○迫祐仁議員 日本共産党の迫祐仁です。通告に基づき、知事並びに理事者に伺います。
最初に、北陸新幹線延伸計画について数点伺います。
1点目は、計画段階環境配慮書についてです。北陸新幹線(敦賀―新大阪間)にかかわる鉄道建設・運輸施設整備支援機構の計画段階環境配慮書に対し、7月10日までに関係9市町、京都、宇治、城陽、向日、長岡京、八幡、京田辺、南丹の8市と久御山町から、地下水だけでなく希少動植物、文化財、騒音、振動、地質や景観などさまざまな角度から、ルート変更や環境への影響を配慮することなどが要望されました。
7月19日には環境大臣が事業実施想定区域やその周辺地域には、環境保全に特に配慮する必要がある施設が多数存在していることや、京都丹波高原国定公園や特定植物群落などの存在、湿地や河川等の水域には希少な動植物の生息・生育が確認されるなどの特別地域があることからも、国定公園を極力回避するルートの検討を求めています。さらに大臣は、今回の配慮書には、トンネル工事などの建設残土に関する具体的な情報がないので、今後の手続で事業内容を明らかにし、その上で検討すると指摘されるほど、不十分な内容です。
また、山岳トンネル部の建設に当たっては、水系を回避すること、さらに市街地は鉄道施設が地下にあり、地下水位の低下及びそれに伴う地盤沈下並びに地下水質等への影響を及ぼすおそれがあるとしています。
「工事中及び供用後の地下水の状況把握に努め、それらを公表するなど、客観性及び透明性を確保すること」
と厳しい意見が出されていますが、知事はどのように認識されていますでしょうか。
また、京都市も配慮書に対する意見で、
「生活や産業などに幅広く活用されている地下水の水質や水量への影響を可能な限り回避、低減を」
と求め、府南部自治体では城陽市85%、京田辺市73%などと深井戸など地下水を水源にしている比率も高く、
「地下水の枯渇や地盤沈下防止など地下水保全に十分配慮すること、地下水利用者に影響が出ないよう対策を」
と求めています。久御山町では、農業や工業用の取水施設があり、水質及び地下水位の低下等への影響が懸念され、周辺地域の取水及び受水状況を十分に調査し、枯渇や水質の低下を防止することなどについて意見を挙げています。
このように、府内関係市町からの影響を懸念する声を知事はどのように受けとめているのか、お答えください。
2点目は、トンネル工事の影響についてです。
私は、長崎街道が整備された江戸時代の茶屋や休憩地の史跡もある、長崎県諫早市多良見町井樋ノ尾地区に行き、住民の方のお話を聞いてきました。井樋ノ尾地区は、棚田が多く存在しており、秋になると黄金の稲穂が一面で輝いている。そこから1.4km離れた九州新幹線長崎ルートの久山トンネル工事を行ったために、昨年2月に農業用水と飲料用水が突然出なくなりました。水の枯渇した集落は、井樋ノ尾地区をはじめ3つの集落で、昨年8月27日に自治会代表者、地権者で、工事発注元の鉄道建設・運輸施設整備支援機構に申し入れされたところ、機構は水量減少はトンネル工事が原因だと認めています。住民の方は、トンネル工事現場の構内に漏水している大量の水を近くの河川に流しているので、その水をポンプアップして井樋ノ尾川に戻すことを求めましたが、機構は巨大な費用がかかることを理由に拒否しています。
また、機構は、昨年の4月から6月に、代替水源の井戸を2本掘削しましたが、十分な水源を確保できずに、5軒の農業者のうち2軒が水稲作付を断念されました。
さらに、今年2月の住民説明会で田植えまでに水を間に合わせると約束し、貯水タンクの設置を行いましたが、井樋ノ尾川に流すほどの水量はありません。機構は「30年間分は保障する」と言いますが、30年後以降の保障はどうなるのか。機構との話はまだ合意に至っていないと言います。そして、最後に、住民は
「私たちは新幹線には反対ではなかった。自然を壊してもらったら困る。私たちは、これまで当たり前にあった水が戻ればそれでいいんです。もとに戻らない工事はやめてほしい」
と話されました。
このように、新幹線延伸による大規模なトンネル工事は、自然破壊にもつながり、住民が住めなくなるリスクが大きいと考えますが、いかがですか。
また、リニア中央新幹線による工事でも、発生土の保管や場外搬出が各地の地域住民との間で大きな問題となっています。まだ、府内のトンネル工事により発生する残土の処理方針等は明らかにされておりませんが、トンネル工事によって、府内山間部の旧美山町などは、発生土の場外搬出や工事車両による道路の混雑などの問題が生じるのではないでしょうか。また、京都市内の大深度地下工事では、搬出用大型トラックが街中を走り回り、大混雑が生じると考えますが、知事の認識はどうでしょうか。
3点目は、知事は「北陸新幹線は、京都はもとより関西全体の発展につながる国家プロジェクトであると認識している」と言われていますが、実際に京都の発展につながるのかということです。
以前にも紹介しましたが、富山県高岡市は、北陸新幹線金沢駅開業に伴い新幹線用の新高岡駅を設置し、観光客を呼び込む計画で周辺整備事業を250億円以上の財政負担で行ったものの、新幹線は各駅停車で、観光客は減少、しかも特急の走っていた在来線が三セク化され、通学列車の運賃は上がり、さらに1両を減らされラッシュ状態になり不評になる。そして、路線バスは減り不便になるなど、市民向けサービスは今後も大幅に切り縮められる計画で、問題となっております。
今回の新幹線延伸計画では、京田辺市の松井山手付近に新幹線駅建設が言われていますけれども、この新幹線駅を利用する人がどれだけいるのか、疑問です。近鉄線やJR片町線で京都や大阪へ行くほうが、通勤や通学には便利ではないでしょうか。
「京田辺市に、新たに新幹線駅を建設することで立ち退きを言われる住宅地が出るのではないか」
と心配の声が挙がっています。これまでのまちづくりにより、緑豊かな田園都市を壊していくことにつながるのではないでしょうか。
4点目は、建設費負担の問題です。整備新幹線の建設は、
「成算がないまま見切り発車しているツケが余りにも重い」
と8月19日の朝日新聞に書かれていました。人件費や資材費の高騰で膨らんだ建設費の負担が、県民に押しつけられています。その結果、北陸3県での県民1人当たりの負担が、富山県では188,900円、石川県は139,100円、福井県は320,000円となっています。これは、人口に関係なく機械的に県内を走る路線の長さで地元負担を押しつけているスキームに問題があるからです。
京田辺市には、新駅設置に伴う駅舎建設費が数百億円と言われており、その10分の1が地元負担になります。これは、駅舎本体の建設費用です。これ以外の駅前を初めとした道路整備など、全てが地元負担になります。現在の小浜ルートは2兆1,000億円の建設費負担が示されております。しかも、8割以上が長大なトンネルルートです。
知事は「受益に応じた地元負担となるよう強く求めていく」と述べていますけれども、北陸新幹線の京都府の建設費負担が幾らになるのかわからないまま建設を推進していくのは、後になって府民に禍根を残す無謀なやり方だと思われないでしょうか。
以上、お答えください。
○西脇隆俊知事 迫議員の御質問にお答えいたします。
北陸新幹線延伸計画についてでございます。
北陸新幹線(敦賀―新大阪間)計画段階環境配慮書につきましては、本年5月31日に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が公表し、7月19日には環境大臣意見が、鉄道事業を所管する国土交通大臣宛てに提出されたところでございます。
この環境大臣意見は、総論において、ルートの選定等、環境保全措置の検討、関係地方公共団体等との連携について意見を述べるとともに、各論において、振動、騒音、地下水、水資源などの環境要素への影響を回避、または極力低減することなどを求めるものとなっております。
一方、京都府では、事業実施想定区域を含む市町や京都府環境影響評価専門委員会の意見を聞いた上で知事意見を取りまとめ、8月2日に鉄道・運輸機構に提出したところでございます。
知事意見におきましては、全般的事項として、ルートの選定、方法書以降の手続について意見を述べるとともに、個別事項として環境大臣意見において述べられた環境要素に加え、低周波音、文化財、地形・地質といった環境要素にも言及し、それぞれの環境要素への影響を回避または極力低減するよう検討することを求めております。環境大臣意見、知事意見とも、ホームページ等で公表されており、基本的には同様の趣旨の意見と認識しているところでございます。
地下水への懸念につきましても、知事意見において、豊富で良質な地下水が生活や産業、上水道等に幅広く利用され、京都の文化を支えていることを指摘した上で、専門家等の助言を受け十分な調査等を実施し、影響を回避または極力低減するよう検討することを求めるとともに、環境保全措置や供用後モニタリングを含めた長期的な視点で調査等を計画し、実施するよう求めております。
今後、事業を進める国や鉄道・運輸機構が、駅の位置、ルート、構造、施工方法などの事業計画を環境への影響に十分配慮して定めることが極めて重要でございます。そのため、京都府といたしましては、環境影響評価の各段階におきまして、関係市町の意見もお聞きしながら、しっかりと必要な意見を提出してまいりたいと考えております。
その他の御質問につきましては、関係理事者から答弁させていただきます。
○富山英範建設交通部長 北陸新幹線延伸計画についてでございます。
山岳トンネルの水資源への影響につきましては、配慮書に対する知事意見といたしまして、トンネル等の地下構造物の設置に伴う河川流量の減少、湧水量の減少・枯渇等の懸念について、適切に調査等を実施し、当該影響を回避または極力低減するよう検討することを求めたところでございます。
また、環境影響評価法に基づく主務省令では、配慮書の段階で環境の保全のために配慮すべき事項として選定するものは、工事が完了した後の工作物等の存在及び事業活動に関するものとされておりまして、トンネル工事の残土処理に関しては、配慮書には記述されておりません。
一方、知事意見におきましては、トンネル掘削等の工事に伴う発生土について、発生量及び場外搬出量を抑制するよう検討するとともに、保管や場外搬出に当たっては、自然環境及び生活環境への影響を把握し、回避または極力低減するよう検討することを求めたところでございます。
次に、北陸新幹線がまちを壊していくとの指摘でございますが、計画中の南部ルートにつきましては、府南部12市町村によって結成された北陸新幹線京都府南部ルート誘致促進同盟会の誘致活動も踏まえ、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームで決定されたものでございます。
京都府といたしましても、計画の具体化にあわせて高速鉄道と一体的な地域交通網の整備及び南部地域の魅力あるまちづくりを、沿線市町村と連携して取り組んでまいりたいと考えております。
次に建設費の負担につきましては、今後、国や鉄道・運輸機構の詳細計画が固まった段階で、事業費や負担の考え方などが示されるものと考えており、京都府といたしましては、引き続き国や鉄道・運輸機構に対し、受益に応じた地元負担となるよう強く求めてまいりたいと考えております。
○迫祐仁議員 御答弁いただきました。
知事は「影響等を回避することを求めていくんだ、また市町の意見をしっかり聞きながら、その都度、意見も述べていく」ということをおっしゃっています。さらに、「残土の抑制をまた求めていくんだ」というふうにもおっしゃっています。
しかし、「この北陸新幹線は与党がルートを決める、その中で国が決定してきた」ということをおっしゃっているんですけれども、北陸新幹線そのものは、私たちに大きな負担を与えていくと私は思っています。特に8割がトンネルルートであります。トンネルの掘削による掘削量はほんまにいくらになるのか、またどこからどこへ運んでいくのかというのは、本当に大きな問題となっていくと思います。
さらに、京都丹波高原国定公園周辺地域の旧美山町など、伝統的建造物群がある地域などを工事車両が1日に何十台、何百台も走るということが起こる可能性があります。そして、京都は良質な水の文化、産業がたくさんあります。茶道の三千家は、良質な水のために明治維新で東京への移動をしなかったとお話をされました。長崎の例を紹介しましたけれども、どんなに気をつけていても、地下水の流れに影響が出てくるということは明らかです。
さらに、大深度地下工事は、莫大なコストがかかります。東京の地下鉄工事では、1km掘り進むのに360億円かかっております。そして、このように自然を壊していく、地域に住む人の生活や産業に深刻な影響を与えていく。しかも、莫大な建設費の負担を府民に押しつけることに対して、まともな説明も対応もなく推進の立場を示されていくというのは無責任だと私は思います。そういう点で、それはいいのかということに対して知事のお考えをもう一度お答えください。
○西脇隆俊知事 迫議員の再質問にお答えいたします。
まず、環境への影響の評価につきましては、先ほど申し上げましたけれども、京都府といたしましては、これから環境影響評価の各段階がございます。その段階におきましても、関係市町の意見、そして委員会の意見等も踏まえまして、しっかりと必要な意見を提出してまいりたいというふうに考えております。
建設費の負担につきましては、従来からも、受益に応じた負担になるよう強く求めておりまして、引き続き、その点につきましては、国や鉄道・運輸機構に対しまして強く求めてまいりたいというふうに考えております。
○迫祐仁議員 今、お答えいただきましたけれども、私は、今のやり方では無責任なやり方になっていくのではないかということを心配しているということを言っています。
そして、「受益に応じた負担を求めていくんだ」というふうに知事はおっしゃいます。実際に、敦賀―新大阪間の北陸新幹線の延伸計画は、2031年以降から取り組まれて2046年完成の計画となっていきます。これは、次世代の府民にどれだけの財政的な負担を押しつけるかわからない。また、住民の生活環境、自然環境に大きな負の影響を及ぼすおそれのある新幹線計画、これは見直していくということを求める。今、静岡県や佐賀県の知事などが、いろんな環境の問題を含めて意見をされています。この計画そのものも反対だという声も上げていらっしゃいます。知事にそういう点をしっかりと見つめてもらって、国に物を申していってほしいとこのことを要望して、次に進めていきたいと思います。
次に、伝統産業、特に私の地元、西陣織の振興について伺います。
西陣織は、20を超える作業工程があります。それぞれが数百年の伝統に裏打ちされた職人の技に支えられた、世界に誇る織物です。また、京都を代表する主要な産業であると同時に、京友禅、宮大工など、他の伝統地場産業とも重なり合って、それぞれの職種を発展させる。職住一体のまちとして幅広い交流の場をつくっている。そして、神社やお寺、茶道や華道などとも調和して、伝統文化を支えながら発展する西陣織産地をつくり出してきました。そして、京都西陣として京都の魅力を醸し出してきておりました。
しかし、今、生活様式の洋風化の進行の中で和装需要が減り、販売不振などで出荷金額は、昭和50年の2,051億円に比べて、平成29年度は308億円で15%と落ち込み、西陣織工業組合に参加する織り屋の組合員は、昭和50年の1,530社から平成29年度は287社と4分の1に激減しております。
私は昨年の9月議会で、伝統産業やものづくり企業が厳しい状況にある。このままでは産地そのものの存続が危うい状況にあるから、西陣や友禅など伝統地場産業やものづくりにかかわる職人の声を聞くなどの実態調査を行うとともに、その現場の声をつかみ、予算をふやし施策に生かすべきと求めました。
商工労働観光部長は、「西陣織については府も参画して3年に1回、西陣企業調査を実施している」と述べられました。その第22次西陣企業調査報告書が平成31年3月に出され、先ほどの数字が示されました。私はこの報告書を読みながら残念に思ったのは、帯地などを織っている賃織りという出機職人の調査がされていないことです。その出機職人らは、
「道具類や部品などは、新品の調達は無理だけれども、廃業される方の織機から何とか確保している。しかし、今、機料品は調達が難しくなっている。困っているんだ」
と言われます。
数が減少していても、西陣織の中心をなす織り手が何に困っているのか、実情を把握しなければ、現場での道具類、部品、機料品などの現状や課題、さらには解決の糸口も出てこないため、出機職人の実態調査を行うべきだと考えますが、いかがですか。
これまでも紹介しましたけれども、西陣で道具類や部品、機料品などを調達し織機を組み立てられる機料品店は、出機職人から「あんたが店をやめたら、わしらも織る仕事をやめる」と言われる、81歳の高齢者が経営する機料品店しかありません。さらに、機料品やその部品の生産者が高齢化や代替わり等で廃業し、全国的にもわずかしかいません。機料品を安定的に供給できなければ、織ることができなくなるため、各産地における道具類や機料品などの生産者、その在庫数など全国の状況調査を京都伝統産業道具類協議会に求めるとともに、本府も、機料品生産者の育成を行うべきだと考えますが、いかがですか。
私が西陣出身の議員として、伝統産業の道具類が枯渇していると西陣織の職人の声を届ける中で、京都伝統産業道具類協議会や織機及び枯渇化部品、道具類プール制度が、産地組合や府、市などの努力で実現しました。京都府は、京都伝統産業道具類協議会において不足部品、道具の情報交換を行い、道具の備蓄や貸与を実施しており、その確保に努めているということでしたが、現在は、ホームページ上、情報やデータは明らかにされていません。その原因等を具体的に調査し、西陣織工業組合とも連携して改善すべきと考えますが、いかがですか。
今、西陣産地内では、織機の補修ができる職人は数人、さらに織機を土台から設置できる職人は2人しかいません。京都府は「織機の補修に対応できる職人の育成について、職人みずからが力織機の構造や調整等に関する知識を習得する、あるいは力織機のふぐあいや故障等に対応する能力を身につけられるように、府織物・機械金属振興センター、京都市産業技術研究所、西陣織工業組合が協力して研修を実施し、織機の補修に対応できる人材育成に努めている」と言いますが、1年間講習を受けたからとすぐに補修ができるものではありません。「専門の職人をつくらないと織れなくなる」というのが、西陣の出機職人の声です。減り続ける専門の機械直しや織機の組み立て職人を産地と一緒に育成しなければ、西陣織の振興はないと考えますが、いかがですか。お答えください。
○鈴木一弥商工労働観光部長 伝統産業・西陣織の振興についてでございます。
西陣機業調査は、昭和30年以降、京都府、京都市、西陣織工業組合が共同しまして3年に1度、22回にわたって実施し、産地の状況の把握に努めてまいりました。
西陣産地における出機職人につきましても、機業調査の中で軒数の推移等を把握しております。第22次の調査において、西陣の仕事を担う出機は981軒あり、うち京都市内に257軒、丹後に658軒となっており、丹後の出機が西陣の産地を支えている実態がうかがえます。また、府織物・機械金属振興センターの職員や中小企業応援隊が現地に出向き、実態把握とあわせて出機に対する経営や技術に関する伴走支援を実施しているところでございます。
道具類や機料品の確保については、今年の4月に西陣の他、鹿児島、桐生、結城、米沢といった全国の織物産地の事業者が連携して協議会を結成し、各産地の道具類や機料品の状況を把握するための取り組みを新たに開始しております。その中で、各産地の機料品店の状況が共有され、実際に機料品等の確保につながっているところです。
また、機料品の生産者の育成についてですが、機料品は種類が多く、大量に必要となるものではない、いわゆる多品種少量の製品でございますので、専門の生産者を育成することは極めて困難です。このため、機料品については、過去には京都試作センター株式会社で製作した実績もございまして、今後は、西陣織工業組合とも連携し、3Dプリンターを活用した機料品を提供できる体制の検討を進めてまいります。
京都伝統産業道具類協議会については、平成20年に京都府や各産地組合が協力して設立し、竹筬(たけおさ)や力織機部品の安定確保や、筆はけ道具類の需給安定化に関する調査を実施してまいりました。調査の結果、安定確保の必要性が高いと判断された53種、約600個の機料品の調達を行い、希望される事業者へ貸し出しを行っているところです。
御指摘のホームページにつきましては、検索しやすく、さらにまた見やすくするための改修をしておる最中でございまして、今月末にはリニューアルオープンできる予定と伺っております。それまでの間は、協議会事務局であります西陣織工業組合が電話で対応される体制となっております。
織機補修の人材育成についてでございます。現在、織機の補修だけでは経営が難しくなっておりますことから、専門職人が著しく減少しているところです。このため、機織りをされます製織職人に織機の補修技術を習得していただく多能工化を進めているところでございます。
丹後地域では、府織物・機械金属振興センターにおいて、未経験者や経験の浅い製織職人さんを対象とした基礎研修から、織機調整や製織工程のほか整経やたて継などの関連工程まで、産地のニーズに応えてコースを細分化いたしました研修を開催しております。昨年度は、18コースの研修を実施し、延べ409名の方に受講いただきました。
また、西陣では、京都府が西陣織工業組合に委託し、製織職人の織機修理の知識・経験に応じて初級、中級などのコースを用意し、織機の構造研修を行っており、講師1名に対しまして受講者は2〜3名ときめ細やかな育成に取り組んでおります。さらに、今年度は、マンツーマン指導を計画するなど、研修内容を充実させてまいります。
今後とも、組合と連携しながら、製織職人さんの補修技術の習得を通じて、生産基盤が維持できる人材育成に取り組み、織物産業の継続・発展に向けて取り組んでまいります。
○迫祐仁議員 今、西陣の関係ではいろいろと進めてきているということでございました。
しかし、現実には、そのやられていることが地元の現場で働いている方々に、出機の職人には伝わってはいないということです。実際に私がお話を聞いている出機の職人には、今の状況は伝わっていませんでした。
そしてまた、織機を組み立てる職人の維持ということは、本当に今、大切になってきている。いろいろな技術を習得しても、実際に織機がなかったら織ることができないというのが実際の問題であります。ですから、そういう点では織機を組み立てられる職人を丹後だけではなく、西陣の中でつくっていくということが今、求められているということを言っておきます。
現在、西陣織の低迷する中で、西陣織企業が独自にまた数社で世界に向け、インテリアやファッション、アートなどで魅力を発信されています。その土台にある貴重な文化や衣装、職人の技術の保全や育成を考えている企業があります。そういう意味でいきますと、西陣織は産地内の歴史や文化、町並み、職人の熟練した技がつながってでき上がっていきます。その織る技術をしっかりと高めていくということ、それが今、求められています。
私は、西陣の再生のために道具類とか部品、機料品をつくっていく人の育成、それと織機の組み立てのできる職人を京都府が育成していく、そして技の伝承を積極的に働きかけていくということが今できなければ、西陣の産地そのものがなくなっていくという危機感を持っています。ですから、そういう点も含めて、今後とも西陣織の振興のために努力してほしいということを要望して終わります。ありがとうございました。
これで私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。