◯島田敬子議員 日本共産党の島田敬子です。さきに通告しています数点について、知事並びに関係理事者に質問いたします。
まず、医療保険制度改革問題です。
「いつでも、どこでも、誰でも、お金の心配なく、安心してよい医療が受けたい」というのは住民の当たり前の願いです。ところが歴代政府によるたび重なる医療保険制度の改悪は、この願いをことごとく踏みにじってきました。
5月27日には医療保険制度改革法案が成立いたしました。入院給食費や大病院外来受診時の負担増、後期高齢者医療保険料の値上げ、協会けんぽへの国庫補助削減など、老いも若きも負担増のオンパレードでございます。加えて、市町村国保の都道府県化や医療費適正化計画の見直し、混合診療に道を開く「患者申出療養制度」の創設等、国庫負担を抑制しながら保険者、自治体を医療費抑制へ駆り立て、「医療の産業化」の名で保険会社や製薬企業の利益を最優先にするもので、国民皆保険制度の根幹を掘り崩すものです。この重大法案を衆参合わせてわずか37時間という短時間で、十分な審議もなく採決を強行したことは重大です。審議では全ての野党から問題点の指摘が相次ぎ、附帯決議が19項目もつくなど、問題だらけの法案です。
さらに、この22日に発表された骨太方針(素案)では、2016年度からの3年間を集中改革期間とし、「社会保障は歳出改革の重点分野である」と明記されました。今後予想される社会保障費の自然増分を3年間で9,000億円から1兆5,000億円規模の削減が必要とされ、介護保険の軽度者向け給付の切り捨てや病床の削減、外来受診の抑制など、具体的な削減策を列挙いたしました。医療も介護も給付抑制と負担増という政策を一層強力に推し進めるもので、断じて許されません。
質問に入ります。医療保険制度関連法の1つ1つが重大ですが、今日は数点について質問いたします。
1つ目は、入院給食費の引き上げについてです。
現在1食260円の負担を段階的に460円まで引き上げるものです。1日600円の値上げ、30日入院すれば4万1,400円へはね上がります。京都府保険医協会が168の会員病院に行った調査では引き上げ方針に約8割が反対され、その理由として「食事は治療の一環である」「患者負担をこれ以上増やすことに無理を感じる」「患者の中には食事を断る人も出てくる可能性があり、持ち込み等の増加で栄養管理や衛生管理が難しくなる」というものです。知事は、こうした現場の懸念をどのように認識しておられますか。国に対し、撤回を求めるべきではありませんか。お答えください。
2つ目には、紹介状を持たず大病院を受診した場合に従来の自己負担に加えて、最大で1万円の定額負担が義務化されることです。難病連等患者団体からは「難知性疾患患者は症状があっても原因が分からず、多くの患者は診断が確定するまで何ヶ所もの病院を回ることも多い。専門医がいる病院は大病院である場合が多く、患者家族の経済的負担をさらに重くするのみならず、患者の受診機会を奪うもの」と怒りの声が出されております。国に対して撤回を求めるべきではありませんか。また、府立医科大学附属病院等における本府の対応はどのようにされますか。お答えください。
3つ目には、国民健康保険の都道府県一元化についてです。
国保料や税の負担増が懸念されております。昨年6月時点で京都府内市町村国保の滞納世帯は4万8,946世帯で加入世帯の12%に上り、窓口で10割を負担しなければならない資格証明書を渡された世帯は5,196世帯となっています。全日本民医連が実施した経済的自由による手遅れ死亡事例調査では、「会社退職後に高過ぎる国保料が負担できず、無保険で受診ができず、癌で手遅れ死亡」「保険料を滞納し、保険証が窓口留め置きになり、医療費が心配で手遅れ死亡」等で56人が死亡したと報告されております。
こうした事態を生まないために国民健康保険料の引き下げが必要です。全国知事会としても「協会けんぽ並みの保険料負担率まで引き下げるべきで、そのためには1兆円が必要」とし、国へも要望されてこられましたが、今回、国からの市町村国保への追加公費は今年度1,700億円、平成30年度には3,400億円とされまして、到底足りません。1984年度には市町村国保の総収入に占める国庫支出金の割合は50%あったものが、現在では25%以下へ半減してきたものです。国に対して国庫負担の抜本的増額を求めるとともに、本府として保険証の取り上げなどの滞納対策強化をやめるべきです。
平成30年度から都道府県が財政運営の責任主体となりますが、府は市町村ごとの納付金決定や標準保険料等の設定を行うとともに、市町村は被保険者証の発行、保険料率の決定、賦課徴収を行います。
そこで伺いますが、市町村はこれまでどおり住民負担軽減のためのきめ細かな保険料率の決定や軽減策等、一般会計からの繰り入れも必要だと考えますが、いかがですか。
さらに国民健康保険の都道府県一元化は都道府県を司令塔にして、医療保険財政と医療提供体制の両面から医療費を抑制することにあると考えます。
15日の内閣官房の専門調査会が、高齢化のピークとされる2025年に必要な医療機関のベッド数は115万床から119万床程度で、高齢化で必要と見込まれる152万床の約2割に当たる37万床から33万床を減らすべきだとする報告書をまとめました。30万人程度は在宅へ移行するなど、患者追い出しによって医療費削減を進める内容です。
京都府においては0.1%の削減率とも報道されました。13日の京都新聞の社説では「地域ごとに医療事情は異なり、在宅医療の受け皿が不十分なまま機械的に病床削減を押しつけるなら地方の医療体制を崩しかねない。慎重な議論を求めたい」と報じました。
2015年1月9日、全国知事会は「医療費適正化の見直しに係る緊急要請」を行いました。その中で「推計値にすぎないようなものを目標として設定しても、都道府県は結果責任を負うことは困難であり、一度目標を設定してしまえば、それが一人歩きして、さまざまな場面で都道府県を拘束する懸念がある」「医療費の見通しを目標として見直すのは反対だ」「特定検診・保健指導の実施率や平均在院日数等、現在、任意の記載事項の義務づけを強化することは認められない」としてこられましたが、今もその立場に変わりありませんか。
都道府県が策定する医療費適正化計画に医療給付費の目標を明記し、地域医療構想による病床削減とリンクさせ、新たに導入する都道府県国保運営方針も適正化計画と整合させるよう義務づけていますが、強力な医療費削減の仕組みづくりにどのように対応されようとしておられますか。お答えください。
◯山田啓二知事 島田議員の御質問にお答えいたします。
医療保険制度改革についてでありますけれども、国保がなぜ都道府県に移管されれば、国民健康保険料や税の負担が増えるのかというのは仕組み的には全くナンセンスな話でありますので、そのことは申しておきます。
そして、少子高齢化社会の中で、これから1,500人の町、または2,000人の町で今までのように健康保険制度を営むというのは多分難しいと私は思っております。保険ですから、ある程度のロットがないと安定した財政運営が行えないというのはもう常識の話でありまして、このためにやはり都道府県が引き受けざるを得ないだろうということは、広域団体としての責務から仕方なかったと私は思っております。
ただ、それだけではなくて、もはや市町村単位による国保の運営は一般会計からの繰り入れも限界を迎えてきているわけであります。こうした点も解決しなければならないということで、国に対して抜本的な財政基盤の強化を求めていき、ようやく都道府県に移管するという前提で、先ほどお話がありましたように3,400億円の財政支援を取りつけてきたわけであります。これによって、とりあえず法定外繰入額はカバーできる形になっているということでありまして、その点から、今、都道府県に移管することが国保財政の安定に大きな役割を果たしていることは認めていただきたいと思います。そして、このうちの1,700億円は低所得者対策として、今年度から保険料の軽減対象となる低所得者数に応じた自治体への財政支援を大幅に拡充するものになります。
さらに国保法改正に当たりましては、国が国民健康保険制度の堅持に最終的な責任を持ち、改革後も国保の持続可能な運営を確保する観点から、さらなる財政措置も含めて検討を加え、必要な措置を講ずる旨の確認を取りつけているところであります。
そして、滞納対策につきましては保険制度でありますから、被保険者の負担の公平性を確保することからも、ちゃんと滞納対策をとっていくのは当たり前の話であります。ただ、一方で、一律的・機械的な対応にならないように、市町村に対しては滞納の状況を踏まえた納付相談などを通じ、滞納の理由や生活実態を十分把握した上で、個々の実情に応じたきめ細やかな対応を行うように助言・指導をしているところであります。
また、市町村が引き続き被保険者証の発行などの資格管理や保険料率の決定、賦課徴収を担うこととされておりまして、一般会計からの繰り入れも市町村の判断で可能でありまして、柔軟な制度になっていますが、これは実は市町村側からは大変不満が出ております。市町村側としては全て都道府県に投げたかったわけでありますけれども、私どもとしましては市町村にも応分の責任を持っていただきたいということで、制度としてはいい方向で決着をしたのではないかなと思っております。
また、医療費の適正化についてでありますけれども、今後も高齢化で病院にかかる人が増え、医療費の増加が見込まれる中、何をもって適正な医療費とするのか、知見や共通認識がない中で拙速に適正化を求めると医療費を抑制することにしかならないことについては、先ほどから御指摘のように懸念を表明してまいりました。これはまさに私が全国知事会長として全国知事会の意見をまとめてやっているわけであります。そのため、新たに保険者に加わる都道府県が市町村と役割分担を行い、体制を整えた上でリーダーシップを発揮し、保健事業の推進や医療費の分析をしっかり行うなど、合理的かつ効率的なものにしていくことが重要でありまして、京都府もその責任をしっかりと果たしていく考えであります。
そのためには京都府が責任を持てるだけの権限が必要であります。医療費については診療報酬の設定などの権限は国が担っており、都道府県が管理できる要素は非常に限られている状態でありますので、次期医療費適正化計画の策定に当たっては医療費の推計や目標を定める医療費適正化基本方針を国が策定する過程において、都道府県と十分協議の上、同意を得るよう、今、求めているところであります。
将来にわたり全ての国民の皆様が必要なときに適切な医療を安心して受けられるように、医療ニーズの変化を踏まえた提供体制の整備、そしてそれを支える保険制度を持続させるためにどういう形で保険料負担と税負担とのバランスをとるかということがこれからも大きな問題でありますけれども、いずれにしろ、税にしろ国民健康保険料にしろ、国民負担の上にしか成り立たないものであります。そうした点を踏まえて、できる限り適正に行っていくことも考えながら、我々も努めていきたいと思います。
その他の御質問につきましては、関係理事者から答弁させていただきます。
◯松村淳子 健康福祉部長 医療保険制度についてでありますが、入院時食事療養費は、現在、食材費のみの負担となっており、在宅療養や療養病床の入院との公平化の観点から、調理費相当額を含めて同額となるよう段階的に引き上げられるものであり、持続可能な医療保険制度を構築し、国民皆保険制度を守るための見直しの一環であります。
見直しに当たっては低所得者や難病、小児慢性特定疾患の患者は現行どおり据え置かれることとされており、国では今後、見直しの趣旨も含め、医療関係者や患者の理解を求めていくこととされています。実施に際し、医療の現場で混乱が生じないように十分周知が図られるよう、国にきめ細やかな対応を求めてまいります。
次に、紹介状なしで受診する場合のいわゆる初診時選定療養費については、病院と診療所の機能分担を進め、地域の限られた医療資源の効率的活用や病院勤務医師等の負担軽減に効果があることから、現在も国に選定療養の届け出を行っている200床以上の病院で徴収されているところです。来年度から国が定める一定の要件に該当する病院は原則定額の料金を患者に求めることとされておりますが、徴収金額や対象病院、定額負担の対象とならない症例などの詳細は、今後、国において検討されるところであります。
京都府内の医療資源は地域により大きく異なることから、特定診療科の医療機関がなく、大病院を受診せざるを得ない場合は対象外とするなどの措置の検討も必要であります。このため、患者の状態に応じ、必要なときに適切な医療を受けられるよう、医師会や病院団体などから意見をお聞きした上で、国への提案等、必要な対応を行ってまいります。
なお、現在、府立医科大学附属病院における初診時選定療養費につきましては3,150円、北部医療センターでは2,100円をお支払いいただいております。今後につきましては、国の動向を注視しながら対応してまいりたいと考えております。
◯島田敬子議員 御答弁ありがとうございます。
お金がないとまともな治療が受けられず、健康と命の格差をますます広げる医療保険制度改革法の強行は国民に不利益しかもたらしません。制度を持続しても、国民の命や暮らしが継続できないではありませんか。高過ぎる国保料の問題と高い窓口負担の解決のためには都道府県一元化は逆行そのものです。全国知事会は1兆円の国費投入も要望されましたが、今回は3,400億円でした。国保加入者1人当たり3万円の保険料の軽減が1兆円でできるのです。大改革というなら、まずこれを先にやるべきでありまして、定率の国庫負担としての抜本的増額を求めていただくことは要望しておきたいと思っております。
一般会計からの繰り入れは可能という御答弁でございましたので、その立場で対応されるよう求めておきます。
入院給食費の患者負担について、難病患者や低所得者は据え置きということですが、難病患者には、この1月、医療費の自己負担が拡大されておりまして、大きな負担になっています。病気そのものとの厳しい闘いが余儀なくされる癌の患者、難病指定されない患者、心臓病の子どもたちなどがたくさんおられますが、入院給食費は高額療養費の対象ともならず、深刻な受診抑制が広がることは必至です。「給食は治療の一環であって、そもそも保険から外すことが大問題。在宅と公平と言われますが、公平性と言うなら、在宅療養者に管理栄養士による食事・栄養管理等を充実するべきだ」というのが栄養士会の意見でありまして、この点も国へ要望していただきたいと考えております。
紹介状なしの大病院受診の定額負担は、全国医学部長病院長会議の調査で「現在の選定療養費の導入病院でも外来の機能分化という当初の目的効果が見られず、過度な患者負担により患者の受療権を奪うもので、義務化に反対」という声を上げておられます。政省令あるいは診療報酬改定作業はこれからであり、今、国に求めていきたいということでありましたので、ぜひ患者、医療関係団体の声を国へ届けていただきたいと強く要望しておきます。
地域医療構想策定については本府の国への政策提案でも、入院患者の行き場がなくならないよう、地域の実情を十分踏まえた柔軟な対応の検討、慎重な対応を求めておられます。その立場で、医療難民・介護難民を広げてきた病床削減、負担増などによる患者追い出しを現場に強いることのないよう、現場の声をよく聞いて、必要な医療提供体制の維持・拡充のために御努力いただくことを求めて、次の質問に移ります。
医療・社会保障の抑制のツールの1つとして挙げられている社会保障・税の共通番号、いわゆるマイナンバー制度に関連して何点か伺います。
諸外国を見てみますと、官民分野で共通番号を用いるアメリカでは成り済まし被害が深刻で、2006年から2008年の成り済まし犯罪は1,170万件、被害総額は1兆300億円にも上り、韓国では人口の約3倍にも上る個人情報が流出し、クレジットや銀行口座が盗まれるなど犯罪の温床になっていることから、見直しが図られ、官民共通番号を廃止する動きもあります。
こうした中にもかかわらず、2013年5月、マイナンバー法が自民党、公明党、民主党、維新の会などの賛成で成立いたしました。日本共産党は、国民一人一人に生涯不変の個人番号をつけて個人情報を容易に照合する仕組みをつくることはプライバシーの侵害や成り済まし犯罪が常態化する危険があり、初期投資3,000億円ともされる巨額のプロジェクトにもかかわらず、その具体的なメリットも費用対効果も示されないまま新たな国民負担が求められること、税や社会保障の分野では徴税強化や社会保障給付の削減の手段とされかねないことを理由として反対してまいりました。その指摘が現実のものとなっています。とりわけ、この間の日本年金機構の125万件に上る個人情報流出問題ではマイナンバー制度導入への不安が広がっております。流出の原因は、日本年金機構に送りつけられた、いわゆる「標的型メール」に添付されたファイルを開封することにより、年金受給者の基礎年金番号や氏名、生年月日、住所が流出したものです。とうとう神奈川県の女性が300万円を騙し取られる事件も起こりました。
マイナンバー制度は、今回流出した年金情報を含む社会保障と税などの膨大な個人情報を国と自治体が一元的に把握・活用するものです。甘利社会保障・税一体改革担当大臣は、6月5日の記者会見で、日本年金機構の情報流出事件を受け、「マイナンバー制度と年金機構との情報連携は事件の検証を踏まえて導入時期を考えたい」と述べる一方、制度そのものに関しては、「今年10月からの個人番号通知、来年1月からの利用開始のスケジュールはそのまま進めていく。影響はない」などと強弁しています。
今回の流出を初め、ベネッセや最近では東京商工会議所の会員企業1万2,000件を超える情報流出など、民間企業の情報漏えいも相次いでいます。政府機関や企業など特定の標的を狙ってウイルスに感染するメールを送りつけて機密情報を盗み取ろうとするサイバー攻撃は、昨年1年間だけでも1,700件が確認されております。霞ヶ関では標的型攻撃メールの訓練が行われた際、1割の職員がファイルを開封してしまったそうです。本府でも同様の訓練が行われておりますが、誤って開封する職員が何人もいたそうです。
11日の参議院内閣委員会で我が党の山下芳生議員が、「情報漏えいを防ぐ完全なシステムの構築は不可能であり、意図的に情報を盗み取る人がいること、また一旦漏れた情報は流通売買され、取り返しがつかない事態になること、情報は集積されればされるほど利用価値が高まり、攻撃されやすくなる等の危険性がある」と指摘し、菅官房長官の認識をただしました。菅官房長官は、「そういうものであるということを基本に防御体制をつくることが大事だ」と述べるなど、山下参議院議員の指摘を事実上認める答弁を行いました。
この際伺いますが、知事はこれまでの議会で「マイナンバー制度を進化させる」と言われてきましたので、今回の事態をどのようにお考えでしょうか。まず伺います。
また、マイナンバー制度へのシステム対応が完了した官公庁や民間企業は4%という調査結果もあるなど、その準備は大きく遅れているのが現状ではないでしょうか。京都府及び府下市町村の状況はいかがでしょうか。伺います。
従業員を雇うなど個人のマイナンバーを扱う事業主は、全て個人番号関係事務者としてマイナンバー運用の義務を負うことになります。従業員本人はもちろん、配偶者、扶養家族、アルバイトも含めた雇用者の膨大な番号を厳格に管理することが求められておりますが、厳しい経営を迫られている小規模事業者にシステムの更新や整備の費用、人的体制確保が重い負担となってのしかかっているのです。マイナンバー増税だとの悲鳴が上がっています。
一方、国民にとってはどんな利益があるでしょうか。政府はマイナンバーがあれば、公的年金の申請の際、多くの書類をそろえる手間が省けると宣伝していますが、多くの人にとって年に1度あるかないかの手続です。これまで医療、年金、介護、雇用の情報、納税や給与の情報はそれぞれの制度ごとに管理され、それぞれ共通番号もネットワークシステムもなく運営されているのです。個々の事務を検証していくと、実際にネットワークシステムを活用できるのはほんのわずかであり、そのわずかな効率化のために中小企業には大きな負担を負わせ、国民には個人情報の漏えいや悪用などの重大な不利益を与え、複雑な仕組みで巨額のコストがかかるシステムが本当に必要なのでしょうか。
そもそもマイナンバー法の狙い・目的は、一人一人の社会保障の利用状況と税の納付状況を国が一体で把握する仕組みを整え、社会保障の抑制・削減を効率的に進めることにあります。国民のプライバシーを侵害し、中小企業にも大きな負担と困難を広げ、国民にとっても利益がほとんどないマイナンバー制度は中止すべきと考えますが、いかがですか。
少なくとも10月からの実施を中止し、年金情報流出問題などの教訓を踏まえ、現状をしっかりと検証すべきではないでしょうか。個人情報の徹底した分散管理と徹底した個人情報の保護対策強化こそが必要と考えますが、いかがですか。お答えください。
最後に、マイナンバーで情報連携を行うこととなる本府の情報システムとセキュリティー対策について伺います。
平成24年度の包括外部監査では、IT推進本部は平成18年8月に開催されて以降一度も行われておらず、情報セキュリティーの根幹とも言うべき基本方針、対策基準、実施手順の重要な事項の遵守が十分でないことが指摘されております。監査結果を踏まえた改善の取り組みが行われておりますが、どのような対策を講じられておりますか。また、今回の年金情報流出問題を受けて、本府の課題はいかがでしょうか。お聞かせください。
◯志田文毅 総務部長 マイナンバー制度についてでございますが、この制度は社会保障・税制度の効率性・透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するための社会基盤であります。この制度の導入によりまして、社会保障や税等に関する申請の際、添付書類が不要となったり、また国民一人一人のポータルサイトに行政機関から利用可能なサービスを積極的にお知らせし、真に困っている方々をきめ細かく支援できるなど、国民にとっても極めて大きな効果が期待されるところでございます。
一方で、個人情報について懸念の声があることも承知をしております。そのため、まず制度面におきましては他人による成り済ましを防止するため、厳格な本人確認が法律で義務づけられております。また、個人情報保護の客観性・実効性を担保するため、同じく法律で地方公共団体等に情報漏えい等のリスクの分析とその対策を義務づけており、さらに本府におきましては、さきの2月定例府議会でお認めいただきました条例に基づきまして、独立した第三者機関、すなわち京都府個人情報保護審議会によります評価・点検も実施しております。このようにマイナンバー法や条例に基づく対策をしっかりとることとしております。
また、システム面におきましても、個人情報の連鎖的な漏えいを防止するため、二重三重の対策を講ずることとしております。現在は来年1月の制度開始に向けまして、府庁はもとより、府内市町村においても必要なシステム改修や個人情報保護措置等を実施するなど、準備作業を鋭意実施しております。また、源泉徴収票の作成等で従業員等のマイナンバーを利用する民間事業者につきましては、こうした事務に関係する団体や税務署等の関係行政機関等が制度周知を行い、また説明会の開催なども行ってございます。このように円滑な導入に向けた取り組みを進めておるところでございます。
以上のように、国、地方、民間が協力して制度導入に向けた準備を進めておりまして、府といたしましても、府民に対する制度の周知、あるいは府職員に対する情報管理の徹底など、マイナンバー制度の開始に向けました取り組みをさらに強化してまいります。
◯畑村博行 政策企画部長 今の答弁を伺っておりますと、情報漏えいを防ぐ完全なシステムの構築は不可能であるという認識に立って、府民の大切な個人情報を預かる自治体として、もう少し危機意識を持って今後の対応に当たるべきだと思っております。特定個人情報保護評価書は日本年金機構もこの3月に作成済みでしたが、情報流出は防げなかったわけです。
それから、中小企業の実態について、現状どこまで設備更新等がされたのかということを実数でつかんでいたら御答弁いただきたいと思っております。
年金情報の流出の検証も対策も進んでおりません。この10月からの番号通知を延期するよう求めるとともに、制度そのものを廃止すべきだと指摘・要望をしておきたいと思います。
本府の情報セキュリティー対策については、行政、人事、総務等8つのシステム全てが外部委託でございます。外部事業者における規程の未整備、USBの未承認使用、電子メールによる大量データ持ち出しに関する規程がない、委託業者に対する京都府の監査がされていないなど、重大な問題が指摘されております。委託業者が雇用する人の名簿の管理もできておらず、年金機構で起こったことが本府で起こらないと本当に言えるでしょうか。今お取り組み中だと思うのですけれども、あくまでそういう立場で住民の情報をしっかりと守るためにも対策の強化を求めて、質問を終わります。
ありがとうございました。