、そのために地域医療を壊し、金の切れ目が命の切れ目という事態を招いていいということにはなりません。
 そもそも年齢とともに医療・介護の必要性が高まるのは誰しも同じであり、全世代型という言い方で高齢者と現役世代を対立させる議論自体が間違いです。社会保障財源と言うなら、大企業優遇税制や証券優遇税制の見直しなど、442兆円もの内部留保を抱える大企業やその配当を受ける富裕層にこそ負担を求めるべきです。今こそ生存権を規定した憲法25条に立ち返り、国民の命と健康を守る立場に立って医療・介護の充実を図ることが求められています。安倍首相の狙う全世代型社会保障制度では府民の暮らしも健康も守れないと考えますが、いかがですか。

 その上で、京都府の役割が問われる2つの問題について具体的に伺います。
 1つは、南丹市の美山診療所についてです。
 日本共産党としてこれまで何度も採り上げてきましたが、長年奮闘いただいていた常勤医師の後任が確保できず、診療所の存続が危ぶまれる事態となっていたところ、ようやく来年4月から新たに医師1人が赴任することとなっていました。ところが、先日赴任できなくなったことが明らかとなり、こうした緊急事態に不安が一層広がっています。
 これまで南丹市は、国保直営診療所として運営する方針を示す一方、「医師の負担や市の財政負担が大きい」として4床ある入院病床の休床を検討し、併設する介護老人保健施設やリハビリ事業についても「直営は難しい」としています。しかし、美山診療所が、24時間365日、怪我や急病への対応も含めて住民の命を支える役割が果たせたのは、医師や看護師が常駐する有床診療所だったからです。今後も安心して住み続けられる地域を守るためにも、ベッドを維持することが重要です。
「現在の美山診療所の存続と医療水準を守ってほしい」
と、1,300名を超えて陳情署名が寄せられています。知事はこれまで「後退させない」と答弁されてきましたが、入院のベッドがなくなれば後退は必至であると考えますが、いかがですか。ましてや、こういう事態となった以上、京都府が責任を持って医師派遣と財政支援を行うことが必要と考えますが、いかがですか。

 もう1つは、介護保険法改正案の議論の中で、要介護1・2の方の生活援助サービスを介護保険から外し、市町村が実施する総合事業に移行させる方向が検討されていることについてです。
 既に、2017年には要支援と認定された方々の訪問・通所サービスが総合事業に移行されました。京都市では、生活援助のみの場合は報酬単価が2割近くカットされたため、もともと非正規が大半だったヘルパーの賃金が一層低下するなど、介護現場の疲弊に拍車をかけているのが実態です。ボランティアなどによる住民主体サービスに至っては、ヘルパー派遣などを実施しているのは府内で八幡市と向日市のみ。デイサービスなども4市町にとどまっています。利用者にとってもこれまで受けられていたサービスが受けられなくなり、混乱を招く事態も起こっています。
 私が相談に乗った方は、御主人が認知症で要介護1、奥さんが要介護4ですが、御主人の介護度が下がって要支援になり、ヘルパー派遣の時間も短縮、回数も減り、さらにヘルパーの報酬も総合事業になると下がるために一時ヘルパーが全く見つからない状況になりました。せめて奥さんがデイサービスに行く時間にはヘルパーさんに来てほしいとのことで、ケアマネジャーさんが必死になって十数ヶ所の事業所に当たってくださり、やっとヘルパーが確保される。まさに介護現場を支えている方々のぎりぎりの努力で事なきを得たのですが、こうしたもとでその対象を要介護1・2の方にまで広げて総合事業に移すといっても、その受け皿はあるのでしょうか。介護現場に一層の混乱を招き、ひいては何のサービスも受けられない介護難民を大量に生み出すことになるのではないでしょうか。
 今必要なことは、短時間講習やボランティアに頼った安上がりの介護を拡大することではなく、その専門性と技術にふさわしい報酬を介護労働者に保障し、そのことで深刻な介護人材不足を解消して、必要な人が安心して介護を受けられる体制を整えることです。要介護1・2の方々を軽度者として介護保険から外す検討はやめるよう国に求めるべきだと思いますが、いかがですか。
 まずここまで答弁をお願いします。

○西脇隆俊知事  山内議員の御質問にお答えいたします。
 商店街と中小企業の状況についてでございます。
 まず、商店街の状況につきましては、eコマースやキャッシュレスなど消費行動が変化する中で、店主の高齢化や空き店舗の増加が進むなど厳しい状況が続く商店街がある一方で、観光客の増加で活気づく商店街もあるなど、格差が見られるところでございます。このため、京都府では、商店連盟とともに商店街創生センターを創設し、商店街ごとの特色を生かした伴走支援を行うとともに、まちづくり会社を設立して商店街と地域活性化に取り組むモデルづくりを進めております。
 また、中小企業の状況につきましては、人手不足や事業承継等に加え、近年のAI、IoTの活用などの技術革新への対応等の課題を抱えております。一方で、平成30年工業統計調査によりますと、京都経済の基盤である製造業については、中小企業の製造品出荷額等は直近1年間で9.8%増加しております。さらに中小企業の成長を加速させるため、引き続き、本年3月に整備いたしました京都経済センターを核に、生産性向上を図るための設備投資への支援や事業承継へのサポート、産学連携によります技術力向上に取り組むなど、オール京都体制で中小企業を支援してまいります。
 次に、消費税率引き上げ後の状況につきましては、商店街創生センターの活動や中小企業応援隊の活動により把握するとともに、消費税率の引き上げや京都経済の動向に係る意見交換会議を開催するなど、中小企業支援団体と情報交換を密にして把握しており、大きな混乱は見られていない状況でございます。京都商工会議所の10月調査におきましても、7割を超える事業所が「消費税率引き上げに伴う売り上げに変化はない」との回答が寄せられているところでございます。
 また、企業等を訪問する中で、来年の確定申告での混乱や、米中貿易摩擦など国際経済の動向を懸念される声も伺っております。引き続き景気の動向を注視するとともに、9月議会で議決をいただきました中小企業消費税率引上げ対策支援事業や商店街等緊急販売促進事業を速やかに執行し、中小企業や商店街の経営安定と成長を積極的にサポートしてまいりたいと考えております。
 消費税率の引き上げにつきましては、その増収分を幼児教育の無償化や介護人材の処遇改善、年金生活者支援給付金の支給などに充てるため、法律によりまして10月から施行されたものでございます。
 いずれにしても、足元の経済情勢を注視しながら、国の新たな経済対策にも積極的に対応し、経済運営に万全を期してまいりたいと考えております。
 次に、社会保障制度についてでございます。
 社会保障制度は府民の生活を守る大切な社会的インフラであり、人生100年時代を迎え、持続可能な安定的な制度として次世代に引き継いでいくことが大切であると考えております。
 京都府では、府民の方々が安心して必要な医療や介護を受けることができるよう、国民健康保険や後期高齢者医療、介護保険に対し、約930億円の予算を確保し、制度をしっかり支えてきているところでございます。
 現在、国におきましては、少子高齢化の進行及びライフスタイルが多様となる中で誰もが安心できる社会保障制度となるよう、検討会議を立ち上げ、年齢等にとらわれず、負担能力や世代間・世代内のバランスを考慮した給付と負担のあり方などを含め、幅広い議論が行われているところでございます。
 京都府としては、給付と負担の見直しの検討に当たりましては、とりわけ低所得者の生活実態や医療機関への受診行動に影響が出ないよう配慮するとともに、負担の見直しに際しましては急激な変動が生じないよう、激変緩和措置を講じることなど、国に対し、強く求めているところでございます。
 次に、美山診療所についてでございます。
 美山診療所につきましては、現在、南丹市が、運営形態や診療方針、病床数など、その将来のあり方につきまして、京都府の保健所長も参画しております南丹市医療対策審議会等を通じ、検討を進めておられます。令和元年6月の南丹市議会で直営化の方針を表明された後、10月に開催された南丹市医療対策審議会では、医療関係者や学識経験者等から「身近なところで診察を受けられるよう、子どもたちのためにも診療所は維持してほしい」「診療所運営を続けるほどに赤字が膨らむのは問題であり、高齢者や子どもの安心のためにも将来にわたって診療所が継続できるための議論が必要である」「新たに来られる医師の考え方や方針、夢といったものを尊重しなくてはならない」など意見が出され、医師の確保や経営などのさまざまな観点から議論が行われており、年度内には答申が出される予定と伺っております。
 京都府といたしましては、南丹市が出される方向性や御要望を十分尊重しながら、地域に必要な医師を含めた医療提供体制が確保されるよう、南丹地域医療構想調整会議の中でしっかり議論し、引き続き支援をしてまいりたいと考えております。
 次に、高齢者の介護についてでございます。
 介護予防・生活支援に係る総合事業は、要支援1・2の高齢者のさまざまなニーズにきめ細かく対応するため、全国一律の給付から地域の実情に応じて工夫できる市町村事業に移行した、サービスの多様化を図る介護保険制度の1つでございます。これによりまして、市町村が、従来の専門職による身体介助のサービスに加えまして、ボランティアの皆様による買い物代行や掃除などを組み合わせて実施することで1人1人の状態やニーズに合ったサービスの提供が可能となるよう、取り組みを進めているものでございます。しかしながら、現状ではボランティアなどによる担い手が不足している状況にございます。このため、京都府では、保健所ごとに設置した共助型生活支援推進隊により市町村が行う新たなサービスの担い手となるNPOなどの掘り起こしを支援するとともに、今年度から「地域交響プロジェクト交付金」を創設してボランティアなどの育成に取り組み、市町村を支援しているところでございます。
 令和3年度からの次期介護保険制度の改正に向けては、現在、要介護1・2の方々への支援や利用者負担のあり方、健康づくりの推進方策などについて国の審議会において幅広く議論されているところであり、京都府としては、「総合事業の実施状況を十分に検証し、支援を必要とする高齢者の生活に支障が生じることのないよう配慮すべき」と申し入れているところでございます。

○山内佳子議員  まず、消費税増税、京都の中小企業の実態ですけれども、「いろいろ対策、あれもやっている、これもやっている」、さまざまな努力をされているという答弁がありました。まあ、どこまで有効なのかという問題はありますが、いろいろやったって、やっぱり右肩下がりという状況があるんですね。
 それで、消費税増税の影響。9月までの調査結果が今出てて、なかなか、10月、11月、増税後の調査結果というのは少ないんですけれども、その中でも、インテージという会社だとか、それから先ほど紹介をさせていただきました数字などではやはり11月に下がっているということが出ているわけです。そういう点では、「国の新たな経済対策に対応」なんて言って振り回されていないで、しっかりと中小零細企業の実態を見て、国に物を言う、それからしっかりと下支えをするという役割を果たしていただきたいと思います。
 それから、美山診療所の医師確保についてですが、これまで共産党議員団はずっと美山診療所の医師の確保について京都府が責任を持つよう強く求めてまいりました。確かに医療対策審議会でいろいろと議論されているんですけれども、やっぱり医師確保という点での責任をどう果たすのかという点で問題があるというふうに思うんですね。
 診療所のニュースを見せていただくと、小さな診療所が大きな役割を果たしているのがわかります。寝返りもできない状態で入院治療が終わり、おむつをされていた方が診療所に転院し、併設する介護老人保健施設で専門的なリハビリを行い、おむつも外して車いすにも移乗できるようになって自宅に戻ることができた、こういう記事がありました。これは絶対なくしてはいけない。だから、医師を確保するということについて、あらゆる知恵を絞って京都府として努力をしていただきたい。このことについて再度お答えください。
 それから、もう一点は医療と介護の負担についてですが、総合事業についてボランティアを育成するというふうにおっしゃいましたが、総合事業が始まって2年たっても、今ボランティアをやる人がなかなかいない。そして、ボランティア自身がどんどん高齢になっていって、ますます支え手がいないという状況になっていくんです。そういう点では、やはり介護保険の改悪をきっぱりやめるように国に求めるべきだ、このように思います。
 また、医療の面では、80代のお父さんの入院の医療費が高くて何とかしてほしいと、60代の息子さん、知的障害があって障害年金で生活されている息子さんから相談がありました。お父さんは厚生年金で、月に手取りで14万円ほど年金があるが、1割負担でもおむつや食費などの負担もあって年金がほとんど消えてしまう。2割になったら一体どうするのか。全世代型と言いながら高齢者の負担を引き上げることは高齢者を介護している世代にも大きな負担を押しつけ、共倒れの危険もあるのではないですか。一体どこが安心できる社会保障なんでしょうか。消費税を10%に上げた途端にこんなことが検討されているなんて、余りにも酷いとは思われませんか。
 以上、再質問です。お答えください。

○西脇隆俊知事  山内議員の再質問にお答えいたします。
 美山診療所につきましては、先ほども答弁をいたしましたけれども、私どもの保健所長が参画いたしております南丹市の医療対策審議会で議論が行われ、南丹市が出される方向性、御要望を十分尊重しながら、地域に必要な医師を含めた医療提供体制が確保されるように南丹地域の医療構想調整会議の中でしっかりと議論して、引き続き支援をしてまいりたいというふうに思っております。
 それから、要支援1に対します総合事業についてでございますけれども、介護予防、生活支援に係る総合事業は高齢者の多様なニーズにきめ細かく対応していくためにも必要な事業と考えておりまして、ボランティアの育成につきましては、その必要性は我々も十分認識しておりまして、先ほど申し上げましたように、共助型の生活支援推進隊や地域交響プロジェクト交付金も活用しまして、ボランティア、NPOの育成に向けまして市町村を引き続き支援してまいりたいというふうに考えております。
 それから、次期の介護保険制度の改正に向けましては、先ほど申し上げましたように、これまでの総合事業の実施状況等を十分勘案し、しかも介護の支援を必要とする高齢者の生活に支障が生じることのないように配慮すべきということを強く申し入れているところでございまして、そうした方向で議論が進められることを期待しているところでございます。

○山内佳子議員  指摘・要望させていただきます。
 総合事業できめ細かい支援ができるなんていうのは一体どこのことを言っているのかというふうに思います。
 それから、美山診療所の医師確保について、京都府としてイニシアチブを持って医師を確保し、一般病床を残し、老健施設の運営も行なえるように、美山診療所がこれまで担ってきた役割を果たせるように努力していただきたい。強く求めておきます。
 また、府として消費税増税後の中小企業の実態をしっかり把握すること、そして本来の自治体の役割である「府民の暮らしと命を守る」立場で国に対して「介護を切り捨てるな。医療を切り捨てるな」と要望すべきです。

 指摘して、次の質問に移ります。
 次に、向日が丘支援学校の寄宿舎の存続と充実について質問します。
 かつて、重度障害児は就学猶予や就学免除とされ、教育を受ける権利が保障されていませんでしたが、
「学校に行きたい」「友だちがほしい」「どんなに障害が重い子どもたちにも教育を」
という先駆的な運動が府内の保護者や教職員、地域住民によって広がる中、1967年、1969年に向日が丘養護学校と与謝の海養護学校が相次いで開設され、重度障害の子どもたちも受け入れて先駆的な教育を行ってきました。こうした実践が全国に広がり、1979年に養護学校義務制が実現し、重度障害児にも教育保障の道が開かれたのです。
 京都府には両学校を含めて丹波支援学校、聾学校と盲学校、そしてその分校に寄宿舎があり、月曜日から金曜日まで、1週間や1ヶ月の短期入舎から1年を通した長期入舎まで、生徒たちの希望や発達・課題に応じて豊かな教育が取り組まれています。とりわけ寄宿舎の設置によって、障害のある児童生徒たちの生活上の困難を切り取って支援するのではなく、毎日の寝泊まりのある生活を営みながら生活基盤を整え、異年齢の友達や寄宿舎指導員とのかかわりの中で、学校卒業後、自立し、社会参加する力を養う貴重な発達支援の場となっています。京都府の障害児教育が全国的にも先進的な役割を果たしてきましたが、それは学部の教育と寄宿舎教育が密接に連携する中で得られた経験や教育実践が存在したからであります。
 この間、向日が丘支援学校の老朽化に伴う建替えで寄宿舎が無くなってしまうのではないかと、多くのお母さんや教職員の方々が存続を求める署名活動などに取り組んでこられました。ところが、9月に発表された向日が丘支援学校改築基本構想中間案では寄宿舎の廃止方針が明らかになりました。
 中間案では、児童生徒の発達や自立等に向けて寄宿舎が果たしてきた役割を踏まえ、集団による宿泊ができる生活体験型生活実習室と高等部の生徒を対象とするひとり暮らし体験型生活実習室を整備するとしています。生活実習室では、1泊2日、2泊3日の体験宿泊でしかないことや、指導者の配置も全く担保されないことが明らかになっています。寄宿舎が果たしてきた役割とは全く違う性格のものです。保護者からは
「寄宿舎の意義をこれまで府教委は認めてきたのに、なぜ廃止するのか」
と怒りの声が寄せられています。寄宿舎なら指導員が定数で配置できますが、寄宿舎でなくなれば教員の配置もできません。生活実習室は寄宿舎のかわりになるものではないと考えますが、いかがですか。
 先日、大山崎町で「向日が丘支援学校の寄宿舎の明日を考える」集会が開催され、支援学校や寄宿舎の保護者や卒業生、教員や寄宿舎指導員とそのOB、地域住民や福祉関係者、京都府北部からも特別支援教育に携わる方々が集まって、寄宿舎教育の必要性について経験を語り合い、学び合いました。
 その中で、現在高等部に通う重度障害の息子さんのお母さんのお話が心に残りました。中学2年の時に寄宿舎に通年入舎するようになって、これまで自分中心だった息子さんが
「お母さん、ゆっくりお風呂入って。僕は待てるから大丈夫。任せて」
と誇らしそうに言ってくれるようになったそうです。それまで息子さんとの暮らしに行き詰まりを感じ、息子さんとの未来を重たく感じていた感覚が変わったのです。1年かけて息子さん中心の生活を徐々に手放し、気づけば息子さんとの時間から息苦しさが消え、息子さんも含め、家族で笑うことがふえたそうです。息子さんは通年入舎の前にも1泊の宿泊学習や1週間の運用入舎なども体験されたとのことですが、
「貴重な体験だったけれども、何かを学び取るには余りにも短く、家庭に戻れば元通り。でも、寄宿舎には生活がある。生活という土台の上で初めて得られる学びがある。それを押してくれる先生方がいる。私たちの子どもは、1つ1つ学びに時間と手間がかかります。だから寄宿舎が必要なのです」
と語られました。
 こうしたお母さん方が中心となって、寄宿舎を存続・充実してほしいという署名は18,000筆にも上っています。障害児によりよい教育環境を提供するのが教育委員会の仕事ではありませんか。子どもたちから寄宿舎を取り上げるべきではありません。寄宿舎を存続して医療的ケア児の利用も可能にするなど、さらに充実すべきと考えますが、いかがですか。
 まずここまでお答えください。

○橋本幸三教育長  山内議員の御質問にお答えいたします。
 向日が丘支援学校改築基本構想についてであります。
 開校から50年が経過し、老朽化が進んだ校舎の改築を計画するに当たり、改築整備の基本理念と方向性をまとめたものであり、共生社会の実現に向け、児童生徒の社会的自立と人間性豊かな人生の歩みを支援する新たな学校づくりを目指すこととしております。
 議員御指摘の生活実習室についてでございますが、これまで向日が丘支援学校の寄宿舎が果たしてきた成果も踏まえ、全ての児童生徒を対象とする教育活動として、集団による宿泊ができる集団生活型生活実習室及び高等部等の生徒を対象とするひとり暮らし体験型生活実習室を整備したいと考えているところでございます。
 生活実習室は、保護者のニーズを踏まえた、卒業後の社会的自立と豊かな生活の営みにつなげるため、医療的ケアの必要な児童生徒も含め、全ての児童生徒が活用できる特別教室であるとともに、家庭を離れての集団生活やひとりでの生活を経験できる宿泊学習の場とするものでございます。具体的には、家庭と連携しながら、衣服の着脱、洗面、手洗い、排せつ、調理、食事、入浴などの望ましい生活習慣が身につけられるよう、宿泊を伴う学習だけではなく、日常生活の指導、自立活動を初めとした日々の授業に活用ができるものでございます。
 寄宿舎についてでありますが、寄宿舎での経験は児童生徒の生活する力を育む上で一定の効果がありますが、効果は入舎する児童生徒にとどまるものでございます。このため、今後は全ての児童生徒を対象とした教育課程内での教育活動を充実させたいと考えているところでございます。
 さらに、構想策定後は、新校舎の設計等、施設の具体化や教職員体制の検討を進めるとともに、長岡京市で計画されている共生型福祉施設との連携について検討を深め、他の特別支援学校にない新たな学校づくりを目指してまいります。

○山内佳子議員  保護者のニーズというふうにおっしゃいましたけれども、保護者のニーズは寄宿舎の存続と充実です。それから、寄宿舎は一部の生徒だけのものではありません。全ての生徒に開かれているものです。全ての児童生徒を対象に寄宿舎を充実させればいいわけです。
 それで再質問ですが、寄宿舎で行っていたことを生活実習室などでできるのか。訓練だけではなく、生活そのものが寄宿舎に存在してきたから大きな役割を果たしていたのではないのかということ。
 それから、指導員の配置です。一体、先生はどうするんですか。昼間は学部で生徒たちを見て、夜はそのまま泊まってなんて、そんなことできないでしょう。一体、指導員の配置はどうするのか。寄宿舎を廃止して教育条件が後退しない保障はどこにあるのか、もう一度伺います。

○橋本幸三教育長  山内議員の再質問にお答えいたします。
 まず、生活実習室についてでございます。
 生活実習室につきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、宿泊だけではなく、日常の授業において、衣服の着脱を初め、排せつ、入浴等の日常生活、社会生活で習慣的に繰り返される基本的内容を学ぶ場です。基本的生活習慣は、学校と家庭とが連携を図り、児童生徒が学校で取り組んでいること、また家庭等で取り組んでいることなどについて双方向で学習状況を共有し、児童生徒に身につけさせるべきものであり、今回整備を計画している生活実習室を全ての子どもたちが授業の中で活用することで望ましい教育効果が得られるものと考えております。
 また、指導員等の体制についてでございます。
 今申し上げました生活実習室は日常の教育活動を行う中で使用する特別教室になりますので、その指導を行うのは当然教員ということになります。今回、構想の中では、他校と同様の集団型の生活実習室のほかに、高等部対象の一人暮らし体験型の実習室を整備することも計画しており、それらの実習を円滑に行うことができるよう、教職員の体制につきましては構想の具体化を今後進めていく中で検討してまいりたいと考えております。

○山内佳子議員  学校と家庭の連携をとっていくというふうにおっしゃいました。寄宿舎があるからこそ、学校と家庭の連携が本当に深くとれてきた。家庭には生活があります。そして、寄宿舎にも生活があります。
 あるお母さんは、卒業生の保護者ですが、
「1年間の入舎で睡眠や排せつ面などの大変さを寄宿舎に知ってもらい、アドバイスをいただけたことが本当にありがたかった」
というふうに語られました。また、ある保護者は
「月曜に子どもを送り、金曜に迎えに行っていたが、寄宿舎の先生が1年かけて、1人でバスに乗って、間違えずに乗り換えて、安全も確認しながら寄宿舎の行き帰りができるようになった。このことで卒業後の進路の幅が広がり、送迎サービスのない作業所にも通うことができるようになった」
と、生活自立における寄宿舎教育の重要さを語られました。
 運動の中心を担っておられるお母さん方は、卒業をあと数年後に控えている方々がほとんどです。我が子のために寄宿舎を存続してほしいと要望しているのではなく、次の世代のために障害児によりよい教育環境を残してほしいと、高い志で運動されているのです。
 重度障害児のお母さんの言葉を再び紹介します。
「社会という大きな道の世界へ進む前に、自分の知っている、安心できる学校の寄宿舎という社会生活の中で、親元を離れ、自立への力をつけさせてくれる段階が必要だと思うから、ずっとずっと寄宿舎という存在があり続けますように、強く強く願います」
こういう言葉です。
 京都府は、寄宿舎の指導員を教員免許などを持つ専門職採用で行い、単なる通学支援にとどまらない寄宿舎教育の実践を支えてきたのではありませんか。そのことに誇りを持っておられないのでしょうか。改めて、再度保護者や現場の声を聞き、寄宿舎のあり方について検討され、存続・充実を図られるよう強く求めて、次の質問に移ります。

 次に、教員を増やして長時間労働を解消し、子どもたちの教育環境を改善する問題についてです。
 教員の長時間労働は依然として深刻で、過労による休職や痛ましい過労死が後を絶ちません。とりわけ本府の教員の超勤の実態は全国と比べても過労死ラインを超えている割合が多く、小学校では全国平均34%、中学校の全国平均は58%ですが、本府の場合は小学校で52%、中学校で72%と、見過ごせない事態になっています。教師が過労死をするような働き方をしていることは子どもたちにとっても不幸なことです。
 今年2月の予算委員会で長時間労働の是正を求めた私の質問に教育委員会は「教職員定数の改善が必要」という認識を示されましたが、実態は、定数改善どころか、本来正規の教員を配置しなければならない担任などを臨時の教員で代用、いわゆる定数内講師を増やしており、このことは大問題です。平成26年度の定数内講師は454名でしたが、今年度は733名と、全ての教諭の9%近くが臨時の先生です。また、小学校低学年のチームティーチングや中学・高校の教科指導などのための非常勤講師を含めると、何と教諭の25.6%、4人に1人が臨時の教員です。いつ雇い止めになるかわからない、低賃金の不安定雇用の先生方が必死になって子どもたちの教育に携わっておられます。
 こうした中で、講師が見つからず、教育に穴が空く事態も起こっています。
「産休の代替講師が見つからず、半年間美術の授業ができなかった」
あるいは
「教頭や主任が授業に入らなければならない」「担任がいない」
などなど、子どもたちの学習権をも奪う事態となっています。
 そこで伺います。
 定数内講師を減らして教員の採用を計画的に増やさなければ、こうした事態は改善できないのではありませんか。
 また、文部科学省の示す標準授業時数は小学校1年では850時間ですが、京都府の平均は906時間で、全ての学年で国の示す標準時数を40時間から50時間上回っています。こうした事態を放置せず、授業時数を減らしていくとともに、おくれている専科教員の配置や少人数学級充実のための教員の確保などの取り組みを行うべきではありませんか。お答えください。

 昨日、1年単位の変形労働時間制を導入する法律が過労死遺族や多くの関係者の反対の声を押し切って強行可決されました。繁忙期には1日10時間まで労働可能とし、長期休暇などを閑散期として1年間の平均で1日当たり8時間労働におさめようとするものですが、最大の問題は抜本的な教員の定数改善を行わずに総労働時間を短く見せかけるためのものであり、教員の長時間労働をさらに促進させかねないことです。閑散期とされている夏休みなども研修、補習、部活などの指導があり、京丹後市の調査では、8月の時間外勤務の平均は小学校で月17時間、中学校で月29時間に上っています。決して夏休み期間が閑散期ではないのです。既にこの制度は国立大学の附属学校などで導入されているところがありますが、導入されている職場のほうが、導入されていない職場と比べて、所定労働時間で月に15時間、残業時間も月に3.8時間長くなっています。これでは教職員の命と健康が守れません。
 過労死と認定された公立学校の教職員が、今でも2016年度までの10年間で63人に上ることが毎日新聞の取材で明らかになっています。公務災害の申請をし、認定された方だけの数ですが、実際にはもっと多くの教員の命が長時間労働によって奪われている、あるいは健康も奪われているのです。
「7時間授業や放課後の補習が増えるかも」「授業の準備はいつになったら始められるんだろう」
などの不安が寄せられているのは当然です。国に対して変形労働時間制の導入を中止するよう求めるべきと考えますが、いかがですか。

 次に、大学入試改革の抜本的な見直しについて伺います。
 経済的・地域的格差を広げ、入試の公平さを損なうと批判を浴びていた大学入学共通テストでの英語民間試験の利用を文部科学大臣が2024年度まで延期すると表明しました。多くの高校生、受験生や市民が粘り強く声を上げ、野党の結束した共闘で政治を動かした大きな成果です。
 中止を求めて文科省前などで声を上げてきた高校生たちは
「声を上げたことが初めて実る経験をした。おかしいと声を上げたことに応援、賛同してくださる方が増え、改悪をとめる第一歩を踏み出せたことに感謝します」
「今まで声を上げても何も変わらないと思っていた。でも、この問題を通じて、声を上げる人がいるから変わるんだと思えた」
と語りました。そして、高校生たちは
「延期であれば、今の中学生が犠牲になってしまう。そこを変えていくために今から声を上げていきたい」
と語っています。
 大学入試の英語民間試験の利用は大学の入試を民間のもうけに利用するものであり、高校生の将来をこうしたことで左右してはならないと考えますが、いかがですか。延期ではなく、きっぱり中止すべきと考えますが、いかがですか。お答えください。

○橋本幸三教育長  教員の確保等についてでございますが、半年間も授業に穴が空くという事態の報告は受けておりませんが、現在、正規・非正規を問わず、教員の人材確保が全国的な課題となっております。これは、教員が多忙な職であるという風潮が広まっていることや近年の好景気の影響で民間企業等を志す学生が増えていることなどから教員志望者が減少していることに加え、出産や子育てのために休暇等を取得する年齢層の教員が増加し、多くの代替講師が必要となっていることなどに原因があると考えております。
 このような中、府教育委員会におきましては、将来の児童生徒数の推移を基本に、学校統廃合、再任用希望や高齢者雇用のあり方の検討状況を踏まえ、中長期的な見通しを持って教員を採用してきたところであり、退職者数が減少傾向にある中で、令和2年度は前年度を上回る約430名の優秀な人材を採用する予定でございます。
 今後も学校が働きやすく魅力ある職場となるよう働き方改革を進めるとともに、関係機関や大学等と連携を図り、教員の人材確保や計画的な採用に取り組んでまいります。
 小学校における授業時数につきましては、国の基準をもとに、市町教育委員会の判断により設定されているものでございますが、府内の状況は決して全国平均を上回るものではございません。
 また、教員の配置についてでありますが、府教育委員会では、指導方法工夫改善の加配等を活用し、市町教育委員会が学校や児童生徒の状況に応じて少人数授業等を弾力的に選択することができる京都式少人数教育や、英語をはじめとした専科教員による専科指導を実施しているところであり、来年度も国の加配定数を活用して充実を図ってまいりたいと考えております。
 今後も学校におけるさまざまな教育課題に的確に対応できるよう、引き続き教員定数の確保・拡充に向けて国に要望してまいりたいと考えております。
 1年単位の変形労働時間制の導入についてでありますが、この制度は、中教審の答申も踏まえ、学校における働き方改革の取り組みの一環として、休日のまとめ取りを推進するため、導入が検討されてきたものであります。昨日、改正法が可決・成立したところでありますが、文部科学省からは、同改正法に対する懸念の声にもしっかりと対応できるよう、省令や指針等を通じ、丁寧な制度設計を図る方針であると伺っております。
 府教育委員会といたしましては、市町教育委員会の意見も聞きながら今後の対応を検討してまいります。
 次に、大学入試改革についてでありますが、英語4技能を評価する大学入試のあり方については話す・聞く技能を評価する試験を約50万人規模の受験生に対して同一日程で実施することが非常に困難であることから、英語民間資格・検定試験を活用することになったと承知しております。
 今回、英語民間試験を活用するに当たり、会場、日程等の民間試験の詳細事項に関する公表の状況や経済面での配慮等が必ずしも十分でなかったとして、令和2年度からの大学入試英語成績提供システムの導入が見送られたところであります。また、文部科学省においては、英語の4技能をはかる方向性は維持する一方で、課題解決に向けて見直しを行い、令和2年度実施の大学入試に向けて、今後1年を目途に検討し、結論を出す方針を明らかにしています。
 府教育委員会といたしましては、グローバル化した社会の中では、言語や文化が異なる人々と主体的に協働していくため、国際共通語とも言える英語の活用能力の向上は大変重要であり、英語4技能をバランスよく育成すること、またその能力を測定することは必要不可欠であると考えております。今後は、国において生徒が安心して受験できる環境整備が行われるよう期待するとともに、引き続き生徒の英語4技能をバランスよく育成する教育の充実に努めてまいります。

○山内佳子議員  教員の長時間労働の是正の問題ですが、授業時数が国の学習指導要領の標準時数は上回っているけれども、その上回り方が国の平均以下だというふうにおっしゃいましたが、労働時間で言いますと、過労死ラインを超えて働いている方々というのは、国の平均以上どころか、本当に飛び抜けて多いんですから、そういう点では、やっぱり本府として授業時数を減らすこと、国と京都府の学力テストの実施も見直すこと、それから府の努力で教員を増やして定数を改善することなど、子どもたちのためにも教員の長時間労働の是正のために努力を求めておきます。
 また、変形労働時間制については、京都府には決して導入しないよう強く求めておきます。
 それから、大学入試改革問題で再質問です。
 これは採点の問題ですが、営利を追求しなければならない民間企業に丸投げをするという問題で、教育の機会均等が確保できないのではないかという点、また受験料の負担もあって地域格差、経済格差が生まれるのではないか、ここが懸念されているわけですけれども、そのことについてどうお考えなのか、再質問いたします。お願いいたします。

○橋本幸三教育長  英語民間試験の再質問についてお答えいたします。
 大学入試における英語民間試験の利用についてでございますが、例えばスピーキングテストについて言いますと、最もノウハウを持っているのは各種資格・検定試験を実施している民間業者でありまして、確かに様々な活用の仕方というのはあるかもしれませんけれども、逆に民間試験だから直ちにダメだという指摘は当たらないものと考えております。
 一方で、先ほどお答え申し上げましたように、運営等をめぐり、課題が指摘され、見直しが行われるということになっておりますので、生徒が安心して受験できる仕組みを国においてしっかり作っていただきたいと思っております。

○山内佳子議員  大学の入試改革の問題では、国語、数学の記述式導入も2021年度入試から実施をするということですが、国語、数学の問題も採点を民間事業者に丸投げする点では英語民間試験と共通する欠陥を持っています。採点作業はベネッセに約61億円で委託し、採点の仕事は学生アルバイトも認めるという方針ですが、採点の質と公平性が全く保障されません。記述式問題は、多くの大学が個別試験で実施しております。共通テストに導入する必要性も妥当性もない、こうした検討はやめるよう強く国に求めていただきたい。指摘しておきます。

 次に、北陸新幹線延伸について伺います。
 最初に、北陸新幹線延伸に伴う自治体の財政負担についてです。
 本府は、来年度の政府予算等に関する重点要望で、北陸方面と大阪・中京方面の利用者が多い実態を踏まえ、建設費の負担は受益に応じた負担にすることを国に求めています。しかし、一般的に整備新幹線の財政負担は距離によって決定されていることは最初からわかっていることではないでしょうか。今になって他府県への利用者が多いことを理由に負担を減らせと求めるぐらいなら、最初から北陸新幹線の延伸など求めるべきではないのです。余りにも無責任です。
 現在、北陸新幹線の概算での建設費は予測で約2兆1,000億円とされていますが、既に金沢―敦賀間でも人件費や資材の高騰、消費税等で当初計画から1.2倍に膨れ上がり、1兆4,121億円となっています。また、敦賀市の駅部分で建設費が53%増え、690億円にもなり、新高岡駅周辺整備で高岡市は370億円もの支出となり、市職員の給与カットや公共施設の休館などの市民生活への影響も出ています。
 そこで伺います。
 約2兆1,000億円もの建設費は今後負担が増えることが予測され、京都駅や松井山手駅を設置する自治体の負担も莫大なものになり、周辺道路の整備費や駅周辺のまちづくりなどにも影響します。さらに、既存のJR路線が並行在来線とされれば、そこへの自治体負担も増え、京都府の財政負担だけにとどまりません。知事の認識はいかがですか。

 次に、京都市の地下40m以下の大深度を通過することが検討されている工事についてです。
 一般的に、民有地の地下を使用する場合、地権者の了承や補償などが必要ですが、大深度地下法は無断・無補償で地下を利用することができるとされています。この法律そのものが憲法29条に定められた財産権の保障を侵害するものです。
 愛知県春日井市では、リニア建設予定地の大深度地下の工事で炭坑跡が陥没して地下水が抜けた事故が発生しています。自然環境への影響は無視できず、陥没事故や地盤沈下、出水の危険もあることが報告されていますが、京都市域でも
「重要湿地として環境省から指定されている北区の深泥池湿地の水が工事により枯れるのではないか」
さらには府南部でも、
「農業や豆腐の製造、酒づくりに欠かせない、府民に親しまれている地下水が枯れるのではないか」
「河川の水量が変化し、自然災害の被害が拡大するのではないか」
などの声が寄せられています。
 東京外郭環状道路の大深度地下トンネル建設の掘削工事では、酸欠空気や地下水が地表に噴出する事故が発生しました。沿線住民が
大深度地下だからといって、収用も補償もなしに16kmにわたり住宅地の下を掘っていくことは地上に住む人の生活不安や財産、身体への被害を与えかねない」
と、国、東京都を相手に訴訟を起こされています。
 そこで伺います。
 大深度地下法は、そもそも土地所有者の地下を無断で、何の補償もなく使用できるという事業者側に立った法律になっています。40メートルもの地下のトンネル掘削で進める新幹線延伸計画はやめるべきではありませんか。お答えください。

 次に、水道事業の広域化・官民連携について質問します。
 本府の京都水道グランドデザインは、人口減少社会が到来するもとで、水道事業を取り巻く環境が変化するもとで広域連携・官民連携を推進しようとしています。この計画と連携した各市町村の水道ビジョンが策定されてきていますが、舞鶴市水道ビジョンでは、北部5市1町を対象とし、広域化が合意できたところから経営統合し、一水道化を実現させるとしています。さらに、その後に官民連携による企業団を設立していくとしています。
 今年2019年2月、3月に非公開で開催された市町村水道事業連絡会議では広域化・官民連携の検討のたたき台が示され、事業統合、料金統一等が話し合われていますが、知事は「若手職員のワークショップの自由な議論の結果であり、決定ではない」とも答弁されています。しかし、これは国の改正水道法の具体化そのものです。こうした広域化・官民連携ありきの住民不在のトップダウンで進めるやり方に対し、府民の方々や市町村からも批判の声が寄せられています。
 与謝野町議会では、9月議会で宮津市、舞鶴市との2市1町で民間業者に委託する補正予算が議会で提案されましたが、13対1で否決されました。
「水道管の更新を進めてきたのに、料金統一になれば値上げになる」
「滞納整理などの個人情報が民間業者に提供されるのは問題だ」
というものです。さらに、宮津市議会でも
「他の自治体より1割から2割安い水道料金なのに、今後4年後に7市町で民営化されれば、かなりの値上げになる」
「府外の業者が参入すれば、4年間で1億3,000万円の支出予算が地域に循環しない。ますます疲弊する」
との意見が寄せられました。
 そこで知事に伺います。
 広域化は、市町村の水道事業の基盤強化にはつながらないどころか、地域が疲弊していくとは考えませんか。議会にも住民にも十分な説明もなく、知事は9月議会で「広域化は基盤強化の1つ」、つまり選択肢の1つだと答弁されましたが、それ以外の選択肢をなぜ示されないのですか。
 全国的には、2019年4月に千葉県の九十九里地域、南房総地域で広域化を行い、君津広域水道企業団となりました。しかし、2018年度の職員採用は1人しかなく、その後も職員を採用せず、減らし続ける計画となっています。香川県でも、広域化で浄水場の自己水源を廃止し、ダム水源比率を高めたことにより、災害時の安全性にも問題が出ています。
 また、三重県が計画した伊賀広域水道事業を伊賀市に譲渡し、総額200億円を超える巨大事業を押しつけられた結果、財政悪化する事態まで起きています。
 さらに、水道事業の人材育成は、この間、公務労働の民間開放が行われたため、技術者不足が生じました。この間、南部の笠置町でお話を伺ったところ、
「水道事業に携わる職員は数名しかおらず、技術を継承するために努力しているが、水道事業には公的責任があるので必要な財政的支援が必要」
「台風19号の被害に遭った方々が『水道がなくてはどうにもならない』と水道の供給を求めておられる姿をテレビで見て、命の水を届けたいと切実に思った」
「一般職だが、水道事業の技術を身につけ、継承するために必死だ」
ともおっしゃっています。民営化では命の水である水道事業を守る公的責任は果たせないとの声も伺っています。こうした声にどのように応えますか。伺います。

 次に、原発の安全対策と原子力防災について伺います。
 関西電力幹部に加えて福井県の職員まで、現在判明しているだけでも109人が、高浜町の元助役から金品を受領していた事実が明らかになり、原発マネーをめぐる利権の構造に改めて厳しい批判が寄せられています。その背景に、原発をベースロード電源と位置づけ、原発輸出と再稼働を推し進める国のエネルギー政策があったことは明らかです。関電任せではない真相究明とともに、原発推進政策そのものの抜本的な見直しを求めるものです。
 その上で、原発の危険から府民の命と暮らしを守る本府の役割について伺います。
 まず、定期点検中の高浜原発4号機で3台の蒸気発生器全てから伝熱管の損傷が発見された問題についてです。
 関西電力の発表によると、伝熱管の肉厚は約1.3mmで、傷の深さはその4割から6割に達していたということです。高温高圧の一次冷却水が通る細管であり、傷がもう少し深ければ管の破断という重大事故にもつながりかねないところでした。蒸気発生器は、タービンを回す蒸気を発生させるとともに、一次冷却水を冷まして原子炉に戻すという原発の安全性にとって極めて重要な役割を持っています。1991年の美浜原発2号機事故では、伝熱管の破断により原子炉が自動停止し、大量の水を注入する非常用炉心冷却装置が日本で初めて作動する事態となりました。このときは損傷していない蒸気発生器で原子炉を冷却することができましたが、今回全ての蒸気発生器で同様の損傷が見つかった事実はより深刻な事態を招く危険があったことを示しており、重大です。
 京都府は、この件について関西電力からどのような説明を受けているでしょうか。原因は調査中とのことですが、現在稼働中の高浜3号機や大飯3・4号機などで同様の損傷が起こっていないのかということも含め、徹底した調査と再発防止策を求めるべきではありませんか。同時に、一刻も早く全ての原発の稼働を中止すべきと考えますが、いかがですか。

 第二は、原発事故に備えた避難計画についてです。
 現在、国のガイドラインに基づき、高浜・大飯原発から30km圏にある市町を対象にした避難計画が策定されています。しかし、福島第一原発事故では、放射能プルームが北西方向に流れた結果、40km離れた飯舘村が全村避難となり、60km離れた福島市などでも通常の数十倍という高い放射線量が観測されました。大飯原発に置きかえると、40km地点には左京区の花背小中学校があり、60kmとなると、京都市役所や亀岡市役所も含まれます。2012年に滋賀県が独自に行った放射性物質拡散予測では、福島第一原発並みの事故が起こった場合、京都市右京区や亀岡市でも毎時100µSv(マイクロシーベルト)を超える放射線量となる可能性が示されました。
 昨年度予算の審議の際、当時の危機管理監は、「30km圏外にも汚染が広がって避難が必要となるケースも考えられる」と認めた上で、「30km圏内の計画をしっかり持っておけば、その応用で対応できる」との考えを示されましたが、実際に避難するのは住民であり、その避難指示を出して住民を誘導するのは自治体職員です。福島第一原発事故の際は、自治体職員や消防団が津波被害対応や行方不明者の捜索に追われる中、刻々と深刻さを増す原発事故の状況に現場の対応が間に合わず、大きな混乱の中での避難とならざるを得ませんでした。最悪の事態を想定し、繰り返し訓練しておかなければ、いざというときに適切な行動をとることはできません。とりわけ、大きな人口を抱え、年間を通じて多くの観光客が訪れる京都市での対応は大変厳しいものになることが予想されます。本府でも昨年度放射性物質の拡散シミュレーションを改めて行ったとのことですが、その内容はいまだに公表されていません。速やかに公表するとともに、その結果も参考にして、30kmという線引きにとらわれずに避難計画を見直すべきではありませんか。
 京都市の原子力防災対策は30km圏に隣接するごく一部の地域のみを対象としたものとなっていますが、これを見直すよう京都市と協議を行うべきではありませんか。知事の認識を伺います。

○西脇隆俊知事  北陸新幹線の延伸計画についてでございます。
 北陸新幹線は、日本海国土軸の一部を形成するとともに、大規模災害時におきまして東海道新幹線の代替機能を果たし、関西全体の発展につながる国家プロジェクトであると認識しております。
 北陸新幹線敦賀―大阪間の整備につきましては、本年5月31日から環境アセスメントの手続が始まり、去る11月26日に建設主体であります独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が環境影響評価方法書を公告したところでございます。建設費や地元負担の考え方などについては今後国や鉄道・運輸機構の詳細計画が固まった段階で示されるものと考えており、京都府としては、引き続き、国や鉄道・運輸機構に対し、受益に応じた地元負担となるよう強く求めてまいりたいと考えております。
 なお、北陸新幹線敦賀―大阪間の整備によってJRから経営分離される並行在来線は地理的にも機能的にも存在しないものと認識しており、従来から関西広域連合の要請において、国や関係機関に対して、強くその確認を求めているところでございます。
 また、駅周辺整備につきましては地元市町村が中心となって行う事業でございますが、京都府といたしましても、国や鉄道・運輸機構による具体的な駅の位置・構造などの事業計画が固まった段階で、市町村と連携し、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。
 次に、大深度地下の利用についてでございます。
 先日公告された環境影響評価方法書では「京都駅付近は、京都市中心市街地は回避し、可能な限り道路等公共用地の下の活用を考慮し、必要に応じて大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の活用も検討を行う」とされております。今後、大深度地下の利用の検討が行われる場合には自然環境や生活環境等への影響に十分配慮されることが重要でありますので、京都府といたしましては、環境影響評価の各段階におきまして、関係市町の意見もお聞きしながら、しっかりと必要な意見を提出してまいりたいと考えております。
 また、大深度地下の利用に当たりましては、大深度地下使用法に基づき、国の関係行政機関及び関係都道府県で構成される大深度地下使用協議会におきまして必要な協議を行うとされているほか、国土交通大臣の使用の認可手続の中で事業の施工について関係のある行政機関は意見を述べることができるとされていることから、京都府といたしましては必要な意見をしっかりと述べてまいりたいと考えております。
 なお、大深度地下使用法に基づく認可を受けた事業者は事前に補償を行うことなく大深度地下を使用できることとなっておりますが、仮に具体的な損失が生じた場合には、損失を受けた者は事業者に対してその損失の補償を請求することができることとなっております。
 いずれにいたしましても、今後、大深度地下を利用される場合は安全の確保及び環境の保全が重要でありますので、慎重な調査と丁寧な地元説明が実施されるよう国や鉄道・運輸機構に求めてまいりたいと考えております。
 次に、水道事業に係る基盤強化についてでございます。
 水道事業は、人口の減少に伴う水需要の減少を初め、施設の耐震化・老朽化対策や技術職員の不足など、多くの課題を抱える中、将来にわたり持続可能な事業とするため、水道事業の基盤強化を図ることが求められております。このため、これまでから各市町村においては、経営の効率化や施設規模の適正化を図るなど、懸命な努力を重ねておられるところでございます。
 しかしながら、急速な人口減少などの厳しさを増す事業環境の中で、先日、京都府町村会からも「水道事業の広域連携・広域化について積極的に推進すること」との要望もいただいたところでございます。
 京都府といたしましては、市町村みずからの取り組みのほか、市町村の意向に応じて市町村間の広域連携・広域化や民間事業者のノウハウの活用を図ることも有効な方策であると考えております。水道事業では、水質管理や施設の維持管理、料金徴収業務など、多様な業務がございます。サービス水準を低下させることなくこれらの業務を効率的に行うため、それぞれの市町村でふさわしい方策を検討し、水道事業の基盤強化に向けて取り組んでいただけるよう、京都府としても支援をしてまいりたいと考えております。
 各市町村の水道事業についてでございます。
 京都府では、これまでから市町村との意見交換を重ね、「技術職員が高齢化する中、今後の人材育成や技術継承に不安がある」「老朽化施設の更新費用の増加が見込まれ、事業経営に大きく影響が出ることは必至である」など、各市町村の水道の厳しい状況につきまして十分にお話をお伺いしてきたところでございます。これらの声を受けて、京都府では、水質管理技術や災害対応に関するマニュアルの策定、水道初任者に対する研修会の開催などの支援を行うとともに、市町村水道施設耐震化促進事業補助金や、ふるさとの水確保対策事業費補助金による財政支援を行ってまいりました。
 今後、京都府では、こうした取り組みを進めるとともに、市町村が地域の実情に応じた水道の基盤強化策が検討できますよう、圏域ごとに設置いたしました広域的連携等推進協議会などで十分に協議や調整を行ってまいりたいと考えております。
 次に、原子力発電所の安全対策についてでございます。
 原子力発電所は、前回の定期検査から13ヶ月以内に原子炉を停止させて、原子力規制庁の職員立ち会いのもと、原子炉本体、冷却系統設備、蒸気タービン等を点検し、その結果を原子力規制委員会に報告することとされております。
 高浜発電所4号機につきましては、9月18日から定期検査を実施しておりますけれども、10月中旬、関西電力から、3基の蒸気発生器の約10,000本の伝熱管のうち5本に傷が発見された旨、報告を受けたところであり、京都府からは徹底した原因究明と再発防止を強く要請しております。
 関西電力では、先月28日に原子力規制委員会に本件に係る報告書を提出するとともに、点検期間を延長して原因を究明することとしており、今後、原子力規制委員会において、高浜・大飯発電所の他の原子炉も含め、安全性が判断されるものと考えております。
 また、原子力発電所事故時における住民避難につきましては、国の原子力災害対策指針におきまして、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、予防的防護措置を準備する区域として原子力施設からおおむね半径5kmをPAZ(Precautionary Action Zone:予防的防護措置を準備する区域)、緊急防護措置を準備する区域として原子力施設からおおむね半径30kmを目安にUPZ(Urgent Protective action Planning Zone:緊急時防護措置を準備する区域)に設定することが定められ、UPZ区域外につきましても基準を超える放射線量が計測された場合はUPZと同様の対応を行うことが定められております。
 京都府内のUPZは、国の放射性物質拡散シミュレーションに基づき、高浜発電所から30km、大飯発電所から32.5kmの区域に設定されておりますが、緊急時にはUPZ区域外も含めた府内61ヶ所のモニタリングポストのほか、モニタリングカーや可搬型モニタリングポストにより放射線計測を行い、UPZ区域外においても屋内待避や避難を指示することとしております。
 京都市域につきましても、久多、広河原、京北に設置しているモニタリングポスト計測値等によりまして同様に対応することとしております。
 また、放射性物質の拡散予測については、平成24年に福島第一原子力発電所事故と同等の事故を想定した拡散予測を実施いたしましたが、今回、住民のより現実的な避難を検討するため、放射性物質の放出量を新規制基準に定める最大放出量に設定するとともに、高浜発電所、大飯発電所の同時発災を想定して拡散予測を実施いたしました。現在、京都府の原子力防災専門委員の意見聴取等を行っているところでございまして、なるべく早く公表することとしております。

○山内佳子議員  まず、指摘をします。
 北陸新幹線についてです。現在、各地で住民説明会が開催されていますが、地下水への影響、希少動植物への影響、保安林への影響、大量の残土の対策、原発事故への対応など質問が相次ぎましたが、どの問題でも「ルートが確定してから検討する」「京都府や京都市と相談します」という回答に不安や疑念の声が広がっています。先ほど知事は「大規模災害時にこの北陸新幹線が大きな役割を果たすんだ」というふうにおっしゃいましたけれども、しかし、大規模災害時に役割を果たすどころか、活断層や脆弱な地質のところを通る可能性も明らかになっています。延伸計画は中止すべきです。指摘しておきます。

 水道事業についてです。
 市町村から要望が出たというふうに言っておられますが、町村会の要望は私も見させていただきましたけれども、脆弱な財政基盤を強化してほしい、京都府の独自の助成制度を創設してほしいという要望も一緒に寄せられているわけです。そもそも広域化の選択肢しか示さないから、それが問題なのです。同時に、住民も議会も知らない非公開の場で広域化のスケジュールまで示すことは民主主義や自治という点でも大変問題です。
 そこで再質問ですが、水を商品として儲けの対象にした結果、水道料金の異常な高騰、水道財政の不透明化、自己水源の閉鎖や周辺部の切り捨て、また施設の維持管理が適正になされているかなどのチェックができなくなるのではないか、そうならない保証があるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
 原発問題についてです。
 原因が今、わからない以上、再稼働させないというのは当然なんですが、相次いで事故が起こっているんですね。15年前の美浜原発3号機の事故では、復水配管が破損して140度の熱水と蒸気が噴出し、5名の下請労働者が亡くなられ、6名の方が重傷を負われました。その後も事故が相次ぎ、今回こうした事故が起こったのです。いつ過酷な事故が起こるかわからない原発は今すぐ稼働を中止すべきと考えますが、いかがですか。もう一度御答弁をお願いします。

○西脇隆俊知事  山内議員の再質問にお答えいたします。
 水道事業についてでございますけれども、水道事業は、施設の老朽化、それから耐震化の必要、また人口減少に伴う需要減、そして技術職員の不足という非常に厳しい状況の中で何とか水道基盤を強化していくために京都府、各市町村が知恵を出し合って取り組んでいこうということでございまして、そのための1つの選択としての広域化ということを示しておるわけでございます。
 今、山内議員から「金もうけ」という言葉がございまして、民営化についてあわせて御答弁をさせていただきますと、各市町村ともメリットがございます業務委託等につきましては、可能性として検討しているようでございますが、現在のところ、コンセッション方式の導入を検討しているところはないと考えておりまして、この民間ノウハウの活用も1つの選択肢として存在するものだというふうに認識しております。
 また、原子力発電所の安全対策につきましては、これは今回の高浜原発4号機の蒸気発生器の損傷だけではなくて、従来から答弁しておりますように、あってはならないことではございますが、万が一の事故のときにきちっとした避難計画が立てられ、それを訓練を重ねることによって有効性を示すことが住民に対し、また府民に対する安心・安全につながるものと思っておりまして、そうした観点からもきちっと対応してまいりたいというふうに思っております。

○山内佳子議員  まず、水道事業についてです。私はなぜ広域化の選択肢しか示さないのかというふうに質問しましたが、その質問には一切答えられませんでした。それから、民営化でさまざまな懸念、水道料金の異常な高騰、水道財政の不透明化、自己水源の閉鎖、周辺部の切り捨て、こういうことにならない保証はあるのかというふうに質問しましたが、お答えになりませんでした。
 最後に指摘・要望を行いますが、水道事業は広域化・官民連携ありきではなく、公的責任で人材育成と相互協力による再構築を行い、水道事業の関連労働者全体の底上げを図ることこそ必要です。また、共同運営者として住民参加の仕組みをつくることも必要です。また、自己水源を大切にし、地域の実情に合った水道技術を育成することも必要です。そのためにも国に予算拡充を求めると同時に、本府の独自支援の拡充を強く求めるものです。
 原発問題についてですが、規制委員会は、東日本大震災の後、停止していた女川原発2号機が新規制基準に適合していると判断しましたが、大規模な安全対策工事が必要で、約3,400億円の費用がかかります。その負担は、電気料金として国民が負担するのです。これまで原発で大儲けしてきた企業には負担をさせないのです。危険で、使用済み核燃料の処理もできず、原子力村と言われている利益共同体だけが儲かり、国民には負担ばかり押しつけられる、こうした構造に支えられている原発は一刻も早く廃炉にすべきだということを申し上げて、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。