○西脇郁子議員 日本共産党の西脇郁子でございます。議員団を代表しまして、先に通告しました4点について知事に伺います。
はじめに、新型コロナ感染症によりお亡くなりになられました皆様に心からお悔やみを申し上げますとともに、このたびの福島県沖で発生しました地震につきまして、心からお見舞いを申し上げます。
それではまず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策について伺います。
昨年12月、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の重症患者を受け入れてきた京都府立医科大学附属病院等府内14の病院長は、二度にわたり医療病床が逼迫していると緊急声明で訴えられ、今なお医療や介護の現場では、必死で患者の命と向き合っておられます。今回の事態を招いた大きな原因は、これまで国と京都府が一体となって行ってきた医療費抑制等にあり、その責任が問われています。新型コロナ感染症(COVID-19)で本来助かる命が助からないという新たな段階に到達している中、今後誰一人として府民の犠牲者を出さないという、知事としての強い決意と行動が求められているのではありませんか。
1月初め、京都府は、新型コロナウイルス感染者の受け入れ可能な病床は720床、うち重症86床、高度重症30床であると広報されてきましたが、1月19日、確保病床は半数以下の330床、高度重症病床は38床に訂正されました。京都府として、正確な情報の広報、医療機関との情報共有と連携が必要なのは言うまでもありません。また、京都府が指定された「診療・検査医療機関」や検査・受診が可能な医療機関リストを、各医療機関の合意を前提として地区医師会に提供し、地域ごとに情報共有が可能となるようにするべきと考えますがいかがですか。
次に病床数の確保について伺います。重症者を受け入れている病院では、患者の症状が改善しても転院先がなく、新しい重症病床の確保が困難な事態が続いてきました。本府は、福祉タクシーを利用して転院促進を行なう計画ですが、今後の感染拡大も想定して、まずは転院先の確保、同時に自宅療養者の健康観察の仕組みが必要です。そのためにも医療機関や福祉施設などとの連携と役割分担がいっそう重要です。
東京都八王子市では、東京医科大学八王子医療センター救命救急センターが中心となり、地域の医療機関や介護施設とのネットワークを構築して、発症から10日以上経過して症状が落ち着いた患者の転院等が徹底されています。京都でも病床確保のために、本府が中心となり、地区医師会や介護施設、保健所等による連携が進むよう支援するべきではありませんか。
次に、在宅支援と高齢者施設等での感染防止対策、医療や介護事業所等の財政支援について伺います。1月11日には施設療養者110人、自宅療養者234人、調整中786人で、1月30日には自宅療養者が779人と急増いたしました。年末年始には、感染者2人が、入院先が見つからないまま自宅療養中に亡くなられるという事態が起こりました。2月16日の自宅療養者は358人と減少したものの、新型コロナ感染症は軽症でも自覚症状がないまま急変することが特徴だと言われていますので、本来ならば病院で保護、観察、必要な治療を提供しなければなりません。京都府による、希望する自宅療養者に対するパルスオキシメーターや食料品などの民間宅配事業者による配送や、京都市を含む府内保健所や地区医師会などが協力して経過観察等を行う仕組みの分担を始められたところですが、速やかな本格実施が必要です。
同時にこの時期だけでも、市町村や開業医さん等と連携し、府民に対する身近な対応や職員の機動力強化等の観点から、保健所の配置等をサテライト機能化することによる現場対応力の強化が必要だと考えますがいかがですか。
また、高齢者施設でクラスターが相次いでいることから、厚労省は2月4日、緊急事態宣言を発出している都府県に対しまして、3月までに職員のみPCR検査を行うよう通知しました。本府では、宇治市内の高齢者や障害児・者の入所施設の全ての職員に1回のみにとどまっており、府内全ての高齢者施設等の新規を含む利用者、職員等を対象としたPCR検査を公費で実施するべきではありませんか。また、コロナ禍で経営が厳しくなる中、全ての医療機関や高齢者介護施設に対する減収補てん等、新たな支援策の具体化が必要ではありませんか。
次に、コロナ危機の下での中小事業所への緊急支援と雇用について伺います。
これまでも中小零細事業者は、消費税の相次ぐ引き上げや大型店の進出等により、多大な犠牲を強いられてきました。その上新型コロナ感染症が、国と京都府・京都市が一体で推進してきたインバウンド観光を直撃し、未曾有の窮地に陥っています。
共産党府議団が、2020年9月から12月末までに12回実施した、ハローワーク前の雇用・暮らしのアンケート・相談活動の中でも、10月以降、コロナ禍による「解雇」「給与・賞与の減少」が増加するなど、雇用環境の悪化が明らかになりました。さらに緊急事態宣言の下で、ほとんどの事業所が売り上げの大幅減となっています。その中で共通して求められているのは、業者の実情に応じた直接給付です。
先日お会いした、京都中央卸売市場の全魚類卸協同組合の理事長さんからは、飲食や旅館・割烹の顧客中心の仲卸業者は4・5月期、売り上げ5割減が60%以上で8割から9割減もあること、市場の仲卸業者は、市場法により魚が売れなくても市場に来た魚を仕入れなければならないことや、休業ができないことが業者が苦しむ要因になっていること、持続化給付金は赤字の補填でひと月でなくなり、コロナの特別融資もほとんどの業者が底をつき、業者
によっては毎月数100万円から1000万円以上の赤字だということでした。安定供給という京都中央卸売市場の公的機能を存続させるためにも、これ以上廃業者は出せない、コロナの影響を受けた業者の損失に応じた直接支援がどうしても必要だと、切々と訴えておられました。
また、制度融資の据置期間について、京都信用保証協会の2020年12月末までの資料によれば、据置なしが34%、2年以内が15%で、利用者の多くが返済の展望が見えないまま返済開始時期を迎えておられます。営業時間短縮要請協力店舗への協力金は、コロナの影響を受ける府内全ての事業所を支援対象とするとともに、損失に応じた補償となるよう国に支援策の創出を求めるべきではありませんか。また京都府として、中小企業者等再出発支援補助金の再度の実施や、事業所の社会保険料、家賃・水光熱費・リース代等固定費に対する補助制度の創設、制度融資の返済期間延長を行うとともに、金融機関には、柔軟な対応を求めるべきではありませんか。
また、10%もの消費税が事業所の苦境に追い打ちをかけていますが、1月の西脇知事の国への緊急要望には、消費税引き下げについて何も言及がありません。緊急に5%への消費税減税に踏みきるよう、国に求めるべきではありませんか。
次に、非正規雇用労働者への支援について伺います。
宿泊・飲食業・小売業など大きな打撃を受けている業界で働く比率が高い京都で、最も影響を受けているのが女性を中心としたパート・アルバイト・派遣社員などの非正規労働者です。野村総研によると、約90万人のパート・アルバイト女性が、休業手当も払われない「実質的失業者」であり、シフト制の女性労働者の6割が休業支援金制度を知らず、制度を知っていても9割近くが申請しておられません。
休業支援給付金制度は、新たに、大手外食チェーン店等の非正規労働者も対象となります。労働局とも連携し、インターネットやCM等も活用して広く周知するとともに、アウトリーチも含めた相談体制の強化が必要だと考えますがいかがですか。まずここまでお答えください。
○西脇隆俊知事 西脇議員のご質問にお答えいたします。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策についてであります。新型コロナウイルス感染症につきま
しては、府民や事業者の皆様のご協力により、1月中旬以降感染者は減少傾向にありますが、まだまだ収束が見えておりません。府民の命と健康を守るため、引き続き医療提供体制の確保と感染防止対策に最優先で取り組み、国、市町村、医療関係者等「オール京都」が一丸となって、この難局を乗り切るよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。
次に、診療検査医療機関の情報共有についてでございます。新型コロナウイルス感染症の診療検査医療機関は、適切な感染防止対策は取られているかなどの要件を審査の上、都道府県が指定することとなっており、京都府が指定した医療機関につきましては、京都府医師会に情報提供を行っているところでございます。地域における情報共有につきましては、各地区医師会の判断によりそれぞれの方法で行われているところであり、引き続き関係団体と連携し、適切に情報共有がなされるよう調整をしてまいりたいと考えております。
次に、転院促進による病床の確保についてであります。京都府におきましては、病院団体や医師会と連携し、新型コロナウイルス感染症が回復した後も引き続き入院が必要な患者の、転院先病床の確保を図るなどの取り組みを行っているところでございます。また入院医療コントロールセンターでは、陽性判明から勧告解除まで一元的に調整を行っており、転院の促進を図るとともに、介護施設と連携して勧告解除者の受け入れを進めるなど、効果的・効率的な病床運用を行うことで、入院病床の確保に努めてまいりたいと考えております。
次に、保健所の体制強化についてでございます。保健所の執行体制につきましては、これまでから、電話相談や入院調整などの業務を本庁に集約化するとともに、7保健所の相互応援体制などの体制強化を進めることで、専門性と機動性を発揮してきたところでございます。また保健所と市町村との間で感染者に関する情報をしっかりと共有することで、地域の感染状況に応じた注意喚起など、より身近なところで住民に対する広報啓発を積極的に行っていただいているところであります。今後とも市町村との連携・協力体制の充実を図ってまいります。
次に、高齢者施設等におけるPCR検査についてでございます。重症化リスクを抱える高齢者や障害者・障害児への感染拡大を防ぐため、京都府では2月3日から重点的に入所施設の職員を対象とした検査を実施しているところでございます。職員の感染が判明した場合は直ちに疫学調査を行い、利用者に対してもPCR検査を実施することとしており、今後、対象地域を拡大して高齢者施設等の従事者のPCR検査を実施し、さらなる感染拡大の防止に取り組んでまいります。
次に、医療機関や介護施設の減収補てん等についてでございます。京都府ではこれまでから、国に対し、コロナ禍の影響で厳しい経営状況にある医療機関や介護施設に対する支援を繰り返し要望してまいりました。この結果、令和3年4月から特例的な対応として、すべての医療機関に対し外来や入院の診療報酬が上乗せされるとともに、利用者が減少した通所介護事業所等に対し、介護報酬が加算されることになりました。今後とも府民の命と健康を守
るため、関係機関と連携し感染症対策に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
次に、コロナ禍における経済支援についてでございます。
営業時間短縮の要請に対する協力金につきましては、損失補償ではなく、要請へのご協力に対し支給しているものでございます。また事業所の規模に応じた支給の仕組みを設けるよう、国へ要望を行ったところでございます。なお時短や外出自粛で影響を受けている中小企業に対する一時金につきましては、現在経産省で制度設計中でございます。
事業再出発支援補助金につきましては、昨年の緊急事態宣言後、事業者の事業再開にあたっての感染防止対策を支援するものでございまして、約4万社にご活用いただき、京都府内事業所における感染防止対策が進んだと考えております。また、今回の緊急事態宣言に伴う外出自粛等により、大きな影響を受けている観光・伝統・食関連産業には、企業間の連携で知恵を出し合って、なんとかこの難局を乗り越えていただきたいとの思いから、グループで売上確保を目指す取り組みを支援するための予算を提案し、今議会でご議決いただいたところでございます。
固定費の支援につきましては、社会保険料は直接給付を受ける労働者と事業主双方で応分の負担を行うことが基本であると考えております。家賃につきましては、国に対しまして家賃支援給付金の再給付を求めているところでございます。
制度融資の返済期限延長につきましては、これまでから金融機関に対し、中小企業の事業継続が図れるよう、柔軟な対応を求めております。京都府といたしましても、金融と経営の一体的な支援によって、中小企業を下支えするための予算を今議会に提案をしております。今後とも時宜に応じた施策を展開し、中小企業の事業継続と雇用維持のため、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
次に、消費税につきましては、「全世代型社会保障」に必要なものとして、法律で税率の引き上げが行われたものであり、少子高齢化社会における我が国全体の社会保障財源の問題として、国において検討されるべきものであると考えております。
次に非正規雇用労働者に対する支援についてでございます。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大を受け、急増した労働者からの相談対応や各種支援制度の周知を行うため、京都府労働相談所の相談員を増員し、仕事から生活までの幅広い相談に対応するとともに、年末年始も臨時の労働相談窓口を開設することで、きめ細かい支援を実施してまいりました。
また今議会には、今年度から実施している、コロナ禍により経済的影響を受けた方が収入を得ながら訓練を通じて正規雇用を目指す、「京都未来塾」事業を来年度も継続するための予算案や、生活支援等窓口で就業支援のサポートを行うアウトリーチ型の非正規雇用女性就労促進事業を実施するための予算案を提案しているところでございます。
労働者からの相談に対応する中で、国の新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金につきましては、事業主の協力を得られないために申請を諦めるといった事例があったことから、国に対しまして、労働者が支給申請を断念することがないよう、柔軟な制度運用を要望し、申請要件の緩和を実現したところでございます。これを受けて、制度の周知、活用促進を図るため、昨年11月には、事業主の協力を求める要請を京都労働局と連携して経済団体や観光関連事業者、民間紹介派遣事業者等に対して行うとともに、京都ジョブパークが労働相談所で来所者に情報提供をしております。加えまして、京都府のホームページをはじめ、TwitterやFacebookを活用した制度の紹介を行うとともに、今月からは新たにLINE広告による情報発信も開始したところでございます。
引き続き労働相談所はじめ、京都労働局や関係団体等とも連携しながら、実態把握に努めまして、生活や仕事に困っておられる非正規労働者の方に確実に必要な支援制度を届け、誰もが安心して働けるよう、きめ細かな支援を行ってまいりたいと考えております。
○西脇郁子議員 限られた時間ですので、3点にわたって再質問させていただきます。
まず新型コロナの病床確保についてですけれども、新規感染者の多くが軽症あるいは無症状の方で、在宅療養ということですので、自宅療養者の適切な健康観察、あるいは状態によっては医療ケアが必要な際にはすぐに病院へ搬送できる体制が必要だと考えております。
地域医療機関や介護事業所と連携して、対策の一つとして京都市内で始まっております在宅支援チームの拡充が、これは大事だと思いますけれども、これからどうしていかれるんでしょうか。また希望される開業医の方は参加してもらうべきだと思いますけれども、このことについてはどうされるんでしょうか。
もう一点は、高齢者施設のPCR検査ですが、すでに神奈川県では2週間に1回、高齢者それから障害者施設での検査を、32億円予算化しております。それから沖縄県、福岡県など5県でも定期的検査が始まっているということです。京都府としても高齢者施設等でのPCR検査は、いつまでに何回実施されるんでしょうか。お答えください。
それから中小企業事業者への支援についてですけれども、いま最も府内の中小企業の皆さんが困っておられるのは、経営と雇用を維持していくための真水の支援、これがほとんどないことなんですね。ところが国や京都府の施策の多くが、融資あるいはイノベーション推進など未来型の支援で、いま多くの事業者に必要な真水の支援、これをどうされるのか、お聞きしたいと思います。目の前で苦しんでおられる事業者をどう救おうとされているかということを、ぜひお答えください。
○西脇隆俊知事 西脇議員の再質問にお答えをいたします。
まず1点目の自宅療養者に対する対応でございます。従来から自宅療養者に対しましては、電話による健康観察等で万全を期しておりましたけれども、やはり出かける用事として買い物があるというようなことで、生活必需品とか食料品等の支給、それから何と言っても健康観察ということで、パルスオキシメーターと体温計の貸与ということで、自宅療養中であっても容態の急変等も対応できるように、万全の対応を期しておりますし、先日には一部
でございますけれども、訪問診療につきまして協力する医療機関が出てまいりましたので、我々と連携して訪問診療についても対応するということで、総合的に自宅療養者の方の健康観察、健康維持には万全を期してまいりたいというふうに思っております。
2点目の高齢者のPCR検査でございます。先日宇治市で先行的に実施をさせていただきましたけれども、これにつきましては、やはり全国の感染状況を見ても高齢者施設等でのクラスターの発生の可能性が非常に多うございます。特に職員とか外からのお見舞いの方がウイルスを持ち込まれるということから、まずは職員ということで始めましたけれども、これにつきましては「攻めのPCR検査」ということも言われ始めておりますので、対象地域や施
設を拡大する中でさらにPCR検査の充実を図り、感染防止に努力をしてまいりたいと思っております。
3点目の真水の支援につきましては、国に対しまして、まずは雇用調整助成金の特例期間の延長ということで雇用を支える、その上で持続化給付金や家賃支援給付金の再給付でございます。ただ当面一番重要なことは、緊急事態措置等によって影響を受けておられる中小企業者に対します一時金の支給が重要でございまして、この制度につきましては、なるべく幅広い業種業態に行き渡るように、できる限り柔軟な制度になるように、繰り返し要望しておりまして、間もなく制度設計が示されると思いますけれども、それが一番最初に適用されてくるんだと思っております。そうした制度全般を活用しながら、本当に厳しい状況にあります中小零細企業者に対しまして、支援を全力でしてまいりたいというふうに考えております。
○西脇郁子議員 自宅支援の問題ですけれども、先日委員会の中で私ども質問いたしました時には、まだ京都市内でも5件しか実施がされていないと。連携ということで。これをどう京都府内で広げていくのかということ、これは本当に大きな課題ですので、これは本気で頑張っていただきたいと思います。
それから感染拡大防止のためには、陽性者の早期発見がきわめて大事です。陽性者が減っているこの時期にこそ、京都府内全ての高齢者施設で定期的に検査を行うことが大事だと思います。それから2月に入り新規感染者はだいぶ減っておりますけれども、ほぼ毎日2、3人は亡くなっておられるということもありますので、第4波も含め、次の新しい危機に備えて、新たな仕組みを医療や介護で作らなければ、現場はもうどこも耐えられないというそういう状況ですので、そのための積極的な支援を求めておきたいと思います。
それから中小企業の対策ですけれども、現在の先ほどお話しました窮状を、京都府としてやっぱりしっかりと把握もしていただいて、例えば中央卸売市場にも行っていただくなり、府民税やそれから法人税などの徴収猶予や免除も含めて、必要とされる是非支援を速やかに具体化されるよう求めておきたいと思います。国待ちではなくて、京都府として独自にどう政策にするかということ、これ本当に大切ですので、是非ともよろしくお願いします。
次に北陸新幹線敦賀―新大阪間の延伸について伺います。
北陸新幹線敦賀―新大阪間はルートの8割がトンネルと言われる中、京都市内におきましては大深度地下トンネルとなり、立抗が京都市内では10kmおきに作られることになっています。すでに、立坑の予定地とされる南区の住民からは、
「大量の残土を積んで十条通をダンプが走ると言われているが地元は何も知らない」
左京区静原でも、
「住民には何も説明のないまま大気汚染調査の機材が公園に設置された」
など、住民不在のまま着々と工事の準備が進んでいます。
大深度地下トンネル工事の掘削残土につきましては、2020年3月の京都府環境影響評価専門委員会においても、
「世界最長レベルのトンネルであり掘削発生残土は膨大な量になることが見込まれる。本事業内の再利用や他の公共事業への有効利用等で消費できる量ではない」
との意見が出ていました。
残土について、方法書では、「国土交通大臣の意見及び事業者の見解」において「できる限り場外搬出を抑制するよう検討すること」とされ、事業者は工法選定と場内再利用とを合わせて検討すると表明しています。現実的にはトンネル内で土は埋められないため、あり得ない場所が残土捨て場になるずさんな計画となっています。南丹市長も
「残土全てを再利用や公共事業で有効活用することは不可能だ」
とされ、工事予定地とされる美山町田歌地区の住民の方からも、
「残土を運ぶために大量の大型車両が10年以上狭い山間部を走行することなどで環境が激変してしまう」
「この計画を知っていたら移住しなかった」
と怒りの声が上がっています。
知事自身も「方法書」に対する意見で、
「大量の建設発生土や建設汚泥度等が発生し、その保管・運搬・処理・処分等による環境影響も著しいものとなることが想定される」
と危惧されておられるのですから、鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対し、「このような杜撰な計画は容認できない」と表明されるべきではありませんか。
また、東京都調布市の外環道路工事現場の真上やその周辺で発生した陥没事故について、NEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)もその要因を外環道路工事だと認め、地下40m以下の工事なら安全という、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」の大前提は崩れました。
北陸新幹線延伸計画では、いわゆる「大深度法」の活用検討を行うとされていますが、東京都調布市で発生したような陥没事故が起きない保証はありません。知事は、40m以下の地下工事の安全性について、どのように認識されておられるのですか。お答えください。
国土交通省は2020年11月、北陸新幹線の金沢―敦賀間の開業が1年遅れる見通しを示すとともに、トンネル工事の追加工事や物価上昇、入札不調などを理由に新たに2,880億円もの建設費の増嵩を発表し、福井県では大問題になっています。
その後、2020年12月、建設主体の鉄道・運輸機構(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)に対して、大阪支社の工事見通しの甘さや、本社のチェック機能の不十分さ、本社から鉄道局への不正確・不十分な報告、関係自治体との工期・事業費に関する情報共有に問題があったと、業務改善命令が出されたことからも、鉄道・運輸機構の工事ありきの強引で杜撰な進め方が明らかになっています。
事業主体である同機構がこのような状況では、京都府内での工事費も大幅に増嵩する恐れがあり、京都府の財政を圧迫することになると考えますけれども、いかがですか。
最後に北山エリア開発計画について伺います。
2020年11月の京都府議会に、最終の「北山エリア整備基本計画」が提案されました。問題は、このエリアの中心として、歴史的に地域の価値を高めてきた府立植物園をはじめ現場職員の意見や提案、地域住民の声を積み上げることなく、大手コンサル会社主導で、民間企業の儲けに府民的財産を差し出す計画になっていることです。
2020年12月には、京都府職員労働組合連合会の呼びかけで「北山エリア整備構想を考える懇談会」が開催され、初めて計画の詳細を知った周辺地域の住民からは、
「地域住民は賑わいなど求めていない。静かで落ち着いた緑豊かなところが良いところ。北山地域の閑静な住宅街そのものが魅力」
などの声が相次いでいました。現場の職員や大学関係者、学生、地域住民等と十分議論が行われないまま「北山エリア整備基本計画」が作られたことは大問題だと考えますがいかがですか。
次に京都府立大学の「アリーナ的共同体育施設」について伺います。基本計画案では、計画の中の「民間活力の導入」について知事は、11月議会で「民間のアイデア、ノウハウを活用することと、府民負担を極力抑えるもので、民間の利益を図るものではない」と答弁されていますが、営利企業である以上儲けが出ない計画に参入することはあり得ませんし、大手コンサル会社の調査では、利用料収入が伸びなければ最悪2億円近い赤字が出るとの試算まで示されています。
民間企業であれば、赤字になれば、学生の利用より収益性のあるイベント活用が優先され、最終的には京都府民の税金で穴埋めをする事態も危惧されると考えますがいかがですか。
次に京都府立植物園について伺います。
京都府立植物園は、100年もの歴史を通じて、この事業に携わってきた現場職員等多くの人々によって、戦後の米軍による接収やサッカー場建設案の浮上など幾多の苦難を乗り越え、今では「植物の生きた姿を見せる」ことを使命とする国際的にも高い評価を得ている博物館的施設であり、北山エリアの格と価値を高めてきた京都府民の宝です。
その府立植物園の施設整備において「回遊性や賑わい」づくりとしての北山通沿いの商業施設設置のためのセットバックや、新たな入場門の設置等が計画されています。職員からは、外部の喧騒を遮断している生垣や植物園の心臓部ともいえるバックヤードが縮小されること等が懸念されており、
「頑張ってきた現場職員の意見や提案より、なぜ大手コンサルタント会社主導なのか」
と厳しい声が上がっています。
しかもこれだけの大事業にもかかわらず、コロナ禍で多大な財政支出が求められているにもかかわらず、予算額も示されないまま本計画を進めることは、京都府民の理解が得られないと考えます。
「北山エリア整備基本計画」は、抜本的に見直し、府民や関係者の声をよく聞いて北山の地域にふさわしいまちづくり計画とするべきですがいかがですか。
○西脇隆俊知事 北陸新幹線延伸についてでございます。
北陸新幹線につきましては日本海国土軸の一部を形成するとともに、大規模災害時において東海道新幹線の代替機能を果たし、関西全体の発展につながる国家プロジェクトであると認識をしております。
まず、北陸新幹線の環境への影響に関する意見についてでございます。北陸新幹線、敦賀―新大阪間の整備につきましては、全国新幹線鉄道整備法に基づき、国から建設主体に指名された鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行うものであり、現在、環境影響評価法に基づく手続きが進められているところでございます。
京都府の意見につきましては、環境影響評価法の各段階に対応する意見として、府民、関係市町、専門家の意見も聞きながら、網羅的かつ詳細にとりまとめ、法に基づきます知事意見として述べてきたところでございます。
次に、大深度地下の利用についてでございます。環境影響評価方法書では、必要に応じて「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」の活用も検討を行うとされております。今後、大深度地下の利用の検討が行われる場合には、自然環境や生活環境等への影響に十分配慮されることが重要でありますので、環境影響評価法に基づく手続きにおいて、府民、関係市町、専門家の意見もお聞きしながら、しっかりと必要な意見を述べてまいりたいと考えております。
また、大深度地下の利用にあたっては、大深度地下使用法に基づき、国の関係行政機関及び関係都道府県で構成される大深度地下使用協議会において必要な協議を行うこととされているほか、国土交通大臣の使用の認可手続きの中で、事業の施工について関係のある行政機関は意見を述べることができるとされていることから、必要な意見をしっかりと述べてまいりたいと考えております。
次に、京都府の財政負担についてでございます。北陸新幹線の建設費や地元負担の考え方などにつきましては、今後、国や鉄道・運輸機構の詳細計画が固まった段階で示されるものと考えており、引き続き、国や鉄道・運輸機構に対し、受益に応じた地元負担となるよう、強く求めてまいりたいと考えております。
次に、「北山エリア整備基本計画」についてでございます。
京都府では、昨年12月に「北山エリア整備基本計画」をとりまとめたところでありますが、その策定にあたりましては、骨子案や最終案のとりまとめに先立ち、植物園や府立大学等と定期的に意見交換を行うとともに、専門家の方々のご意見も伺いながら検討を進めてまいりました。昨年の10月には、基本計画の骨子案についてパブリックコメントを実施し、植物園や府立大学など、北山エリアに立地する施設への周知とともに、地元の北区・左京区の北山エリア周辺にお住いの方々にも、自治会を通じてお知らせするなど、幅広く府民意見をお聞きする機会を設定し、55 名の方から 140 件を超えるご意見をいただいたところでございます。
いただいたご意見の中には、「北山での滞在時間が長くなるような魅力的なまちづくりをしてほしい」「府立大学の体育館は学生を第一に考えて整備をしてほしい」という声もあり、今後、整備にあたりましては、エリア内及び周辺地域の環境保全や大学の教育研究環境等に十分配慮して、検討を進めてまいりたいと考えております。
次に、共同体育館の運営についてであります。北山エリアの整備・運営にあたりましては、従来の公共工事の手法のほか、民間事業者のアイデアやノウハウ等を活用する官民連携手法も含め、府民負担を極力抑えながら、最も魅力的な施設整備・運営を行うことができる手法を検討することとしております。特に、アリーナ機能を備えた共同体育館については、大学の教育施設として整備・運営することが大前提でありますので、大学の授業や課外活動に支障をきたさぬよう十分に配慮したうえで、官民のリスク分担や将来の収支の見込みについて精査し、最適な整備・運営手法を採用してまいりたいと考えております。
いずれにいたしましても、北山エリアが、豊かな自然の中で創造される文化・芸術・学術・スポーツに身近に出会い、交流する街となるよう、引き続き府民の皆様や関係の方々の意見を踏まえながら、しっかりと計画を前に進めてまいりたいと考えております。
○西脇郁子議員 再質問をさせていただきます。
北陸新幹線についてですけれども、美山の豊かな自然に惹かれてUターンしてこられた人たちも、今回の工事の問題で嫌気がさして、すでに「引っ越したい」という声もあると聞いています。ところが環境影響評価では、地域社会への長期的な打撃は評価の対象外。こうした地域社会への影響について、知事はどう認識をしておられるのでしょうか。
もう1点ですけれども、財政問題や大深度地下問題など、それぞれ重大問題を抱えております。建設交通部長も、
「次に鉄道運輸機構から出される準備書に配慮がされているかどうかが重要だ」
と議会で答弁しておられますけれども、それでは間に合わないわけです。今、知事として言うべきことを言わず、そして独自に影響調査もされないまま工事が着工されれば、京都の府民に対しても大きな代償を背負わせることになるんではないかと思いますが、そのことについての認識を伺いたいと思います。
以上です。よろしくお願いします。
○西脇隆俊知事 西脇議員の再質問にお答えいたします。
一点目でございます。現在、進められておりますのは、環境影響評価法に基づく環境アセスメントの手続きでございます。法に則り、これが適切に行われるように、先ほど申し上げましたけれども、節目節目で知事意見をきちっと申し上げておりまして、それが計画に反映されるように努力をしてまいりたいと思っております。また地域社会の問題につきましても、当然、地域にとっては非常に関心が高いということは認識しておりますので、それにつきましては、環境影響評価法とは違う趣旨としても、十分尊重されるべきものだと考えております。
次に、大深度地下利用を含めて、環境影響評価手続きについてでございますが、先ほど申し上げました、大深度地下利用が行われる場合、まずは環境アセスメントの中で、大深度地下利用を含めた環境影響について意見を申し上げますとともに、大深度地下利用の法律に基づく諸手続きの中でも、きちっと然るべき意見を申し上げたいと思っております。いずれにしても、全体として環境が損なわれないように、我々としては最大限努力をしていくことが必要だと考えております。
○西脇郁子議員 北陸新幹線の延伸ですけれども、美山などの現地の窮状、縷々私は訴えたわけですけれども、これは尊重されるものだと仰いましたけれども、具体的にじゃあ、そのためにどうされるのかということが全くないわけです。ですので、知事独自に、知事自らが現地に行って説明をされるとか、ご意見聞いていただくとか、そういったことも必要ではないかと思いますけれども、皆さんは、つい数年前に初めて聞いたと、そういう方がほとんどなんです。これから環境も激変するということで、是非とも、そういう危惧されておられる方の立場に寄り添った、そういう姿勢に立ち戻っていただきたいと思います。
北陸新幹線の延伸ですけれども、与党の、北陸新幹線敦賀―新大阪間整備委員会の高木委員長は、先日の福井新聞で、
「2兆1000億円と言われているが、足りるのか膨らむのか見極めることも、安定した財源に見通しをつけることにつながる。もし膨らむのなら、しかるべき段階に必要な額に見直すことになるだろう」
と述べ、事実上工事費が膨らむことを示唆しておられるのではないでしょうか。「過去最大規模になる残土処理も課題」とも、この方は仰ってるんです。今から危惧をされておられると。
それから巨大アリーナですけれども、150億円と試算が示されておられますけれども、植物園以外のシアターコンプレックスなど他の施設も含めますと、北山エリア開発は数百億円規模の、たいへんな事業になるとも言われています。京都スタジアムと同様、赤字になれば結局府民の税金が投入される可能性もあるわけです。
北陸新幹線延伸も、北山エリア開発も、どちらもコロナ禍以前に策定された計画ですので、やはり現場の職員や住民の声もまともに向き合わずに、財政よりもまずは建設ありきで進められてきた、財政規律も無視した姿勢というのは、あまりにも府民に対して無責任だと言わざるを得ません。2つの計画は撤回するしかないということを強く求めて、質問を終わらせていただきたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。