令和5年6月定例会 文化・教育常任委員会―2022年9月30日〜島田敬子府議の質疑応答部分(大阪の「高校完全無償化」に対する対応と京都府の私学支援について)

◯島田委員  高等教育無償化についてです。
 負担能力を超えた高い学費、学生3人に1人が平均300万円の借金を背負ってその総額は10兆円にものぼるということです。
2020年の労働者福祉中央協議会の調査で、奨学金の返済が「少し苦しい」「かなり苦しい」が45%、「今後の返済に不安がある」が7割、日頃の生活、食事、病院受診だけでなく、結婚・出産・仕事の選択にも奨学金の返済が影響を与えている事態が報告されました。岸田政権の高等教育費負担軽減策は、高い学費そのものを引き下げる案が無く、授業料を国がいったん立て替え、あとで返済する制度で新たな学生ローンに過ぎないと思うんです。
 授業料の減免と給付制奨学金をセットで行う大学等就学支援制度は、多子世帯、あるいは理工系学部の中間層のみに拡大する差別と分断を持ち込む内容と考えています。我が共産党といたしましては、6月5日に授業料を直ちに半額にし、入学金ゼロ、奨学金は返済不要の給付型奨学金を中心に改革すること、貸与制奨学金の返済も半分に減らす提言を発表したところです。もちろん国の責任で財源も示しております。
 さて、東京都立大学が令和6年度から都立大学授業料の無償化を世帯収入、目安910万円未満に引き上げるということです。大阪では、5月9日に「大阪における高校大学等の授業料無償化制度の基本的方向性について」を発表し、高校等の授業料無償化制度について骨子案が示されました。所得制限や子どもの人数による制限の撤廃、府外の私立高校に通う生徒にも対象を広げるとしています。
 日本は無償教育の漸進的導入を謳う国際人権規約も批准をしており、世界の流れであって、無料化の理念は賛成できるものです。内容については問題があるので、後ほど述べますけれども、本府も次元の異なる少子化対策の重点要望で、高校等の教育費の負担軽減を要望されていますが、現状認識と課題、また東京や大阪などの取り組みをどのように見ておられるかお聞かせください。また本府にすでに大阪から説明に来ておられるとお聞きしましたが、どのような説明がおこなわれたか教えて下さい。

◯井関好之 文教課長  所管の私立学校の支援についてでございますけれども、大阪府さんが完全無償化ということをおっしゃってますけれども、大阪府と京都府では財政機能も異なることなどから、完全に同様の制度を京都府で実施することは難しいかというふうに考えております。
 それから、大阪府の説明でございますけれども、大阪府庁から京都府に対しましては5月に説明が、素案の説明がございました。また6月、先日には京都の私学の団体に対しても説明があったところでございます。以上でございます。

◯島田委員  その説明の素案の内容は? 私が先ほど述べた通りでございますか。

◯井関好之 文教課長  基本的には委員のおっしゃったとおりでございまして、所得制限なしに無償化をする。ただしキャップ制というのを設けて、一部、学校の負担を求めるという内容でございました。以上でございます。

◯島田委員  これまでの本府の私立高校あんしん就学支援製度で、大阪に対しては相互支援をしましょうと調整してきたわけですが、大阪はこれに応えず、京都から大阪の私学に通う生徒、令和2年度で808人もいらっしゃいますが、本府のあんしん就学支援が受けられない事態だったと思っていますが、大阪の今回の無償化の大きな問題、先ほどもキャップ制、お話がありました。
 施設整備費を含む授業料の上限を行政が決定するキャップ制をとって、国・府が決めた60万円を超えた分は私学の負担になるということで、これ大問題だと思うんですね。大阪から京都に通う生徒の負担を、私学が払うということになるのか。また大阪府の制度はすでに800万円未満の世帯の授業料、標準授業料60万円を超える額は学校が負担をしており、大阪府内の私立高校5校が参加していません。今回の新制度の参加を見送る学校も出てくることが予測されております。
 京都府の私学の対応ですね、これは個別の判断、学校の判断になるのか。この辺はわかる範囲で教えてください。

◯井関好之 文教課長  大阪府が検討されている制度では、おっしゃいましたように一部学校の負担が生じますので、京都の私立高校の中には、大阪府の制度の検討に関心を持って、また不安や懸念の表明をされております。大阪府が実施をされる制度に京都の学校が申請をして認められて、この制度に参加されるというのが大阪府さんの考えでございますので、基本的にはそこの申請をされるかどうかという事になるのではないかというふうに思っております。以上でございます。

◯島田委員  大阪は何億という(財政負担)規模で増える学校、京都にも大阪からたくさん来られていて、その私学の負担も数千万単位で出る学校も出るのではないかと思うんです。制度を入れるかどうかの判断は、個別の学校になっていくということなんでしょうか。京都府と大阪がそれぞれの制度について協議をして、京都の私学の負担が増えないようにしていくとか、そういう協議とか、京都府はどのような責任を果たそうとしているのか教えてください。

◯益田結花 文化生活部長   ただいまのご質問でございますが、大阪府さんが大阪府でされる制度、それについては京都府が何かご意見を申し上げるというようなことはないかと思っております。ただ、私も今までの経過を聞いておりますと、京都府の私立学校も非常に懸念ですとか心配を持っておられることはお聞きをしておりますので、その点に関しましては、私学のご意見をお伺いしてというところでございます。
 また、先ほど課長も申し上げました通り、大阪府さんからただ今、素案という事でお示しを頂いている状況でございますので、大阪府の方もいろいろやり取りをなさっているというふうに報道ベースで承知しておりますけれども、夏にむけて大阪府の方も制度を固めるというふうにお話を伺っておりますので、最終的にどういったお話があるのかというところを今はしっかりと見極める、また私学のご意見をしっかりとお伺いすると、そういう段階ではないかなと思っております。

◯島田委員  本来隣接する自治体が協議をして合意をとってといく丁寧なプロセスが必要ではないかと思っているところでありますが、私学団体に説明に来られた大阪の方はですね、
「質問はいいが意見は言うな」
こういった運営が一部であったと聞いていますが、京都府としてもやっぱりその個別の私学の判断、世帯の判断ではなくてですね、やっぱり話し合いをしっかり進めていくという方向で言うべきことは言っていただきたい。これは要望しておきます。
 私学の運営費補助・経常費助成についてですが、本府も毎年私学助成拡充の意見書を国へ上げてまいりました。この大阪の経常経費は生徒1人当たり、単価が国基準額を8万円程度下回る全国最下位レベルで47都道府県中46位、15年間ずっと、15年以上ですかね、経常費助成を削られた大阪は生徒の獲得競争が激しくなって、教員の正規雇用率が全国平均58.8%を大きく下回る49.3%と、非正規雇用の職員が増えているということで、これは教育の質という点でも、私学の教育水準の維持・向上という点でも大きな課題があるように思っていますが、ちなみに本府の経常費助成も全国40位と聞きましたが、補助単価は国の基準を満たしているのでしょうか。いまいくらくらいになっておりますか。お伺いします。

◯井関好之 文教課長  経常費助成の単価についてでございますが、おっしゃっている基準というのが国の交付税と補助金の単価の合計のことだと思いますけれども、京都府はその額に対して95%で計上をしているところでございます。

◯島田委員  私どもも保護者負担の軽減に頑張れということも言ってきましたし、私学も公共性に鑑みてしっかり公費でも支援するという、両面からやっぱり支援をする必要があると要望してきましたけれども、先ほどのキャップ制で私学の負担を増やすのに経常費の助成も減るとこういうやり方をすると、ますます先ほど紹介したような教育現場の困難な事態が広がって、それは子どもの教育にとっても大変まずい影響を及ぼすという事を考えております。
 キャップ制などという教育の中に行政が上限を設ける仕組みもおかしいし、私学の負担で無償化と言ってですね、やっていくようなやり方もおかしいし、私学の自主性を大前提に公費による無償化、教育条件整備に取り組む必要がありますし、国の抜本的な財政支援が欠かせませんし、本府としても予算要望に入れておられますが、更なる努力を求めておきたいというふうに思います。この点について一言あればどうぞ。

◯井関好之 文教課長  京都府のあんしん就学支援制度につきましては、全国でも上位の制度だという風に思っておりまして、この私学助成とあんしん就学支援の両輪でしっかりと支えてまいりたいと考えております。以上でございます。