平成15年9月定例会 本会議(第5号) 京都府男女平等条例制定の件及び京都府地域金融活性化条例制定の件―2002年10月1日〜島田敬子府議と松尾孝府議の発言部分

◯田坂幾太議長  これより本日の会議を開きます。

◯田坂幾太議長  日程に入ります。日程第1、諸報告。
 本日までに受理いたしました請願は、お手元に配付の請願文書表のとおりであり、それぞれ所管の委員会に付託いたしましたので、御報告いたします。
 次に、監査委員から例月出納検査の結果報告が参っており、その写しを配付しておきましたので、お調べおき願います。

◯田坂幾太議長  次に日程第2、議第1号議案及び議第2号議案。松尾孝君ほか11名の諸君から提出の京都府男女平等条例制定の件及び京都府地域金融活性化条例制定の件の2件を一括議題といたします。

◯田坂幾太議長  議第1号議案について、島田敬子君から提案理由の説明を求めます。島田敬子君。

◯島田敬子議員  日本共産党の島田敬子でございます。私は、日本共産党府会議員団を代表して、我が党提案の「京都府男女平等条例案」について提案説明をさせていただきます。
 今年は憲法施行から58年、女子差別撤廃条約が国連総会において採択されてから24年を迎えます。女性の地位向上を求める運動は、日本でも世界でも着実に前進してきました。京都府におきましても、あけぼのプランを策定し、男女共同参画を府政の重点施策と位置づけて鋭意取り組みを進めてこられました。しかしながら、現実は国際的到達から見ても極めて不十分であります。この8月、国連女子差別撤廃委員会は、日本政府に対して、コース別雇用やパート派遣による賃金格差への懸念、家庭と職業上の責任を両立させるための対策の強化、民法上の差別規定の廃止、意思決定機関への女性参画のおくれなど、22項目にわたる懸念、要請、勧告を行い、国連人権委員会は「日本では女性差別の問題が解決されていない」と繰り返し指摘をしています。このように、男女平等の実現にはなお多くの課題を残しています。
 そのような中、1999年、国においては、男女平等等の実現になお一層の努力が必要として男女共同参画基本法が全会一致で可決、制定されたところでございます。
 男女共同参画基本法は、憲法が規定する法のもとの平等を基本にしながら、男女が社会の対等な構成員として活動に参画する機会の確保、男女の人権の尊重、社会における制度または慣行についての配慮、政策決定過程への共同参画、家庭生活における活動と他の活動の両立、国際的協調などが明記をされました。さらに、活発な国会審議の末、超党派で基本法に対する附帯決議が採択をされ、「各事業者の責務の自覚とそれに対する適切な指導」「苦情の処理や被害者救済が十分図られるよう、実効性ある制度の確立」などが盛り込まれました。
 私どもの提案をいたしました条例は、こうした憲法の理念、女子差別撤廃条約の到達に立ち、国の基本法及び附帯決議をも踏まえた内容でございます。さらに、これまで京都府としてもあけぼのプランなどで取り組まれた施策をより積極的に推進し、実効性が上がるようにするものであります。
 以下、条例の特徴について説明をさせていただきます。
 第1に、条例の名称についてですが、共同参画にとどまらず、実質的な平等を実現するために「男女平等」を明記したことです。条例の目的、理念、目指す方向を明瞭かつ端的に示すものです。あらゆる場における女性差別の是正を求める多くの女性の期待と願いに沿うものです。
 第2に、働く権利の保障と雇用の場における男女平等を推進するために、事業主責任を明記し、報告と結果の公表を求めたことです。大企業は「経済のグローバル化に対応する」として、正規雇用労働者を削減し、派遣労働者やパート労働者など不安定雇用労働を拡大しています。女性労働者の半数がこうした非正規雇用に就労し、京都府の調査でも常用労働者女性の賃金は男性の67.9%で、パートを含めれば男女の賃金格差は2倍とさらに拡大をしています。賃金や昇格・昇給における差別なども依然として残され、産休・育休を取るとボーナスが下がるとか、昇給・昇格にまで影響を及ぼすとか、育休明けで配転や退職勧奨、最近では、妊娠リストラなどと告発されるような妊娠・出産を理由とした不利益な取り扱いなどの差別が広く存在しています。こうした点から、現行法令の遵守はもとより、パート、派遣労働者の労働条件や社会保障の向上の努力も含めた内容です。
 第3に、母性保護の明記です。母性は社会的機能であり、その保護は人間社会の存続にとって欠かすことのできない基本条件であり権利であることを理念に明記をいたしました。今日、過労死を生む長時間・過密労働やサービス残業も横行し、女性の深夜労働も解禁とされた中で、女性の健康破壊は深刻です。労働時間の短縮など、働きやすい環境の整備が求められております。事業者における責務、農林水産業、自営業に従事する女性の母性保護の充実への支援、そしてすべての女性の生涯にわたる健康支援を盛り込みました。
 第4に、京都経済を支える伝統・地場産業を初めとする自営業者や農林漁業の分野における女性労働を正当に評価をし、男女平等、共同参画を進めるための環境整備を上げていることです。本府の調査でも、自営業における女性の6割近くが「女性は業務上の仕事と家事の区別がしにくく、負担が大きい」、4割近くの女性が「女性の仕事上の対価としての賃金、給与が正当に支給されにくい」と回答しています。中小企業庁が行った自営・中小企業に携わる女性の労働と健康に関する調査でも、3割の女性が産前産後の休暇が取れていない実態があります。また、農業就業人口の6割を女性が占めており、農林水産加工品の開発・製造や地域社会の取り組みにおいても大きな役割を果たしています。規模拡大や新作物の導入、兼業化などで農業に従事する女性の労働時間はより長くなっていますが、それに見合った報酬を受け取っておらず、家事・育児・介護など労働の大半を担っています。よって、農業経営における役割分担、労働報酬、労働時間などをルール化した家族経営協定の締結についても明記をいたしました。農業委員に占める女性の割合も依然として低水準であり、さらなる取り組みが求められます。以上、国における制度改善を展望しつつ、自営業、農林業従事者の女性への支援を明記いたしました。
 第5に、苦情処理機関の設置についてです。苦情や相談に対する判断が公平に行われるものとの信頼を得るためには、行政機関から独立した第三者機関が必要です。そして、申し出者の立場に立って受け付ける受付部門と、公正中立な立場で双方の主張を聴取・調査し処理する処理部門の2階建てとしました。そして、処理機関の業務を明記し、相談、苦情を受けた場合は、関係者または関係する府の機関の協力を得て、資料の提出及び説明を求め、必要があると認めるときは府機関に対しては提言、助言、または勧告を、他の関係者に対しては助言、是正の要望を行うことを明記をいたしました。実効性を上げるために最も重要な規定です。
 条例の特徴については以上のとおりでございます。
 さて、基本法制定以降、全国42の都道府県で条例が制定をされ、未制定県は5つ、そのうち岐阜、高知、群馬は今年度内にも制定予定と聞き及んでおります。本府は最後塵を拝することとなりました。
 私どもは、これまで、条例の早期制定と明記すべき内容を提案し、実効性が上がるものにするため条例策定過程における府民参加と情報の公開を繰り返し求めてまいりました。ところが、残念ながら条例制定のための意見をまとめる専門家会議は公開されず、審議の状況も公表されないまま過ぎ、専門家会議の最後の会議が8月29日慌ただしく開催され、そして初めて公開をされました。本議会でも、他会派の皆さんからも条例未制定の5府県の1つになっていることへの憂慮やバックラッシュへの厳しい批判も出されたところです。そして、真に実効ある条例の制定が急いで求められていることも、おのおの強調されました。
 このように、条例制定の機は熟しており、本条例を早期に制定することが府議会の重要な課題となっています。議員の皆さんの賛同をいただきますよう宜しくお願いをいたします。
 提案説明とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。

◯田坂幾太議長  議第2号議案について、松尾孝君から提案理由の説明を求めます。松尾孝君。

◯松尾孝議員  日本共産党の松尾孝でございます。党議員団を代表し、我が党提案の「京都府地域金融活性化条例」について、提案理由の説明を行います。
 我が党議員団は、一昨年来、本会議質問や予・決算委員会などにおきまして、小泉内閣の「竹中プラン」に基づく不良債権早期処理が中小企業を倒産・廃業に追い込み、落ち込んだ京都経済を一層ひどくするものとして厳しく批判してまいりました。そして、京都府が国のこの間違ったやり方に反対するとともに、金融機関にその本来の役割を発揮させるよう「貸しはがし・貸し渋り防止条例」を制定するよう強く求めてまいりました。昨年12月には、日本共産党京都府委員会として条例大綱を発表、竹中プランの撤回を強く要求するとともに、この2月には金融専門家の協力も得て、「地域経済活性化と金融機関の役割を考えるシンポジウム」を開催するなど、取り組みを強めてまいりました。
 このほど第2次小泉改造内閣が発足しましたが、破綻が明確になった構造改革路線を変えず、竹中経済金融相を留任させ、不良債権早期処理をさらに加速させようとしています。これが地域経済に一層の困難をもたらすものであることは、本年4月、京都府中小企業団体中央会が行った金融アンケート調査結果を見ても明らかであります。資金繰りが「厳しい」「非常に厳しい」と答えた企業が55%と半数以上、貸し渋りを受けた企業は、借入残高1億円以上の企業では30から40%にも上り、しかもほとんどが金利アップや追加担保を求められております。京都経済を担う中小企業は深刻な事態にさらされているのであります。
 さて、京都における地域金融は、都銀・地銀・信金の3者がそのほとんどを担っております。この10年間の貸出金の推移を見ますと、都銀は4兆円から3兆円に激減させていますが、地銀は3兆円台を維持しほとんど変わらず、しかも都銀を上回っています。信金は2信金の破綻にもかかわらず36%と高い大きいウエートを占め、地銀・信金を合わせますと68%、全体の3分の2を上回るという、他県に見られない特徴があります。このような中で、地銀や信金は京都の72%もの中小企業の主力金融機関として大きな役割を果たし、地域経済を支え、中小企業とともに歩んでまいりました。ところが今、竹中プランのもとで、不良債権処理や貸しはがし・貸し渋りさえ余儀なくされているのであります。昨年6月、国はようやく「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」をつくりましたが、運用上の一定の緩和措置にすぎません。また、去る3月末、金融庁からリレーションシップバンキングのアクションプログラムが発表されましたが、その中心はあくまで、金融機関の収益性の向上、健全性の確保、経営基盤の強化などであり、真に中小企業の立場に立ったものではありません。
 地域金融の立て直しのために今必要なことは、金融機関がその本来の役割、国民の財産を預かる業務とともに、地域に十分な資金を供給し、生産、流通、消費など、地域経済を活性化させるという公的役割を発揮できるようにすることであります。今日のように、貸しはがし・貸し渋りなどで地域経済を壊すような金融機関ではなく、府民の暮らし、中小企業を支え育てる金融機関として大きな役割を果たすことが強く求められているのであります。そのために、国の金融政策の転換が必要なことは論をまちませんが、同時に、地域経済・社会の振興発展に責任を負う京都府が積極的役割を果たすべきことも当然であります。我が党議員団は、この立場から京都府地域金融活性化条例を提案するものであります。
 条例は、金融機関の本来の役割を明らかにするとともに、地域経済活性化を図るための京都府の責務並びに府が講ずる施策に関する必要な事項を定めるものであります。
 主な内容は次の3つであります。
 第1に、府民の暮らしを守り、中小企業を育てる金融機関の育成であります。条例第3条・基本理念では、地域金融のあるべき姿を明らかにし、地域金融機関が、社会的に要請されている望ましい分野に必要な資金を十分に供給するとともに、地域経済の重要な担い手である中小企業者の事業活動に必要な資金を安定的に供給するよう特に配慮しなければならないとしています。第5条では、この基本理念に基づく金融機関の責務について、地域金融機関が地域経済及び地域金融の活性化に寄与するように努めること、正当な理由なく、一方的な融資の拒否、貸付条件の変更をしないこと等を明確にしています。
 第2に、地域経済の発展という立場で金融機関を評価することであります。条例第10条では、「京都府地域金融活性化委員会」を設置し、この委員会が地域金融活性化に対する寄与について金融機関を評価することとしています。その内容は、住民及び事業者に対する信用供与の状況、産業振興等地域の振興に貢献する業務の状況、利用者の利便の増進を図る業務の状況などであります。金融庁は、この間、すべての金融機関を一律に機械的な金融マニュアルで評価し、地域の中小企業への資金供給を主たる業務とする信金・信組・地銀を深刻な事態に追い込み、その多くは破綻させられてきました。しかし、これでは地域金融を支える金融機関を育てることはできません。条例は、地域への貢献という物差しを定め、地域に根差した金融機関を積極的に育てるとともに、貢献が不十分な金融機関をただし、地域金融の活性化を図ることとしているのであります。
 本府は、これまで条例制定を求める我が議員団の質問に対し、「金融庁において適正に行われている」との答弁を繰り返してきましたが、こうした国任せの姿勢は改めるべきであります。地方自治体が、みずからの地域の経済と金融を支援・育成することは、地方自治、地方分権の精神に照らしても当然のことであります。地域経済との関係で金融機関を評価し、地域への貢献について協力を求める条例の制定は、現行法上何ら違法ではなく、むしろ地方の条例になじむものとの専門家の意見もあります。
 第3に、銀行に物が言える仕組みをつくることであります。条例第9条で「地域金融活性化委員会は、地域金融に関する苦情について相談に応じ、必要な助言をし、解決のあっせんを行うものとする」としています。これは、今まで中小企業者などが、貸しはがし・貸し渋り、その他条件変更を求められても銀行には物が言えないとあきらめていたところを、それをただす仕組みをつくり、公正な地域金融の確立を図ろうとするものであります。
 以上が条例の柱でありますが、この条例の制定により、地域金融の真の活性化を図ることができるものと確信いたします。また、地域経済の安定的発展によって地域金融に携わる金融機関の健全な経営の維持・発展にも資することになります。
 最後に、今定例会に提案されています「中小企業金融支援対策協議会」の設置は、知事が「金融は国の仕事、国の権限」とされてきた従来の姿勢を一歩前進させたものとして評価しますが、今後府の取り組みを実効あるものにするためにも、この条例の制定が必要と考えます。
 議員各位の御同意を心からお願いし、提案理由の説明といたします。御清聴ありがとうございました。

◯田坂幾太議長  お諮りいたします。
 ただいま議題となっております議第1号議案及び議第2号議案については、これを日程第5に繰り入れ、後刻審議をお願いいたしたいと思います。御異議ありませんか。

 (「異議なし」と言う者あり)

◯田坂幾太議長  御異議なしと認め、さよう決します。