平成30年2月定例会 本会議(第5号) 一般質問―2018年2月14日〜島田敬子府議の質疑応答部分

◯島田敬子議員  日本共産党の島田敬子です。さきに通告しております数点について、知事並びに関係理事者に質問いたします。
 まず、長期化・高年齢化するひきこもり者への支援についてです。
 昨年、京都府が実施をしましたひきこもり実態調査で、京都市内を除く府下の民生児童委員さんと民間支援団体の協力を得て把握されたひきこもりの方が1,134人、そのうち44%が行政や医療機関、NPOなどの支援を受けていないことや、全く家から出ない人が22%、10年以上のひきこもりが28%、40歳以上が377人と全体の33%に上るなど、ひきこもりの長期化や高年齢化が進んでいること、そして年齢層が高いほど生活が苦しくなっていることなど、深刻な実態が明らかになりました。
 また、昨年、KHJ全国ひきこもり家族会連合会が行った調査では、ひきこもりになった年齢の平均が22.9歳、現在の年齢が40歳代前半が多く、ひきこもり開始から約20年にわたってひきこもりと向き合っている現状があり、就労・就学に結びついているのは21.3%という結果でした。家族が何らかの窓口に相談に行った経験があり、特に病院などの医療関係の相談窓口が多かったものの、福祉サービス受給につながったものは22.4%にとどまり、支援が途絶したものが44.8%と、行政の相談窓口などの有効性に対する失望感が重なり、支援が途絶したことが報告されております。家族が高齢化し、相談するエネルギーもどんどんなくなり、地域とのつながりを全く持たずに孤立したまま家族ごとひきこもっているケースがふえ、病気、親の介護、経済的困窮など問題が複合化し、日常生活が追いつめられるまで表面化せず、親子共倒れのリスクを抱えた家族があると指摘をしております。
 先日、民間支援団体が主催する集いに参加し、ひきこもりの当事者と家族の皆さんのお話をお聞きいたしました。集まった御家族は70代、80代と御高齢の方が多く、長期のひきこもりの子どもさんを抱えた方ばかりでした。中学校でいじめに遭い、20年間も部屋にひきこもったまま、母親との会話も拒む息子さん。23歳、大学卒業時の就職活動でつまずき、22年間もひきこもり、強迫神経症を患った45歳になる息子さん。ひきこもった息子に暴力を振るわれ、それから逃れるために家出を繰り返す日々だったという奥さん。大切な家族なのに長年にわたってコミュニケーションがとれず、絶えない夫婦げんかや、ごみ屋敷と化した息子の部屋など、ひきこもりの家族の皆さん方の壮絶とも言える暮らしの実態を知り、衝撃でした。
 一方、これらの家族に寄り添い、長く外部との関係を断った若者たちの心に寄り添いながら家庭訪問活動や居場所をつくり、ひきこもりで悩む親たちでつくる家族会を組織し、支援するなど、支援者の取り組みを通じて若者たちが心を開き、自立に向かっている例も数多くあると聞きました。支援者の皆さんは、
「一人孤独で過ごし、将来を絶望し、悩み、時折襲う『死にたい』という若者たちに『生きていてよかったね』と伝えてくれる仲間や生活保障のメッセージを発信できるのが私たちだ」
と、粘り強く活動しておられました。
 このような民間支援団体の皆さんとも協働しながら、行政側としてはなすべき専門的な支援は何かを検証し、そのための体制強化が必要と切に考えました。
 そこで伺います。
 今回の本府のひきこもり実態調査結果について幾つかの数値や特徴が報告されましたが、さらに詳細な分析や検討についてお聞かせいただきたいと思います。また、行政などの支援の状況が不明という方が504人という結果についてはどのように考えておられますでしょうか。さらに、これまでの取り組みの評価と課題について伺いたいと思います。
 来年度予算案では、実態調査で把握した、支援を受けていないと見られる500人に対して民生児童委員や民間支援団体の協力を得ながら専門支援へとつなぐとされております「チーム絆地域チーム」を編成する民間支援団体については、これまでも訪問支援事業やネットワークづくり等に尽力をいただいているわけですが、委託に当たっては、プロポーザルで選定し、1年ごとに契約されている現状でございます。ただでさえ財政運営が厳しい状況にあり、支援者、家族ともに次の年度に継続できるかどうかの不安を抱えていらっしゃいます。本府事業を受託する民間支援団体への安定的かつ継続的に支援が必要であると考えますが、いかがでしょうか。
 中山間地域を抱える丹後地域、山城地域などでは、交通も不便であり、訪問に多くの時間と経費も必要であります。財政支援の拡充が必要と考えますが、いかがでしょうか。
 家族などが利用する民間支援団体等の相談料金については、初回の相談料が35,000円とか、その後の継続的なカウンセラーについても1回10,000円とか、経済的な負担が大きく、途中で支援が中断することもあると伺っております。行政による無料相談事業の強化のほか、継続的支援に向けた民間支援団体の協力も不可欠でありますから、本年度、支援団体への補助制度を創設し、スタッフの人件費も対象とされましたけれども、さらに利用者の負担軽減についても直接支援が必要であると考えますが、いかがですか。
 まずはここまでお答えください。

◯山田啓二知事  島田議員の御質問にお答えいたします。
 ひきこもり支援についてでありますけれども、今回私どもは実態調査を行いました。民生児童委員さんと、それから支援機関。残念ながら、京都市内は民生児童委員さんの御協力を得られなかったので支援機関による調査になったわけでありますけれども、こうした中で1,134人のひきこもりの把握、そのうち未支援のひきこもりが504人ということでありました。そして、調査結果では、ひきこもりは30代まで増加をしていって、40代は減少するけれども高水準、50代はさらに減少するという傾向が出ておりました。20代までは不登校を引きずっているケースが多いんですけれども、30代から40代にかけては、就職の厳しい時代であったことも言えると思いますが、雇用情勢の影響が感じられる、例えば就活に失敗とか職場の人間関係がうまくいかなかったということもかなりの割合で出てまいりました。そして、40代から50代にかけては、親の退職・死亡などもありまして、非常に生活状況が厳しいのではないかなということも考えられる状況がございました。ですから、減っていると言っても、それは前向きに評価できるような状況ではないというふうに思っております。
 もちろん一人一人の置かれている状況は一人一人異なっておりますので、これから対策を講じる上では本人や家族との接触の中で状況をさらに詳細に把握・分析する必要があります。そのため、まずは、今回判明いたしました未支援者の皆様を中心に、早急に支援を届ける必要があるということで現地訪問型支援を行いますとともに、これだけの人数に対応していくため体制強化も必要であるということで所要の経費を当初予算案に計上し、審議をお願いしているところであります。
 こういう実態調査はあるんですけれども、それについて未支援であることが判明した方について戸別訪問までやっていくというのは全国でも初めての取り組みになるというふうに思っております。京都府では今まで、平成18年度に支援ネットワーク連絡会議・職親制度・ポータルサイトという現在の脱ひきこもり支援の土台を構築してまいりました。それ以来、チーム絆の編成、脱ひきこもり支援センターの設置など、体制を整備してまいりました。また、「京都府若者の就職等の支援に関する条例」を制定し、困難を抱える若者が再チャレンジできる仕組みを創設いたしますとともに、ジョブパークを通じた就職など就労支援も強化しまして、さらに居場所を通じた社会適応訓練も補助し、切れ目のない支援を実施してきました。その支援実績は、昨年12月末現在の累計で、訪問・来所相談を中心に延べ9,400人に上り、約400人が職親事業による就労体験や基礎的就職支援事業による訓練で自立へと進むことができました。
 これで一定の体制、それを積み上げていくノウハウは蓄積されたわけでありまして、それだけに調査の結果判明した未支援者504人にこれから支援の手を差し伸べることがまず先決だというふうに考えております。全戸訪問により状況を把握した上でセンターやチーム絆が方針を決定し、伴走支援を行いながら、年代や状況に応じて居場所やフリースクールの活用、就労体験、医療・福祉サービスへのつなぎと、本人の状況に応じた適切な支援を届けていきたいというふうに思っております。
 未支援者が判明したときのその後のアクセスについて一貫して体制を整えていくというのは本当に全国では初めてになると思いますので、このノウハウをきちんと生かして、経験を分析して──議員御指摘のように、これはプライベートにかかわる状況ですし、家族が隠されることもありますし、本人との接触も難しい事例など大変厳しい状況がございますので、支援の届いていないひきこもり者の判明に努めて、それを生かした支援をしていく、これを大きな第一歩にしていけたらなというふうに思っているところであります。
 その他の御質問につきましては、関係理事者から答弁させていただきます。

◯勝目康 府民生活部長  チーム絆の契約についてでありますが、府内各地域で訪問・来所相談を実施いたしております「チーム絆地域チーム」につきましては、利用者がよりよい支援を受けられますよう、ひきこもりの当事者及び御家族等に対し、共感し、励ましながら当事者の状況改善、自立支援及び御家族の負担軽減を図るため、訪問支援や常設相談窓口の設置、ひきこもり経験者等の相談員の配置などを義務づけ、公募型プロポーザルを実施しております。
 チーム絆が4チームとなった現行体制以降、6年間で1回事業者の変更がございますが、その場合でも当事者や家族が戸惑うことのないよう事業者間で確実な引き継ぎを行うなど、適切な指導を行ったところでございます。
 また、今回の実態調査の結果を踏まえまして、これまで相談窓口を設置しておりませんでした丹後地域と山城南地域に新たに「チーム絆地域チーム」を設置し、相談体制を4ヶ所から6ヶ所に拡充するための所要経費を本議会でお願いしているところであります。地域チームをより身近なものへと体制を充実させるとともに、訪問相談支援に要する経費についても適切に手当てすることとしております。
 民間支援団体による活動につきましては、ひきこもりの方々に居場所を提供し、絵画、音楽、スポーツ等を通じて社会適応の促進を図っていただいているところに対し、今年度から補助制度を創設し、これまで14団体を支援することとしたところでございます。無料または1回数百円程度の低廉な利用者負担で、安心できる居場所の提供につながっているものと考えております。また、相談・訓練支援を行っている団体で有料のところといいますのは、事業者により、専門性の高いソーシャルスキルトレーニングという対人行動の習得訓練ですとか心理カウンセリングなど特別なノウハウ、あるいは専門スタッフによる支援を行っているものであります。
 なお、脱ひきこもり支援センターやチーム絆におきましては、どなたでも相談いただけるよう無料で相談を行っているところでありますので、積極的に御利用いただければと考えております。

◯島田敬子議員  御答弁をいただきました。
 今回の独自調査を踏まえて、昨日来議論がありますように、まだこれは氷山の一角ということで、それらも含めまして調査も必要かと思いますが、まずは支援が届いていないと見られる方々の訪問、そして支援につなげるということはとても重要なことだというふうに思っております。その取り組みに力を発揮していただく民間支援団体の活動が安定的で健全に行われるよう、補助金等の増額を含む支援の強化を求めておきたいと思います。予算を聞いておりますと、1件400万円程度で、人件費が出るか出ないかという大変少ない額であると伺っておりますので、さらなる努力を求めておきたいと思います。
 一方、家族の皆さんのお話を聞きますと、
「保健所にも行ったし、医療機関にも相談に行ったし、ひきこもり支援センターにも行ったし、家族会や研修会に参加をしたけれども、さて我が子はどう解決するのか見通しがつかないまま10年20年と過ぎてしまった。みんなそれぞれに背景が違い、個別の問題がある。個別の事例に相談に乗って、寄り添う支援が欲しい。どこへ行けば自分の子どもに合った支援が受けられるのかがわからない。道のりは遠い」
と話されているのが現状でございます。
 家族会の調査を紹介いたしましたけれども、途中で相談が途切れてしまったということなどはしっかり検証が必要だというふうに思います。あれこれやっているとメニューを紹介されましたけれども、例えば精神保健福祉の第一線の相談窓口である京都府精神保健福祉総合センターや保健所等の体制が今で十分なのかどうか、さらには市町村や医療機関と連携したアウトリーチの取り組みもまだまだ拡充が必要な分野であるというふうに思っておりますが、このあたりの総括と、課題はどのように考えていらっしゃいますか。あわせてお聞かせをいただきたいというふうに思います。
 ひきこもり家族や、支援が届いていない、あるいは相談さえせずに諦めている家族もあって、市町村段階でもまだまだつかみ切れていないという現状がありますので、さらなる検討を求めておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

◯勝目康 府民生活部長  まず、保健所あるいは医療機関等との連携体制がいかがかということでございますけれども、今議会に、「チーム絆地域チーム」を現行府内4ヶ所から保健福祉圏域に合わせた6ヶ所に拡充をすると、こういう予算をお願いしているところでございます。こうした中で各圏域で、民生児童委員ですとか保健所、市町村等、関係機関等とのネットワークを強化していきたいと、このように考えておるところでございます。
 それからまた利用者負担の軽減についてでありますけれども、ひきこもり支援といいますのは、まずは相談対応があって、そして社会適応に向けての居場所、さらにその先の就労訓練、こういうふうに一連でつながっているわけでございます。相談対応につきましては、今ほど申し上げましたように、「チーム絆地域チーム」のほうでは無料で対応しており、しかもその体制を拡充しているということでありますし、居場所については補助金を通じて無料ないしは低廉な形で提供させていただいている、就労訓練につきましても職親を利用いただければ御本人の負担というのはかかってこないと、こういうことでありまして、京都府といたしましてはこういう形でその体制のほうをしっかり充実させてきておるところでございます。
 その上でなお、利用者負担の軽減をどうかということでありますけれども、今、申し上げましたように、民間支援団体で有料、かつそれが高額であるというケースにつきましては、これはかなり専門的なノウハウあるいは手法を使っておるといったようなところもございます。それをどこまで公的支援でカバーしていくか、こういう問題であろうかと思いますけれども、私どもの考え方といたしましては、今ほど申し上げましたように、その体制をしっかりつくって、なるべく無料ないしは低廉な形で御相談、あるいは居場所、社会適応訓練、就労体験を提供していくというものでございますので、御理解賜りますよう、よろしくお願いをいたします。

◯島田敬子議員  今後の訪問活動を通してさらにいろんな課題が出てくると思いますが、検証いただきまして今後の取り組みに反映されるよう要望いたします。
 ひきこもりの段階によって支援の内容が大変異なります。何より住民の身近なところで敷居の低い相談窓口が必要であると考えます。2017年から生活困窮者自立支援法に基づいて市や保健所に暮らしと仕事の相談窓口が設置されておりますが、自立・就労支援のほか、民間支援団体の力をかりて、ひきこもりの専門相談にも対応されている自治体もあります。そこでは、ひきこもりの家族の方も駆け込んでこられると聞いております。こうした取り組みについては、市町村によって温度差があります。国においては今国会にも生活困窮者自立支援法の見直しが検討されており、相談体制を強化せよと言うのですが、幾ら財政を支援してくれるのかわからないということですから、国に対しても必要な財源を確保されるよう要望するとともに市町村の支援をお願いしたいというふうに思います。
 ひきこもりの若者の多くが、児童虐待やいじめ、不登校を経験しております。残念ながら本府においてもこれらがふえ続けており、本当に悲しい、胸が痛む事態でございます。これらの背景には、国連・子どもの権利委員会も勧告をするような過度の競争的な教育、不安定雇用の拡大、弱肉強食の社会が若者に挫折感を与え、競争的価値観や自己責任論、貧困のもとで、そこからの回復を支える人と人とのつながりを希薄化させていることがあるのではないでしょうか。それらの根本的解決が必要です。子どもの貧困の解決へ独自の実態調査を行うとともに、子育て支援策の強化や本府の教育施策についても真摯な検証をお願いしておきたいというふうに思います。指摘をいたしまして次の質問に移ります。
 次に、チャイルド・マルトリートメントでございます。
 先日、同僚議員とともに、このほど出版された「子どもの脳を傷つける親たち」の著者である福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授をお訪ねし、お話を聞きました。友田さんは、児童虐待で失われる多くの幼い命と向き合い、日本で虐待された人々へのケアに取り組むとともに、虐待が脳に与える影響を研究されております。日本では虐待を脳科学の側面から研究する活動がほとんどない現状の中、これらの事実や研究成果をより多くの人々に伝え、虐待の恐ろしさを知ってもらうことが医師としての使命であり、虐待を未然に防ぎ、影響を最小限にしていくためには医療や福祉だけでは不十分であるとして、全国各地での講演活動など精力的に取り組まれております。
 マルトリートメントは「子どもへの不適切な養育」のことで、幼児を1人で留守番させることや子どもへの直接的暴力にとどまらず、面前DVによる影響も大きく、躾のつもりで行う子どもへの罵倒・体罰、ネグレクトや子どもへの性的虐待、学校やスポーツクラブなどでの指導者による過度なしごきや体罰なども含まれるとのことです。脳の成長発達が著しい胎児期、乳幼児期、思春期において養育者によるマルトリートメントが脳を変形させ、脳機能を低下させ、その結果、愛着障害や暴力的な衝動が生じる、社会生活が困難になる、ひきこもりになる、薬物依存になるなど、問題が生じるとのことです。
 友田さんは、これらを予防するために早期発見・早期対策・早期治療などの予防対策が重要であると言われる一方、自分の将来像を描く高校や大学の時期にマルトリートメントの正確な知識を普及することが大変効果的だとして、北陸3県の高校・大学で、マルトリートメントが子どもの脳に与える影響について講義をされたそうです。受講した高校生は「自分が親になったときの将来像をイメージできた」、「マルトリートメントで脳が傷つくとは知らなかった」との感想を寄せています。若者は、妊娠・出産して初めて親になりますが、突然親になるため子どもとのかかわり方がわからない。スキンシップの大事さや、視線を合わせて子育てをすることの大切さとともに、脳科学の研究成果に基づく講義を行って、大変効果的だと伺いました。
 そこで伺います。
 本府府立高校等ではデートDV等について啓発する授業などもあるようですが、虐待が脳に与える影響等の問題も取り上げてはいかがでしょうか。
 また、新年度予算で産後ケア従事者に対する妊産婦のメンタルヘルスケア等の研修経費が計上されましたが、母子手帳などでの広報、また妊婦検診や母親教室などでの活用、保健師、教職員、子育て支援などにかかわる専門職における啓発・研修が必要と考えますが、いかがでしょうか。
 次に、ひきこもりなどの予防のために必要な発達障害児への切れ目ない支援についてです。
 市町村では、順次、子育て世代包括支援センターが整備されております。
 こうした中、長岡京市では、2016年から市役所の医療健康推進室の一角に専任の助産師さんによる子育てコンシェルジュ相談窓口を開設し、支援が必要とされる家庭には保健師による定期的な家庭訪問につなげて妊婦さんの支援を行っております。発達障害が疑われる子どもへの継続的な支援のために発達支援ファイル、そしてリンク・ブックをつくられました。リンク・ブックは、家族あるいは本人が支援やアドバイスを必要とする人の成長・発達、家庭生活、集団生活、通院、福祉サービス利用状況などを記録し、保育所や学校の先生、保健師、行政職員、病院等を利用する場合に活用するものです。
 これらについて府下市町村でも取り組まれていると存じますが、これも自治体による取り組みに格差が生じていると考えます。特に財政規模の小さい自治体については、保健師などの専門職を正規職員として増員するなど人材の養成と確保、財政支援の強化が必要と考えますが、いかがでしょうか。
 また、発達障害の早期発見・早期療育のための京都府こども発達支援センター及び花ノ木医療福祉センター、舞鶴こども療育センターなどの発達障害の専門医療機関の体制の充実が必要です。こども発達支援センターでは、この間お医者さんが増員されたものの、発達診断を待つ期間は先ほど3ヶ月、40人以下というお話もありましたけれども、子どもの成長は待てないわけですから、大阪など他府県に行かざるを得ない状況もございます。そして、その後、療育につながるのが1年先、2年先という現状は早期に解決する必要があると思いますが、今年度の増員計画についてお聞かせください。
 次に、家庭児童相談室についてです。
 平成17年4月、児童福祉法改正に基づいて、市町村の第一義的な相談窓口の役割とともに、要保護児童の適切な保護を図るための要保護児童対策地域協議会の事務局の役割も持つこととなったのが家庭児童相談室です。平成29年4月法改正では、家庭や地域における継続的な支援や虐待の防止を行うこととなりました。児童虐待相談が急増しております。
 例えば京田辺市では、平成26年度対応件数が154件であったものが平成28年度対応件数は260件となっております。受理ケース増により、関係機関の調整、検討会の開催、そして準備など家庭児童相談員の負担が大変重くなっておりますが、相談員4名は全員パートや臨時職員であり、その上、病欠や退職などによって相談員が不足し、受理ケースに対する家庭訪問や面談相談等ができなかったケースもあるという現状でございます。一方、家庭児童相談所の相談対応・判断が難しいケースについては、児童相談所京田辺支所に電話をかけるものの、児童福祉司が不在で対応できないことがよくあるとの声が出されております。
 家庭児童相談室に正規でソーシャルワーカーの配置が必要です。市町村からは本府に対して、情報提供や養成、財政面も含めた人材確保への支援とともに、児童相談所の職員増など体制強化及びケースワーク等の資質向上を求めておられますが、これらの要望にどのように応えられますか。お答えください。

◯松村淳子 健康福祉部長  マルトリートメントについてでございますが、マルトリートメントは「不適切な養育」あるいは「虐待」とも訳され、とりわけ子どもを対象としたものについては、暴力、暴言やネグレクトなど明らかな虐待だけではなく、子どもの人格を傷つけるような兄弟や友だちとの比較、育児に熱心な余り行き過ぎた過干渉などが繰り返されることにより、子どもの健全な成長に影響を及ぼすものと言われています。
 これまでから、児童虐待の未然防止・予防という観点から、愛情を持って子どもを育み、命を次世代につないでいくことの大切さなどについて啓発・普及を行ってきております。教育委員会においては、子育て支援団体と連携する中で、平成27年度に作成した子育て学習プログラムに基づき、家族の大切さや子どもを生み育てる意義について学ぶ体験プログラムなどを府立高校の9割を超える51校で実施しており、平成30年度には中学校でも展開する予定です。また、市町村においては、子どもへの接し方、抱っこや沐浴などを学ぶパパママ教室や親子講座等を実施しています。さらに保健所においては、発達障害等、特性に応じた対応を必要とする子どもと保護者に対して、子どもの行動への理解や褒めて叱る育児のコツなどを盛り込んだペアレントトレーニングや母子カウンセリング事業を取り組んでいるところです。
 加えて、来年度から、児童虐待等未然防止のため、産科スタッフなど産後ケア事業従事者に対するメンタルヘルスケアなどの研修に係る予算を今議会でお願いしているところです。
 今後とも、引き続き、市町村や教育・保育団体、医療団体等の関係団体と一緒に子どもの健やかな育ちを支えてまいりたいと考えております。
 次に発達障害や児童虐待対応相談の拡充についてでありますが、母子保健と子育て支援をワンストップで相談・支援する子育て世代包括支援センターについては、京都府では、その立ち上げや運営支援、担い手となる人材としての産前産後ケア専門医や訪問支援員の養成など市町村の支援に取り組み、昨年12月末現在、20市町村でセンターが設置されているところです。設置されていない小規模な町村においては、保健師などが全ての子育て家庭を把握し、既に母子保健と子育て支援が一体となってきめ細やかなサービスが提供されているところです。
 引き続き、地域における課題や地域資源等を丁寧に聞き取る中で、市町村の実情に応じた、妊娠、出産から子育てまでの切れ目のないサービスが提供されるよう支援してまいります。
 次に府立こども発達支援センターについてでございますが、発達障害の認知が進む中で保護者の専門医に診てもらいたいとのニーズの高まりもあり、平成28年末においては8から9ヶ月程度の待機をお願いしていた状況です。この状況を改善するため、今年度、診療体制の充実強化を図り、専門医の増員を行ったところ、平成29年末には40名を切り、3ヶ月程度の待機と、大幅に短縮いたしました。
 引き続き、発達障害の基礎知識や外来での対処方法などについての研修を実施するとともに、発達障害の診断のできる医師の養成・確保に努め、早期に必要な支援につながるよう施策を講じてまいりたいと考えております。
 また、療育につきましては、市町村が実施する乳幼児健診や5歳児のスクリーニング等で療育が必要と判断された乳幼児に対しては速やかに開始されているところでございます。
 次に家庭児童相談室についてでございますが、昭和39年の旧厚生省の通知に基づき、家庭児童問題の総合的な窓口の設置を市に求められ、府内全ての市において地域の状況に応じて運営されており、児童福祉法の改正による平成16年度からは要保護児童対策地域協議会の調整機関を担っていただいているところです。このため、京都府では、家庭児童相談室の相談員を含め、市の職員に対して、児童虐待などのさまざまな家庭問題に適切に対応できるよう、児童福祉司の任用資格取得などの家庭問題対応力向上研修を実施するなど、人材確保・育成の支援に取り組んでいるところです。
 また、児童相談所の体制強化につきましては、増加する児童虐待に対応するため、一層の体制強化を図ることとし、虐待対応協力員の増員に係る予算を今議会でお願いしているところです。
 児童相談所の対応力向上のため、経験年数に沿った体系的な専門研修や課題対応型の研修を実施するとともに、スーパーバイザー研修を初めとする全国的な研修に順次派遣するなど、手厚く児童相談所職員の資質向上に努めているところです。

◯島田敬子議員  マルトリートメントについて、私は看護師として医学教育等も勉強したからでしょうか、脳科学の側面から具体的に脳が傷つくというこの研究成果が非常に深刻だと思ったんです。これは本当にその後のいろんな事例につながるわけで、その点を今いろいろやっておられる事業の中に組み込んではいかがかということで要望したわけであります。検討いただきたいというふうに思います。
 先日も、本会議の知事答弁で、「児童虐待件数が3年で1.5倍になった。初期対応等の効果のあらわれであり、一時保護等が必要な重度のものは減少し、中等度、軽度のものは2倍にふえた、そして家庭内での面前DVが繰り返される等の心理的虐待がふえている」と答弁がございました。
 マルトリートメントという視点に立ちますと、けがをするような暴力にとどまらず、面前DVも含めて心理的な虐待が子どもの心を傷つけ、脳の変形や萎縮まで来し、発達障害やうつ病などの精神疾患を誘発して、ひきこもりなどに追い込まれていくということを考えるべきだと。そして、子どもたちへの重大な権利侵害であるということをまず認識すべきであり、その認識に立つならば、必要な相談体制の整備を怠ることは許されないと思うわけであります。
 児童相談所の体制について、虐待対応協力員は、非常勤2名の増員にとどまらず、専門職を正規職員で増やして児童相談所体制の強化をすべきだと私は申し上げております。市町村の体制強化への支援をさらに強化することが必要ですが、スクールソーシャルワーカーも家庭児童相談員も、それから就労支援相談員など、専門職でありながら大体皆さんは非常勤待遇。だから定着しないし、継続的な支援につながらないという問題もあるわけですね。このような大事な市町村の事業に財政支援も含めて支援をしなければ、スローガンだけではいかないということを私は思うわけであります。
 発達障害者の相談、早期の療育の問題について、市町村は頑張っていますが、先ほど指摘もございましたけれども、やっぱり縦割り行政はまだ続いています。こうした問題も含めてみずからの仕事の中身については真摯に検証いただきまして、体制の整備も含めまして強力に取り組んでいただくことを求めて質問を終わります。
 ありがとうございました。