川本正彦(リニアを考える愛知県連絡会代表・春日井リニア新幹線を問う会事務局帳)『大深度地下法は憲法違反』――京都民報2019年6月23日

 リニア中央新幹線や整備新幹線の工事で、愛知県内をはじめ全国で多くの問題が発生しています。リニアに賛成の人も巻き込みながら、住民生活への影響について情報を発信しています。
 配慮書で、北陸新幹線延伸の目的には、
「東海地震などにより影響を受けると想定されている東海道新幹線の代替機能を担う」
としていますが、これはリニアも同じことが揚げられています。そもそも代替の高速鉄道がなぜ2本も必要なのでしょうか。
 そして最小曲線半径は4000mで「なるべく直線となるよう計画」しているのもリニアと同じです。自然環境や都市部などで本来避けるべきものを、避けられずに影響を与える恐れがあると思います。
 京都市などは大深度地下特別法により地下40m以深を通過することが検討されています。一般的に、土地所有者の地下を使用する場合、地権者の了解や補償などが必要です。しかし大深度地下法では、土地所有者に無断・無補償で地下を使用することができます。この法律自体が、事業者が地下を開発しやすくすることを目的としており、憲法29条に定められた財産権の保障に反します。大深度地下工事が進められている東京の外環道路をめぐる訴訟では、同法の違憲性について争われています。

・地下水湧出で工事が中断中

 そしてトンネル工事の際に発生する地下水への影響も問題です。名古屋市内の県庁のすぐそばにあるリニア中央新幹線の「名城非常口」掘削作業で、大量の地下水が湧き出たため、昨年12月から工事が中断しています。非常口は直径約40mで、深さ約50mまで掘り進めた地点で地下水が湧き出たため、現在止水工事が行われています。
 長崎県でも、九州新幹線長崎ルートのトンネル工事で、農業用水が枯渇するなど問題になっています。静岡県でもリニア計画によって大井川の水量が減少することが判明し、県が建設主体のJR東海と対立しています。
 環境を破壊するリニア建設を止めようと全国で738人が原告となり、2016年からストップ・リニア訴訟をたたかっています。愛知県ではリニアルートでの影響を明らかにして、地域住民に知らせながら運動を展開しています。全国の新幹線計画をめぐり起こっている問題も共有しながら、住民に知らせていくことが必要だと思います。