令和6年 閉会中 文化生活・教育常任委員会―2024年8月20日〜島田敬子府議の質疑応答部分

所管事項の調査

下記のテーマについて、理事者及び参考人から説明を聴取した後、質疑及び意見交換が行われた。
 ・女性が活躍できる社会づくりについて

◯山口勝委員長  まず、所管事項の調査についてでありますが、本日のテーマは「女性が活躍できる社会づくりについて」であり、通知をお送りしました参考人略歴のとおり、参考人として、京都大学・大阪大学名誉教授、独立行政法人国立女性教育会館監事の伊藤公雄様に御出席をいただいております。
 本日は、大変お忙しい中にもかかわらず、本委員会のために快く参考人をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。
 伊藤様におかれましては、1981年に京都大学大学院文学研究科博士課程を学修退学された後、京都大学、神戸市外国語大学、大阪大学等においてジェンダー平等などの御研究を重ねられ、現在は、独立行政法人国立女性教育会館の監事としても男女共同参画社会形成を促進するため、女性教育に関わる様々な活動に取り組んでおられます。
 また、京都府男女共同参画審議会委員としても大変お世話になっているほか、内閣府をはじめ姫路市男女共同参画会議の会長や委員を務められるなど、国や地方自治体行政においても幅広く御活躍されていると伺っております。
 本日は、そういった日頃の御活動を踏まえたお話をお聞かせいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、初めに理事者から、テーマに係る説明を聴取いたしたいと思いますが、説明の準備が整うまで、しばらくお待ち願います。
 それでは、理事者から説明を聴取いたします。説明は簡潔明瞭にお願いいたします。

◯西村美紀 文化生活部副部長(府民生活・男女共同参画担当)  文化生活部副部長の西村でございます。本日は、女性が活躍できる社会づくりに係る文化生活部の取組状況について御説明申し上げます。では、着座にて失礼いたします。
 まず、2ページ目を御覧ください。最初に、京都府における女性活躍推進施策に係る計画体系について御説明申し上げます。
 京都府においては、男女共同参画社会基本法第14条に基づく法定計画として、令和3年度から令和12年度までの10年間を計画期間とする「KYOのあけぼのプラン」を策定し、男女共同参画社会の実現を目指し各施策を推進しているところでございます。
 次に3ページ目に、あけぼのプランの柱立てを記載してございます。KYOのあけぼのプランでは、「あらゆる分野における女性の参画拡大」「安心・安全な暮らしの実現」「男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備」の3つの柱立ての下、10の重点分野について重点的に取り組む施策を定めているところでございます。
 4ページ目でございます。日本の男女共同参画の現状でございますが、委員の皆様におかれましても何度も聞かれていることとは存じますが、世界経済フォーラムが毎年公表するジェンダー・ギャップ指数は146か国中118位で、我が国の男女間格差は諸外国と比べて大きい状況でございます。
 5ページ目でございます。そこで、京都府においてはジェンダーギャップゼロを目指し、令和4年度に、京都ウィメンズベース、マザーズジョブカフェ、京都府男女共同参画センターを京都テルサに集結させ、各所が連携を密にし女性活躍をワンストップで支援しているところでございます。まず、京都ウィメンズベースにおいては、こちらのスライドにまとめておりますように、職場における女性活躍とワーク・ライフ・バランス推進の取組を中心に支援しているところでございます。
 6ページ目でございます。まず1つ目の大きな事業といたしまして、女性活躍推進法に基づき、従業員101人以上の民間事業主は一般事業主行動計画を策定する義務があることから、社会保険労務士などの専門家が直接企業を訪問し、一般事業主行動計画の策定支援や実行支援、さらには働きやすい職場環境づくりに対する助言などを行っております。
 2つ目の柱は、企業における働き方改革やワーク・ライフ・バランスの推進支援です。7ページ目でございます。府民や企業の人事担当者等を対象にした、男性の育児休業取得を促進するセミナーを実施しているほか、企業におけるアウトリーチ型支援を実施するなど、男性の家事・育児への参画を支援しております。
 次のページでございます。3つ目の柱は、人材育成事業でございます。企業を超えた女性活躍のための人材育成事業として、管理職、役員クラスの企業の中核人材となる女性リーダーを育成する研修や管理職予備層を対象とした研修なども実施しております。
 次のページを御覧ください。企業の枠を超えた人材育成事業に加えて、理工系分野の学びや仕事への興味・関心を深めるための中高生向けセミナーを企業、大学と連携して開催しております。今年度は、8月8日にSCREENホールディングス様の御協力の下、京都の理工系学部を持つ9つの大学の女子学生さんにも御参加いただき事業を実施したところでございます。
 10ページを御覧ください。4つ目の柱でございます。女性起業家の育成を目的に、女性起業家の懸賞事業も実施しているところでございます。こちらは今年度のパンフレットとなっております。
 11ページ目でございます。もう1つの女性活躍推進拠点、京都ジョブパークマザーズジョブカフェでございます。マザーズジョブカフェでは、働きたい女性一人一人のニーズに応じた就業支援を実施しています。個別の就労相談に加えて、就労支援セミナー、女性が働きやすい企業を集めた企業説明会、就職面接時のスーツやパンプスの無料貸出し、相談中や面接時の乳幼児の一時預かりなどを実施し、働きたい女性が希望する働き方を選択できるように各種支援を実施しているところでございます。
 12ページ目でございます。働く女性への支援、働きたい女性への就労支援に加えまして、男女共同参画課では、地域・家庭における女性活躍も支援しております。地域活動をさらに発展・継続していくための知識やノウハウを学びながら、活動が展開できるようアドバイスをするとともに、それぞれの団体の活動経費を支援する女性活躍応援塾事業を実施しております。
 13ページ目でございます。さらに、京都府男女共同参画センターと京都府内の女性団体16団体と連携し、幅広い府民に御参加いただく「KYOのあけぼのフェスティバル」や、地域リーダーを育成する「京都府女性の船事業」も実施しているところでございます。
 14ページを御覧ください。京都府男女共同参画センターの事業について掲載しております。男女共同参画センターは、府内における男女共同参画推進の拠点として、女性のあらゆる悩みの相談を受ける相談事業、男性相談員による男性相談事業、様々な女性活躍支援事業や男女共同参画視点での防災支援事業を実施しております。防災支援事業では、多様な視点で災害に備えることができるように京都府男女共同参画センターと京都市男女共同参画センターが共同で製作した「きょうとみんなの防災カード」を活用し、災害時の対応について参加者が話し合い、実践に役立つ参加型のワークショップも府内各地で開催しております。
 15ページを御覧ください。また、男女共同参画課においては、女性に対するあらゆる暴力の根絶を目指し、ドメスティックバイオレンス被害者支援を実施しているところでございます。カードやちらしを活用した啓発事業、市町村や関係機関と連携したパープルリボンキャンペーンの実施、また被害者支援の一環としてのDV加害者プログラムを実施しているところでございます。
 16ページを御覧ください。DV被害の根絶のためには、被害者が被害に気づくことが大切です。若年層にもDVを知っていただくため、このような冊子を作成し、高校生に対する啓発講座を実施しているほか、デートDVについて理解を深めていただくこの冊子を各市町村の成人式で配布していただいて、啓発に努めているところでございます。
 京都府の女性活躍に関する取組についての御説明は以上でございます。ありがとうございました。

◯伊藤公雄 参考人  伊藤でございます。こういう機会をいただきましてありがとうございます。
 今、西村副部長のほうから京都府の男女共同参画の施策について説明があったわけですが、私は専門は社会学なんですけれど同時にこの男女共同参画と今、言われる、ジェンダー政策と言ってもいいんだと思いますが、大体35年ぐらい地方自治体、政府、大学で研究の傍ら進めてきたわけで、35年やってきて実はかなり危機感を持っています。というのは、日本の社会があまりにもこの問題について対応が弱かったんじゃないかということですね。今日、お話ししたいのは、これを進めないと日本の社会はもたなくなるんではないかということをちょっと強調する形でお話をしたいというふうに思っています。流れはこんな形で、特にジェンダー論について簡単にお話ししながら、バイアスの問題も含めてしゃべりたいと思います。
 特にこの数年ですけれども、当初は「失われた10年」と言われたのが、20年と言われ、今は30年と言われていますけれども、経済も学術研究もというのは、実は学術研究と経済はかなり不可分ですね。科学技術の進み方というのは大きな問題だと思いますけれども、それも含めてちょっとお話をしたいのですが、経済面ではデジタル化の遅れというのは目を覆うばかりで、コロナ禍においても、近隣の諸国や地域ではデジタルを使ってかなり早い段階でいろんなものが進んだわけですね。日本の場合は、2ヶ月経っても3ヶ月経っても給付金が来ないような状態。ヨーロッパの国だったら1週間以内にみんな届いているわけですけれども、デジタル化の遅れは、お隣の中国や韓国、あるいは台湾なんかと比べてみてもかなり見劣りのする状態になっています。製造業の海外移転も、経済面での停滞の1つの原因と思います。また、少子化に伴う生産労働人口の減少、すなわち女性の活躍の問題と少子化の問題あるいは労働力不足の問題は、すごく深く関係しているわけですね。
 皆さん、世界で比較的ジェンダー平等が進んでいる国としてスウェーデンを御存じだと思います。スウェーデンは1960年代からジェンダー政策を進めました。理由の1つは、労働力不足が見えたことです。ヨーロッパ社会は日本より早い段階で少子化に突入しておりますので、労働力不足が見えた。60年代後半から、急激にスウェーデンは女性の社会参画を進めるわけですね。一方で、移民政策というのもヨーロッパではとったわけですが、移民の問題は人種差別の問題につながるということもありまして、ヨーロッパ社会は70年代になると急激に女性の参画が進んでいきます。背景の1つは、労働力不足だったというふうに僕は思っています。
 これは御存じかどうか分かりませんが、日本は女性の働く社会としては世界でもトップクラスだったわけで、1970年の段階の女性の労働力率、働く女性の割合はフィンランドに次いでOECD加盟国の中では世界2位、スウェーデンが3位だったんですね。それが70年代から他の国々が急激に女性の参画を進めます。先ほどのグローバル・ジェンダー・ギャップ指数で紹介がありましたように、日本の女性の社会参画、労働参画は大変遅れてしまっているわけですね。それに加えて、実質賃金の低下の問題もあったと思います。
 今日は学術・教育の話もちょっとしたいんですが、いわゆる選択と集中という形で多くの国々が冷戦終了後、生き残りのために何を考えたかといったら、新興国が急激に経済発展していきますから、当然科学技術についての支援で生き残る以外になかったわけです。ところが、日本の場合は、科学技術について十分な資金が回っていないという状況、国立大学なんかは毎年毎年1%ずつ交付金が減額されるような状態が10年続いてきたわけで、これもまたすごく大きな問題をはらんでいるんじゃないかと思います。
 これは昨年の東京新聞のデータで有名なデータですが、1989年、世界のトップ50企業の中に日本の企業は32社入っていました。これが2023年の段階では、50社の中にはトヨタ1社が入っているだけという状態になっています。GDPシェアも御存じのように3%ぐらいで、第二次世界大戦後と同じぐらいの世界のGDPシェアでしかないという状況ですね。
 豊かさ指標という点では1人当たりGDPというのは大きいわけですけれども、これは購買力平価ですから物価を換算したものでございますが、2020年の段階で日本は44位です。韓国が36位ですか35位ですか、韓国にも、22年の段階で1人当たりGDP(豊かさ指標)では負けている。御存じのように、年収でもこの段階で韓国の一般の働く人の年収と日本の年収は韓国のほうが上という状態になっているわけで、2000年の段階では日本の1人当たりGDPは大体ルクセンブルクに次いで2位、ルクセンブルクは67万人ぐらいしか人口はありませんから、実質世界1位の豊かさのある国だったものが20年ちょっとでこういう悲惨な状態になってしまっている。
 これはこの間、四半期分で600兆円にいきそうだという話に今、なっていますけれども、この青い線が日本ですけれども、去年ドイツに抜かれ、今年はインドに抜かれるという状態になっているのは御存じのとおりです。これはドル換算ということもありますけれども、多くの国が右肩上がりの中で、日本だけGDPが停滞していると。
 学術研究ですけれども、日本は技術大国だみたいなことをおっしゃる方がおられますけれども、いまやこれはトップ10論文、引用度の高い論文の上から10%をとったものですが、どんどん落ちています。これは2000年を1とした大学部門の研究開発の指数(名目額)ですけれども、OECDの購買力平均換算ですが、見ていただくと分かるように他の国はそれぞれ増えているんですけれども、日本は停滞したままという状態で、中国が大変今、科学技術力を強化しているわけですけれども、それはお金が出ているからで、もう1つ目立つのは韓国ですね。中国、韓国で東アジアの国々が科学技術に対してかなり力を入れながら相対優位を保とうと努力している中で、日本は対応が遅れているということになります。
 停滞の背景の一つは、今日はDE&I(diversity equity and inclusion)の話をジェンダーと絡めてしゃべるつもりなんですけれども、やはり複雑化する社会に対する対応が不十分だった、何よりも多様化の重要な指標であるジェンダー平等が遅れているということですね。先ほど見ていただいた世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ指数、これは先ほど見ていただいたとおりなんですが、日本は146ヶ国中118位、前年は125位だったわけで若干上昇したとはいえ、よく先進国で最低と言う人がいますけれども、先進国で最低ではなくて世界で最低レベルだというふうに、アジア地域で見ても日本より悪い主要国はインド以外ないという状態です。ほとんどのアジアの諸国は日本よりジェンダーギャップは縮んでいるということですね。
 教育分野は、高校までは世界トップクラスの男女平等ですけれども、先ほどから申し上げているように大学レベル、高等教育レベルで107位ということになっています。日本の大学進学率は今やOECD平均より低いです。90年代頭までは日本は教育大国で大学進学率は高かったわけですが、先ほどから申し上げているように多くの国が高等教育を拡充しながら高度人材を輩出するという形で生き残りをかけてきたわけですけれども、日本の場合はそれをやってこなかったということですね。中でも、女性の進学者割合が、OECD加盟国で見たら最低だということが一目で分かります。ある面、人口の半分を日本の社会は十分に活用してこなかったということですね。
 経済は120位ということで、中でも悪いのは下から2番目にある管理職割合が130位、後ろにもう16ヶ国しかないという状態です。政治は113位、これは前回よりちょっとましなのは、大臣の割合が2人から5人に増えたというのが大きかったというふうに思いますけれども、前回は130何位かで後ろにもう十数ヶ国しかないような状態だったと思います。
 これはG7のグローバル・ジェンダー・ギャップ指数の推移なんですが、2006年から世界経済フォーラムはこのデータを発表しています。2006年を見てください。日本とフランスとイタリアはほとんど変わっていません。日本は80位で、当時115ヶ国なんですけれども、イタリアが77位でフランスが70位だったんですね。2021年の段階で見ていくと、イタリアがまだちょっと出遅れていますけれども、日本よりかなりましな段階、今、70位ぐらいだと思います。大体2006年と変わらないぐらいのランキングですけれども、日本は118位とか125位とかっていう状況で、つまりほかの国々が急激にジェンダー平等に向かっていろんな施策を進めていった。日本も、先ほど見ていただいたように京都府を含めて男女共同参画の施策を進めているわけですが、他の国々の進行度合いが日本に比べたら速過ぎるというか速いので、置いてきぼりを食っているわけです。
 なぜ、世界経済フォーラムはこのジェンダーの問題に注目したのか。世界経済フォーラムは人権団体ではありません。経済団体です。これはちょっと2015年で10年ぐらい前のデータなんですが、横軸が1人当たりGDP(豊かさ指標)です。これは名目なので、さっきの購買力平価ではありません。横軸がグローバル・ジェンダー・ギャップ指数のランキングで、大体右肩でこうなっていますよね。つまり、ジェンダー平等、男女共同参画を進めている国が豊かな国であるというデータになっているわけです。日本の場合は70年代、80年代の貯金があったので90年代頭に大体500兆円というGDPになって、だいたいそれが増えていないわけですね。でも、500兆円ありますから、人口で割ったらかなり上のほうにまだ来ているわけですけれども、他の国々が伸びている中で日本だけが停滞している。このままでは日本の社会は大丈夫だろうかという事態に今、なっているということに注意を向けていただければというふうに思います。
 何で女性の参画が増えていったのかということの背景には、産業構造の転換も大きかったと思います。これはドイツの人たちが4つの産業革命という言葉を使っていますが、第一の産業革命が蒸気機関の発明と鉄道網、これは流通が発達するわけですね。第二の産業革命が電気エネルギーの普及と大量生産・大量消費社会。大体1970年前後に情報とサービスを軸にした情報革命が起こります。21世紀は第四の産業革命というAIとIoTの時代ということですが、振り返ってみると日本は第二の産業革命、つまり大量生産・大量消費のものづくりには世界のトップクラスの能力を発揮したわけですが、どうも70年代の段階の情報革命、情報サービスを中心とする産業への転換の中で出遅れたのではないか。
 先ほどのデジタルの遅れも含めてですけれども、いろんな要因があるわけですが、今、何でジェンダーの問題や多様性が問題になっているかといえば、背景にあるのは、情報やサービスを中心とした産業が産業の主軸になってきている状況にあるからです。つまり、多様なニーズが出てくるわけですね。大量生産・大量消費じゃなくて、いろんな人のニーズに対して情報やサービスで対応していくという中で、多様性というかダイバーシティーというかそういうものが要求されているにもかかわらず、ものづくりというのはある面、大量生産・大量消費で多様性に配慮しなくても単品を作って生産して、うまくこれが売れればいいわけですけれども、多様性やそういう複雑性に対応できる仕組みに残念ながら日本の社会がなっていないのではないかということですね。
 DE&Iということは、日本の企業も今、どんどんDE&Iのセクションをつくっているところが増えています。これは国際社会がこれを要求しているからなんですけれども、ダイバーシティーというのは性別やSOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)、つまり性的な指向が男に向くか女に向くか、性的指向がないという人もいるし、両性に向くという人もいます。LGBT理解増進法の中で法律上初めてジェンダーアイデンティティーということでジェンダーという言葉が日本の法律に登場しましたけれども、自分が男だと思うか女だと思うか、あるいは男でも女でもないと思っている人もいます。あるいは、分かんないという人もいます。それは、SOGIの多様性、肌の色やエスニシティー、宗教、年代、世代、心身の障害の有無、そういう多様性を尊重しましょうということですね。エクイティーというのは、情報や機会や資源へのアクセスにおいて全ての人に公平な扱いを保障しようということですし、インクルージョンは全ての人が歓迎されて尊重されて支援され評価されることができるような環境整備をしましょうということになっています。
 何でこういうDE&Iが大きな問題になっているかといえば、1つはやはりあらゆる人の人権という考え方が1970年前後から広がったからですね。これはアメリカ合衆国が典型ですけれども、60年代までは人種差別が大変きつかったわけです。実際にいろんな制度的にアフリカ系の人たちに対して露骨な差別があったわけですが、今は一応制度的には、あるいは法的には差別がないという状態にはなっているわけですね。社会的にはまだ差別は残っていますけれども、これについての取組が始まったということですね。この時期、いわゆる環境問題がテーマになります。ローマクラブが「成長の限界」というレポートを1972年に発表しましたけれども、人権と環境というのが1970年代以降の人類がやっと取り組み始めた世界の共通課題ということになります。これが今のSDGsなどに引き継がれて、持続可能な世界、環境の問題ですね。誰一人取り残されない社会、これはまさに人権であり差別の問題ということになります。
 同時に、先ほどから申し上げているように、何で世界経済フォーラムがジェンダーに注目しているかということですが、これが組織や社会を活性化するということが分かってきたからなんですね。多様な視点や多様なニーズに対応することが、新しいアイデア、イノベーションを生んで、社会や組織を活性化させる。だから、世界経済フォーラムはジェンダーの問題、特にジェンダーというのは多様性の一つの指標ですから、世界の人口の半分以上いる人たちが活躍できる社会が、やはり社会を活性化させるという視点になります。
 これは21世紀の頭の『フォーチュン』誌500社のデータで、左側が女性の役員が少ないほう、下から4分の1の企業グループです。右が、女性の役員が多いほう、上から4分の1のグループの企業です。その企業業績を調べたものなんですが、はっきりと女性役員が多いほうが企業業績がよくなっているわけですね。世界トップ企業500社の中で調べるとこういうデータが出てきたというのが21世紀の頭です。これ以降、世界中がやはりジェンダーの問題、つまり女性の意思決定参画が企業や社会を活性化させるという方向に目を向け始めたわけです。
 ところが、日本は、こういう問題にほとんど目を向けないまま来てしまった。70年代、80年代の成功体験に縛られて、70年代、80年代は男性の長時間労働と女性が家事・育児をやって非正規労働をするという仕組みだったんですけれども、これが成功してしまったわけでその成功体験から離れられなくて、男性の長時間労働というのは減り始めていますけれども、女性の非正規化というのは今でも進行しているわけで、その仕組みをずっとしょいこんできてしまったということですよね。
 日本でも、これは三菱総研のデータですが、研究開発とダイバーシティーの話の調査がありました。これは特許の経済効果のデータなんですが、赤いほうが男女混合チームで開発した発明ですね。灰色のほうが男性だけのチームで開発したもの。この経済効果を比較したものですが、見たら、赤いほうが上に来ているということが一目でわかりますね。唯一、非鉄金属のところが赤が若干下なんですけれども、ほとんどの分野で男女混合で開発されたもののほうが経済効果の高い発明になっている。同じように、外国人と日本人のチームで合同した開発と日本人だけでやったチームの開発も、同じような結果になっているというふうに言われています。つまり、ダイバーシティーがイノベーションにつながっていくということですよね。
 ヨーロッパはEUでHorizonというプロジェクトがあるんですが、科学技術戦略なんですけれども、「Horizon2020」というからこれをつくったときは2015年ですね、ジェンダー視点を技術開発において不可欠なものとして取り組んでいます。つまり、ジェンダーの視点がないものは、科学技術振興の助成金が出ないということですね。もちろんジェンダー関係でないものもあります。その場合は、この研究はジェンダーにこれこれこういう理由で関係ないということを明らかにした上で申請するということになっているというふうに聞いています。ある意味、科学技術とジェンダーの視点というのもすごく今、重要な問題になっているということでもあります。
 時間があまりないので、ジェンダーについては、御存じのように社会的に構築された性別というふうに生物学的性差に対して位置づけられているわけですが、ただ生物学的性差も、最近はスペクトラムとしての性、極端な男性と極端な女性を置けば大体その間ぐらいに我々はいるのであって、簡単に人間を2種類に分けられないよという考え方ですね。そもそも、性染色体で多くの女性はXXで多くの男性はXYですけれども、Xが3つある人、あるいはXが1つしかない人、Yが2つある人というのも、数は少ないですけれども存在しているわけです。また、性染色体の影響もありますが、内性器・外性器で性分化疾患、この間のオリンピックでも話題になりましたね。ボクシングの選手がテストステロン値がすごく高かったということで、生まれてきたときは女性として生まれたわけですけれども、恐らく性分化疾患、つまり性がはっきりしない形で生まれるという方たちが、少数ですけれどもおられます。性ホルモンも日々変わっていますし、先ほど申し上げたようなSOGIの多様性みたいなものもあって、性の問題を男女の2つで分けて考えるという状況ではもうなくなっているということですね。
 これに加えて、社会的につくられた、男はこうあるべきだ、女はこうあるべきだという社会的な縛りみたいなものをジェンダーというふうに呼んでいたわけですけれども、最近、ジェンダーという言葉は変わり始めています。生物学的な性差も含めてジェンダーということが実は結構あるんですね。性差医療というのがありますね。これは、生物学的にオスかメスかということと社会的に男か女かということに両方配慮しながら治療するという、そのほうが治療効果が上がるということです。これは生物学的性差も、ジェンダーという言葉の中に含まれています。
 あるいは、最近の「gendered innovation」、これはさっきのEUの政策なんかもそうですけれども、ジェンダーの視点を持ったと同時に生物学的な性差というものに配慮しながら、さらに交差性といいますけれども人種とかSOGI、障害の有無、年齢、階層、出自など多様な人たちに配慮しながら、ジェンダーの問題、セックスの問題、あるいは交差性の問題に配慮しながらイノベーションを進める。これがむしろ科学技術開発にとってすごく重要だということが見えてきているわけで、だからEUは、ジェンダー視点をある面、科学技術に女性が不可欠なものとしてカウントしているということになるわけです。
 ジェンダー平等の観点というのはなかなか難しいところがありまして、生物学的性差というのは多様だという話をしましたけれども、同時に、男女は違うわけで、いわゆるリプロダクティブ・ヘルス・ライツ、男性は妊娠・出産しません。女性の多くは妊娠・出産される。ただ、女性の中でも妊娠・出産されない方もいる。女性のそういう妊娠・出産の機能についての十分な配慮とそれを口実とした差別をしないというのは、1979年の女性差別撤廃条約でかなりはっきりと書き込まれていることであるわけなんですね。我々は、男女平等とかジェンダー平等というと男も女もみんな同じにすればいいという考え方になりがちですけれども、そうではなくて生物学的な性差、特に妊娠・出産の生物学的な機能については十分に配慮しながら、それを理由に差別をしないという構図をどうつくるかということですね。
 さらに、環境の問題もあります。女性専用車両というのは日本で生まれて、今、インドなんかでもつくられつつあるようですけれども、これができたときに、僕は男性のジェンダー研究者ということで幾つかの新聞から取材が来ました。男だから男性差別だとどうも言わせたかったらしいんですけれども、僕は、もちろんないほうがいいわけですけれども、日本のようにラッシュがあって痴漢が横行しているような社会で女性の人権を守るためには、一時的な措置として女性専用車両が必要でしょう。簡単に男も女も同じだったら、それは男性差別だと言うかもしれませんけれども、実際に女性の人権が奪われている中でどういう対応をするかというのは、かなりきめの細かい配慮をしなきゃいけないわけで、ジェンダー平等というとやはり同じにすればいいというふうに考えがちなんですけれども、かなり様々な視点に配慮しながら、一人一人が性別にかかわりなく能力を発揮できるような環境をどう整備するかということがポイントだということを押さえておいていただければと思います。
 中でも、バイアスの問題が今、話題になっています。特に日本では、やっと動き始めたときにバイアス問題、特にジェンダーフリー論争というのがありました。ジェンダーフリーは和製英語だと言う人がいますけれども、1985年にバーバリー・ヒューストンという人が『Should Public Education be Gender Free?』というジェンダーフリーという言葉を使った論文を書いています。
 ここでヒューストンは、3つぐらいジェンダーフリーという英語のニュアンスがあるだろうと。1番目は男女を機械的に同じに扱うのがジェンダーフリーだというもの。2番目はジェンダー問題に無関心なジェンダーフリーですね。3番目は、ジェンダーバイアスからの自由、これもジェンダーフリーだと言いますね。彼女は、3番目の意味だったら賛成だけれども、多くの人は多分1番目でとっちゃうだろうと。さっき言ったみたいに、男も女もみんな機械的に同じにすれば平等になるという考え方がジェンダーフリーととられるんじゃないか。彼女は、ジェンダーフリーという言葉は使わないほうがいいというのがこの論文の結論なんですけれども、日本の場合は、まさに言われたとおりの混乱になりました。同じ部屋で着替えをさせるのがジェンダーフリーだみたいなことが言われ始めるわけですね。
 でも、ジェンダーフリー教育を進めようとしたら、むしろ3番目の立場だったわけで、男の子と女の子を同じ部屋で着替えするというのはセクシャルハラスメントですから人権問題なんですね。3番目の話で言ったのが1番目の話で議論されて、いつの間にかこれはジェンダーという言葉をめぐる混乱の中で、みんな機械的に同じに扱うのがジェンダーフリーだという中で、まさに日本のジェンダー政策というか男女共同政策がここですごく停滞してしまったということが言えると思います。
 ジェンダーバイアスの克服ということがテーマなんですけれども、特にアンコンシャス・バイアス。これで有名なのがオーケストラのブラインドオーディションというのがあるんですが、見える形でオーケストラの団員のオーディションをやると男性ばっかり採られちゃうんだそうです。次にカーテンを下ろす。カーテンを下ろしただけでは駄目だったらしいんですね。女性はハイヒールを履く人が多いので足音で分かっちゃうから、全部靴もローヒールでやるという形でやると結構女性の団員が採用されるようになるという実験があったんです。あるいは、同じ論文なんですけれども、男の名前で書いたものだというのと女の名前で書いたものだという形で、これを大学生に評価させると、同じ論文なのにもかかわらず男性の名前で書いたもののほうが高い評価が得られるという結果になっている。みんな、差別だとか思っていないんですけれども、いつの間にか男性のほうを優遇してしまうようなバイアスがある。
 さらに、これは男性の皆さんも考えなきゃいけない問題ですけれども、好意的な差別。行った側は善意でしたものが差別として受け止められることがある。「お子さんがいるんだから早く帰っていいよ」というこれは善意で言うケースがあります。本人は善意のつもりだったかもしれないんですけれども、でも男性にはあまりこう言わないわけですね。女性だから言っているわけです。しかも、これはいろいろな条件の中で、今日は夫が見てくれているから遅くまでいられるかもしれないという条件のある方でも、女の人でお母さんだから早く帰りなさいというふうに言ってしまうような、本人は好意的な対応でしているつもりが結果的に排除を生んでしまうような状況があるということですね。
 特になかなか改善しないのは、システム正当化バイアスというのがあるんですけれども、それまでこれが当たり前だったからということで、新しい時代が生まれると古い仕組みで判断しようとする。結局、そういう中でなかなか社会が変わらないで、特に日本の場合はジェンダー問題が解決しないまま来てしまったのではないかなと思います。
 日本の場合、すごく今、DE&Iが求められているわけですが、中でもエンゲージメントスコアというのがあるんですけれども、職場のやる気ですね。日本は最低です。とにかく元気が出ない、働く元気が出ない状況、これも日本の経済の停滞につながっているというふうに思います。やる気を削ぐ原因の1つが、男性主導の同調型集団心理というんですが、周りをモニタリングしながら自分が損をしないように自己防衛しながら、集団に過剰同調させるような仕組み。これは結果的に組織のパフォーマンスを落とします。必要なのは、協調型集団心理といいますか、一人一人の役割を考えながら協調しながら組織としてのパフォーマンスを上げるという仕組みなんですけれども、同調圧力が強過ぎて、組織としてのパフォーマンスが日本の社会では上がらないんじゃないかということですね。
 今、日本のスポーツが強くなっています。かつては体育会系型で同調圧力の中でスポーツ選手はトレーニングされていたんですが、今はむしろ一人一人の力を伸ばす形で組織を運営するリーダーが増えています。メダルが急激に増えているその原因は、古い同調型のしごき型の体育会系型の組織から協調型の組織に変わり始めていることが1つの成功の要因なのではないか、というふうに僕は思っているところです。
 結局、人の足を引っ張る、出る杭を打つ、強い者には媚びる同調、これはネットから拾ってきたんですけれども、この仕組みはやっぱり元気が出ない。これについてはグーグルのプロジェクト・アリストテレスという実験があるんですけれども、組織のパフォーマンス向上のために何が必要かと数年かけてGoogleの中のいろんな組織を調査したものなんですけれども、パフォーマンスの高いチームの条件は、心理的な安全性が確保できている。他者の反応を気にしないでありのままの自分として積極的に発言できる組織は、パフォーマンスが上がる。信頼性、仕組みと分かりやすさ、仕事の意味が理解できているとか、自分たちの持っている仕事の意義がどういうものかというのを理解しているということが、組織のパフォーマンスを上げる。日本の組織を見ていると、この辺がすごく欠けているんじゃないか。しかも、これは男性中心で今まで動かしていて、ある面、多様性が潰されてきたということの裏表の部分かなというふうに思います。
 組織が活力を持つためにもビロンギングということが言われていますけれども、自分の居場所がいい場所だというふうに確信が持てるような状況をどうつくり出すか、これが今、組織の活性化の中で求められている。DE&Iの推進の重要な指標として、ジェンダー平等があると思います。多様なニーズに応えながら、ここにいていいんだという気持ちになれるような、それこそ職員や市民、県民の様々な開かれた交流の場がつくられながら進んでいくような仕組みづくりが必要なんだろうというふうに思います。
 最後に、もう終わりますけれども、ケアの問題についてもう一度、ジェンダーの問題と絡めて考えていきたいと思います。
 近代社会というか産業社会は、男性は女性に対して威張っていたわけですね。威張っているだけじゃなくて、女性の様々な目に見えないサポートに依存してきた。支配と依存の両方の中で男性と女性の関係があったんじゃないかというふうに思っています。特に、女性のケア労働についての無自覚な依存というようなものがあったのではないかというのは思っています。
 男性にとっては、ケアしてもらうのが当たり前というふうに思いがち。女性がケアするのは当たり前と思いがちなんですが、ケアというのは実は大変な労働でもあるわけですね。男性が変わっていくためには、支配と依存の構図から対等な男性・女性の関係をつくらなきゃいけない。特に男性のケアする力ということをある面、社会的に共有していく必要があるんじゃないか。ケアというのは、自分や他人の生命、身体とか、他者の人格とか思いなどへの配慮、それに基づく行動。単に介護の話ではなくて、もっと広い意味でケアを捉えていただきたい。女性はしばしばこういうケアをある面、小さいときからトレーニングされてケアの担い手になってきたわけですけれども、男性はなかなかケアの視点というのが欠如している方がまだまだ多いんじゃないかと思います。だから、ケアが素直に受け入れられない。つまり、ケアをしてもらっても威張ったり、甘えたりする。ケアを受け入れる力、つまり自分がケアをされていて、人の助けの中で自分がいるということについての十分な自覚がないままケアを受け止めてしまっている。高齢社会で特に男性がケアされる立場になったときに、この問題はすごく大きな問題になると思います。
 一番かわいそうなのは、もう寝たきりになったときに「もう、お父さん、いいよ、うるさいだけだから」って本当にさみしい死を迎えるという男性も結構多いんじゃないかなというふうに思うんですけれども、なぜかといったらケアをされるのは当たり前と思っている、ケアをされるときに「ありがとう」という言葉も言えない、ケアの大変さが見えていない。そのことが結果回り回って男性の側にも来る可能性もあるのではないかなというふうに思います。
 また、自然に対するケアの問題というのも実はすごく重要で、産業革命以降は、自然はある面、活用する形で自然に対する配慮を忘れていたわけですけれども、まさにSDGsで言われていることは、自然に対する人間のケアをどう回復するか。人間に対するケアと自然に対するケアというのはやはり、これからの日本の社会を考える上ではすごく大切で、特に男性の中にこのケアの視点が不十分だったということは、もう一度見直してもいいんじゃないかなというふうに思っています。
 ちょっと時間オーバーしてしまいましたけれども、私のおしゃべりのほうはこれで終わりたいと思います。御清聴、ありがとうございました。

◯山口勝委員長  ありがとうございました。説明はお聞き及びのとおりでありますが、もとの状態に復するまでしばらくお待ち願います。
 本日の所管事項の調査におきましては、テーマについて参考人も交えまして委員間の活発な意見交換の場となるよう運営してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、御意見・御見解等がございましたら、各自御発言を願います。

 

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◯島田敬子委員  伊藤参考人、本日はありがとうございました。
 やはりジェンダー平等社会の実現というのは、性別にかかわらず個人の尊厳が大切にされる社会であると。皆さん、自由な時間ももらいながら、自分らしく生きられるそういう社会、その道こそ希望がある社会だというふうに思っています。日本共産党も、遅ればせながら2021年には「ジェンダー平等の日本を実現へ」ということで、政党としても政策化をして取り組んでいるところでありますけれども、本当に圧倒的に世界から遅れた原因には、やっぱり政治に大きな責任があるというふうに感じています。
 でも、やっぱりジェンダー平等社会のほうが経済も豊かになるということで、これは証明されてきて、参考人が紹介されました。ただ、政治の現実を見ますと、非正規雇用の割合は自治体でも企業でも増えているし、特にケア労働。この間は賃上げが大きな注目を集めていますが、賃上げが2万円、3万円と行われる企業がある一方で、医療や介護などケア労働の現場は逆に下がったり。これの裏には政策があるというふうに思っています。男女の賃金格差でいきますと、生涯にわたる賃金格差は1億円とも言われているし、これを打開するためには、労働法制なり社会保障制度なり教育というふうな総合的な施策で推進するということがとても重要ではないかというふうに思っています。ちょっと広げ過ぎましたけれども。
 その点で具体的には、例えば労働政策等における課題、あるいは社会保障における課題、そして教育の課題、この3点ぐらいで何か御意見がありましたらお願いします。

◯伊藤公雄 参考人  ほんとに全体にわたる問題だろうと思いますけれども、労働政策は、先ほどから申し上げているように賃金格差の問題をどうするか、あるいは女性のそういう管理的な役割をどうやって拡大していくのかというようなこと。あるいは、ワーク・ライフ・バランスの問題も当然あるというふうに思いますし、非正規化の問題をどう是正していくのかということが重要になってくると思います。
 社会保障の問題も、少子化の問題が今、大きな問題になっていますけれども、先ほどスウェーデンは60年代の段階で少子化の中で労働力不足を見据えて女性の参画を戦略的に進めたというふうにちょっと申し上げました。もちろん女性だけではなく、社会全体をそういう方向で変えたわけですが、日本も1990年の段階で実は、いわゆる1989年の1.57ショック、合計特殊出生率が1.57になってこのままだと人口維持できないだろう、労働力不足になるのは分かっていたわけで、このときに日本の経済界は、労働力不足を女老外(じょろうがい)で埋めると言っていたんですね。「じょ」というのは女性、「ろう」は高齢者、「がい」は外国人。ただ、「女老外」という言葉があまりにも誤解を招きやすいので、あとはいつの間にか、先ほど言った男性の長時間労働と女性が家事・育児をやって非正規というような仕組みで持続してしまったということもあって進められなかったんですけれども、本当はもう社会政策的には90年代頭に、女性の社会参画がないと今のような労働力不足が来ることは見えていた。だから、女性の社会参画を進めるためにも、男女平等の労働条件とかワーク・ライフ・バランスをやっぱり進めなきゃいけなかったんですね。
 もう1つ、高齢者の問題。僕は90年代半ばで講演であちこちに行ったときに、このままいくと高齢者の過労死が出ますよというのを半分冗談で言っていました。今、労災死、働く中で亡くなる人の44%ぐらいが65歳以上です。前は20%台ぐらいでそんな多くなかったんですけれども、年をとっても働かなきゃいけない社会の中で高齢者の労働が大変厳しい状況になっている。年金も十分な形で支給されていませんので、高齢者の労働をどうするのかというのは、実は労働施策、社会施策両方の問題になると思います。
 もう1個、外国人の労働力をどうするのかといのは、もう30年前に考えなきゃいけなかったわけですが、もちろん移民施策って人種差別の問題が起こりますので、なかなか難しいところがあります。ただ、受け入れるのであれば、やはり計画的に、しかも外国人の労働者の人権についての法整備とか制度設計をしながら受け入れるということをするべきだと当時から言っていたんですけれども、日本は2018年、2019年に入管法を変えて、労働者の受入れの壁をかなり低くする形になりましたけれども、見ていると外国人労働者の労働を支える法制度とか制度設計がほとんどされていないんですよね。今、中国やインドは労働力不足になっていると言われていますし、日本に来てくれる労働力がもうなくなるんじゃないかというふうに言われるぐらいの状況の中で、どうやって外国の方が来て元気で働いていただけるような制度設計ができるのかというのは、これも結構30年前にやっておかなければいけなかった問題ですが、女性と高齢者と外国人の労働というようなものを社会政策と組み合わせてどう進めるのかというのは、大変重要な問題になっていると思います。
 もう1つ、医療と教育の問題ですけれども、医療の問題も日本は不思議なことに例えば人口当たりのベッド数というのは世界一なんですね。ほとんどトップクラスですね。ただ、お医者さんの数は人口比で見ると物すごく少ない。これは、お医者さんがいると困る、やっぱり医師会があんまりお医者さんをつくり過ぎちゃうと稼ぎが悪くなるということだと思いますけれども、しかも民間医療がすごく強いということもあるので、医療の制度設計というのは実は結構危機的な状況になっている。これはコロナではっきり分かったことです。ベッド数が多いというのは、かなりのベッド数が精神病院なんですよね。この仕組みもどう考えるのかというのは結構大変な課題かなと思います。医療なんかも、おっしゃるように介護職、看護職の労働条件の問題というのも重要になってくるなというふうに思います。
 もう1個教育の問題も、今、東大も京大もだいたい女子学生は2割ぐらいなんですけれども、何でだと思います? 受験生が大体8:2で男が多いんです。ほぼ同じ形で入っているんです。50・50で来たら多分50、女子学生になると思います。何で20しか来ないか、20しか受験生がいないかといえば、女の子は東大や京大に行くべきではないという社会的な縛りの中で、女性が活躍できない状況にあるんじゃないかなと思います。
 これはさっきちゃんと言わなかったんですけれども、1990年半ばでOECD加盟国の大学進学率は女子が男子を上回っています。だいたい10%ぐらい女子のほうが大学生は多いんですね。世界中で男子大学生が女子学生より7%ぐらい多い国が1つだけあります。日本です。ちょっとある面、異常な事態なんですね。つまり、普通に試験をやれば女性のほうが勝っちゃう。勉強していますから。世界中で問題になっているというのは実は、男子の学力低下です。90年代ヨーロッパで大学進学率で女子が男子を上回った段階ですごく大きな問題になっています。実際にPISA調査、国際学力調査なんかを見てもやっぱりすごい差があるんですね。数学では平均すると多くの国で男子が上なんですけれども、アイスランドでは数学も女子が上なんですが、男女平等が進むと数学も勝っちゃうという話なんですけれども、さっき府のほうもリケジョの話をされていましたけれども、理系に対する参画を拡大するというようなことも含めて、どうやって女性たちが学力をつけて資格を持って社会に出ていけるか。それをつくることが日本の社会を豊かにしていくことにつながるわけですから、これも戦略的に考えなきゃいけない。
 何で男子が学力が低いかというのは、OECDの専門官にインタビューをしたことがあるんですが、男の子は、勉強するのが格好悪いというのがある。もう1個はテレビゲームだそうです。勉強時間がやっぱり男の子は少なくなっちゃう。結果的に学力テストをやると男の子のほうが下になっちゃうというので、男の子をどうやって学力に向かわすかということがヨーロッパなんかでは結構大きな課題になっているんですが、日本ではこれはまだ見えない問題ですよね。
 僕は政府の委員をやっているときに文科省の人に、学力テストの各教科の男女別の平均点を出してくれと何回か申し上げました。出てきませんでした。3回目だったかのときに、調べていませんと言われました。これはさっきの男も女も区別しちゃいけないということなのかと多分思いますけれども、政策的には区別して男性・女性でという枠で見てみて、何でこういう状態になっているのかということを考えた上で政策を立てるべきで、そのために調査をやっているわけですけれども、調査やっているのを活用できていないというのはすごくもったいない。学力テストというのはそれこそ、京都府では市町村別でどこの学校が高くて低いかみたいなのが出てくるわけですよね。でも、肝心な男女、ジェンダー視点でこれを分析しているものがないという、ちょっとその辺も何かびっくりしている部分かなというふうに思っています。
 その辺も含めて、ちょっとジェンダーの視点で政策全体、社会全体を見直すということが必要なんじゃないか。そうでないと、どんどん社会の活力が落ちていくことが続いちゃうんじゃないかなというふうに思っています。

◯島田敬子委員  ありがとうございました。先ほどからもありましたように、若い人たちや女性の声がしっかり反映される社会といいますか、今、女性たちも声を上げ始めておりますので、私たちも一緒に頑張っていきたいと思っています。今日はありがとうございました。